小説『若草物語』は、アメリカの女流作家ルイザ・メイ・オルコットの自伝的な作品。
世界で最も愛される四人姉妹の一年間の成長物語。
今回は、吉田勝江翻訳『若草物語 (角川文庫)』をもとに、あらすじとみどころをお伝えするよ。
この記事で紹介する本
翻訳別比較
小説『若草物語』34作品比較。文庫や児童文庫、電子書籍の特徴まとめ
『若草物語』は、アメリカの女流作家ルイーザ・メイ・オルコットが生んだ名作。 現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。 映画やアニメの『若草物語』は別記事でまとめています。→→ ...
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この記事でわかること
- 小説『若草物語』あらすじとみどころ
- 4人姉妹ひとりひとりのエピソード
- 映画『ストーリー・オブ・マイライフわたしの若草物語』
小説『若草物語』とは?
『若草物語』(原題”Little Women”)は、アメリカの女流作家ルイザ・メイ・オルコットが1868年に発表した小説。
初版本の挿絵を手がけたのは妹のメイ・オルコット。
シリーズは『若草物語』、『続 若草物語』(原題”Little Women Married, or Good Wives”)、『第三若草物語』(原題”Little Men”)、『第四若草物語』(原題”Jo's Boys”)の全4作で、『若草物語』は第1作目にあたる。(邦題は角川文庫より)
日本では1906年、北田秋圃の翻訳で『小婦人』と題され発表された。
現在では定番のタイトルとなっている『若草物語』は、1933年アメリカ制作の映画の邦題以降使われるようになった。
参考:Wikipedia、『若草物語』オルコット 麻生九美:訳/光文社古典新訳文庫
シリーズ紹介(邦題は角川文庫より)
- 『若草物語』:マーチ家の四姉妹の10代を描く。長女メグ16歳、次女ジョー15歳、三女ベス13歳、四女エイミー12歳。(この記事)
- 『続 若草物語』:第一作に続く、マーチ家の四姉妹の物語。メグの結婚、ジョーの仕事とベア教授との出会い、ベスの死、エイミーとローリーの婚約などが描かれる。感想記事はこちら
- 『第三 若草物語』:ジョーとベア教授がプラムフィールドに開いた学校の少年たちの生活が描かれる。感想記事はこちら。
- 『第四 若草物語』:前作から十年。少年たちは青年になり、プラムフィールドは大学になっている。感想記事はこちら。
この記事では第一作目の『若草物語』を紹介するよ。
ルイザ・メイ・オルコット(作)
アメリカの小説家。1832年生まれ。
父親は進歩的な思想を持つ牧師・教育者で、学校経営にも携わった。
4姉妹の次女ルイザは、母親や家計を助けるために十代から執筆を仕事とするようになる。
1868年、自伝的小説『若草物語』を発表し、ベストセラーとなる。
1888年、55歳で死去。
吉田勝江(翻訳)
翻訳家。1904−1996。
1939年、オルコット作”An Old-Fashioned Girl”を訳し『ポリー:昔気質の一少女』と題し岩波書店より刊行。
1950〜1963年、『若草物語』全4部を訳し、角川文庫より刊行した。
この他、バーネット作『少公女』『秘密の花園』など、多くの少女文学の翻訳を手がけた。
参考:国立国会図書館オンライン
登場人物
マーチ家
マーガレット(メグ):マーチ家の長女。16歳。おしとやかでしっかり者の美人。服装などで見栄をはるところがある。
ジョゼフィン(ジョー):マーチ家の次女。15歳。勝ち気で独立心が強い。作家になるのが夢。
エリザベス(ベス):マーチ家の三女。13歳。恥ずかしがりやで大人しい。ピアノを弾くのが好き。
エイミー:マーチ家の末娘。12歳。かわいらしいが、気取り屋でわがまま。絵が得意。
マーチ夫人:四姉妹の母親。夫の不在を守り、娘たちを優しく賢く導く。
マーチ氏:四姉妹の父親。牧師として戦地へ行っている。
ハンナ:マーチ家の家政婦。
マーチ伯母:お金持ちで気難しい。大きな屋敷に一人で暮らす。
お隣さん
ローレンスさん:マーチ家の隣の大きなお屋敷に住む老人。
セオドア・ローレンス(ローリー):ローレンスさんの孫。四姉妹と仲良くなる。
ジョン・ブルック:ローリーの家庭教師。メグに恋心を抱く。
