小説『ムーミン谷の十一月』感想。一家不在のムーミン屋敷を描く最終作

投稿日:2019年7月16日 更新日:

『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年


『ムーミン谷の十一月』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの最後の作品。

ムーミン一家が不在のムーミン屋敷に、6人のキャラクターが集まり、共同生活をはじめる。

衝突をくりかえしながらも、少しずつ絆を深めていく。

こんな方におすすめ

  • 小説『ムーミン谷の十一月』のあらすじと見どころを知りたい
  • シリーズの中で大人向けの作品を知りたい

目次

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1.『ムーミン谷の十一月』とは?

上段左から『ムーミン谷の彗星』下村隆一訳
『たのしいムーミン一家』山室静訳
『ムーミンパパの思い出』小野寺百合子訳
『ムーミン谷の夏まつり』下村隆一訳
下段左から『ムーミン谷の冬』山室静訳
『ムーミン谷の仲間たち』山室静訳
『ムーミンパパの海へいく』小野寺百合子訳
『ムーミン谷の十一月』鈴木徹郎訳
『小さなトロールと大きな洪水』冨原眞弓訳
いずれもヤンソン作、講談社、2011年

『ムーミン谷の十一月』(原題”Sent i november”)は、フィンランドの女流作家・画家のトーベ・ヤンソンにより、1970年に刊行された。

1945~1970年に刊行された小説「ムーミン」シリーズ全9作のうち最後の作品。

日本では1968年、鈴木徹郎訳で講談社より刊行された。

参考:Wikipedia

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鈴木徹郎(訳)

児童文学者、翻訳家。

1922年、長野県生まれ。

東京帝国大学(現東京大学)中退。

宣教師からスウェーデン語を教わり北欧文学の道に入る。スウェーデン語、デンマーク語を習得。

1990年没。

主な作品(翻訳・ムーミンシリーズ以外)

参考:Wikipedia

2.内容紹介

冬眠に入るまえの十一月。いやしをもとめ、ムーミンやしきに集まったフィリフヨンカ、ホムサ、ヘムレン、スナフキンたち。けれども、ムーミン一家は旅に出ていて・・・。(中略)

トーベ・ヤンソンがおくるムーミン童話の最終巻!

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

登場人物

  • スナフキン:ムーミントロールの親友。自由と孤独、音楽を愛する旅人。
  • ミムラねえさんミムラ兄弟姉妹の長女。しっかり者でさばさばした性格。
  • スクルッタおじさん:気味が悪いほど年をとった、わすれんぼうのおじいさん。
  • ヘムレン:ムーミン谷を懐かしんでやってくる。周囲の世話を焼いて回る。
  • ホムサ=トフト:ヘムレンさんのヨットに住んでいた、思慮深い少年。
  • フィリフヨンカ:几帳面できれい好きの女性の生き物。神経質でちょっとめんどくさい性格。
  • ご先祖さま:毛むくじゃらの小さな生き物。ムーミン族の先祖といわれている。

参考:Wikipedia

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3.本の感想

『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

『ムーミン谷の十一月』は、ムーミン一家が不在なのにムーミン屋敷に集まってしまった6人のことを描いた物語。

前作『ムーミンパパ海へいく』で一家がムーミン谷を離れているあいだのムーミン屋敷を描いているんだよね。

シリーズ最後の作品にして、主役のムーミンたちがまったく登場しないのに、ちょっとびっくり。

だけど、今作に登場する人たちは、ことあるごとにムーミン一家のことを思いだすので、逆にその存在感を大きく感じる。

特別ではない6人が、ムーミン一家のことを恋しがりながらも徐々に自立していく様子は、読む側の気持ちとダブってじんわりくる。

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3−1.それぞれの事情

季節は秋。

それぞれににぎやかで楽しい夏を過ごした生きものたちが、冬をどう過ごすかを決める季節。

スナフキン、ホムサ・トフト、フィリフヨンカ、ヘムレンさん、スクルッタおじさん、ミムラねえさんの6人は、それぞれの事情からムーミン屋敷にやってくる。

曲をつかまえたいスナフキン

 

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毎年秋から春まで旅に出るスナフキンは、今年もムーミン谷のテントをたたみ、南へ向かって歩き始める。

