児童文学 『赤毛のアン』シリーズ まとめ記事

大人が読む『赤毛のアン』10人の翻訳者(出版社)の特徴まとめ!

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『赤毛のアン』は、ももちんの大好きな本。

村岡花子訳のものが好きだけど、他の人の翻訳の『赤毛のアン』も、それぞれ特徴があって良いみたい。

今回は大人向けに、完訳版かそれに近いものを中心に、翻訳者別にまとめてみるよ。

  1. 村岡花子(新潮文庫)
  2. 掛川恭子(講談社文庫)
  3. 松本侑子(集英社文庫)
  4. 中村佐喜子(角川文庫)
  5. 神山妙子(kindle)
  6. 山本史郎(原書房)
  7. 茅野美ど里(偕成社文庫)
  8. 岸田衿子(朝日出版社)
  9. 西田桂子(西村書店)
  10. 林啓恵(ヴィレッジブックス)
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『赤毛のアン』についてざっくり説明。

『赤毛のアン』(原題”Anne of GreenGables")は1908年、にカナダの女流作家、ルーシーモード・モンゴメリにより出版された。

日本では、村岡花子の翻訳により、三笠書房より1952年、のちに新潮文庫より1954年に出版。

ルーシー・モード・モンゴメリの著作の中で最も有名な1冊でもあり、多くの出版社から刊行されている。

また、実写映画化やアニメ化、舞台化もされている。

ルーシー・モード・モンゴメリの略歴・作品についてはこちら。

①村岡花子(新潮文庫)

モンゴメリ『赤毛のアン』村岡花子訳、新潮社、2008年

村岡花子訳の『赤毛のアン』は、三笠書房より1952年、のちに新潮文庫より1954年に出版された。

『赤毛のアン』の定番と言えば、この村岡花子翻訳の新潮文庫版をあげる人も多いと思う。

村岡花子は、日本で最初に”Anne of Greengables”を翻訳し、紹介した人なんだよね。

1952年の日本での出版以来、50年以上読み継がれてきた村岡花子訳の『赤毛のアン』は、省略されている部分や誤訳もいくつかあった。

また、村岡は原文に忠実に訳すことよりも、文章全体の流れや表現の自然さを重視した「意訳」が多い。

2008年に新しく刊行された新潮文庫の『赤毛のアン』は、それまでの村岡花子訳に、孫の村岡美枝による補訳が加えられた。

厳密に言うと、全文・全単語を訳しているわけではないけど、内容的に省略されている部分はみあたらず、ほぼ完訳と言える。

赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫) 529ページ。2008年、新潮社。

「おお、ダイアナ」やっとのことでアンは、手を組み合わせ、ささやくような声で言った。

「あのう、あのう、ねえ、あんた、あたしをすこしばかり好きになれると思って?あたしの腹心の友となってくれて?」

ダイアナは笑いだした。ダイアナはいつも何か言う前に笑うのだった。

「ええ、なれると思うわ」ダイアナはありのままに答えた。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』村岡花子訳、新潮文庫、2008年

新潮文庫と『赤毛のアン』

新潮文庫は、株式会社新潮社が発行している文庫レーベル。

1914年(大正3年)創刊。現在まで続く文庫としてはもっとも古い。

新潮文庫が毎年夏に行うキャンペーン「新潮文庫の100冊」では、モンゴメリ 『赤毛のアン』は、1976年から2018年までの43年間、すべての年に選出されている。

新潮文庫の100冊2018公式サイト

物語そのものを楽しむか、文化的背景を知りながら楽しむか

新潮文庫のどんなところが好きかというと、ひとつは、説明っぽさがないところ。

時代も国も違う小説の中で、日本人にはなじみのない文化や礼儀も出てくる。

それについての注釈がほとんどない。(文中に※がない)

説明をつけないことで、読者はその異文化に自然に入り込んでいく。

初めは慣れない文化だったのが、シリーズを読み進めるにつれて、自然と、理解していく。

もちろん、『赤毛のアン』には当時の文化的背景や基礎知識などを理解しながら読んでいく楽しさもあると思う。

そんな楽しさを求めるなら、集英社文庫『赤毛のアン』(松本侑子訳)や、原書房『赤毛のアン 注釈版』(山本史郎訳)がおすすめ。

村岡花子訳(新潮文庫版)『赤毛のアン』レビュー記事はこちら。

村岡花子の生涯と作品についてはこちら。

②掛川恭子(講談社文庫)