フンメルさん:マーチ家の近くに住む貧しい一家。マーチ家からたびたび施しを受ける。
あらすじ
一言あらすじ
南北戦争中のアメリカで暮らす、マーチ家の一年間の物語。
マーチ家では父が戦地へおもむき不在のなか、優しい母と四人姉妹(メグ・ジョー・ベス・エイミー)は手を取り合ってつつましく暮らす。
お隣に住む裕福な老人ローレンスさん・少年ローリーともあたたかい交流を育む。
父が娘たちを呼ぶように、立派な「小婦人(リトル・ウィメン)」になるべく、姉妹はときに失敗しながらも奮闘し、成長していく。
このあとは詳しいあらすじ。(ネタバレあり)
感想から読みたいならこちら(後ろへとびます)→→本を読んだ感想
1.マーチ家の四姉妹の紹介
南北戦争で父が不在のマーチ家。
明日はクリスマスだというのに、お金がなくて満足なお祝いができない。
ひとりひとりの容姿や性格が描写されている。
母は娘たちに戦地の父親からの手紙を読み聞かせ、四姉妹も立派なレディとして生きていく決意をする。
2.クリスマスの朝
クリスマスの朝、マーチ家は貧しい一家フンメルさんにクリスマスの朝食をほどこしに行く。
夕方、お隣のローレンスさんから、クリスマスのごちそうが届く。
四姉妹はローレンスさんと孫のローリー少年に興味を抱く。
3.メグとジョーのダンスパーティー
メグとジョーはダンスパーティに呼ばれる。
華やかなことが好きなメグは喜ぶが、ジョーは乗り気ではない。
パーティー中ジョーがカーテンの裏に隠れると、ローリー少年と出くわす。
ジョーとローリー少年はすぐに打ち解け、少年同士のような友情で一緒に踊る。
4.ジョーのローレンス家訪問
休日のある日、ジョーは大きいお屋敷の窓からローリーが寂しそうにしているのが目に入る。
ジョーはお見舞いに初めてローレンス家のお屋敷に入る。
ジョーはローリーの祖父ローレンスさんとも仲良くなり、ローレンス家とマーチ家の交流が始まる。
5.ベスのピアノ
ピアノを弾くのが好きなベスは、家にある古ぼけたピアノを毎日弾いている。
ローレンスさんがお屋敷のピアノを弾きに来てほしいとほのめかし、ベスは誰もいないときにこっそり入り、ピアノを弾くことが何よりの楽しみになる。
ある日、ベスはローレンスさんに手作りの部屋履きをプレゼントする。
ローレンスさんはベスに亡くなった孫娘がかつて弾いていたピアノをプレゼントする。
それ以来、ローレンスさんとベスは見えない絆で深く結ばれる。
6.エイミーの屈辱
エイミーは学校で禁止されている塩漬けのライムを持っていく。
みんな持ってきているがその日は運が悪くエイミーが見つかり、先生に手をムチで打たれる。
母や姉たちはエイミーが体罰を受けたことに怒り、学校をやめさせる。
以来、エイミーは家で勉強するようになる。
7.ジョーとエイミーの喧嘩
メグとジョーが誘われたオペラ鑑賞に、エイミーは連れて行ってもらえないことに腹を立てる。
帰宅後ジョーは自分が大切に書いた原稿をエイミーが燃やしたことを発見し、憤慨する。
翌日、ジョーとローリーのスケートにエイミーがついてくる。
ジョーはまだ許していないので無視していると、エイミーの足元の氷が割れ、池の中に落ちる。
ローリーのすばやい機転によりエイミーは助けられるが、ジョーは自分がエイミーを死なせかけたと猛反省する。
これ以降、ジョーは自分のかんしゃくを抑えるように、人生をかけて努力する。
8.メグの虚栄心
メグが裕福な友人の家に数週間滞在することになる。
メグはパーティーの場で婦人たちの自分についてのうわさ話(ローリーを狙っていると)を耳にし、屈辱に感じる。
パーティーの着るドレスが質素な一着しかないメグは、友人にすすめられるまま肌が出る大人っぽいドレスを着せられる。
ローリーの冷ややかな反応を見たメグは、こんなに着飾った自分が馬鹿げていることを感じる。
メグが大人の世界へ一歩踏み込んだ体験だった。
9.それぞれの空中楼閣
中盤の4つの章では、春から夏にかけての四姉妹とローリーとの交流と成長が描かれる。
- 四姉妹がメンバーの秘密結社にローリーが入会
- 四姉妹が家の仕事を一切しない実験をし、「仕事」の大切さを痛感する
- ローリーのイギリスの友人たちとのピクニック
- 四姉妹がそれぞれの仕事に精をだしながら、将来の夢について語り合う
それぞれに有意義な夏を過ごし秋に向かっていく。
10.ジョーの価値観
ジョーが家族に内緒で原稿を出版社に持ちこむところをローリーに見られる。
