児童文学 『赤毛のアン』シリーズ

『炉辺荘のアン』母親になったアンの6人の子どもたちが登場!

更新日:

モンゴメリ『炉辺荘のアン』村岡花子訳、2008年、新潮文庫

『炉辺荘のアン』は、新潮文庫では赤毛のアンシリーズの7作目。

『赤毛のアン』で11歳の少女だったアンは、もう6人の子どもがいるお母さん!

子どもたちの個性が豊でエピソードも面白いのが『炉辺荘のアン』なんだ。

今回は、『炉辺荘のアン』の魅力をお伝えするよ。

  1. 象徴する建物は「炉辺荘(イングルサイド)」
  2. アンの6人の子どもたち紹介
  3. 子どもたちのエピソード抜粋
  4. アンとギルバートのロマンスも健在
  5. 2018年4月、講談社青い鳥文庫より新刊として出版
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背景

『炉辺荘のアン』(原題"Anne of Ingleside")は、カナダの女流作家モンゴメリが、1939年に発表した。

モンゴメリは、一連のアン・シリーズ『アンの娘リラ(1921)』を出版した18年後に、時代をさかのぼって『炉辺荘のアン』を発表した。

『アンの娘リラ』でアンの話は最後だと考えていたモンゴメリであったが、後に出版社の要請で書いたのがこの『炉辺荘のアン』である。

日本では、村岡花子の翻訳により『アンの楽しい家庭』と題され、1958年、三笠書房より初版が出版された。

その後『炉辺荘のアン』と改題され、新潮文庫より赤毛のアン・シリーズの7作目として出版された。

物語の時系列としては、赤毛のアンシリーズ6作目『アンの夢の家』の次の時代に当たる。

一家の主婦として家族を支えるアンの、34~40歳を描いている。

ルーシー・モード・モンゴメリ、村岡花子について詳しくは、次の記事をどうぞ。

ルーシー・モード・モンゴメリの略歴

村岡花子の生涯・作品についてはこちら。

あらすじ

舞台は20世紀初頭のカナダ・プリンスエドワード島。

前作『アンの夢の家』で長男ジェムを授かり、思い出多い「夢の家」に別れを告げたアンとギルバート。

より広々とした「炉辺荘(イングルサイド)」に移ってきた。

それから6年たった今、働きざかりの主婦となったアン。

忙しい夫ギルバートを助け、6人の子どもたちの世話をし、毎日息つく暇もない。

今作以降、アン自身より、アンの子どもたちに焦点が当たる。

子どもたちひとりひとりのエピソードを中心に物語は展開する。

特徴①象徴する建物は「炉辺荘(イングルサイド)」!

『赤毛のアン』シリーズでは、毎回象徴となる建物が登場する。

今作で象徴となる建物は、「炉辺荘(イングルサイド)」だよ。

前作の「夢の家」は小さな白い家で、アンとギルバートの新婚生活にぴったりだった。

長男のジェムが生まれ、お手伝いのスーザンも家族の仲間入りをしたことから、より広い「炉辺荘」に移ることになったんだよね。

幸せな思い出がたくさん詰まった「夢の家」から移ることになって、アンは初めは「炉辺荘」を好きになれなかった。

炉辺荘はすばらしいわ・・・いまではあたし大好きなの。とても好きにはなれまいと思ったこともあるのよ。(中略)

そのうちに・・・愛情の小さな支根が炉辺荘に張り出してきたことに気がついたの。(中略)

あたしどの部屋もみんな好きなの。どれもみななにかしら欠点はあるけれど、またいいところもあるのよー

ほかのどの部屋にもない特色となるような、その部屋の個性となるようなものがあるのよ。

芝生にあるあの大きな木もみな大好きなの。(中略)実際、家のまわりに木が多すぎるのだけれど、あたしたち一本でも手放すつもりはないわ。

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

ブライス家は「炉辺荘」に落ち着くことになり、この後の作品でもずっと「炉辺荘」での暮らしは続いていくんだ。

特徴②アンの子どもたち

前作『アンの夢の家』では、アンとギルバートの赤ちゃんは、生まれてすぐに死んでしまったジョイスと、その一年後に生まれたジェイムズ・マシュウだけの登場。

今作「炉辺荘のアン」になって、いきなり子どもが6人に増えている!ってびっくりしたよ。

「炉辺荘のアン」では、子どもたちのエピソードがたっぷり入っている。ひとりひとり容姿の描写も細かくて、この子はこういう子なんだろうなって、創造ふくらむんだ。

アンシリーズでは、次作『虹の谷のアン』以降も子どもたちが主役になっていくので、初めに紹介しておくね。

長女・ジョイス

1892年生まれ。アンとギルバートの最初の子ども。誕生してすぐに死んでしまい、アンに深い悲しみを与えた。

長男・ジェム(ジェイムズ・マシュウ)

