小説『アンの愛情』感想。アンとギルバートが恋人に!友人ルビーの死。

投稿日:2018年4月7日 更新日:

モンゴメリ『アンの愛情』村岡花子訳、(新潮文庫、2008年)


赤毛のアンシリーズ3作目、『アンの愛情』のあらすじと見どころをご紹介します。

アンとギルバートがついに恋人になったり、ルビー・ギリスの死や、ダイアナやジェーン・アンドリュースの結婚など、『赤毛のアン』から続く友情にも変化が現れます。

  1. アンとギルバートの恋の行方
  2. あこがれる!キャンパスライフ
  3. 幼友達ルビー・ギリスの死
  4. 完璧すぎるアン
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1.背景

『アンの愛情』(原題”Anne of the Island”)は、アン・シリーズ3作目として、カナダの女流作家ルーシー・モード・モンゴメリにより、1915年に出版された。

日本では1955年、『第三赤毛のアン』と題して、村岡花子の翻訳により、三笠書房より出版された。

翌1956年、『アンの愛情』と改題され、新潮文庫より出版された。

原題の「Island(島)」というのは、カナダのプリンス・エドワード島である。

この島で生まれ育ったルーシー・モード・モンゴメリは、1908年に初版を出した”Anne of Green Gables”(邦訳書名『赤毛のアン』)によって一躍有名になった。

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2.あらすじ

舞台は1880年代のプリンス・エドワード島。

前作『アンの青春』終章で、マリラがリンド夫人を迎え入れ、一緒に住むことになった。

これをきっかけに、アンは、かつての目標であったレドモンド大学への進学を決断した。

今作は、アヴォンリーからレドモンド大学のあるキングスポートへ旅立つ前から始まる。

期待と不安に胸をふくらませながら始まる新生活。

〈パティの家〉での友人との共同生活、勉学に励む日々、故郷で待つ家族との時間。

数人の崇拝者を持つほどの魅力ある女性に成長したアンは、ついに、真実の愛情に目覚める。

『アンの愛情』では、レドモンド大学に進学したアンの、18~22歳の生活を描いている。

主な登場人物

アン・シャーリー・・・シリーズの主人公。細身で色白、灰色の目をしている。『赤毛のアン』時よりコンプレックスだった赤毛は、現在は褐色に近くなっている。

ギルバート・ブライス・・・アヴォンリーでの小学校以来の友人。『赤毛のアン』以降、良き友人、ライバルとして振舞っていたが、変わらずアンの事を愛し続けている。

ダイアナ・バーリー・・・アンの最初にして最大の友人。黒髪でふくよかな体格で、裕福な家の娘。今作でフレッド・ライトと結婚する。

ルビー・ギリス・・・金髪で、アヴォンリーでのアンの友人。不治の病に侵されており、若くして亡くなってしまう。

プリシラ・グラント・・・アンのクイーン学院時代の同級生。アンと共にレドモンド大学に入学。入学時よりアンのルームメイトとなる。

ステラ・メイナード・・・アンのクイーン学院時代の同級生。2年次に編入してきて、「パティの家」で、アン、プリシラ、フィリパのルームメイトとなる。

チャーリー・スローン・・『赤毛のアン』以来、変わらずにアンを崇拝し続ける同級生。アンやギルバートと同時にレドモンド大学に入学する。

マリラ・カスバート・・・アンをかつて引き取った兄妹の妹。前作の最後で、隣人で親友のリンド夫人と同居することになった。

リンド夫人・・・子供たちも独立し、夫が亡くなったこともあり、マリラと同居することに。今ではアンに対して愛情を見せている。

デイビー・キース&ドーラ・キース・・・マリラが前作で引き取った双子の兄妹。

新登場

フィリパ・ゴードン・・・今作で新しく登場したアンの友人。アンと同じくノヴァ・スコシアのボーリングブローク生まれ。アン、プリシラ、ステラとともに、「パティの家」のルームメイトとなる。

ロイ・ガードナー・・・アンが3年生の時に雨の日にロマンティックな出会いをし、共に恋に落ちる。

クリスチン・スチュワート・・・キングスポートに音楽の勉強にきている女学生。ギルバートと恋の噂が立つ。

参考:Wikipedia

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3.本を読んだ感想

今作『アンの愛情』は、アンのレドモンド大学生活、18歳から22歳ころを描いています。

アン、まさに花盛り!