歩いている途中で見えるのは、フィリフヨンカ、ミムラねえさん、ヘムレンさんなど、「家に残ることに決めた人たち」の家

ももちん
これから共同生活をおくる人たちを暗示しているね。

スナフキンはその横を通りながら思う。

家ってやつは、どいつもこいつも、気にいらないな。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

ものを持つことを好かないスナフキンは、家があること自体が不自由なことだと思っているんだよね。

旅をつづけるスナフキンだけど、行き先が決まっているわけではない。

たくさん歩き、たくさん眠り、なにも考えずに旅をする、その行為そのものが目的になっているんだよね。

あるときスナフキンは、夏にムーミン谷でひらめいた「五つの音色」がもどってきたことを感じる。

スナフキンは、五つの音色の雨の曲をつかまえるために、ムーミン谷にもどることを決める。

ももちん
なにかやりたいことが浮かんだとき、ちゅうちょなくきた道をもどる潔さが素敵。

お話が大好きなホムサ・トフト

ホムサ・トフトはヘムレンさんのヨットにかくれ住んでいる。

少年ホムサは『ムーミン谷の夏まつり』『ムーミン谷の仲間たち』でも登場したけれど、ホムサ・トフトとは別のホムサ。

だけど、その思慮深さや、空想の中に入り込んでしまう性格は共通している。

ホムサ・トフトはヨットの中で丸くなりながら、ムーミン一家の人たちのお話を考えている。

中でもホムサ・トフトが大好きなのはムーミンママ。

空想の中で、ムーミンママのまるっこいところ、やさしいところを想像して恋しがるホムサ・トフトがかわいい。

ホムサ・トフトはムーミン一家に一度も会ったことがないけれど、水晶玉や谷の様子まで思い描くことができるんだよね。

ある雨の夜、ホムサ・トフトはお話の中だけでなく、本当にムーミン谷にいってみよう、と思い立つ。

ムーミン谷までの道のりははじめてだったけれど、ホムサ・トフトは迷うことなく歩く。

自分のするべきことがわかっているときって、迷いようがないし、力がみなぎるんだよね。

森のにおいをたっぷりと吸い込みながら、歩きづらい道を一生懸命歩いていく。

ももちん
ホムサ・トフトはにおいに敏感。

相手の感情もにおいで察知したりするよ。

ホムサが登場した作品

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怖い思いをするフィリフヨンカ

几帳面できれい好きのフィリフヨンカは、冬ごもりの前に屋根裏部屋の掃除をしている。

うっかり屋根の上に出てしまい、屋根からすべり落ちそうになるときの瞬間瞬間の描写がリアルでどきどきする。

「死」が頭をよぎり、自分が気にしていたひとつひとつのことが、どれだけちっぽけなことだったかを思い知る

やっとの思いで家の中にもどったフィリフヨンカには、目にうつるものすべてが新鮮にうつる。

ふと目にとまったのはスーツケース。

そのとき、こんなとき愉快におしゃべりをしてさわげるのはムーミン一家しかいない、と思いつく。

ももちん
神経質なわりに、思いたったらすぐ行動するところが、フィリフヨンカらしい。

お茶を飲んで気持ちを落ち着かせてから、さっそく出かけることにする。

フィリフヨンカが登場した作品

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ヨットに乗れないヘムレンさん

ヘムレンさんは、毎日が同じ繰り返しであることにあきあきしている。

良かれと思って、片づけたり整頓することの大切さをみんなに説いてまわっているけど、みんなは行きあたりばったりで楽しそう。

ふいに、ヘムレンさんはむなしくなる。

ふと、自分がなんにもしなくなったらどうなるんだろう、という気がしました。

たぶん、いまとちっとも変わりやしないさ。ほかのやつが、また、だれか、世話を焼きはじめるだけさ。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

ヘムレンさんは、自分がやっていることは、実は「やらなくてもいいこと」なのかもしれないと気づくんだよね。

とたんに、自分がやり残している「ヨットを持っているのに乗れないこと」を思い出し、ゆううつになる。

いままでは、ほかにやることがあるのを言い訳に「ヨットを習っているひまなんてない」と言えたけれど、本当はただ怖くて乗れないことに気づいてしまったから。

ヘムレンさんはこのいやな気持ちを切り替えたくて、ムーミン谷での楽しかった夏を思い出す。

ヘムレンさんは、ムーミン屋敷ではお互いのことに首をつっこむことなく、それぞれが自由にすごせたことをとても懐かしく思う。

ムーミン屋敷に向かうヘムレンさんは、すでに別人。

ろくに準備もせず、迷うことも心配せず、雨の中、足どり軽やかに歩いていく。

もしかすると、ムーミンパパとなら、ヨットに乗れるかもしれない。

そんな淡い期待もいだきながら、ヘムレンさんはムーミン屋敷の前に立つ。

ヘムレンさんが登場した作品

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忘れっぽいスクルッタおじさん

今作にはじめて登場するのが、「気味がわるいほど年より」のスクルッタおじさん。

スクルッタおじさんは、いろんな意味で常識をくつがえすキャラクター。

目が覚めると、自分の名前を忘れている。

だけどまったく動じずに、自分に名前をつけるんだよね。

よし、わしは、スクルッタおじさんなのだ。

と、この人は、ゆかいそうに、小さな声で自分にささやきました。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