ローリーは交換の秘密として、ローリーの家庭教師のジョン・ブルックがメグを好きであることを教える。
ジョーはメグが大人になってはなれていってしまうことを思い、悲しくなる。
持ち込んだ小説は新聞に掲載され家族は喜び、ジョーは自立への一歩を踏み出した希望に燃える。
11.電報と母の出発
戦地の父が危篤との電報が入り、マーチ家は心配につつまれる。
マーチ夫人はジョン・ブルックにつきそわれ、明朝発つことになり、家族みんながあわてて準備をする。
ジョーは自慢の髪をばっさり切り落とした姿で帰宅し、髪を売ったお金を旅費として母に渡す。
12.ベスの猩紅熱
後日父は無事であることがわかり、メグ、ジョー、エイミーが気を抜くなか、ベスはこつこつ自分の仕事を続ける。
ベスはフンメル一家の世話をしに通い、亡くなった赤ちゃんの猩紅熱がうつる。
ジョーは激しく後悔し、つきっきりでベスを看病する。
猩紅熱に免疫のないエイミーはマーチ伯母のところへ預けられる。
13.母の帰宅
ベスは猩紅熱の山場を乗り越える。
ローレンスさんとローリーはマーチ夫人に電報をうち、マーチ夫人が帰宅する。
エイミーはマーチ伯母との生活のなかで、信仰と自分の行いを見直す。
14.マーチ氏の帰宅とメグの婚約
続く数週間は穏やかに流れる。
マーチ夫人はジョン・ブルックの誠実さを認め、ジョン・ブルックとメグは親交を深める。
クリスマスに思いがけず父が帰宅し、マーチ家は幸福につつまれる。
ジョン・ブルックとメグは婚約する。
『若草物語』を読んだきっかけ
【公開延期のお知らせ】
3月27日(金)に劇場公開を予定しておりました『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の公開を、初夏に延期いたします。
詳細につきましては、本作のオフィシャルサイトをご確認ください。https://t.co/zBRQo2Fzb8
— ソニー・ピクチャーズ映画部公式 (@SPEeiga) March 3, 2020
ももちんは小さいころ、『若草物語』のアニメ絵本を見たことがあったけど、小説もアニメも見たことはなかった。
10代のころ、映画『若草物語』が公開され、ビデオで見た記憶がある。
ちょうど四姉妹と同じ年頃だったので、感情移入して観たなぁ。
いつか小説を読みたいなぁと思っていたら、2020年に新しい映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』が公開されることを聞いた。
良い機会なので、原作小説、映画をしっかり味わいたいと思い、読んでみました。
映画観てきました。
映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想と魅力
映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』観てきました。 古典なのに現代的な風を感じる爽やかな映画。 現実を「自らの意志で」選択していく四姉妹に、強さと軽やかさを感じました。 この記事でわ ...
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『若草物語』を読んだ感想
『若草物語』は、古典ならではの「安心感」の中で世代問わず泣き笑い感動できる名作。
オルコットが少女の読者向けに書いた物語に、すっかり大人のももちんも読みながら怒ったり泣いたりした。
宗教や教訓的な内容が盛りだくさんだけど「くどい」とは思わなかった。
貧乏や病気といった困難の中で希望を失わずに一歩ずつ進んでいく人たちの姿は、いつの時代も変わらず人の心を動かす。
読みながら自分の今の生活を振り返り、また人間同士の血のかよった交流に心があたたまりました。
『若草物語』ポイント
あこがれの四姉妹
『若草物語』の魅力は読む前から始まっている。
『若草物語』というさわやかな邦題と「十代の四姉妹が主人公」というだけで、めっちゃひきつけられる。
四姉妹と聞いただけで楽しそうだし、はなやかに笑い合う声が聞こえてきそうです。
いざ読み始めると、姉妹ひとりひとり個性が立っていておどろくほど魅力的。
だれもがかならず自分に似たキャラクターを見つけて、「やっぱりジョーが好き」「エイミーはきらい」みたいな話で盛りあがりそう。
長女・メグ
16歳の長女メグは美人でおしとやか。