講談社「完訳赤毛のアンシリーズ 1-10」は、1990年から1991年にかけて出版された。

写真では小さいけれど、ハードカバーでしっかりした作り。児童向けでひらがな表記が多い。

吉本ばなな『TSUGUMI』の表紙絵も手がけた、銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。

モンゴメリ『赤毛のアン』掛川恭子訳、講談社、2005年

2005年には、文庫化され、より手に取りやすくなり、大人が読む『赤毛のアン』として表記も改められている。

掛川恭子による完訳版は、現代の言葉に近い語感で訳されているので、すっと入ってくる。

また、原文に忠実に訳している。

村岡訳ではダイアナのことを「腹心の友」と呼んでいるけれど、掛川訳では「宿命(さだめ)の友」としている。

先に読んだのが村岡訳なので重要語句の訳がちがうと違和感があるけれど。

表紙カバーのイラストも美しい。大人の本棚にも似合うすてきな装丁だよね。

赤毛のアン (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 1) 544ページ。2005年、講談社。

赤毛のアン (完訳 赤毛のアンシリーズ 1) 470ページ。1990年、講談社。

「ああ、ダイアナ、」両手をしっかり握りしめたアンが、やっとのことで、ささやくような小さな声でいった。

「あなた、もしかして・・・もしかして、少しはわたしを気に入ってくれるかしらー〈宿命の友〉になれるくらい?」

ダイアナが笑い声をあげた。ダイアナは口を開くまえに、必ず笑うのだ。

「ええ、そう思うわ」ダイアナはあけっぴろげにいった。

出典:モンゴメリ『完訳クラシック 赤毛のアン1 赤毛のアン』掛川恭子訳、講談社、2005年

③松本侑子(集英社文庫)

初版は1993年。日本で初めての注釈付き完訳版だった。集英社文庫では2000年に出版された。

文庫化にあたって、訳文を全面的に見直し大幅に改訂を加えた。

松本侑子訳の特徴は、児童文学としてではなく、大人が読む小説として訳してあること。

原文に忠実に、全文章を訳している。

『赤毛のアン』には、聖書やシェイクスピアの文学からの引用もたくさん入っているんだけど、村岡訳ではそれの説明を省いている。

この松本訳では、「訳者によるノート−−『赤毛のアン』の秘密−」という注釈が巻末に付いていて、引用文の出典元なども詳しく解説している。

また、松本侑子本人の現地取材による口絵写真資料やプリンス・エドワード島の地図などの歴史資料も充実している。

ただ、物語と注釈を交互に読みながら進めていくので、物語に没入できない感じがある。

赤毛のアン (集英社文庫)  564ページ。2000年、集英社。

とうとうアンが、もじもじと指を組み合わせながら話しかけた。

「あのう、ダイアナ」ささやくような小声だった。「あのう、そのう、少しは私を気に入ってくれそう?その、腹心の友になれるくらいに」

ダイアナは笑った。彼女は何か言う前に、いつも笑うのだった。

「ええと、好きになると思うわ」ダイアナは、うちとけて言った。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』松本侑子訳、集英社文庫、2000年

④中村佐喜子(角川文庫)

角川文庫『赤毛のアン』は、1957年出版された。

中村佐喜子は村岡花子の次に『赤毛のアン』を翻訳した人なんだ。

格調高く、且つ温かみのある訳文によって親しまれ、村岡花子訳の新潮文庫版とともにロングセラーとなった。

村岡花子と同時代の訳ということもあって、どことなく言い回しも似ているところがある。

中村佐喜子の訳の方がアンの言葉づかいがざっくばらんで、幼い感じにもとれる。

「アボンリー」を「エヴォンリー」、「マシュウ・カスバート」を「マシュウ・カスバァト」とするなどの違いがある。

赤毛のアン (角川文庫) 423ページ。1957年、KADOKAWA。

「ねえ、 ダイアナ」やがてアンが、手を組み合わせながら、かすかな忍び声で言った。「あのう、あんた、あたしが好きになれそう? ─ ─ 腹心の友だちになってくれる?」

ダイアナは笑った。彼女は話す前にいつも笑うのだった。

「ええ、たぶんね」と彼女はこだわりなく言った。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』中村佐喜子訳、角川文庫、1957年

⑤神山妙子(グーテンベルク21)