スクルッタおじさん、自由だなあ(笑)

おまけに、身内からいろいろ話しかけられるのが大嫌い。

そんなとき思い出すのが、遠い昔に行ったムーミン谷の気持ち良い小川。

あの谷ではパーティーが夜どおし開かれ、スクルッタおじさんは年より扱いされずに、一番さいごまで残ることができる。

ムーミン谷への旅を決めたおじいさんは、何日もかけて、ムーミン谷以外のことはすべて忘れていく。

一番大切なこと以外、すべて忘れることができるって、なんてシンプルなんだろう。

心に残ったものが「谷」だけになったスクルッタおじさんは、まったくあたらしい気持ちで歩きはじめる。

ミイに会いたいミムラねえさん

森からひょっこりあらわれたミムラねえさんは、今作でも自分にとっても満足している。

自分をよく知っていて、ぴしっと身なりを整えて出かけることが好きなミムラねえさんが、さっそうと歩く姿が気持ちいい。

ミムラねえさんは、ムーミン一家の養女になった妹のミイに会いたくなり、ムーミン屋敷をおとずれる

ミムラねえさんが登場した作品

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3−2.共同生活の始まり

6人は、それぞれのタイミングでムーミン屋敷に集まりはじめる。

からまわりのヘムレンさん

初めにあらわれたのは、ヘムレンさんとホムサ・トフト。

ホムサ・トフトがムーミン屋敷に到着すると、先についていたヘムレンさんはまるで主人のようにふるまう。

ヘムレンさんが勝手にルールを持ち出したり、必要のないことまでペラペラしゃべるのがちょっとうざい。

ももちん
でも、ヘムレンさんもそんな自分に飽き飽きしてるのも伝わってくるんだよね。

思慮深いホムサ・トフトはヘムレンさんに従うけれど、あからさまに自分を閉じている

ヒステリックなフィリフヨンカ

つづいて、スクルッタおじさんとフィリフヨンカが順番にやってくる。

フィリフヨンカは、ムーミン屋敷につくなり、一家が不在で掃除もしていないことを、ヒステリックにさわぎたてる

フィリフヨンカは、当然この季節はムーミン一家がいるだろうし、歓迎されるものだと思いこんでいた。

フィリフヨンカ自身、義務や義理をとっても重んじる性格だから、期待をうらぎられたことが許せなかったんだね。

ももちん
なんというか、フィリフヨンカ、しんどいなぁ・・・

ヘムレンVSフィリフヨンカ

フィリフヨンカとヘムレンさんは、出会ってから何度も言い争いをするんだよね。

その原因は、たいていはささいなこと。

落ち葉は触らないほうがいいとか、食事のあとの片付けはだれがする、とかね。

ちなみに、ヘムレンさんがときどき発するセリフには、ももちんもむかついた

命令は男がするんだ。男だ、男だ。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

うちの中のことは女の役目だ。フィリフヨンカと、ミムラねえさんの役目だ。そうだろう。ぼくの言ってることは正しいよね。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

ヘムレンさんには、「男」と「女」の役割をそれぞれ果たすのが正しいと思ってる。

その意見をかざし、スナフキンに「ぼくの言ってることは正しいよね。」と同意を求めるところも、もやっとする。

ももちん
命令されるのが大きらいなフィリフヨンカは、ギャーギャー応戦するけどね(笑)

ヘムレンさんとフィリフヨンカ、お互いいがみあってるけど、とってもよく似てる。

二人とも、自分の意見を正しいと思ってゆずらないし、それを相手に強制するんだよね。

ももちん
心の奥では自分の意見に自信がないから、まわりに確認したがるし、従えたくなるんだよね。

それぞれちがってていいのにね。

なんでも平気なミムラねえさん

周りのいざこざに巻き込まれずに、いつもマイペースでケロリとしているのがミムラねえさん

橋には見知らぬおじいさん(スクルッタおじさん)がいて、よくわからない言いがかりをつけられるけど、かろやかに返答。

そう思うのなら、思ってもいいわよ。なんとでも、かってに思いなさいよ。

ミムラねえさんは、ちっとも気にとめないで、そう答えました。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

無視も反発も同調もせず、ただ自分でいるところが気持ちいい。

ムーミン屋敷についてみると、すぐにフィリフヨンカとヘムレンさんがけんかをはじめる。

そのすべてが、ミムラねえさんにとっては意味のないことなんだけど、けんかを止めることもせず、まっすぐ自分の部屋にいく

ゆったりとまげをといて自慢の髪をとかす様子は、とても満足そう。

だれかと会ったら話さなければならない、いっしょに過ごさなければならない、そんなルールはミムラねえさんにはない。

外側でなにがおこっていても、ミムラねえさんが心地よく過ごすことにまったく影響しないんだよね。

ももちん
ミムラねえさんにとっては、したいときにしたいことをする、それだけが唯一大事なことなんだね。

つきぬけててかっこいい!

