児童文学 『赤毛のアン』シリーズ

『アンをめぐる人々』待ってました!『赤毛のアン』第二の短編集。

更新日:

モンゴメリ『アンをめぐる人々』村岡花子訳、2008年、新潮文庫

赤毛のアンシリーズの中で、スピンオフ短編集ともいえる二冊が、『アンの友達』と『アンをめぐる人々』。

『アンをめぐる人々』はに収められている短編は、『アンの友達』の選考からもれた短編だというけれど、全然負けてない。

エピソード一つ一つがおもしろいんだ。

今回は『アンをめぐる人々』の中で、お気に入りの短編を紹介するよ。

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背景

『アンをめぐる人々』の原題は”Further chronicles of Avonlea(続・アヴォンリー年代記)”

カナダの女流作家モンゴメリが1920年に出版した、『アンの友達』の続編にあたる短編集。

新潮社文庫では赤毛のアン・シリーズの8作目に入れられているが、もう1冊の『アンの友達』同様、大部分はアンと直接には関係していない。

モンゴメリの初期の短編作品のうち、良作を手直しした上で出版されたのが『アンの友達』であるのに対して、その際には没になった作品を出版社が勝手に出版し、裁判になったのが本作。

モンゴメリはこれを自分の作品に含める事を拒否している。

ルーシー・モード・モンゴメリ、村岡花子について詳しくは、次の記事をどうぞ。

ルーシー・モード・モンゴメリの略歴

村岡花子の生涯・作品についてはこちら。

内容

エピソード名 あらすじ
シンシア叔母さんのペルシャ猫 スーは資産家のシンシア叔母さんから預かった愛猫が行方不明になり、不興を買わないために度々求婚してくるマックスに助けを求める。
偶然の一致 恋人を持った事もない女性だと思われたくないシャーロットは、つい架空のロマンスを話してしまうが、創作した恋人と同名の男性が現れ、大慌てする。
父の娘 レイチェルは結婚式に別居中の父を招待すると主張して、母と対立する。
ジェーンの母性愛 反目し合っていた姉妹は、死んだ従兄弟のジェーンが残した赤ちゃんをどちらが養育するかを巡り、鋭く対立する。
夢の子供 デイビットの愛妻ジョセフィンは、赤ちゃんが死んだショックから立ち直れず、坊やの呼ぶ声が聞こえると言って海辺をさまよう日が続く。
失敗した男 モンロー家が集まった際、唯一うだつの上がらない長兄ロバートは見下げられ、身の置き場が無いと感じる。人生における真の成功とは何かを問う作品。
へスターの幽霊 ヘスターは臨終の床で妹のマーガレットに目下のヒュー・プレアと結婚し、家名を傷つける事のないようにと約束させる。
茶色の手帳 私(アン)が語る物語。私とダイアナは年配のミス・エミリーと知り合いになるが、あまり好きにはなれない。隣家のマレーさんは彼女はとても美人だったと言うけれど。ある日エミリーは亡くなり、アンの家に遺贈されたトランクが運び込まれる。中には思いが綴られた茶色の手帳が入っていた。
セーラの行く道 セーラはかつて求婚したライジ・バクスターの兄弟であるピーターが投資に失敗し、商会を破産させたため、ライジにも疑いの目が向けられている事に憤慨する。
ひとり息子 サイラは溺愛する息子のチェスターを、ダマリスという恋人に渡すまいと無理に別れさせる。しかし息子は海難事故で死んだとの悲報を聞き、ダマリスとチェスターの思い出を話し合うようになる。
ベティの教育 ステファンは失恋し、好きに人生を送っていた。未亡人となったセーラに義理の気持ちで求婚するも、断られる。そこでセーラの手に余るおてんば娘ベティの後見人を買って出る。
没我の精神 ユニスは臨終の床で、母と弟に尽くすように約束した。引き取られた先でこき使われるが、弟を良く助け、成人後は2人で元の家で暮らす。やがて同居を嫌がる義妹に譲歩し、ユニスは家を去るが、弟は天然痘に罹る。
デイビッド・ベルの悩み ディビッドは長老なのに教会で告解をしないので、罪を告白して悔い改める意思が無い人間と見なされ、家族は肩身の狭い思いをする。
珍しくもない男 フィリパは結婚の日なのに悲しみに暮れている。マークは立派な人だし、結婚してくれるなら借金は棒引きすると申し出てくれるが、戦死したオーエンの事が忘れられない。
平原の美女タニス 北西部に赴任してきた電信技士のジェロームは、インディアンとの混血の美少女タニスと親しくなるが、町に兄を訪ねてきたエリナと会った瞬間に恋をしてしまう。