家庭教師の仕事で家計を支えながら、妹たちにも注意をしたりする。
本を読む前までは「何事もそつなくこなし結婚する、良い子すぎるキャラ」と思っていたけど、違った。
メグは「はなやかな世界」に憧れがあって、物語の中でも見栄をはって失敗することがあるんだよね。
今作では、姉妹で唯一「恋愛」を通して大切なものを見つめていく。
次女・ジョー
15歳の次女ジョーはオルコット自身をモデルにしていることもあり、一番目立つ存在。
言葉遣いもやんちゃでおてんばだけど、家族への愛や責任感は人一倍強い。
反面、怒りをコントロールできずにエイミーにビンタする一面も。
作家として自立し家族を助けることを夢見て、ひたすらに努力する。
三女・ベス
13歳の三女ベスは恥ずかしがりや。正反対の性格のジョーと仲よし。
学校へは行かず、家で勉強と家事をしながら小さな世界を大切に育んでいる。
音楽の勉強をしたいという望みがあったが、ローレンスさんから立派なピアノをもらって以来、今の生活以上に望むものがなくなる。
なかなか気づいてもらいにくいベスの「天使のような美徳」は、猩紅熱にかかることでみんなが思い知ることになる。
四女・エイミー
12歳の末娘のエイミーは家族みんなから可愛がられ、ちょっとわがまま。
読者になんとなく「ちょっと気に食わない」と思わせるところが、エイミーの個性。
3人の姉が家族への思いやりを表す一方、エイミーは自分大好き。
多少甘えたこと言ってもゆるされ、本人もそれが当然と思っているところが、なんかね。。。
物語ではうぬぼれやわがままで失敗しながら、だんだん「他人のことも考える」ように変わっていく。
絵を描くことが好きで画家になるのが夢。
ももちんは「ベス」が好き。
ひかえめで小さな世界を大切にするところに共感します。
理想のお母さん
個性豊かな四姉妹の良き道標となるのが、母親のマーチ夫人。
娘たち一人ひとりの性格をよく見極めて良き相談相手になり、深い愛を注ぎ続ける。
優しく賢く、四姉妹にとっても読者にとっても理想のお母さん。
こんなすてきなお母さん、物語の中にしかいないでしょ。。と思ったけど、マーチ夫人はオルコットの母親をモデルにしている。
恩地三保子訳『若草物語』巻末の解説で次のような記述がある。
ミセス・マーチは、ほとんどルイザの母そのままなのだが、彼女自身は「本当のおかあさまの半分も良く書けていない」と言っていたという。
引用元:『若草物語』オールコット著、恩地三保子訳、グーテンベルク21、2012年
ルイザがどれだけお母さんを愛し尊敬していたかが伝わってくる。
優しく頼りになる理想のお母さんといえば、ドラマ『大草原の小さな家』にも通じるものがある。
参考:『若草物語』オールコット著、恩地三保子訳、グーテンベルク21、2012年
失敗させて育てる
マーチ夫人はとても優しいお母さんだけど、娘たちを甘やかしてるわけではない。
父親が「リトル・ウィメン(小さなレディたち)」と読んだように、マーチ夫人も娘たちを一人の人間として尊重していた。
だからマーチ夫人の意見を押し付けることはせず、まずは娘たちのやりたいようにやらせてみるんだよね。
その一例が、夏休みに「遊んで休むだけの一週間」を体験させるエピソード。
娘たちが遊びたいだけ遊んで「家の仕事を一切やらずにいるとどういう気持ちになるか?」を実感したら、今度はお母さんと使用人のハンナが休み、娘たちにすべてやってもらう。
娘たちはてんやわんやになりながら、自分たちの力量のなさとお母さんやハンナのありがたみを思い知るんだよね。
そして体験から学んだ教訓と、これからどうしていくのが良いのかを話し合うところまできっちりやる。
このプロセスを繰り返していれば、そりゃ娘たちは道からそれることはないよな、と感心した。
お母さんによっぽど忍耐と余裕がないと、こんな育て方できないよね。
自分も過去はかんしゃく持ち
どこからみても完璧な母親に見えるマーチ夫人。
実は、若い頃はジョーのような激しい気性の持ち主でもあった。
エイミーが池に落ちたことでジョーが激しく後悔していると、マーチ夫人は自分の過去をそっと打ち明ける。
お母さまはそれを直すのに四十年かかりましたよ。それでもまだやっとそれをおさえられるようになっただけです。
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
ええ。。四十年かけて自分の気性に向き合うお母さん、すごすぎる・・・!