たよられるスナフキン

フィリフヨンカとヘムレンさんがけんかをしているとき、たまたまやってくるのはスナフキン。

スナフキンはミムラねえさんとどこか似ていて、ひとりで自分の思うようにやりたい性格。

だけど、ミムラねえさんのようにドライになりきれない優しさがあるんだよね。

ももちん
みんなそれをわかって、スナフキンをたよるんだよね。

ムーミン屋敷につくなり、スナフキンは内にこもるようにテントの中に引きこもるんだけど、だれかしらが入れかわり立ちかわり、テントを訪ねてくる。

スナフキンは、ひとりでいたい気持ちと、みんなと過ごさなければいけない気持ちで葛藤する。

葛藤してしまうのは、スナフキンの中に「求めてくる人には優しくしなければいけない」という気持ちがどこかにあるからなんだよね。

だから、たとえひとりでいたとしても、心の中にまわりの求めてくる声がきこえてきてしまう。

スナフキンは、ひきこもっても心がうるさいなら、いっそみんなとともに過ごそうと決める

そのとき、同時にムーミン一家がいたときの心地よさは、当たり前じゃなかったことにも気づくんだよね。

ムーミンたちだって、うるさいことはうるさいんです。おしゃべりだってしたがります。どこへ行っても、顔があいます。でも、ムーミンたちといっしょのときは、自分ひとりになれるんです

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

他人といっしょにいるという状況は、ムーミンたちとだって、いまだって変わらないはず

だけど、なぜいまはこんなにわずらわしく感じるのだろう?

そんな素朴な疑問がわくんだよね。

ももちん
だれかと一緒にいて、疲れるときと疲れないとき。

自分でいられるときといられないとき。

ちがいってなんなんだろう?

3−3.フィリフヨンカの苦悩

ムーミン一家がいない共同生活のなかで、いろんな不満がくすぶるのがフィリフヨンカ。

ヘムレンさんとのいざこざ以外にも、悩みのたねがいっぱいなんだよね。

ミムラねえさんへのコンプレックス

ミムラねえさんと顔を合わせるときのフィリフヨンカは、ちょっとよそよそしい。

フィリフヨンカは、いつも身なりを整えて満足そうにしているミムラねえさんを見るたびに、女性としてのコンプレックスを感じるんだよね。

それからミムラねえさん、まあ、なんてきれいな髪の毛なんでしょうーふいに、フィリフヨンカは、どっと、からだじゅうのつかれが出てきて、(だけど、あの人たち、みんな、わたしをきらいなんだわ。)と思いました。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