モテまくり、青春謳歌しまくりでうきうき。

3-1.ついに真実の愛に目覚めるアン

今作の一番のみどころは、何と言っても、アンとギルバートの恋愛ではないでしょうか。

初めて出会ったときから一途にアンを想いつづけるギルバート。

ギルバートのことを友だちだと思い込んで、一向に振り向かないアン。

美しくかしこいアンに求婚する青年たち。

さまざまな恋模様を経て、ついにアンは真実の愛に目覚めます。

一途にアンを想い続けるギルバート

『赤毛のアン』『アンの青春』では、恋愛には一切関心を持っていなかったアン。

一途にアンを愛していたギルバートも、アンの高潔な態度に愛情を隠し、良きライバル・友人としてふるまっていました。

今作でレドモンド大学入学時、アンは18歳、ギルバートは20歳になっています。

もう恋愛してもいいお年頃ですよね。

ギルバートは、今作『アンの愛情』では初めから、アンにアタックします。

アンと散歩中、アンの手に自分の手を重ねたり、ほとばしる愛を言葉にします。

でも、アンはギルバートのことを友人だと思い込んでいる。

たびかさなるアンの拒絶にあい、ギルバートも「友人」という立場に甘んじるしかない。

ギルバートの最初の求婚

アンにうまくかわされ続けるギルバートは、とうとうアンに求婚します。

アンの手を取り、にぎりしめた。アンはそれから逃れることができなかった。「ぼくは君に話がある」

「おお、言わないでちょうだい」アンは懇願した。「言わないでーお願いだから、ギルーバート」

「言わなくてはならない。これ以上、今の状態をつづけることはできない。アン、ぼくは君を愛している。(中略)将来、ぼくの妻になると約束してくれますか?

出典:モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

『赤毛のアン』で、石盤を頭にたたきつけられて以来アンにひそかに抱き続けてきた想いを打ち明けます。

でも、アン、なんて答えたと思います?

友達としては、とてもあなたに好意を持っているわ。でも、あなたを愛してはいないことよ、ギルバート。

(中略)あたしたち、お友達のままでいなければならないわ、ギルバート」

出典:モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

ギルバートを愛していないと思い込んでいるアンは、はっきりと拒絶するのです。

アンとギルバートが愛し合っていることは、誰から見ても明らかなのに・・・

このアンの間違った思い込みにはイラっとくるし、ギルバートには同情を禁じえません。

ロイヤル・ガードナーの出現

アンがギルバートの最初の求婚を断ったのは、自身のギルバートへの愛に全く気づいておらず、自分はまだ運命の人との出会いは果たしていないと思っていたから。

こののち、アンはついに夢見ていた理想通りの男性、ロイヤル・ガードナーと出会います。

背は高く、眉目秀麗で、上品な容貌。黒い、暗い、量りしれぬまなざし。甘美な、音楽的な、思いやりのこもった声。

出会いのロマンチックな状況も手伝って、アンは「ついにほんとうの王子があらわれた」とおもいこみます。

そして、ギルバートにも、クリスチンという美人の恋人(噂では)ができます。

アンはロイとの交際をはぐくみながらも、ギルバートとクリスチンが一緒の姿を見るにつけ、心を痛めるのでした。(でもまだ自分の気持ちには気づいていない)