その努力が今のお母さんとして実を結んでいるのもわかるから、説得力めっちゃある。
自分のかんしゃくを一生直せっこないと思い込んでいたジョーは、お母さんのこの言葉にどれだけ勇気づけられただろう。
気の遠くなるような努力と忍耐が待っているとしても、人生をかけてジョーは自分のかんしゃくを改めようと強く決意する。
母親が娘に弱いところを見せるってなかなかできない。
魂の癖を制御することの正しさと大変さを両方伝えるのもすごい。
ジョーはお母さんが自分を信頼してくれていることを感じたんだね。
盛り込まれる教訓
マーチ夫人と四姉妹のやりとりを見てもわかるように、『若草物語』は宗教や教訓的な内容がたくさん盛り込まれてるんだよね。
『若草物語 (21世紀版・少年少女世界文学館 第9巻)』巻末の随筆で、佐野洋子氏が「説教くさい」とばっさり切っていた(笑)けど、それもうなずける。
マーチ家みたいに絵に描いたような美徳と絆の家庭、現代日本では絶滅したんじゃない?とも思うしね。
だけどももちんは不思議とこの「教訓のオンパレード」に胸焼けしなかった。
それは、時代背景や文化は違っても、起こりうる困難や心の葛藤ってだいたい共通しているから。
若草物語で描かれる「お金」「病気」「人間関係」「進路」は、いつの時代も悩みの種になりえる。
「それらの困難をどういう心持ちでクリアしていくのか?」を、四姉妹の体験を通して知ることができるのはおもしろいし、学びにもなった。
ここからは、ももちんが『若草物語』で響いた「教訓」を紹介するよ。
巡礼(ピルグリム)ごっこ
『若草物語』では、全編を通して四姉妹が「巡礼(ピルグリム)ごっこ」という試みをする。
もともと「巡礼(ピルグリム)ごっこ」は、姉妹が幼いころに『天路歴程』という物語のまねっこをする遊びのことだった。
「クリスチャン」という名の主人公が、大きな荷物を背負い旅に出る。
さまざまな困難をくぐりぬけて「天の都」にたどりつき、荷物を下ろす。という内容。
「小さなレディ」になった現在では、四姉妹は日常生活を通して真剣に「巡礼ごっこ」に取り組む。
「困難」とは外側にあるものではなく、心の中で起こる葛藤や怠惰、誘惑に負けること。
『若草物語』でも、四姉妹が誘惑に負けずいい子になろうとする態度そのものを「巡礼の旅」にたとえているんだよね。
ひとりひとりが自分の「お荷物」(欠点、パターン、考え癖)を見極めて、改めようと一歩ずつ歩む。
メグは「見かけばかり気にして働くのを嫌がること」
ジョーは「らんぼうなふるまいをしたり、外にばかり出たがること」
ベスは「人をうらやましがったり、こわがること」
エイミーは「わがままで利己主義なこと」
自分で自分のことをよくわかっているんだね。
誰もが当たり前に持っているような「お荷物」でも、当たり前にしないでおろそうという努力、見習いたい。
『天路歴程』とは?
『天路歴程』(原題”The Pilgrim's Progress”)は、イギリスの教職者ジョン・バニヤンが1678年に書いたキリスト教の物語。
聖書に次いで読まれる宗教書とも言われ、『若草物語』ほか、『赤毛のアン』でも引用が登場する。
『若草物語』では、「滅びの都」「虚栄の市」「絶望の沼」「天の都」など、『天路歴程』にちなんだ言葉がよく登場する。
参考:Wikipedia
もともとの『天路歴程』は「正篇」と「続篇」の2冊構成。
現在日本では、1冊にまとめた書籍や子ども向け、コミカライズ版なども刊行されているよ。
読みやすい1冊
「うぬぼれ」の失敗
『若草物語』では「うぬぼれたり見栄をはることは失敗につながる」ことをたびたび描いている。
メグの虚栄心
はなやかなことに憧れるメグは、お金持ちのパーティーで大人のように着飾った結果、ローリーに「飾り立てるのはきらい」と言われ、我に返る。
また、上流社会の婦人がたに陰口を言われショックを受けると同時に、今までいかに健全で恵まれた環境で育ってきたかということも思い知る。
「見かけだけの無意味さ」を身をもって体験したメグは、結果的に「貧乏でも愛し愛される幸せな結婚」を選ぶことになるんだよね。
エイミーのうぬぼれ
エイミーは、学校で人気のライムの塩漬けを大量に持っていたのを告げ口され、ムチで打たれる。
マーチ夫人はエイミーが体罰を受けたことには動揺したが、先生の言いつけを守らなかったことにはピシャリと注意する。
それに対するエイミーのセリフがイラッときた。
じゃ、お母さまは私がみんなの前ではずかしめられたのがおうれしいの?
