『クリスマス・キャロル』はイギリスの文豪ディケンズの名作。
心温まる物語で、クリスマスの季節には読みたくなる。
この記事で紹介する本
どの出版社の『クリスマス・キャロル』を読めばいいか知りたいなら、次の記事からどうぞ。
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この記事でわかること
- 小説『クリスマス・キャロル』のあらすじと見どころ
- ディケンズと『クリスマス・キャロル』
小説『クリスマス・キャロル』とは?
小説『クリスマス・キャロル』(原題”A Christmas Carol”)は、イギリスの作家チャールズ・ディケンズにより1843年に刊行された。
日本では森田草平翻訳で『クリスマス・カロル』と題され、1927年岩波書店より刊行された。
現在に至るまで、ディケンズの『クリスマス・キャロル』はクリスマス文学の中でもっとも有名であり、さまざまな翻訳が刊行されている。
また絵本やコミック、映画化、舞台化などもされている。
参考:Wikipedia
ディケンズ(作)
イギリスの作家。
1812年、ポーツマス郊外の下級官吏の家に生まれる。
家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。
二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートした後、数々の名作を生む。
1870年死去。
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』村岡花子訳、新潮文庫、2011年
代表作(小説)
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主な登場人物
エブニゼル・スクルージ・・・ロンドンで会計事務所を営む老人。金持ちだがとてもケチで貪欲で、みんなから嫌われている。
ボブ・クラチット・・・スクルージの事務所に雇われている事務員。貧乏でとても安い給料で働いている。
フレッド・・・スクルージの甥。朗らかな性格で、スクルージにも明るく接する。
ジェイコブ・マーレイ・・・かつてのスクルージの仕事仲間。7年前に死んでいる。
ティム坊や・・・ボブ・クラチットの末の息子。足が悪く、病気がち。
第一、第二、第三の幽霊・・・スクルージの元に現れる3人の幽霊。
あらすじ
一言あらすじ
ケチで嫌われ者の老人スクルージは、クリスマス・イブの夜、4人の幽霊と出会う。
クリスマスの朝に目覚めたスクルージは良心をとりもどし、親切な人として街中からしたわれるようになる。
ここからは、『クリスマス・キャロル』の詳しいあらすじ。
感想から読みたいならこちら(後ろへとびます)→→本を読んだ感想
『クリスマス・キャロル』は、クリスマス・イブからクリスマスにかけてのスクルージの体験を描いている。
全部で5つの章からなる。
マーレイの亡霊
スクルージという人物の紹介と、マーレイの亡霊の出現について描かれる。
前半は、クリスマス・イブのスクルージの様子を細かく描き、スクルージがいかにケチで嫌われているかを説明している。
クリスマス・イブの夜、スクルージは寝室でマーレイの亡霊に出会う。
自らの生前の行いにより、鎖でがんじがらめになったマーレイの亡霊は、スクルージも同じ運命をたどらないように忠告しにやってきたのだ。
マーレイは明日から3夜にわたり、3人の幽霊がスクルージの元に現れることを伝える。
第一の幽霊
最初の晩に現れた幽霊は、「過去のクリスマスの幽霊」。
子どものような姿をしているが、老人のように白く長い髪をし、頭のてっぺんからまぶしいほどの光が射していた。
幽霊はスクルージの手を取り、スクルージの過去を一緒に旅する。
まだお金より大切なものが見えていた時の想い出だった。
スクルージは耐えきれなくなり、自分をベッドに連れ戻るように懇願する。