ロイ・ガードナーの求婚

アンとロイの交際は順調につづき、周囲の誰もが認めるカップルとなります。

それもそのはず、アンは自分がロイを愛していると思い込んでいるのです。

レドモンド大学卒業も近づくある日、アンはついにロイ・ガードナーにプロポーズされます。

ロイも、アン自身も、プロポーズは結婚に至る形だけのもので、当然返事は「イエス」だろうと思い込んでいました。

そう、アン自身でさえも。

ところが、ロイのプロポーズの言葉を聞いた瞬間、アンには衝撃が走るのです。

「あたしはロイを愛していない!」と悟るアン。息も絶え絶えに断ります。

2年間ももてあそばれたロイ(アンにそのつもりがなかったにしても)は、すごすごと去ります。

アン、気づくの遅すぎでしょうよ・・・しかも、この時点では、まだギルバートへの愛に気づいていない。

このアンのかたくなな思い込みに、思わず、「早く目覚ませよ!」と言いたくなります。

アンがギルバートへの愛に気づいた瞬間

レドモンド大学を卒業し、アヴォンリーに一時帰省したアン。

ある日、ギルバートが腸チフスにかかって死にかけていることを知ったアンは、そこでようやく、ギルバートを愛していることに気づきます。

あたしはギルバートのものであり、ギルバートはあたしのものなのだ。

苦痛の絶頂にあって、、アンはそれに疑問の余地がなかった。

ギルバートはクリスチン・スチュワートを愛してはいないのだーこれまで一度も愛したことはないのだ。

出典:モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

ギルバートは無事峠を超えて、回復します。

ギルバートの2度目の求婚

フィリパから「アンとロイはなんでもないから、もう一度試みろ」との手紙を受け取ったギルバートは、今作『アンの愛情』の最終章で、アンに2度目の求婚をします。

「僕は二年前にあることをたずねましたね、アン。それをきょう、再びたずねたら、君は別の返事をしてくれますか?」

(中略)

アンは一瞬、ギルバートの目を見詰めた。彼はそれ以外の返事は望まなかった。

出典:モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

こうして、ようやく恋人同士になるアンとギルバート。めでたしめでたし。

5人に求婚されるアン

ちなみに、女性として花開き始めるアンは、今作『アンの愛情』で、5人の男性に求婚されることとなります。

そのうち二人は、これまで紹介した、ギルバートとロイ・ガードナー。

しかしながら、アンはその他に、三人の男性に求婚されているのです。

ビリー・アンドリュース

記念すべき初めての求婚は、幼友達ジェーン・アンドリュースの兄、ビリー・アンドリュースから。

直接ではなく、妹のジェーンからこのことを聞かされたアン。

ビリーのことを微塵も気にかけたことのなかったアンはもちろん断ります。

初めての求婚というものを夢見ていたアンは、実際には笑い話にしかならないような経験になってしまい、ため息をつきます。

チャーリー・スローン

眼中にない男性からの求婚はつづきます。

次なる求婚者は、『赤毛のアン』時代からアンに思いを寄せていた同級生、チャーリー・スローン。

成績やルックスはあまり良くなく、レドモンドでもフィリパから「でめきん」と言われたり、マリラとリンド夫人の会話中でも、平凡極まりないスローン家の人間とされていますが、本人は全く気づいていません。