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
いやいや、お母さまがうれしいわけないだろうが。。。
エイミーさん、甘えてんじゃないよ。。。
「自分は被害者だ」としか思っていなかったエイミーは、味方だと思っていたお母さまから注意されたのでいじけたんだよね。
マーチ夫人は、エイミーの「うぬぼれ」がこの悲劇の原因の一つだったことをよくわかっていた。
どれだけ良いものをもっていても、自慢したり張り合ったりすれば魅力は半減し、満足してひかえめにしていればかえって人を引きつけるということを言って聞かせる。
物質的な豊かさにひかれやすいエイミーが痛い目を見ることで「ひかえめであること」の価値を学ぶ初めての体験だった。
体罰を良しとしないマーチ夫人はこの一件でエイミーを退学させる。
内心では学校や先生を許さなかったけれど、それとエイミーの間違いをきっちり分けてさとすところにマーチ夫人の聡明さを感じる。
「仕事をもつこと」の大切さ
『若草物語』では、報酬のあるなしにかかわらずなにかしら「仕事」をすることの大切さを説いている。
そもそもの設定として、メグとジョーは16歳と15歳ながら学校へ行かず外へ出て働いている。
ベスは家にいながら精一杯家事を手伝い、報酬を望まない「働き蜂」と称されている。
また、マーチ夫人は夫の看病のために家をあけるときも、娘たちに仕事を続けるように声をかける。
いつものとおり働くのですよ。仕事は神様からくださる慰めなのですからね。
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
仕事はお金や見返りのためだけにあるのではなく、心を元気に保つためにも大切なこと。
大変な状況のときこそ、心配に飲み込まれずに仕事をすることをマーチ夫人は伝えたんだね。
ももちんは、心配すると手がとまって落ち込んでしまう。
仕事もなまけることが多いからどんどん負のスパイラルになるんだなぁ。
ジョーの作家の夢
物語では、ジョーは作家を夢見て「書くこと」にうちこむ。
ジョーにとって「作家になること」は、「芸術」ではなく「職業」としての夢だった。
ジョーが描いた小説が新聞に掲載されたとき、ジョーはこう言って喜ぶ。
私うれしいわ。だんだんひとり立ちになって、みんなのこともいろいろしてあげられるようになるかもしれないんですもの
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
ジョーは、文筆業できっちり報酬を得て自立し、家族を助けることを目標にしていたんだよね。
一方で画家志望のエイミーは絵を純粋に「芸術」としてとらえ、次作ではヨーロッパで絵を学ぶことになる。
ジョーとエイミーの対比は、次作『続 若草物語』で顕著になっていくよ。
ベスの「犠牲的な値打ち」
そこにいるだけで家族みんなにやすらぎと安心感を与えるのが、三女ベス。
物静かなベスは他の姉妹のように将来に夢というものを持たず、家の中で過ごすのがなによりも幸福。
欲や利己的なところがなく物言わず他人のために尽くす姿は、ローリーにも影響を与える。
ローリーは、ベスがローレンスさんにピアノを弾いてあげている姿になぐさめられる。
そして自分は音楽家の夢を横において、おじいさまのそばにいようと思う。
猩紅熱にかかる
普段から家族にとって「小さな聖者」だったベスは、他の姉妹の気がゆるんでいるときもコツコツと働き、猩紅熱にかかる。
病気になってもなお周りにうつることを心配するベス。
ジョーは思わず自分を責め、つきっきりで看病する。
あんたに行かせて自分は家でくだらないもの書いてたなんて、利己主義なやつ、かかったってあたりまえだわ!
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
辛抱づよく病気とたたかうベスの姿はどんな言葉より説得力をもち、メグやジョー、エイミーに影響を与えた。
ベスがどれだけ他人に捧げて生きてきたのか、それが他の姉妹が望んできた「才能」「美」「冨」以上に尊いものであることに、ここで皆気づかされるんだよね。
ベスは一命をとりとめ、マーチ家は平和を取り戻し、さらに絆が強くなる。
しかしベスはこれ以降体が弱くなり、次作では「病気」「命」と向き合っていくことになる。
心に残るエピソード
『若草物語』で他にも心に残ったエピソードを紹介するね。
ベスのピアノ
お隣の老人ローレンスさんがベスにピアノをプレゼントするエピソードは、とても心があたたまる。
ベスは初めローレンスさんを怖がっていたので、ローレンスさんがなるべく怖くないように、さりげなくふるまうところがほほえましい。
ベスのもとにピアノが届いたとき、我を忘れてローレンスさんの胸に飛びこむ姿に感動する。
年を超えた絆でふたりは結ばれ、ローレンスさんはベスを心から可愛く思う。
物語の最後でも、平和な道を歩むベスを尊敬しそっと手を握るローレンスさんがすてき。
ジョーとエイミーのけんか
物語の中で有名な場面の一つが、ジョーがエイミーに原稿を燃やされ大げんかになるエピソード。
エイミーは謝るけれど当然ジョーは許さない。
謝ったのにつっぱねられたエイミーは開き直って怒り出す。
いや、ジョーが許せないの、当然でしょ?