第二の幽霊
2日目の晩に現れた幽霊は、「現在のクリスマスの幽霊」と名乗る。
幽霊は陽気な巨人で、手には燃えさかる松明(たいまつ)を持っていた。
幽霊はスクルージに衣の端をつかませ、いたるところで祝われているクリスマスを旅する。
スクルージとともに働くボブ・クラチットの家庭、甥の家庭など、いたるところでささやかに祝われるクリスマスを見て、スクルージは陽気に快活になる。
最後に、幽霊の衣の陰から二人の子どもが現れる。人間の「無知」と「欠乏」をあらわした姿はたいそう醜く、哀れだった。
第三の幽霊
最後に現れた幽霊は「未来のクリスマスの幽霊」と名乗る。
幽霊は、真っ黒な衣にすっぽりと身を包み、見えるのは真っ白な手だけだった。
幽霊とスクルージが見たのは、だれか死んだ人のうわさ話をしている人たち。
死んだ者はたいそう評判が悪く、死んでも誰も気にかけない様子だった。
最後に幽霊とやってきた墓に、自分の名前が彫られているのを見たスクルージは、うわさ話の的が自分であったことを知りがくぜんとする。
事の終り
目が覚めてみると、クリスマスの朝だった。
スクルージは、一晩のうちに3人の幽霊が来てくれたことに気づく。
スクルージはすっかり心を入れ替え、愉快で幸せな気分になっていた。
手始めに、クラチット家に匿名で七面鳥を送り、昨日断った相手に多額の寄付を決め、甥の家のパーティーに参加した。
翌日、スクルージはボブ・クラチットの給料を上げ、家族にも相応の援助をすることを約束し、ティム坊やの第二の父と呼ばれるまでになる。
スクルージは誰からも愛されるよき友、よき主人、よき人として、ロンドンで知られるようになった。
『クリスマス・キャロル』を読んだきっかけ
ももちんが『クリスマス・キャロル』を初めに読んだのは、大人になってから。
『赤毛のアン』シリーズから村岡花子を知って、他の翻訳作品を読んでみたいと思ったのがきっかけ。
初めて読んだときは、なんだか教訓めいた展開がとっつきづらいな、と思った。
言い回しもどことなく古風で、セリフがすんなり入ってこない。
そのあと映画『Disney's クリスマス・キャロル』を観て、自分にも通じる物語なんだと、心に深く感じることができた。
読み返すごとに味わいが変わる、毎年クリスマス前には読みたくなる名作。
『クリスマス・キャロル』を読んだ感想
『クリスマス・キャロル』を読んでいると、ディケンズから「最も大切なことを思い出そう!」と呼びかけられている気分になる。
たんなる古典文学としておもしろがるだけではなく、今に生きるすべての人に共通の、変わらない何かを思い出させてくれる物語。
『クリスマス・キャロル』感想
ディケンズのユーモア
読み初めからひき込まれるのは、語り手の存在感。
ふつう、物語を読んでいると、その物語を語っている人は、全面には出てこない。
だけど『クリスマス・キャロル』は、語り手は「私」として語りだし、ときに読者に語りかけ、その息づかいが感じられる。
それゆえに、みなさんも、私が語気を強めて、マーレイはドアの釘のごとくに死にきっていると繰返すのをお許し願いたい。
出典:ディケンズ『クリスマス・キャロル』村岡花子訳、新潮社、2011年
まるで、落語家が聴衆に向かって語りかけているような語り口。
この読者への語りかけは、物語の要所要所で登場する。
あふれるクリスマス精神
物語の根底に流れているのは、クリスマスを迎えることのシンプルな喜び。
ロンドンのクリスマスの活気が物語全体にあふれている。
クリスマスを喜ぶのに理由はいらない。富める人も、貧しい人も関係ない。
人々にとって、クリスマスは一年に一度、みんなで心を一つにすることができる日なんだよね。
どこに住んでいるかも関係ない。
世界の果てに住む坑夫たちは、家族たちとともにクリスマスの歌を歌う。
孤独な灯台守だって、ラム酒で祝杯をあげる。
ケチなスクルージは悪人?