①『偶然の一致』オールドミスのロマンス

赤毛のアンシリーズでよく出てくるのが、結婚適齢期を過ぎても独身、いわゆる「オールドミス」だけど、きれいな女性のロマンス。

この短編の主人公、シャーロットも美しかったけれど、一度も求婚されたことがなかった。

ある日、シャーロットの40歳の誕生日に、アヴォンリーの婦人方が集まって「お針の会」が催された。

「お針の会」っていうのは、アンシリーズでよく出てくるんだけど、婦人方が集まって裁縫などをしながら、おしゃべりしたりお茶を飲んだりする会のこと。

その会の最中、若い娘が、突然シャーロットに、崇拝者を持ったことがあるか、と尋ねるんだ。

そこでシャーロットは、つい一言、「一度だけありますよ」とウソをついてしまうんだ。

そしたら周りは騒然として、その一回の恋について、根掘り葉掘り聞いてくるんだ。

シャーロットは、「やりかけたことは最後までやり通せ、だわ」と、その質問にどんどん思いつきで答えていく。

結果、周りの婦人方に語った、シャーロットがかつて一度だけもった崇拝者は、次のようになった。

名前:セシル・フェンウィック

出逢い:ニューブランズウィック

年齢:シャーロットが18歳、相手が23歳のとき

容姿:背が高くて浅黒く、黒いちぢれ髪

相手の職業:弁護士

別れ:喧嘩をし、相手は西部へ行ったっきり、帰ってこない。

これは、全部がシャーロットの想像の産物で、現実には存在するはずのない人だった。

しかし二か月後、アヴォンリーに本当のセシル・フェンウィックがアヴォンリーに現れた。

名前だけでなく、弁護士でニューブランズウィックの人で、西部で長年過ごし、容姿まで似ていた。

シャーロットは茫然として、この偶然の一致の男性と絶対に顔を合わせないように避け続けるんだ。

しかしながら、シャーロンとの意に反して、セシルはなかなかアヴォンリーを去らず、しかも滞在中周りの婦人方からシャーロットのことを聞かされた。

ありもしない噂を立てられて怒ったセシルは、シャーロットに文句を言いに、会いに来るんだ。

観念して、セシルの前に姿を現すシャーロット。

そしてここで二人が顔を合わせた瞬間、まさかのロマンスが始まるんだよね。

すると、突然不思議なことがおこった。彼の顔からしかめ面が失せ、目からは怒気が消え去ったのである。

彼はびっくりした顔をしていたが、やがてきまりわるそうなようすになった。頬が赤く染まるのが見えた。

出典:モンゴメリ『アンをめぐる人々』2008年、新潮文庫

ふつうならあり得ない展開が二転三転して、おもしろい。

結局二人は和解して、その後結ばれるんだ。

ちゃんとハッピーエンドで終わるのも安心だよね。

②『失敗した男』

この短編は、『アンをめぐる人々』の中でももちんが一番好きなお話。

ある年のクリスマス、30年ぶりに6人兄弟姉妹全員が集まったモンロー家。

それぞれの分野で成功した兄弟姉妹。

ジェイムズは本家を継ぎ、農業で成功をおさめている。

ラルフは鉄道関係の仕事をし、巨万の富を築いている。

マルカムは西部の大学で学長を務めている。

エディスは歌で成功しており、地方公演などで忙しい。

マーガレットは若い裕福な弁護士の妻として幸福な生活を営んでいる。

兄弟姉妹の叔母にあたる、85歳のイザベルも集いに参加した。

一番年上の兄、ロバートは兄弟の中で一番目立たない存在だった。

みすぼらしい農場に年寄りの家政婦と暮らすロバート。

みんなが集まってもおとなしく微笑んですごし、誰にも気づかれないうちに帰るような人なんだ。

ロバートは非常な幸福を味わっていた。

彼は一族の者たちに身内としての強い愛情をいだいており、みながふたたび自分の身近に集まったことを喜んでいた。

一同の成功や名声が誇らしかった。(中略)