チャーリー・スローンの尊大な態度の求婚を不快に感じながらも、精いっぱいの思いやりをもってやんわり断るアンなのでした。

サミュエル・トリバー

眼中にない男性からの求婚、3度目は、アンが夏に2か月間先生として赴任した町、バレー・ロードで起こります。

求婚者サミュエル・トリバーは、背が高くやせた田舎者で、アンの下宿先の隣家の雇人。

ハッカドロップをしきりにアンに勧める以外、まったくアンの印象に残らなかったサム。

出逢って何日もたっていないうちに、サムはアンに「おめえさん、おれんとこへついてきてくれっかね?」と求婚します。

過去のビリーとチャーリーの経験から、アンの求婚に対する夢はとっくになくなっていたため、怒りよりも笑いが勝ち、友達に話して聞かせるまでになりました。

3-2.あこがれる!キャンパスライフ

〈パティの家〉での共同生活

『赤毛のアン』ではグリーン・ゲイブルス、『アンの青春』では山彦荘。

アンシリーズには、作品ごとに、鍵となる家が魅力的に描かれています。

今作で出てくるのは〈パティの家〉。ミス・パティという老婦人が持つ白い木造のかわいい家です。

この家で、アンとルームメイトたちは共同生活を送るのですが、その充実っぷりにとっても憧れます。

勉学に励み、優秀な成績をおさめる。

学生たちの社交場となり、にぎやかな日々を送る。

恋人もでき、ときどき散歩にも出かける。

なんてキラキラした学生生活でしょうか。

比べたくないですが、私の学生時代は、はるかにブラックで、孤独でしたよ。

なんだか切なくなってしまいますね。

フィリパという、異色の存在

今回新しく登場する人物の一人に、フィリパという友人がいます。

アンとはレドモンド大学で知り合い、後に〈パティの家〉でのルームメイトの一人となります。

このフィリパ、今まで登場してきた、真面目で純真なアンの友人たちとは、違っています。

美人で社交好きで毎日パーティー、男友だちも多く、崇拝者に競わせるのを楽しむタイプ。

しかしながら、その天真爛漫さに、周りは惹きつけられていく。

その社交的な性格とは裏腹に、数学の成績は学年トップというギャップもあります。

大学生活において成長し、金持ちでも容姿端麗でもない牧師の男性を愛するようになります。

ジョナスは実にみっともない青年です。-実際、こんなみっともない青年は今まで見たこともありません。

中略
どういうわけか、ジョナスにはあたし、軽薄だと思われたくないのよ、アン。おかしいわね。
ジョナスという名の麻色の髪をした、これまで見たこともない人物があたしのことをどう思うかなんて、どうしてあたしは気にするのかしら?

中略

ジョナスはお説教をしました。
お説教を始めて十分もしたころには、あたしはあまりにも自分が小さな、下らぬものに感じられ、肉眼では見えないにちがいないと思ったの。

出典:モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

この描写から、フィリパが外見の美しさよりも、精神の美しさに価値があることを見出していることがわかります。

軽薄なフィリパも好きだったけど、こうして人は成長していくのだな、と感慨深くなります。

のちにフィリパは、ジョナスとの愛を実らせ結婚します。

3-3.ルビー・ギリスの死

今作で印象的なエピソードは、アンの幼友達、ルビー・ギリスの死。

『赤毛のアン』から、ちょいちょい出てくる、金髪で美人のクラスメイト、ルビー・ギリスは、不治の肺病に侵され、亡くなってしまいます。

ルビー・ギリスってどんな人?

ルビー・ギリスは、今作『アンの愛情』でスポットが当たりますが、『赤毛のアン』『アンの青春』ではいじわるなジョシー・パイと並んで出てくるわき役、という印象です。

ヒステリー気味で感情的になりやすいが、実は、クイーン学院卒業後、教師になるしっかりした面もある。

金髪で色白で血色の良い美人。クイーン学院時代は学年で一番の美人とされました。

ルビーはたいへん美しい女性になり、自分でもすっかり大人になったつもりだった。

スカートも母が許す限り長くし、髪も都会ふうに結った。(中略)

青い大きな目はきらきら輝き、つやのある皮膚で、ぱっと人目をひくふっくらとした姿をしていた。よく笑い、快活で気のいい娘だった。

出典:モンゴメリ『赤毛のアン』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

ルビー・ギリスでもう一つ印象的なのは、男性の目を非常に気にする、ということ。

作中にも、ルビー・ギリスと男性の話はたくさん出てきます。

  • 容姿にこだわりがあり、アンのそばかすをうわさする(『赤毛のアン』)
  • 恋のうわさが好き。ダイアナに「十五になったらすぐに恋人をもつ」と言う。(『赤毛のアン』)
  • アンは「ルビー・ギリスって、若い男の人たちのことばっかり考えているのよ。」とマリラに話す。(『赤毛のアン』)
  • アヴォンリー時代はギルバートとよく一緒に歩き、うわさになっていた。

『アンと青春』でのアンとダイアナの会話でも、その一面がうかがえます。

「あたし、こんなことを言うのはいやだけれど・・・でも・・・いまのところ、あんまりルビーを好きじゃないの。(中略)ルビーはすっかり、なんて言ったらいいのかしら、変わってしまったようだわ」

「そうなのよ。(中略)ギリス家の娘はみんな、そうだ、話すことと言えば、男の子がどうしたの、だれが自分に夢中になっているの、ってことばかりだって。また不思議なことに、そのとおりみんな、ルビーに夢中になっているのね」