自分にないものを持っている人と比べて「うらやましい」と思う気持ち、よくわかる。

ひとつのことで劣等感を感じはじめると、とたんにあらゆる点で劣っているように感じてしまうし、まわりもそう思っていると思いこんでしまうんだよね。

ももちん
そもそも容姿がまったくちがうふたりだから、比べようがないんだけどね。

料理ができなくてストレス

フィリフヨンカにとって、もともと料理と掃除は大好きなこと。

だけど、初めに自分の家を掃除しているときに死にかけたので、掃除がトラウマになった。

そのうえ、料理や後かたづけも本当はお手の物なのに、ヘムレンさんに命令されてやるのが嫌だったんだよね。

自分の生きがいができないフィリフヨンカは、どんどんストレスをつのらせていく。

ももちん
命令にはむかうことを優先して、自分の本当の楽しみを捨ててしまったんだね。
フィリフヨンカのさかな料理

そんなとき、機転をきかせるのがスナフキン。

スクルッタおじさんが釣ってきたたった1匹の魚を、6人前に料理できるか疑わしげにフィリフヨンカにたずねる

そこからフィリフヨンカは水を得た魚のようにいきいきする。

フィリフヨンカは、そういうが早いか、やにわに、その岩魚をひったくりました。

このわたしでも、六人前に料理ができっこないっていうおさかな、とっくりと見てみたいもんだわ。

※やにわに=すぐに

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

対抗心もコンプレックスも、みんなどこかに行ってしまい、魚を料理することだけに集中するフィリフヨンカ、とてもうれしそう。

この日から、フィリフヨンカは台所の主人になり、喜んでみんなの食事の準備を引き受けるんだよね。

ももちん
好きなことだけをできるときの喜びって、こんな感じ。

ほかのすべてが吹っ飛ぶんだよね。

ムーミンママになろうとする

フィリフヨンカがムーミン屋敷の台所を仕切るようになると、前の台所の主人・ムーミンママの存在を意識しはじめる

台所にやってきたミムラねえさんとのなにげない会話が、フィリフヨンカにつきささる。

ムーミンママのいたときと、変わらないっていうことかしら。

と、フィリフヨンカは、なんの気なしに、細かくいいなおしました。

どういたしまして、大ちがいよ。

と、ミムラねえさん。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

この会話、フィリフヨンカが自分のことをどう思っているかで、とらえ方が違ってくる。

ミムラねえさんは、「ムーミンママとフィリフヨンカがちがう」と言っただけ。

だけど、フィリフヨンカはそれを「ムーミンママがいたときの方が良かった」ととらえるんだよね。

そこで、ありのままの自分を肯定できないフィリフヨンカは、「ムーミンママのように」なろうとしてしまう。

ホムサへ優しくしようとする

フィリフヨンカは子どもがあまり好きではない。

だけど、急にホムサ・トフトに優しく話しかけるようになるんだよね。

フィリフヨンカのおどおどした気持ちをにおいで感じたホムサ・トフトは、ちょっと壁をつくりながらも、親切をうけとる

ももちん
もともと引っ込み思案なホムサ・トフトは、ほっといてほしかったんだよね。

もう、お互いが本来の自分とちがうことをやっているので、ぎくしゃく感がすごい。

おもてで食事しようとする

フィリフヨンカは、食事でもムーミンママになろうと奮闘する。

日曜日の食事を、いつもの台所ではなく、わざわざ外ですることにするんだよね。

この提案にみんな全然乗り気じゃないのが、かわいそうだけどおもしろい。

ひとり盛り上げようとがんばるフィリフヨンカに、ミムラねえさんが痛い一言。

あのねえ、フィリフヨンカ。

と、ミムラねえさんは、重々しい声でいいました。

食卓を外にうつしたぐらいではね、ムーミンママにはなれないんですからね。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

この一言にフィリフヨンカはヒステリックになり、食事はだいなしになる。

でもこの一件で、フィリフヨンカは、ムーミンママになるという無駄な努力をあきらめるんだよね。

ミムラねえさんの一言

ここで印象的なのは、ムーミンママになろうとがんばるフィリフヨンカを冷静にみて、ズバッと「ムーミンママにはなれない」というミムラねえさん。

これは同時に、「ムーミンママになる必要がない」ということなんだよね。

決してフィリフヨンカがムーミンママに劣っているということではない。

フィリフヨンカがムーミンママのようになることをすっきりあきらめ、テンション低め(笑)にもどったとき、ミムラねえさんはいう。

「あなた、また、いつものあなたにもどったみたいよ。(中略)ほんとは、あなた、そういうあなたでいるのがいちばんたのしいのね。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