物語の初めに、スクルージのけちで嫌な人物像が、数ページにわたって描かれる。
具体例はこんな感じ。
スクルージのケチっぷり
- 事務所が寒くても、火に石炭を足すことを許さない。
- 甥のフレッドがクリスマスを一緒に過ごす誘いに来ても、「ばかばかしい!」と一蹴する。
- 恵まれない人々への寄付を募りに来た人には、ビタ一文わたさない。
- クリスマス・キャロルをうたっている少年をにらみつける
読んでいて、確かにきむずかしくて、孤独を好み、ケチだなあ、と思った。
だけど、「ケチ」という点では、現代の日本では、スクルージみたいな人がいてもふつうな気がする。
ももちんがスクルージと共通するところをあげてみる。
- ふだん寄付はしないし、求められても素通りすることが多い。
- 税金を払っているので、それ以上社会のために払う必要はないと思っている。
- 自分とかかわりのない人は、正直どうなっても知ったこっちゃないと思っている。
- 公平ではない場面に出逢うと、たとえ1円でも、損していると感じる。
- 法に反しているわけではない。どこが悪い!という態度。
- 基本、ハートは閉じて、新しい人と関わりたがらず、守りに入る。
自分をよく見てみたら、スクルージとかなり似ている。
そうやってみると、最初のスクルージは、とんでもない悪いやつ、というわけではないと感じる。
まっとうに生きているけど、その性格からいろんな可能性をせばめている、ふつうの人なんだよね。
インナーチャイルドの癒し
とんだ「へんくつじじい」として描かれているスクルージだけど、それは表面的なもの。
かつてはスクルージも子どもだったことがあり、恋していたことがあり、お金より大事なものを知っていた。
スクルージは、第一の幽霊とともに、自分の過去のクリスマスを旅することで、そのときのことを思い出していくんだよね。
これは、心理学でいう「インナーチャイルド」の癒しのプロセスそのものだな、と感じた。
孤独な少年時代
初めにみたのは、仲間外れにされ一人教室にいる少年時代のスクルージ。
老人スクルージは、孤独な少年に寄りそい、涙を流す。
どれだけ寂しい想いをしたかをまざまざと思いだし、「かわいそうに」とつぶやく。
そこでふと思い出したのは、昨日事務所にクリスマス・キャロルを歌いながらやってきた少年。
「男の子に何かやればよかった」
初めてスクルージは自分の行いを反省するんだよね。
妹のファン
次にみたのは、それから数年後。
かわいい年の離れた妹、ファンがスクルージを迎えに来た場面だった。
ファンがどんなに優しく気立てのいい娘だったか、自分がどれだけファンを大事に思っていたかを思い出す。
ファンが遺した甥のフレッドが頭に浮かぶ。
青年時代の感謝
つづいて見たのは、フェジウィグ老紳士の元で奉公していた、青年時代のスクルージ。
クリスマス・イブ、フェジウィグは店を早じまいし、大勢でダンスパーティを楽しんだ。
老スクルージはこのときの興奮、熱狂を再び思い出し、味わった。
幽霊は、いつものスクルージのように「フェジウィグのやっていることは、くだらないことだ」と言う。
とっさに反論するスクルージ。
あの人が私たちをしあわせにしようとしてくだすった苦労は、一財産投げ出してやってくだすったのと同じですよ
出典:ディケンズ『クリスマス・キャロル』村岡花子訳、新潮社、2011年
そういった後で、スクルージは、日頃自分がどれだけボブ・クラチットに厳しくしていたかを反省する。
ボブ・クラチットにもう少し優しくしてやれば・・・
恋人との別れ
最後に見た過去は、スクルージには辛いものだった。
貪欲になり始めたスクルージの元を、恋人ベルは去っていった。
別の男性と結婚をしたベルは、たくさんの子どもたちに囲まれていた。
無邪気に遊ぶベルと子どもたちの姿を見て、スクルージは、本当に望んでいたことを思い出す。
それは、子どものように軽やかに自由を楽しみ、それを喜べる大人であること。
そこへ夫が帰ってきて、ベルに「一人ぼっちのスクルージを見かけた」と話す。
スクルージは、自分が歩んできた道がいかに孤独な道であったかを思い知らされるんだ。
今開かれているチャンス
過去を振り返り、絶望的な気持ちにもなったスクルージ。
今度は第二の幽霊と現在のクリスマスを旅する。
自分にかかわりの深い二つの家庭をのぞき見て、スクルージは、今開かれているチャンスを知ることができる。
ボブ・クラチットの家庭
第一の幽霊との旅で、自分とボブ・クラチットの関係を少し反省したスクルージ。
そのクラチット家では、ささやかながらも家族が集い、喜びにあふれたクリスマスを過ごしていた。
スクルージは、クラチットの末の息子ティムが、病弱で足が悪いことを知る。
幽霊にティムの未来をたずねると、「あの子は死ぬだろう」と告げられ、スクルージはいてもたってもいられなくなる。
かつて自分が言った「余計な人口が減る」と言う言葉が、どれほど非情なものであったかを悟り、スクルージは後悔する。
フレッドの家庭