出典:モンゴメリ『アンの青春』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

どうやらルビー・ギリスは男性にはモテるけど、同性には嫌われるタイプの女性だったようです。

死から逃れようとするルビー・ギリス

『アンの愛情』で、レドモンドから帰省したアンは、久しぶりに見るルビー・ギリスの様子に驚愕します。

非常にやせており、頬の色は病的に紅潮していたルビー・ギリス。

不治の肺病にかかり、先は長くないといううわさでした。

ルビーは死期を悟っていながら、受け入れることができずに元気にふるまっていました。

一瞬、二人の目があった時、ルビーのこの元気さの背後に、アンは心にずきりと痛みを覚えるものをみとめた。

「ちょいちょいきてね、アン?」ルビーは囁いた。「一人できてねーあたしにはあんたが必要なのよ」

「あんた、どこもわるくないの、ルビー?」

「あたしが?まあ、あたし、完全な健康体よ。(中略)」

モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

着実に近づきつつある死を、受け入れられないルビーの様子が痛々しく伝わってきます。

その後もどんどん青ざめていく姿とは裏腹に、恋人たちのことを陽気におしゃべりしたがるルビー。

アンはルビーの姿をつらく、不気味にすら思いながら、訪問を続けます。

死に直面したルビーと、アンの会話

ルビーが死を迎える前の晩、とうとうルビーはアンに気持ちを吐き出すのです。

その場面が心を揺さぶりました。

ルビーは手を差しのべ、懇願するかのように、衝動的にアンの手を摑んだー「あたし、死にたくないの。死ぬのが怖いの」

「どうして恐れなければならないの、ルビー?」アンは静かにたずねた。

(中略)

アンはいたたまれぬほどの苦痛をおぼえながらすわっていた。

気休めの嘘は言う気になれなかったし、ルビーの言ったことはすべて恐ろしいほど真実だった。

(中略)