旺文社文庫『赤毛のアン』は、1973年出版された。

旺文社文庫版は絶版。

同じ内容のものを、グーテンベルク21の電子書籍版で読むことができる。

神山妙子訳は、アニメ『世界名作劇場 赤毛のアン』の底本となった訳としても有名。

制作当時、もっとも完訳に近く、原書に忠実な訳であったことから選ばれたんだ。

試し読みしてみたけど、くせがなく易しい言葉で表現されているから、読みやすい。

明快で切れの良い言葉遣いが特徴。

赤毛のアン 298ページ。2012年、グーテンベルク21。

「ねえ、ダイアナ」アンは両手をしっかりと組み合わせ、ほとんど聞きとれないような小声で言った。「あんたーねえ、あんた、あたしを少しでも好きになれると思うーあたしの心の友になってもいいと思うくらいに?」

ダイアナは声を立てて笑った。ダイアナは話をする前に笑うくせがあった。「ええ、なれると思うわ」ダイアナは率直に答えた。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』神山妙子訳、グーテンベルク21、2012年

⑥山本史郎(原書房)

原書房からは『赤毛のアン・完全版』が1999年、後に全面改訂新訳の『赤毛のアン・注釈版』が2014年に出版された。

めずらしく男性の翻訳者である山本史郎は、東京大学の教授でもある。

翻訳は、セリフの口調に独特の癖があり、マリラがちょっと上品だったり、語尾に「~かな」がたくさん使われていたりする。

『赤毛のアン・注釈版』の元になっている本は、イギリスで出版された”The Annotated Anne of Green Gables 注釈つき『赤毛のアン』”。

イギリスの3人の文学者による解説・注釈を、200ページにわたって翻訳・解説しているところが特徴。

他のどの『赤毛のアン』よりも、ずば抜けて情報量が多い。

また、当時出版されていた原書の挿絵も豊富で、資料として注目すべきもの。

『赤毛のアン』を知識の面からも理解したい人は、原書房『赤毛のアン』はぜひ手に取るべき1冊。

赤毛のアン【注釈版】  688ページ。2014年、原書房。

「ああ!ダイアナ」アンが両手をにぎり合わせて言った。ほとんど囁き声になっている。「ねえ、あんたどうかしら・・・ええと、あたしのことすこしでも好きになれると思う・・・あたしの心の友になれると思う?」

ダイアナは笑った。ダイアナはしゃべるまえに笑うのが癖なのだ。

「まあ!大丈夫よ」ダイアナは素直に返した。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン 注釈版』山本史郎訳、原書房、2014年

⑦茅野美ど里(偕成社文庫)

偕成社文庫『赤毛のアン』は、1987年に出版された。上・下巻二冊セット。

偕成社文庫は、読者層が小学校高学年以上の児童文庫だけれど、海外の古典・名作は完訳を基本としているところが特徴。

茅野美ど里の翻訳は児童向きに、易しい表現になっているけど、大人が読むにも読みやすい。

日本語の表現が自然で美しい。装丁もきれいで、通常の文庫より一回り大きい児童文庫なので、大切にしたい1冊。

『アンの愛情』までが出版されている。

赤毛のアン〈上〉 (偕成社文庫)赤毛のアン〈下〉 (偕成社文庫) 上巻328ページ、下巻316ページ。1987年、偕成社。

「腹心の友よ、親友のこと。

あたしの心の奥ぶかいところにあることまでうちあけられる、ほんものの同質の魂のもちぬしのこと。

いつかそんな子にめぐりあえることを、ずっと夢みてたの。

実現するとは思ってなかったけど、すてきな夢が一度にたくさん実現したから、この夢もかなえられるかなって思って。どう思います?」

出典:モンゴメリ『赤毛のアン 上』茅野美ど里訳、偕成社文庫、1987年

⑧岸田衿子(朝日出版社)

モンゴメリ『赤毛のアン』岸田衿子訳、朝日出版社、2018年

朝日出版社から2018年6月に出版された『赤毛のアン』は、1969年に学研から出版された『少年少女世界文学全集9』に収録された『赤毛のアン』の単行本化。

翻訳は、詩人であり童話作家でもあった岸田衿子。

易しく趣のある表現は少女の世界をそのままうつしだしている。

ひらがなが多いので、小学生からでも読みやすい。大人にはちょっと読みづらいかも。

安野光雅のカラーイラストは、素朴で美しい島の自然の生活を生き生きと描いている。

赤毛のアン 512ページ。朝日出版社、2018年。

「ねえ、ダイアナ。」ついに、アンは、手を組み合わせて、ささやくようにいった。

「あのうーあのう、あなた、わたしのことすきになれそう?よき友になってくれる?」

ダイアナはわらった。ダイアナは、いつも、なにかしゃべるまえにわらうのだった。

「ええ、なれそうよ。」

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』岸田衿子訳、朝日出版社、2018年

岸田衿子翻訳『赤毛のアン』レビュー記事はこちら。

⑨西田佳子(西村書店)