逆に怒り出すエイミー、なんなの。
あの原稿がジョーにとってどれだけ大事なものだったか、全然わかってないよね。。
ももちんもジョーの側にたって怒りながら読んでた。
そして「反則だ」と思ったのが、翌日エイミーが池に落ちるところ。
エイミーが池に落ちたことで、ジョーが自分の性格を反省して仲直りするんだよね。
エイミーはちゃんと反省したのか?
結局わがままっぷりが許されてしまったみたいで、なんか腑に落ちなかった。
メグとジョン・ブルックの恋愛
四姉妹で初めて恋に落ちるのが、長女メグ。
メグとジョン・ブルックの恋愛は、たった一つ下のジョーにとっては衝撃で受け入れられないものだった。
ふたりの仲を両親が好ましく思っているのを察知したときのジョーのつぶやきがおもしろい。
茶色の目をしたりっぱな青年なんてだいっきらい!
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
ジョーの反対もむなしく、メグとジョン・ブルックは今作の最後で婚約する。
プロポーズを「おことわりする」と豪語していたメグが、最後にあっさりプロポーズを受ける流れもくすっと笑える。
大人のジョン・ブルックはジョーの反対をまったく意に介さず、笑って流すところもすてき。
次作『続 若草物語』は恋愛祭り!
四姉妹の意外な展開に目がはなせない!
現代日本とのギャップ
『若草物語』が発表されたのは1868年。
今からざっと150年以上前なんだよね。
ももちんが読んで、ちょっと違和感を感じるところがあったので紹介するね。
「貧乏」っていうけど・・・
初めにももちんが違和感を感じたのは、物語で何度も出てくる「貧乏」という言葉。
読んでてマーチ家がそんなに「貧乏」には見えなかったんだよね。
なぜって2階建てのそれなりに広い家に住んでいるし、お手伝い(ハンナ)がいるし。
外に出て働いていたり食料や衣類を節約はしていても、ひもじい思いはしていない。
一方、物語に出てくるフンメルさん一家は母子家庭で子だくさんで、見るからに「貧乏」。
19世後半の西部開拓時代を描く『大草原の小さな家』シリーズのインガルス家だって「貧乏」だけどたくましく生きてる。
マーチ家は、昔裕福だった頃と比べたら「貧乏」と感じるのかも知れないけど、実際は「中流家庭」くらいなんだろうなと思った。
友情と恋愛の境界
物語を読んで感じたのが、「ローリー、仲良いとはいえ、四姉妹の中にどこまで入り込むんだ?」という違和感。
『若草物語』では、ローリーと四姉妹は純粋に友人関係。
だけどローリーはパーティーでメグにも会いに来るし、ベスが病気のときはエイミーを慰めるために毎日連れ出す。
同い年のジョーとはもちろんふたりで一緒に出かける。
「友達」と言っていればどれだけ仲良くしてもいいのか?と疑問に思った。
マーチ夫人はうわさする人を「いやしい」と言ったけれど、今の日本なら十分うわさされるレベルのことをローリーと姉妹はしているんだよね。
15、16歳という年齢で、「恋愛」を持ち出さずに4姉妹とこんなに仲良くできる文化が、よくわからなかった。
次作『続 若草物語』では、ローリーと四姉妹に「恋愛」が入り込んで意外な展開になるよ。
「ローリー」という存在
そもそも「ローリー」というキャラクターがすでにファンタジーだな、と思った。
日本では「お金持ちで孤独な美少年(紳士)が隣に住んでる」なんてこと、ないもんね。。
『若草物語』のマーチ家はオルコットの家族をモデルにしているけど、「ローリー」のモデルとなった少年が実在していたわけではなかったみたい。
「ローリー」は、オルコットがふたりの知り合いの少年を適当に掛け合わせてつくった架空のキャラクター。
映画『ストーリーオブマイライフ わたしの若草物語』では、ティモシー・シャラメ(Wikipedia)がローリーを演じる。
もう、ぴったりすぎてなんも言えない。。
参考:『若草物語』オールコット著、恩地三保子訳、グーテンベルク21、2012年
お国のために家族を捧げる
『若草物語』は南北戦争中の物語。
ある日マーチ夫人は、その日出会った老人のことを娘たちに話して聞かせる。
老人は「息子四人が戦地に行き、二人が戦死、一人が捕虜、一人が危篤」と話したが、その様子は愚痴一つこぼさず静かだった。
マーチ夫人は老人の姿に感銘を受け、自分は娘たちがそばにいてくれることがどれだけ恵まれているか思いあたった。
このお話は、戦争を「お国のために捧げる」という美談にしあげていて、なんか違和感だった。
「お国につくすことが名誉」という考えは、ジョン・ブルックが兵隊に行く話をしたときのメグの反応にもあらわれている。
「まあうれしい!」とメグは叫んだ。「若い方はみなさんいらっしゃりたいんですわね。お家に残るお母さまや姉妹にはつらいことですけれど」
引用元:『若草物語』L・M・オルコット著、吉田勝江訳、角川文庫、2008年
このようにところどころで出てくる「お国のために命を捧げるのは名誉」というスタンスが、時代を物語っていると感じた。
『赤毛のアン』シリーズの『アンの娘リラ』でも、第一次世界大戦で若者がいさましく出征していく姿が描かれている。