「あたしは生きたいの」ルビーは震える声で言った。

「あたしもほかのひとたちと同じように生きていたいの。あたしは、あたしは、結婚したいのよ、アンーそしてーそしてー子供を生みたいのよ。(中略)」

モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

もし私が、アンのように死期が近い友人を前にしたなら、どのような言葉が出てくるだろうか。

きっと、何を言われても、何にも言えないと思います。

かたや死期が迫っている者と、かたやそうでない者。ましてや20歳前という年齢で、共感など難しいというのが、現実ではないでしょうか。

「結婚し、子供を生む」という、若い女性なら当然持つ希望を、絶たれてしまうということ。

この晩のアンとルビーのやりとりから、私はルビーの人間としての根源的な欲求と、それが叶わぬ恐れを感じ、強く惹かれました。

ルビーはこの夜、アンに気持ちを吐き出すことができて、楽になりました。

アンはこのとき、確かにルビーの心を救ったのだと思います。

アンはこの夜を境に、自分の内面に変化を感じました。以下のように描かれています。

そのときどき、その場その場では美しく、すぐれたものであっても一生の目標とする値打ちのない、小さなことに生涯を賭けるべきではない。

最高のものを求め、それに従わなくてはならない。

天上の生活はこの地上から始めねばならぬ。

モンゴメリ『アンの愛情』(村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

私は、キリスト教における天国や来世の概念をよく知りません。

けれど、この感覚。

私たちが日常で左右される、感情や、悩み。

これらは大きな視点から見たら、些細なことに過ぎない。

私自身が乳がんの診断をされて、初めにまざまざと死を意識したとき、共通するものを感じました。

時代を問わず、人は死を目の当たりにするとき、それまでの悩みのちっぽけさに気づくのかもしれない。

そんなことを思いました。

3-4.感情移入できない?アンが完璧すぎて遠い存在に

実は、『アンの愛情』ですが、私はアンシリーズの中で、最も読んだ回数が少ないです。

これは、今作に、あまり共感できるところがなかったからですね。

『赤毛のアン』『アンの青春』で、あれほど事件を巻き起こしてきたアン。

今作では、真面目で美しい女性に成長していて、ほとんどやらかしません

そのあたりが、ちょっと物足りないなぁと感じました。

その分、恋愛面での甘酸っぱく、恥ずかしいエピソードは盛りだくさんです。

恋愛をメインのテーマとした作品が好きな方にはたまらないと思います。

私自身は、アンが結婚してからのストーリーのほうが好きです。

特に『アンの夢の家』は、カバーがすり切れるほど読んでいます。

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4.他出版社の『アンの愛情』リスト

上段左から『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』『アンの友達』『アンの幸福』
下段左から『アンの夢の家』『炉辺荘のアン』『アンをめぐる人々』『虹の谷のアン』『アンの娘リラ』
いずれもモンゴメリ著、村岡花子訳、新潮社、2008年

今回の記事は、村岡花子翻訳の新潮文庫『アンの愛情』(2008年、完訳版)をもとに書いています。

『アンの愛情』はアン・シリーズ3作目ということもあり、『赤毛のアン』ほどたくさんの出版社が出しているわけではありませんが、それでも2018年7月現在、新潮社以外で5社から出版されています。

それぞれの特徴ごとに紹介します。

文庫

講談社文庫

講談社文庫は、掛川恭子による完訳版。

『アンの愛情 (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 3)』モンゴメリ、掛川恭子訳、2005年

集英社文庫

集英社文庫からは、松本侑子による完訳版。注釈が巻末に付いていて、引用文の出典元なども詳しく解説。

『アンの愛情 (集英社文庫 モ 8-3)』モンゴメリ、松本侑子訳、2008年

角川文庫

角川文庫からは、村岡花子と同時代の翻訳家、中村佐喜子訳。Kindle版あり。

アンの愛情 (角川文庫)モンゴメリ、中村佐喜子訳、2015年

ハードカバー

講談社からの完訳版は、ハードカバーの児童向けでも出版されている。

銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。

『アンの愛情 (完訳 赤毛のアンシリーズ 3)』モンゴメリ、掛川恭子訳、1990年

児童文庫

講談社青い鳥文庫

講談社の児童文庫、青い鳥文庫からは、HACCANによるイラストがかわいらしい『アンの愛情』が出版されている。

こちらは村岡花子訳で、完訳ではないが、すべての章が入っている。

『アンの愛情 赤毛のアン(3) (講談社青い鳥文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2011年

集英社みらい文庫

集英社の児童文庫、集英社みらい文庫『アンの愛情』は、大人気マンガ家の羽海野チカによる描き下ろしの表紙が特徴。

数々の少女文学の翻訳を手掛ける木村由利子による新訳。講談社青い鳥文庫よりも、省略されている部分が多い。

『新訳 アンの愛情 (集英社みらい文庫)』モンゴメリ、木村由利子訳、2013年

ポプラポケット文庫

ポプラ社の児童文庫、ポプラポケット文庫からは、村岡花子訳『アンの愛情』が出版されている。

表紙のイラストは、透明感ある水彩画で多くのファンがいる内田新哉。

『アンの愛情―シリーズ・赤毛のアン〈3〉 (ポプラポケット文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2008年

偕成社文庫

偕成社文庫は、児童文庫ながら完訳版の『アンの愛情』が読める。

茅野美ど里訳は、とても読みやすく美しい日本語なので、大人にもおすすめ。

『アンの愛情 完訳版〈上〉 (偕成社文庫)』『アンの愛情 完訳版〈下〉 (偕成社文庫)』モンゴメリ、茅野美ど里訳、1992年

まとめ

『アンの愛情』みどころまとめ。

  1. アンとギルバートの恋の行方
  2. あこがれる!キャンパスライフ
  3. 幼友達ルビー・ギリスの死
  4. 完璧すぎるアン

『アンの愛情』は、ももちんには、少し感情移入しにくい作品でした。

しかしながら、家族や友人たちの暮らすアヴォンリーへ里帰りする場面は懐かしかったです。

アンが自分の生家を訪ね、アンのルーツもさらに掘り起こされていきます。

アンが大人になってからが描かれる初めの作品、ぜひ読んでみてくださいね。

アンとギルバートのこの後の関係が気になるなら、こちらの記事をどうぞ。

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