本当の自分以外のなにかになることをやめたとき、そのまんまで無理のないフィリフヨンカがでてきた

ミムラねえさんはそんなフィリフヨンカを歓迎するんだよね。

フィリフヨンカは、ようやくありのままの自分をみとめはじめ、ずっとやりたかったことを自由に表現するようになっていく。

3−4.ヘムレンさんの迷走

共同生活の中で、はじめからフィリフヨンカとバトルをくり広げるヘムレンさん。

自分が良いこと、正しいことをしていると信じて疑わず、それをまわりにも強制してしまうところがあるんだよね。

ももちん
人当たりはやさしいけれど、善意の押しつけでまわりをいらっとさせる。

うまくいえないけど、なんかうざいです。

わかってほしいヘムレンさん

ももちんは、ヘムレンさんの勝手なところにめっちゃ反発を感じた。

フィリフヨンカとけんかになったとき、逃げるようにスナフキンのテントに勝手にもぐりこむんだよね。

スナフキンの気持ちを無視して、自分の都合だけで決めてしまうのが、むかっときた。

テントでスナフキンと過ごした朝も、ヘムレンさんはなにかと気をつかうんだけど、その方向性が間違っててまたイラッとくる。

ほんとうはさびしい

スナフキンは黙ってきいているので、ヘムレンさんは気を良くして、自分のことをどんどん話す。

こうやって、相手を思いやることなく、あふれるままに自分のことを話すしかないときって、だれにでもあると思う。

そういうときって、自分で自分のことを認められなくて、だれかにこんな自分のことを「OK」してほしいときなんだよね。

ももちん
「こんな自分でもOKですか?OKですよね?」っていう確認を、自分ではなく外側に求めてる。

つまりは、さびしくてしかたがないんだよね。

ヘムレンさんは勝手にスナフキンと気が合うと思いこみ、すっかり元気をとりもどして一日をはじめる。

そのまんまのスナフキン

一方スナフキンはというと、ヘムレンさんの話に興味があるわけでも何でもなかった

ただ、ペラペラ話してくるヘムレンさんに対して、無駄なエネルギーをかけずに黙っていただけなんだよね。

親身になって聞いているわけでもないんだけど、スナフキンがただいるだけで、ヘムレンさんは勝手に癒やされていく

からまわる善意

ヘムレンさんはこのあとも、「良かれと思って」いろいろやるんだけど、裏目に出てしまう。

ある日ヘムレンさんは、「ムーミン谷」と書いた看板を橋にうちつける。

看板をつくった理由は特になく、ただ自分が安心するためだった。

ももちん
枠をきめておくと安心するってこと、あるよね。

なにかの一員になることで生まれる仲間意識。

だけど、この看板が、ふだん怒らないスナフキンを激怒させる

スナフキンの激情をはじめてみたヘムレンさんは、すぐに看板を川に流す。

看板で「誰かのもの」を主張することは、人間の世界では当たり前のことだから、ヘムレンさんは人間っぽい考え。

スナフキンは「〜のもの」という考えをきらっているからこそ、ものを持つことをきらい、一人自由にいきているんだよね。

ももちん
看板に激怒するスナフキンは、『ムーミン谷の夏まつり』でも見ることができるよ。

看板嫌いは父親のヨクサルゆずりなんだよね。

『ムーミン谷の夏まつり』感想

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ツリーハウス

ヘムレンさんはある日、留守にしているムーミンパパを驚かせようとツリーハウスをつくることを思いつく。

さっそくホムサ・トフトを手伝わせ、ツリーハウスづくりにとりかかる。

ももちん
ヘムレンさんは、はじめから小さなホムサ・トフトに対して上から目線。

当たり前のように手伝わせるのがもやっとする。

あるとき、ホムサ・トフトのもやもやが爆発し、ヘムレンさんはひとりで作業するようになる。

最終的にツリーハウスが木から落ちてしまったとき、ヘムレンさんは「ただの木のままのほうが、ムーミンパパは好きなのかもしれない」ということに気づく。

そのときはじめて、「自分が良いと思ってしていることが、相手にとってはそうではないのかもしれない」とわかるんだよね。

怒ることを知るホムサ・トフト

ツリーハウスの件で、初めて怒りを爆発させたホムサ・トフトが印象的だった。

ホムサ・トフトははじめからやりたくないことを手伝わされていたけど、「怒る」という選択があることを知らなかった

それを見ていたミムラねえさんは、ホムサ・トフトにはっとすることを言う。

あなた、くぎぬきするの、きらいなくせに、しているんでしょう。

と、ミムラねえさん。

「なぜかと思って、ふしぎなのよ。(中略)おまけに、ヘムレンさんだって、あなたはきらいなんでしょう。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