ねたみとか不満の苦痛は微塵も彼の心になかった。

出典:モンゴメリ『アンをめぐる人々』2008年、新潮文庫

自分が成功したいという野心を、とっくに手放してるロバート。

だけど、そんなロバートは、イザベルおばさんが自分のことを悪くいっているのをきいてしまうんだ。

みんな成功しましたからね、あのかわいそうなロバートのほかはねー

ロバートだけはまったくの失敗者だと、わたしも認めないわけにはまいりません(中略)

あれの弟妹たちもきっとひどくあれのことを恥ずかしがっているにちがいないと思います。

六十にもなるくせしてなに一つ、ろくなことはしてないのですからね。

出典:モンゴメリ『アンをめぐる人々』2008年、新潮文庫

ロバートはそれを聞いてショックを受ける。

今まで自分が失敗者で、一家にとって恥ずかしい存在だと思ったことがなかったから。

権力を得たり、富を貯えたりできないことは知っていたけど、それを失敗者だと思ったことがなかったんだ。

茫然とした表情でその場を立ち去るロバート。

それを見ていたのは、妹のエディスなんだ。

もちろん、ロバートの弟妹たちは、ロバートを恥になんて思ってはいなかった。

だけど、それを今エディスがロバートに伝えたところで、ロバートが受けた致命的な傷はいやされない、と悟るんだ。

それでエディスが練った計画は何だと思う?

それは、クリスマスの晩餐会の席でのこと。

素晴らしいごちそうを食べ終えた後で、まずはマルカムが立ち上がり、ロバートなしで今の自分があり得ないという感謝の意を伝えるんだ。

マルカムは少年のとき、働き先のお金を盗んだ容疑をかけられたとき、ロバートに励まされた。

その後も、ひとりずつ、ロバートへの感謝を伝えていくんだ。

ラルフが実業家として出発した時、詐欺のもうけ話に引っ掛かりそうになり、それをロバートが見抜いてラルフを止めた。

ジェイムズは超チブスにかかった時、ロバートが来て、やさしく愛情をこめて看護してくれた。

エディスが音楽の勉強をするために必要なお金を、ロバートが自分の大切な馬を売ってまで工面してくれた。

マーガレットは母親が亡くなったときまだ5つだったが、ロバートが父と母のかわりとなって育ててくれた。

皆が涙しながら、最後には立ち上がって一緒に歌を歌うんだ。

ロバートの恥辱の気持ちはすっかり消え去り、顔も眼も輝かせて一緒に歌う。

ほんとうの成功とは?失敗とは?を、深く考えさせられるお話だよね。

他出版社の『アンをめぐる人々』

今回の記事は、村岡花子翻訳の新潮文庫『アンをめぐる人々』(2008年)をもとに書いています。

『アンをめぐる人々』は2018年7月現在、新潮社以外では、講談社より、2シリーズ出版されています。

翻訳者や特徴をあげておきます。

講談社文庫

講談社文庫は、掛川恭子による完訳版。

『アンをめぐる人々 (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 10)』モンゴメリ、掛川恭子訳、2005年

講談社ハードカバー

講談社からの完訳版は、ハードカバーの児童向けでも出版されている。

銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。

アンをめぐる人々 (完訳 赤毛のアンシリーズ 10)モンゴメリ、掛川恭子訳、1990年

まとめ

『アンをめぐる人々』心にぐっとくる物語がたくさん詰まっている短編集だよ。

『アンの友達』が好きな人には、ぜひ読んでほしいな。

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