感想おさらい
オルコットと『若草物語』
『若草物語』は、ルイザ・メイ・オルコットの「自伝的小説」。
自伝とは、自分の人生を振り返り、自分で文章にしたもののこと。
『若草物語』の次女ジョーは、ルイザ・メイ・オルコット自身がモデルと言われている。
ルイザ・メイ・オルコットは実際に四姉妹の次女として生まれ、10代の頃から教師や作家として仕事を持っていたんだよね。
長女アンナは家庭的で早くに結婚し、子を4人もうけた。
三女エリザベスは病気勝ちで、猩紅熱にかかった後22歳で亡くなる。
四女メイは絵が得意で、『若草物語』初版本の挿絵も手がけた。
母アビーは良妻賢母で、深い愛情をもって娘たちと助け合って暮らした。
家族のことがここまで物語に反映されていたんだね。
ただ一人、父の描写だけは現実とはだいぶ違っている。
ルイザの父エイモス・ブロンソン・オルコットは急進的な思想家で、当時としては「非常識」な、黒人にも平等の権利を与えることをとなえた。
その人の好さと理想主義のおかげで、家は常に貧しく厳しい生活だったらしい。
そんな現実の父親のイメージは物語では登場せず、戦地へ行って不在、ということになっているんだね。
四姉妹は、お父さんから実際に「リトル・ウィメン」と呼ばれていたみたい。
ルイザは生涯独身を通し、『若草物語』で大成功を収めた作家業によって家族を支え、父親を看取った2日後に亡くなった。
参考:Wikipedia、『若草物語』オールコット著、恩地三保子訳、グーテンベルク21、2012年
各出版社の『若草物語』
『若草物語』は角川文庫以外にも、たくさんの出版社から出版されているよ。
翻訳者もさまざま、読者の年齢層もさまざま。
映画では今作『若草物語』と次作『続・若草物語』が原作になっていることが多いので、2作目まで読むのもおすすめ。
『若草物語』をシリーズで出しているのは「角川文庫」か「講談社青い鳥文庫」。
次の記事で出版社別・特徴別におすすめの『若草物語』をまとめたので、参考にしてみてね。
小説『若草物語』34作品比較。文庫や児童文庫、電子書籍の特徴まとめ
『若草物語』は、アメリカの女流作家ルイーザ・メイ・オルコットが生んだ名作。 現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。 映画やアニメの『若草物語』は別記事でまとめています。→→ ...
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映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
引用元:映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』公式サイト2020年6月に公開されたのが映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』。
主演のジョーをシアーシャ・ローナン、メグをエマ・ワトソン、ローリーをティモシー・シャラメが演じるという、豪華俳優陣。
アカデミー賞では作品賞、脚色賞、主演女優賞(シアーシャ・ローナン)、助演女優賞(エイミー役フローレンス・ピュー)にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。
監督は『レディ・バード』でシアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメと組んだグレタ・ガーウィグ。
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メイキング本
映画の感想
映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想と魅力
映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』観てきました。 古典なのに現代的な風を感じる爽やかな映画。 現実を「自らの意志で」選択していく四姉妹に、強さと軽やかさを感じました。 この記事でわ ...
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まとめ
小説『若草物語』まとめ。
世界で最も愛される四人姉妹の一年間の成長物語。
次作『続 若草物語』は、こちらの記事をどうぞ。
小説『続 若草物語』あらすじと感想。四姉妹の結婚と運命を描く傑作
小説『続 若草物語』はオルコット『若草物語』の続編。 前作から3年たち、成長した四姉妹は結婚、仕事、命、それぞれの運命に向き合っていく。 『若草物語』といったら今作までは必ず読んでおきたい傑作。 この ...
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『若草物語』記事一覧
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