ホムサ・トフトは、ミムラねえさんの言葉を聞いてはじめて、「ヘムレンさんを好きかきらいか」ということを考えてみる

その数日後、ホムサ・トフトは初めてヘムレンさんに反発する。

自分からこんな怒りが出てくるということが信じられなかったホムサ・トフトは、あとからこのことを分析してみるけど、わけがわからない。

それほどまでに、「怒り」がだれにでも起こるふつうの感情だということがわからず、押し込めてきたのかもしれないね。

3−5.ホムサ・トフト

空想することが好きなホムサ・トフトは、ムーミン屋敷でもひとりでいることが多い。

自分の世界と共同生活の世界、二つの世界を行き来しながら、自分を見つめていく様子がよくわかる。

ちびちび虫

ホムサ・トフトが特にひかれるのは、深海生物の本。

本はとても難しい内容だったけれど、そこでみつけた「ちびちび虫」の空想がどんどんリアルになり、ホムサ・トフトは怖くなるんだよね。

だけど、自分で大きくしてしまった空想は、自分で小さくすることができる

ホムサ・トフトは、巨大化した「ちびちび虫」と対話し、ついにはちびちび虫はいなくなる。

この一連の流れは、ホムサ・トフト自身の心の中をよくあらわしている。

ちびちび虫が巨大化したとき、ホムサ・トフトの中には、扱い方のわからない怒りのような感情がめばえていた。

実際にこの怒りをヘムレンさんにむき出しにし、後で振り返ってみることで、自分の怒りを理解しようとするんだよね。

ムーミンママへの理想

ホムサ・トフトはムーミンママに会ったことはないけれど、やさしくつつみこんでくれるムーミンママをずっと求めている。

ムーミンママが大好きなあまり、理想像がどんどん大きくなっていくんだよね。

そんなホムサ・トフトに、まっすぐな助言をするのがスナフキンとミムラねえさん。

ふたりは、ムーミンママはホムサ・トフトの都合のいい存在ではないことを伝える。

スナフキン

物語でホムサ・トフトは、「いつかではなく、ママにいますぐに会いたい」と不満をいう。

そこでスナフキンはこたえる。

ママのほうが会いたいのは、だれかしらね・・・。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

自分がママに会いたい気持ちしか考えたことのなかったホムサ・トフトは、スナフキンにこういわれたことで、ママ自身にも「気持ち」というものがあることに、初めて気づいたかもしれない。

スナフキンは、ホムサ・トフトが自分の空想にのみこまれやすいこともよくわかっていた。

だれかを崇拝することの危険さを感じるスナフキンは、『ムーミン谷の仲間たち』でも見ることができるよ。

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ミムラねえさん

自分の空想の中で「理想のムーミン一家」像をつくりあげるホムサ・トフトに、一言ものもうすのがミムラねえさん。

ミムラねえさんは、「ムーミンたちは怒ったことなんてないんだ」といいはるホムサ・トフトに言う。

「ムーミンパパだってムーミンママだって、ムーミントロールだって、おたがいの顔も見るのもいやになることが、ちょいちょいあるんですからね。

引用元:『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

ホムサ・トフトはこの言葉を受け入れることができない。

いつもやさしくて、楽しく幸せなムーミン一家」という夢を壊されたくなかったんだよね。

3−6.パーティーと大掃除

 

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ムーミン一家の癒しを求め集った6人は、期待を裏切られ、むき出しになった不満や寂しさと直面してきた。

そんな日々の中で、それぞれが、ちょっとずつありのままの自分を受け入れていったんだよね。

そして気づいたら、6人には見えない絆がめばえ、一緒にいて楽でいられる共同生活ができあがっていた。

フィリフヨンカの才能

物語の後半で描かれる6人の共同作業が、「パーティー」と「大掃除」。

パーティーではフィリフヨンカのかくれた才能が大爆発

ごちそうやかざりつけはもちろん、出し物の影絵はすばらしく、みんなを感動させた。

フィリフヨンカは、これまで自分自身を苦しめてきた「こうあるべき」っていう考えから自由になり、もともと自分の中にあった「物事を楽しむ才能」を開花させていくんだよね。