1893年生まれ。今作の年齢7~13歳。

ジョイスの死後1年目に「夢の家」生まれた。

ジム船長と、アンを引き取ってくれた兄妹の兄であるマシュウ・カスバートから名づけられた。

父譲りの淡褐色の目とおどけた口もと、母譲りの赤い髪と形の良い鼻を持つ。kマリラの秘蔵っ子でもある。

ひとりだけ「炉辺荘」で生まれなかったことを残念に思う。

ブライス家の子どもたちの中でも最も勇敢でリーダーシップに富んでいる。

今作で中心となるエピソード

第4章「ジェム坊や」第5章「六月百合」第6章「いなくなったジェム」
第19章「子犬ジップ」第20章「真鍮の豚」第21章「真珠の首飾り」
第24章「ブルーノ」第25章「駒鳥と犬」

次男・ウォルター(ウォルター・カスバート)

1894年生まれ。今作の年齢6~12歳。

名前はアンが産まれてすぐ亡くなった父ウォルターから、カスバートはマリラとマシュウの姓から名づけられた。

母であるアンのいきいきとした想像力と、美に対する熱情的な愛をそっくり受け継いだ。

豊かすぎる想像力で、たびたび悲しみと恐怖にとらわれてしまう。

濃い灰色の目と黒い髪を持ち、ブライス家の息子たちの中で最もハンサムといわれている。

詩を書いたり夢想したりすることから、理解ない者から変わり者の烙印も押されている。

今作で中心となるエピソード

第7章「ローブリッジへの旅」第8章「きんぽうげの花の道」第9章「ウォルターの悲しみ」第10章「母さんは死んじゃいないの?」

次女or三女(双子)・ダイ(ダイアナ)

1896年生まれ。今作の年齢4~10歳。

名前はアンの最初にして最高の親友であるダイアナ・ライト(旧姓バーリー)から名づけられている。アンの双子(二卵性)の姉妹の一人。

赤毛と緑灰色の目が母そっくりなため、父親のギルバート医師から特に可愛がられている。

父のような実際的な頭脳、明快な常識、ユーモアを解する精神を持っている。

兄妹間では特にウォルターと仲が良い。

今作で中心となるエピソード

第30章「春の炎」第31章「暴徒」
第39章「デリラ・グリーン」第40章「裏ぎり者!」

次女or三女(双子)・ナン(アン)

1896年生まれ。今作の年齢4~10歳。

アンの双子(二卵性)の姉妹の一人。

名前の由来は母親のアンで、母のアンと区別するため、通称ナンで通っている。

ビロードのような栗色の目と髪と色白の肌で、双子の中ではナンの方が美人とされている。

アンの想像力に富んだ性格をよく受け継いでいる。快活で、強い正義感と公正を尊ぶ精神もある。

今作で中心となるエピソード

第26章「学校」第27章「虹の谷」第28章「神様をだましたの」
第32章「ドヴィー」第33章「海辺にて」
第37章「ナンの『ロマンスの国』」第38章「『もの寂しい家』」

三男・シャーリー

1898年生まれ。今作の年齢2~8歳。

とび色の髪と目を持つ無口な男の子。シャーリーはアンの旧姓からとられている。

アンが彼を産んだのち体調がしばらく戻らず、お手伝いのスーザンが幼少期面倒を見て以来、彼女の秘蔵っ子となっている。

四女・リラ(バーサ・マリラ)

1899年生まれ。今作の年齢は誕生~6歳。

ブライス家の末っ子。今作第8章「きんぽうげの花の道」で誕生する。

マリラは、アンの育て親マリラからとられており、バーサはアンを産んですぐ亡くなった母の名前。

淡褐色の目と赤褐色の髪を持ち、天性の愛らしさがある。

今作で中心となるエピソード

第36章「リラとお菓子」

特徴③子どもたちのエピソード

ここからは、子どもたちのエピソードの中で、ももちんが特に好きなものを紹介するよ。

ジェム:母への真珠の首飾り

長男ジムのエピソード。ジェムは、初めて自分の犬にしたジップが死んでしまい、とても悲しい思いをするんだ。

アンはジェムを優しく抱きしめ、なぐさめる。

ジェムは、母さんのために何かしたい!って思って、もうすぐやってくる母さんの誕生日に、真珠の首飾りをプレゼントしようと決心するんだ。

ジェムは真珠の首飾りのお金を、自分でつくりだしたかった。

自分の大切にしていた乳歯や、毎週もらう大好きなおやつを売って、お金を貯めるんだ。

苦労して得たお金で首飾りを買い、母さんの誕生日を今か今かと待ち望むジェムが、とてもかわいい。

子どものころこうやって、クリスマスや誕生日を指折り数えてたなぁ。

とうとう母さんの誕生日の朝、ジェムはとうとうプレゼントした。

首飾りを見たときの母の目といったら!