第一の幽霊との旅で、かつてかわいがった妹ファンへの愛情を思い出したスクルージ。
ファンの一人息子、フレッドの家では、友人たちが集い、陽気にパーティが催されていた。
一同がダンスやゲームに興じる様子に、いつのまにかスクルージも一緒に楽しみ、陽気になっていた。
ももちんが好きなのは、スクルージがフレッドの奥さんを初めて見たときの描写。
どれだけ魅力的な女性かが、ありありと描かれている。
彼女はたいそう愛らしかった。実に愛らしかった。えくぼのある、びっくりしたようなすてきな顔をして、豊かな小さな口は接吻されるためにつくられたかのようだった
出典:ディケンズ『クリスマス・キャロル』村岡花子訳、新潮社、2011年
堅物のスクルージだけど、隠されたあたたかさがどんどんにじみ出てきている。
心を開けば世界は変わる
ここまでの旅で、スクルージの心はだいぶ変わりつつあったのだと思う。
だからこそ、その次にみた「未来のクリスマス」がどれだけおぞましいものであるかが、スクルージにもわかるんだ。
死んでいたのはスクルージ自身
第三の幽霊とともにスクルージが見たのは、誰かが死んだあと、周りの人たちがその死を喜んだり利用したりする場面。
この「誰か」というのは、スクルージが、墓石に彫られた自分の名前を見るまでわからない、という設定になっている。
だけど、どう考えてもこれ、スクルージのこと言ってるよねって、途中から、読者なら全員わかるはず。
スクルージもうすうす気づいてはいたけど、気づきたくなかったんだよね。
ここで、恐れている未来をはっきり見たことが、スクルージの改心への決意につながる。
スクルージの変わりっぷりが爽快
三人の幽霊とのクリスマスの旅を終え、目を覚ましたスクルージの変貌っぷりが激しすぎて、さわやかな気分になる。
クリスマスおめでとう!世界中の皆さん、新年おめでとう!いよう!ほう!いよう!
出典:ディケンズ『クリスマス・キャロル』村岡花子訳、新潮社、2011年
スクルージが体験したことは、スクルージ自身の夢にすぎないのか、それとも、現実に起こった設定なのかはわからない。
けれども、スクルージはこの体験を味わいきり、自分の考えの小ささを潔くみとめ、受け入れ、変わったんだよね。
幽霊も頑張ったかいがあったね(笑)
幽霊が知っていること
『クリスマス・キャロル』では、マーレイの亡霊から始まり、さまざまな幽霊が登場した。
当たり前だけど、幽霊は肉体を持って生きていない。
だからこそ、肉体があればこそできること、お金よりも価値のあることを、人間よりもはっきりとわかっている。
幽霊たちがスクルージに、大事なことを悟らせるために、様々な工夫をしていることがわかる。
鎖は自分を縛り付けている考え
初めにあらわれたマーレイの亡霊は、長く重い鎖にしばられていた。
この鎖は、誰につけられたのでもない、自分で好んでつけた鎖なんだよね。
肉体をもって生きているときは、自分がつけている鎖に気づくことはない。
死んでみて初めて、この鎖の重さに気づくんだ。
ここでいう「鎖」は、人間の持つ「思い込み」ともいうことができると思う。
長年生きているうちに、しみついて当たり前になってしまっている思い込み。
先延ばしにせず、今からその思い込みに気づき、外して軽くなっていくことの重要性。
マーレイはスクルージにあえて自分の姿を見せることで、このままだとお前もこうなると、わざわざ伝えに来てくれている。
スクルージ自身の言葉を繰り返す
「何がクリスマスおめでとうだ!ばかばかしい!」
「死にたい奴らは死なせたらいいさ。そうして余計な人口を減らすんだな。」
幽霊たちは、クリスマスの旅の中で、たびたびスクルージが放った言葉を繰り返す。
スクルージは、それらの言葉が思いやり一つない、ひどい言葉であることを思い知らされ、その都度後悔におそわれる。
ももちんがぞっとしたのは、第二の幽霊がスクルージに見せた、人間のもつ「無知」と「欠乏」を現す二人の子ども。
幽霊はスクルージにはっきりと自分の行いを自覚させるために、醜い子どもたちを見せた。
同情を示そうとしたスクルージに、幽霊は、再び、かつてスクルージ自身が放った言葉で返す。
「監獄はないのかね?救貧院はないのかな?」
解決策を示さない
幽霊たちは、スクルージが一番知りたい「どうしたら、この運命を変えることができるのか」ということは、最後まではっきりとは教えてくれないんだよね。
誰かに言われるのではなく、スクルージ自身が悟らないと意味がないことを、幽霊たちはわかっていたんだよね。
解決策を教えられなかったおかげで、スクルージは義務感からではなく、自然にわいてくる人間愛を発揮することができた。
それは、誰の予想をもはるかに上回る、素晴らしいものだった。
感想おさらい
6.関連トピック
ここからは、『クリスマス・キャロル』やディケンズについてみつけた、おもしろい情報を紹介していくよ。
クリスマス・キャロルとは
そもそも、「クリスマス・キャロル」って、どういう意味か、知らない人も多いんじゃないかな?