パーティーがお開きになったあとひとりになったフィリフヨンカが、スナフキンが忘れていったハーモニカをそっとふく場面が印象的。

だれかと比べることをやめたとき、やっと本来の自分を好きになることができたフィリフヨンカ

翌朝目覚めると、突然「大掃除をしよう」と決めるんだよね。

ももちん
しばらく掃除に拒否反応が出ていたフィリフヨンカだけど、掃除が好きだった自分を思い出したんだね。

掃除を始めたフィリフヨンカは、誰かに手伝いを強制するわけでもなく、ひとりで楽しそうに動き回る

そんな姿を見た周りの人たちは、自然に自分たちも掃除したいと思い始め、参加するのが素敵。

一日がかりの掃除が終わったあと、みんなが玄関でたそがれている挿絵には、静かで心地よい時間が流れている。

それぞれの道

大掃除のあと、6人の共同生活は自然に終わりに近づいていく。

フィリフヨンカとミムラねえさんはそれぞれの家に帰っていき、スクルッタおじさんは冬ごもりに入る。

残ったスナフキン、ヘムレンさん、ホムサ・トフトは、静かにそれぞれの時間を過ごす自由さがあった。

ももちん
お互いに干渉することをやめたとき、かかわることがやさしくなっていくよね。
ヨットに乗れるヘムレンさん

ある日スナフキンは、ヘムレンさんをヨット乗りに誘う。

ヨットに乗れないけど秘密にしていたヘムレンさんは、怖くてどうしようもなかったけど、一緒に乗るんだよね。

海に乗り出し、スナフキンから舵を代わったときのヘムレンさんの恐怖、すごくよくわかる。

必死で舵をとるヘムレンさんに、心配な様子は一切出さず、静かに水平線を見つめているスナフキンの背中が心強い

ふいに、ヘムレンさんは力を入れずに舵をとれるようになる。

自転車に乗るときもそうだけど、恐怖からのコントロールをやめて力が抜けたとき、自然と体にまかせてうまくできるようになるんだよね。

「ヨットに乗る」という一大事をクリアしたヘムレンさんは、それがやりたいことでもなんでもなかったことにも気づく

いままでの「ヨットに乗れない」自分でも、なんの不足もなかったことがわかったヘムレンさんは、家に帰っていく。

ひとりぼっちのホムサ

まもなく、スナフキンも旅に出る。

さよならも言わずにいなくなったけど、ホムサ・トフトはおどろかない。

なぜなら、ムーミン一家の帰りを出迎えるのは、ホムサ・トフトひとりでなければならないと、ふたりともわかっていたから。

ホムサ・トフトは、ちょっと前はスナフキンに対して対抗心を感じていたけど、いまでは信頼と友情を感じているんだよね。

一人になったホムサ・トフトは、森を歩きながらムーミン一家に思いをはせる。

そして突然、自分があいたくて理想化していたムーミンママにも、本当は悲しみや怒りがあることを理解する。

かなしいママもおこっているママも受け入れ、なぐさめたいと思うホムサ・トフトは、かつての自己中心的な空想からは抜けていた。

ムーミン一家がいた島のことを、妬まずに想像するホムサ・トフトは、水平線のかなたにカンテラの光を見つける。

ムーミン一家が帰ってきたことがわかった瞬間だった。

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4.『ムーミン谷の十一月』が読める本の形

今回ももちんが読んだのは、講談社青い鳥文庫の『ムーミン谷の十一月』。

『ムーミン谷の十一月』は、青い鳥文庫以外にも、文庫やハードカバーで刊行されている。

中でも、2019年3月から刊行が始まっているソフトカバーの新版は、翻訳が読みやすくクリアな挿絵でおすすめ。

一度手に取って読んでみたいなぁ。

【2020年夏】ソフトカバーの新版刊行!

2019年3月に講談社より新しく刊行されているのが、ソフトカバーの『ムーミン全集[新版]』

講談社1990年刊のハードカバー『ムーミン童話全集』を改訂したもの。

翻訳を現代的な表現・言い回しに整え、読みやすくし、クリアなさし絵に全点差し替えられている。

ソフトカバーなので持ち歩きやすい。

これから「ムーミン」シリーズを買って読もうと思っているなら、最新版のこちらがおすすめ。

『ムーミン谷の十一月』は2020年夏刊行予定。

電子書籍版あり。

新版はココがおすすめ

  • 翻訳が現代的な表現、言い回しに整えられているので読みやすい
  • クリアなさし絵に全点差し替え
  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • ソフトカバーなので持ち歩きやすい
  • 電子書籍で読める

講談社文庫

『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2011年

講談社文庫の「ムーミン」シリーズは、1978年に初めて刊行された。

2011年に新装版が刊行。

写真では2011年刊行時の表紙だが、2019年3月現在、フィンランド最新刊と共通のカバーデザインに改められている。

文庫版だけど挿絵が豊富で、ふりがなも少なく読みやすい。

大人が手軽にムーミンを読みたいなら、講談社文庫がおすすめ。

電子書籍版あり。

文庫はココがおすすめ

  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • 値段がお手頃で気軽に読める
  • 電子書籍で読める

青い鳥文庫

『ムーミン谷の十一月』ヤンソン作、鈴木徹郎訳、講談社、2014年

講談社青い鳥文庫は、1980年に創刊された児童文庫。

「ムーミン」シリーズは2014、2015年に新装版が刊行された。

児童文庫だけど、字は小さく漢字も多い。ふりがなもふられているが、難易度は文庫版とそんなに変わらない

児童文庫はココがおすすめ

  • 文庫よりサイズが大きめで読みやすい
  • ふりがな付き
  • 児童文庫にしては文字が小さいので、子どもが読むなら童話全集か新版の方がおすすめ

まとめ

小説『ムーミン谷の十一月』感想まとめ。

『ムーミン谷の十一月』感想

  • ムーミン一家は登場しない。特別ではない6人の物語。
  • 集まったそれぞれの事情
  • フィリフヨンカのコンプレックス
  • ヘムレンさんの善意の押しつけ
  • ムーミンママが恋しいホムサ・トフト
  • パーティーと大掃除
  • それぞれの道

ムーミンシリーズ最後の作品。

必ず自分に近いキャラクターを見つけられる、静かに心にひびく作品だよ。

ムーミンの絵本やアニメについては、こちらの記事をどうぞ。

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