「ジェム!わたしに!」(中略)

「首飾りはお誕生日にまったくすばらしいものだわ」と、母は言った。

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

母さんがたいそう喜んでくれて、めでたしめでたし、ではなく、まだ続きがあるんだ。

ある晩、ギルバートとアンが知人との会食にでかけるとき、アンはジェムからもらった真珠の首飾りを身につけた。

「僕の奥さんは立派だろう、ジェム?」と父は得意そうに言った。

ジェムは母がたいそう立派だったし、その服も大変すばらしいと思った。

白い喉にかけられた真珠がなんときれいなことか!

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

自分と母を誇らしく感じていたジェム。

でもあるとき、お店で真珠の首飾りが本物ではないことを知って、とてもショックを受けるんだ。

50セントというお金を自分で稼いで、本物の真珠の首飾りをプレゼントしたと思い込んでいたジェム。

子どもの頃って、真珠がいくらかなんて知らないもの。偽物だと知ったら、それは相当なショックだったよね。

胸が張り裂けそうになりながらも、母さんに一刻も「だまして」いてはならないと、がんばって話すんだ。

「ぼく・・・ぼく・・・母さんに話さなくちゃならないことがあるの・・・母さんひどくがっかりするよ・・・(中略)

ああ、母さん、あの真珠は本物の真珠じゃないの・・・ぼく、本物だと思ったんだよ・・・ほんとうにそう思ったんだよ・・・ほんとうに・・・」

ジェムの目に涙があふれ、その先がつづられなかった。

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

これをきいた母親のアンの返事が、また秀逸。

一見伝えるのが難しい気持ちを、しっかり子どもでも分かる言葉にあらわして、愛情深さが感じられるように答えるんだ。

たとえほほえみたかったにせよ、アンの顔にはその影すらなかった。(中略)

「ジェム、あれを本物の真珠だと思っていたとは知らなかったわ。あれが本物でないことはあたしは知っていましたよ・・・少なくともある意味の本物ということではね。

別の意味からいえば、あれほど本物の品物をあたしはもらったことがありませんよ。なぜならあの中には愛情と苦労と自己犠牲がこもっているのですからね・・・(中略)

かわいいかわいい坊や、さあ、気分はなおって?

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

ジェムはとっても嬉しくなって、心から安心して、母さんから抱いてもらいながら眠りにつく。

母と息子のお互いに対する深い愛情が感じられるエピソードだよね。

ダイ:ニ度も友達から裏切られる!