西村書店『赤毛のアン』は、2006年出版された、完訳愛蔵版。

西田訳は、2000年11月にカナダのTundra Booksより出版された"Anne of Green Gables"を原書としている。

1908年に発行された初版原稿をそのまま用いたテキストに、著者モンゴメリの孫にあたるケイト・マクドナルド・バトラーによるエッセイと、カナダ在住のイラストレーターによるカラーのイラストが添えられている。

赤毛のアン 407ページ。西村書店、2006年。

アンはロジャーソン先生のことが好きになれなかったし、その場にいるのが惨めでならなかった。

ほかの子たちは袖のふくらんだ服を着ているからだ。

袖のふくらんだ服が着られないんならこの世に生きてる価値なんてないわ。とアンは思った。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』西田佳子訳、西村書店、2006年

⑩林啓恵(ヴィレッジブックス)

ヴィレッジブックス『赤毛のアン』は、2011年、新訳“おとなの少女文学”シリーズ第1弾として出版された。

翻訳者の林啓恵は、いきいきとした会話文と流れるような情景描写で、海外のロマンス文庫翻訳でも多くのファンを獲得している。

原文通りだと、くどい言い回しになりがちなところを、流れがとぎれないようにうまくまとめていて、とても読みやすい。

この新訳で初めて「アン」を読み通せたという声もあるみたい。

引用やセリフの省略があるが、全訳に近い。

表紙の女の子も宮﨑あおい似でかわいい。

赤毛のアン (ヴィレッジブックス) 442ページ。ヴィレッジブックス、2011年。

「ああ、ダイアナ」アンはついに口を開くと、手を握りあわせて、ささやくように続けた。「わたしのこと、少しは好きになれそう?心の友になれるくらい?」

ダイアナが笑った。しゃべる前に笑う癖があるのだ。

「ええ、なれると思うけど」ダイアナは素直に答えた。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』林啓恵訳、ヴィレッジブックス、2011年

『赤毛のアン』特徴比較

翻訳者 出版社 形態 完訳 注釈 シリーズ化
村岡花子 新潮社 文・電 ◎※1
掛川恭子 講談社
掛川恭子 講談社
松本侑子 集英社 愛情
中村佐喜子 KADOKAWA 文・電 愛情※2
神山妙子 グーテンベルク21 青春
山本史郎 原書房
茅野美ど里 偕成社 児文 愛情
岸田衿子 朝日出版社 単・電
西田桂子 西村書店
林啓恵 ヴィレッジブックス

形態について

  • ・・・文庫
  • ・・・単行本(ハードカバー)
  • 児文・・・児童文庫(文庫より少し大きめ)
  • ・・・電子書籍

翻訳について

  • ・・・完訳と明記されている、または確認済み。
  • ・・・厳密に言うと、全文・全単語を訳しているわけではないけど、内容的に省略されている部分はなく、ほぼ完訳と言える。
  • ・・・明らかに省略されている部分がある。

注釈について

  • ・・・巻末に詳しい解説・注釈あり。
  • ・・・巻末に簡単な解説あり。
  • ・・・あとがきのみで注釈なし。

シリーズ化について

  • ・・・全10冊刊行
  • ・・・『赤毛のアン』のみ刊行
  • 「愛情」「青春」などの文字・・・それぞれ『アンの愛情』『アンの青春』まで刊行

※1 新潮文庫の「赤毛のアンシリーズ」は、村岡花子訳の10作に、村岡美枝訳の『アンの想い出の日々〈上〉』『アンの想い出の日々〈下〉』を加えた全11作。

※2 中村佐喜子訳は、角川文庫では『アンの愛情』まで刊行。電子書籍では『アンの愛の手紙』(村岡訳では『アンの幸福』)『アンの村の人々』(村岡訳では『アンの友達』)もグーテンベルク21より刊行。
また、『アンの愛情 (角川文庫)』と電子書籍の『アンの婚約』は同じ内容。

空欄は未確認のところです。確認できしだい追記します。

 

子ども向けにおすすめの『赤毛のアン』については、この記事で出版社別・特徴別にまとめているよ。

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