ももちんもその一人で、この記事を書くにあたって調べてみて、初めて知ったよ(笑)
「クリスマス・キャロル」っていうのは、クリスマス・イブに特に好んで歌われる、イエス・キリストの誕生を喜ぶ歌のこと。
日本でも有名な「きよしこの夜」(英語:Silent night)や、「クリスマスおめでとう」(英語:We Wish You A Merry Christmas)も、クリスマス・キャロルのうちの一つ。
今作で登場するクリスマス・キャロル
出典:”God Rest You Merry, Gentlemen”1917年録音/Wikipedia
小説『クリスマス・キャロル』では、クリスマス・キャロルは物語に直接かかわらない。
最初の場面で、クリスマス・キャロルをうたいながらスクルージの事務所を訪れる少年が登場するのみ。
この場面で歌われているのが、「世の人忘るな」(英語:God Rest You Merry, Gentlemen)というクリスマス・キャロル。
「世の人忘るな」は、1833年、ウィリアム・B・サンディスがイギリスで出版した『古今クリスマス・キャロル集』に歌詞が掲載されたけど、実際にはもっと古くから存在していた。
一般的には、裕福な家庭をまわって寄付を求めるときに歌われていたキャロルなんだって。
参考:Wikipedia
ディケンズが31歳の若さで書いた
この美男子、だれだと思う?
実は、ディケンズの若いころの肖像画なんだよね。『クリスマス・キャロル』を書く前の年。
ディケンズは1843年、31歳の若さで『クリスマス・キャロル』を書いた。天才だよね。
ディケンズの少年時代は貧しく、満足な教育が受けられなかった。
12歳から靴墨工場で働き、家族の監獄生活など、苦しい生活を強いられた。
『クリスマス・キャロル』の中でも、貧しい家庭の子どもたちはよく登場する。
スクルージのように裕福な階層のひとが、この哀れな貧困層の子どもたちを、無視していいわけがない。
ディケンズ自身が少年時代に味わった苦しみから、子どもを救いたい気持ちは強く、その思いが物語にも反映されている。
参考:ディケンズ『クリスマス・キャロル』井原慶一郎訳、春風社、2015年
クリスマス前に幽霊話をする習慣
こちらは、『クリスマス・キャロル』初版本の扉。
タイトルの下に、副題として”A Ghost Story of Christmas.”(クリスマスの幽霊話)と記されている。
クリスマスの時期に暖炉のそばで幽霊話を語るのは、イギリスの伝統の過ごし方だった。
ディケンズはその伝統をふまえ、この物語をぜひ暖炉のまえで語り継がれてほしいという願いを込め、この副題をつけたのかもしれない。
実際ディケンズ自身、好んで『クリスマス・キャロル』の朗読をしていたんだよね。
物語で表現されている、実際にディケンズ自身が話しているような語り口には、そういう理由もあったんだね。
参考:ディケンズ『クリスマス・キャロル』井原慶一郎訳、春風社、2015年
いろいろな『クリスマス・キャロル』
『クリスマス・キャロル』は新潮文庫以外にも、たくさんのシリーズや他の出版社からも出版されているよ。
出版社別・特徴別におすすめの『クリスマス・キャロル』や、映画やアニメもまとめたので、参考にしてみてね。
『クリスマス・キャロル』30作品比較。文庫、電子書籍など特徴まとめ
『クリスマス・キャロル』は、イギリスの作家ディケンズが生んだ、クリスマスには定番の物語。 現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。 こんな方におすすめ 『クリスマス・キャロル ...
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まとめ
小説『クリスマス・キャロル』見どころまとめ。
映画を観る前に原作の小説を読むと、さらに楽しめるよ!
クリスマスに読みたい海外小説については、こちらのバナーからどうぞ。
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