双子の片方、ダイのエピソード。

ジェニー・ペニーとデリラ・グリーンは、それぞれダイが8歳のときと、10歳のときに友達になる女の子。

二人ともカリスマ性があって、ダイを惹きつけたんだ。

ところがこの二人に、ダイはこっぴどく裏切られるんだ。

ジェニー・ペニー

ジェニー・ペニーのとき。

ダイは両親の留守中に、だまってジェニーの家に泊まりに行った。

たいそうお金持ちだと聞いていたジェニーの家は、今までダイがみたこともないほどみすぼらしく、ダイは幻滅するんだ。

それと同時に、今までジェニーがさも本当のように話していたおもしろい話の数々がウソであったと気づく。

食卓は汚らしく、家族は喧嘩ばかりしている。

ジェニーたちにはさんざん悪口を言われ、その中の一人がつけていたお面がおそろしくて、ダイは倒れてしまう。

気を失ってはいなかったけど、そのまま目をつむっているんだ。

ジェニーたちはダイが死んだと思い込んで、炉辺荘のベランダにダイを運んで逃げてしまうんだ。

そこでやっと、ジェニーから解放されたダイ。

友達にウソをつかれるという苦い体験をしたんだよね。

デリラ・グリーン

そして二年後。ダイが仲良くなったデリラ・グリーンは美しく劇的なしぐさで周りを惹きつける女の子。

ダイもすぐに惹かれて、親友の儀式を厳かにかわすんだ。

ところがこのデリラも、家柄は立派だったけど、大ウソつきだった。

継母からひどい仕打ちを受けているとダイを信じ込ませるんだ。

ジェニーのことがあったので、デリラとダイの交際にあまりいい顔をしなかった母さん。

だけどある日、両親が留守の間、炉辺荘にデリラを招くことを許すんだ。

炉辺荘でたいそう楽しい時間を過ごすデリラとダイ。スーザンもたっぷりの食事でもてなしをしてあげるんだ。

だけど翌日の昼休み、ダイは、デリラが周りの友達に、炉辺荘に泊まったときのことを話しているのを聞いてしまう。それが、とんでもないウソ。

アンが派手好きで家のことをやらないだの、スーザンがリラに鎮静剤を飲ませようとしたから注意しただの・・・

ダイはバシッと言ってやった。

「あんたはキリストを売った裏ぎり者のユダよ!(中略)

ユダですとも!あんたの言うことには一つも正直なところがないじゃないの!生きてるかぎり、二度とわたしに口をきかないでちょうだい!」

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

こうして、ダイは二度も友達に裏切られる体験をするんだ。

ナン:年上の友達ドヴィーのウソを信じる!

ダイはジェニーやデリラのように、話がおもしろくてカリスマ性を持っている子にひきつけられた。

双子のもう片方のナンは、こういう子たちとは仲良くならなかったみたい。

でも、ナンも年上の友達、ドヴィー・ジョンソンを崇拝し、ドヴィーのウソを本気にするんだよね。

この、ブライス家の子どもたちの、なんでも信じやすい性格は、家庭での育ち方によるものなんだ。

冗談一つでさえほんとうのこと以外はだれも言わない炉辺荘で育ったナンは、あまりに無邪気で信じやすい性質なのでそれがわからなかった・・・ナンを惹きつけた。

これまでシャーロットタウンに住んでいた十一歳のドヴィーはまだ八歳のナンよりずっと多くのことを知っていた。

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

ドヴィーがナンについたウソって、どんなウソだと思う?

それは、港口に住む貧乏な一家の娘、キャシー・トマスについてのものだった。

キャシーとナンは、赤ん坊の時に看護婦にお互いを交換され、ナンは本当はキャシー・トマスだ、というものだった。

ナンはこれをすっかり信じた。

キャシーは赤毛で目の色もアンと同じ。だけどナンは容姿がまったく違うから。

双子のダイとも似ていないなんておかしいではないか!

顔は青ざめ、めまいすら感じながらナンは家へ帰るんだよね。

もっとも、ドヴィーはナンがここまで本気にするとは思っていなかったんだ。

家に帰ったら母親に話すだろうし、そこでだまされたことにも気づくだろう、って思ったんだ。

だけど、ナンはドヴィーと約束していたんだよね、誰にも話さないって。もちろんそれは母さんにもなんだ。

そこでナンがとった行動は何だと思う?

キャシー・トマスに本当のことを告げることこそ正しいと、自分を奮い立たせてキャシーの家に向かうんだ。

途中で港口のガラの悪い子どもたちにからまれながら、ようやくナンはトマス家にたどり着く。

汚くガラクタだらけの家を見て、これが、自分の家になるのかもしれないと絶望しながら・・・。

トマス家にはキャシーはいなくて、いるのは夫人だけだった。そこでナンは名乗りもせずに切り出す。

キャシーに会いにきたのは・・・話したかったのは・・・あの人があたしで、あたしがあの人だということなの!(中略)

だから・・・だから・・・キャシーは炉辺荘にきて暮らして・・・利益を受けるのがほんとうです

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

トマス夫人は、まじまじとナンを見つめ、ドヴィーの話だと聞くと、頭をのけぞらせて笑った。

この、トマス夫人もさばさばしてて好感が持てるんだよね。

まったく、あの子ときたら人をだますのが利口だと心得てるんだからね!

いいかね、なんとかさんとやら、ドヴィーのばか話を全部は信用しないほうがいいよ。さもないとむだ骨を折らされるからね(中略)

キャスはあんたよりたっぷり一年は年上にちがいない。とにかく、いったいあんたはだれなの?

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

ナン・ブライスだと知ったトマス夫人は、さらにうれしいことを教えてくれるんだ。

ナンは父ギルバートの母親、ナンにとってのおばあさんに似ていること。

そのおばあさんは双子が生まれて大得意になっていたこと。

ナンは自分がナン・ブライスであることに幸福で無我夢中になって、家に帰った。

アンは帰宅したナンを抱きしめ、一部始終をきいた。そこでのアンの言葉がまたあたたかい。

「ドヴィーの言うことを信用したのはおばかさんだったけれど、かわいそうなキャシー・トマスに当然の身分をあげなくてはと考えて出かけていったのはたいへん立派で勇敢なことですよ。

母さんはあなたを得意に思うわ

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

こうして子どもたちは苦い体験も重ねながら、家族の愛情に包まれて育っていくんだ。

特徴④アンとギルバートのロマンス

今作では、子どもたちが物語の中心を占めていて、アンは母親として登場することが多いんだよね。

だけど最後の41~43章で、ひとりの女性としてのアンが描かれていて、うれしくなったよ。

それは、誰にでも起こる、すべてがうまくいかない、ついてない一日のこと。

アンはめずらしくイライラがとまらず、子どもたちのもやつあたりしてしまうんだ。

それまでずっと聖母のようにやさしく心が広い母親としてのアンしか出てこなかったから、ここで少し唐突な感じはするけれど。

このときなによりアンが不満に思っていたのは、アンの変化に夫ギルバートが一つも気がつかないことだった。

あたしたちはお互いに、一種の習慣のようになってしまったのだわ・・・それだけのものなのよ。(中略)

どの結婚も結局はこうなるんでしょうね。たぶん、大部分の女がこれを経験するのかもしれない。

ギルバートはあたしのことを当り前だと考えている。いまでは仕事だけがギルバートにとって大事なのよ。

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

こういう被害妄想に陥るときって、主婦ならだれでもあることだよね。完璧に見えるアンもそうなんだって思ったら、ほっとする。

結婚記念日当日になっても、ギルバートから一言も言葉をもらえなかったアンは、いよいよ被害妄想をふくらませるんだ。

でも実は、ギルバートにも事情があった。患者の手術のことで、二週間以上悩み続けていたんだ。それで家でも口数が少なかった。

それと、結婚記念日を忘れていたわけではなく、注文していたプレゼントが当日になっても届かなくて、黙っていただけなんだよね。

全てが明らかになったとき、二人はまた抱き合うんだ。

「あなたはあたしを愛しているのね、ギルバート?あたしはあなたの習慣にすぎなくはないのね?ながいことあなたはあたしを愛してるって言わなかったわ」

「僕の大事な大事なアン!そんな言葉は必要じゃないと思ったんだよ。僕は君なしでは生きていられないよ。いつも君は僕に力を与えてくれるもの。(中略)」

出典:モンゴメリ『炉辺荘のアン』2008年、新潮文庫

アンとギルバートののろけのやりとりがまたかえってきてくれてうれしい。

こうして、アンは今の幸福を胸いっぱいに味わって、物語は締めくくられるんだ。

他出版社の『炉辺荘のアン』リスト

今回の記事は、村岡花子翻訳の新潮文庫『炉辺荘のアン』(2008年)をもとに書いています。

『炉辺荘のアン』は2018年7月現在、新潮社以外では、講談社より、3シリーズ出版されています。

それぞれの出版社ごとに、翻訳者や特徴をあげておきます。

講談社文庫

講談社文庫は、掛川恭子による完訳版。

『アンの愛の家庭 (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 6)』モンゴメリ、掛川恭子訳、2005年

講談社ハードカバー

講談社からの完訳版は、ハードカバーの児童向けでも出版されている。

銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。

『アンの愛の家庭 (完訳 赤毛のアンシリーズ 6)』モンゴメリ、掛川恭子訳、1990年

講談社青い鳥文庫

『赤毛のアン』シリーズは、複数の出版社から出版されている。

講談社青い鳥文庫のアンシリーズは、新潮文庫と同じ村岡花子の翻訳。

ただ完訳版ではなく、児童向けに編集されたもの。

HACCANの挿絵が現代的で、子どもたちが読みやすそうだよね。

『炉辺荘のアン』は2018年の4月に出版されたばかり。

六人の子どもたちも挿絵であらわされているから、わかりやすいよね。

講談社青い鳥文庫の公式サイトでは、2017年に公開された、カナダ制作の映画『赤毛のアン』のインタビューも掲載されているよ。

主演の女の子エラ・バランタインがかわいい!

講談社青い鳥文庫公式サイトへ→→http://aoitori.kodansha.co.jp/

『炉辺荘のアン 赤毛のアン(6) (講談社青い鳥文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2018年

まとめ

『炉辺荘のアン』みどころまとめ。

  1. 象徴する建物は「炉辺荘(イングルサイド)」
  2. アンの6人の子どもたち紹介
  3. 子どもたちのエピソード抜粋
  4. アンとギルバートのロマンスも健在
  5. 2018年4月、講談社青い鳥文庫より新刊として出版

アンの愛情あふれる母親ぶりも見られる『炉辺荘のアン』。

ぜひ、手に取ってみてね!

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