『ムーミン谷の夏まつり』本の感想。仲間たちが夏至の劇でひとつに!

投稿日:2019年5月25日 更新日:

『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年


『ムーミン谷の夏まつり』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの5作目。

劇場に移り住み、はなればなれになったムーミン一家が、夏まつりの劇でひとつになる。

北欧の夏至の魅力もいっぱい。

こんな方におすすめ

  • 小説『ムーミン谷の夏まつり』のあらすじと見どころを知りたい
  • 北欧の夏至のついて知りたい
  • パペットアニメーションの『ムーミン谷の夏まつり』について知りたい
スポンサーリンク

1.『ムーミン谷の夏まつり』とは?

上段左から『ムーミン谷の彗星』下村隆一訳
『たのしいムーミン一家』山室静訳
『ムーミンパパの思い出』小野寺百合子訳
『ムーミン谷の夏まつり』下村隆一訳
下段左から『ムーミン谷の冬』山室静訳
『ムーミン谷の仲間たち』山室静訳
『ムーミンパパの海へいく』小野寺百合子訳
『ムーミン谷の十一月』鈴木徹郎訳
『小さなトロールと大きな洪水』冨原眞弓訳
いずれもヤンソン作、講談社、2011年

『ムーミン谷の夏まつり』(原題”Farlig midsommar”)は、フィンランドの女流作家・画家のトーベ・ヤンソンにより、1954年に刊行された。

1945~1970年に刊行された小説「ムーミン」シリーズ全9作のうちの5作目。

劇場にまつわるこの物語は、かつての恋人で舞台監督のヴィヴィカ・バンドレルの影響を受けている。

日本では1965年、矢崎源九郎訳、赤星亮衛挿絵で『ムーミン谷はおおさわぎ』と題し、偕成社より刊行された。

1968年、下村隆一訳で『ムーミン台の夏まつり』として講談社より刊行。

参考:「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」図録、『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』トゥーラ・カルヤライネン著、セルボ貴子・五十嵐淳訳、河出書房新社、2014年、Wikipedia

トーベ・ヤンソン紹介

ムーミン展2019感想。本を読んでてよかった!物語を思い原画を楽しむ

東京・六本木で開催中の「ムーミン展」に行ってきた。 ムーミン小説・絵本ファンの大人がたっぷり楽しめる、ぜいたくな展示。 原画が充実しているので、ぜひ、本を読んでから行くのをおすすめするよ。 こんな方に ...

続きを見る

下村隆一(訳)紹介

『ムーミン谷の彗星』本の感想。地球の危機に不気味さを感じる異色作

『ムーミン谷の彗星』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年 『ムーミン谷の彗星』はフィンランドの作家トーベ・ヤンソンのファンタジー小説。 ムーミンたちがスナフキンやスノークのおじょうさんたちと出会 ...

続きを見る

ムーミンシリーズ紹介

「ムーミン」原作シリーズ本・絵本・アニメなど18シリーズまとめ!

「ムーミン」シリーズは、アニメやキャラクターだけ知っている人も多いけど、原作は児童文学。 児童文学シリーズや絵本・アニメなど、いろんな形の「ムーミン」をまとめてみた。 こんな方におすすめ アニメやキャ ...

続きを見る

2.あらすじ

平和な6月のムーミン谷を、突然おそった大洪水。

流れてきた劇場に移り住むことになったムーミン一家は、すっかり劇団員気分!

いっぽう、水に流されたミイとぐうぜん出会ったスナフキン。

木の上に取り残されてしまったムーミントロールとスノークのおじょうさん。

バラバラになった仲間たちは、ついに劇場で再会!

夏まつりが、いよいよ始まります!!

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2013年

登場人物

  • ムーミントロール:今作の主人公。ムーミン一家の好奇心旺盛な優しい男の子。
  • ムーミンパパ:ムーミントロールの父親。夢見がちでロマンチスト。
  • ムーミンママ:ムーミントロールの母親。賑やかなムーミン一家を支える。常に黒いハンドバッグを携帯している。
  • スノークのおじょうさん:ムーミンと姿形は似ているが異なる種族の生き物。ムーミントロールのガールフレンド。
  • スナフキン:ムーミントロールの親友。自由と孤独、音楽を愛する旅人。
  • ミムラねえさん:ミムラ兄弟姉妹の長女。しっかり者でさばさばした性格。
  • ちびのミイ:ミムラねえさんの妹。裁縫箱にもぐりこめるほど小さい。
  • ニョロニョロ:小さいお化け。身体に電気を帯びており、不用意に近づくと感電する。

初登場

  • ホムサ:洪水から逃れて劇場に移り住む。思慮深い少年。
  • ミーサ:洪水から逃れて劇場に移り住む。自分に自信がなくひがみっぽい少女。
  • エンマ:女の劇場ねずみ。意地悪だが劇への情熱はすごい。フィリフヨンクという舞台監督の夫がいた。
  • 公園番のヘムレン:公園の管理をするヘムル。スナフキンの敵。
  • ろうや番のヘムル:ムーミンたちを無実の罪でろうやに入れる。
  • 小さなヘムル:小さな娘のヘムル。ろうや番のかわりにムーミンたちを見張るが親切で逃がす。
  • フィリフヨンカ:几帳面できれい好きの女性の生き物。スノークのおじょうさんと仲良くなる。

参考:Wikipedia

エピソード一覧

  1. 木の皮の船と火をふく山と
  2. 朝ごはんをさがしにもぐる
  3. ばけものやしきに住みつく
  4. みえっぱりということ、そして木の上でねるのは、きけんであること
  5. 劇場で口ぶえをふくと、どうなるか
  6. 公園番へのかたきうち
  7. 夏まつりのイブのこと
  8. どういうふうに劇をつくるか
  9. ふしあわせなパパ
  10. 劇の練習
  11. ろうや番をだます
  12. ゆめのような初日興行
  13. 罰とほうび
スポンサーリンク

3.本の感想

『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

今作のみどころは、ムーミン一家以外のキャラクターの活躍

前作で登場したミムラねえさんとミイは、本格的に辛口キャラを解放。

孤独を好むスナフキンは子どもたちに囲まれ、新しい一面が見れる。

新登場のホムサとミーサ、フィリフヨンカは、物語に奇妙な味わいをもたらしてくれる。

それぞれの個性がからみあいながら、「夏まつり」という特別な時期が、劇場や森で展開していく。

3−1.北欧の夏至

今作『ムーミン谷の夏まつり』の「夏まつり」ってどんなものか知ってる?

日本に住んでいるももちんは、はじめ「夏まつり」でお盆の頃のおまつりをイメージしたけど、違った。

北欧の「夏まつり」とは、夏至の頃にもよおされる「夏至祭」のことなんだよね。

今作では、「夏まつり」のイブから当日にかけて、さまざまな不思議な出来事、事件やお祭りの劇まで繰り広げられる。

ももちん
夏が短い北欧に住む人にとって「夏まつり(夏至祭)」は特別な日なんだね。

夏至祭ってどんなお祭り?

夏至祭ってどんなお祭りなのか、ざっくり紹介するね。

北欧では、毎年夏至のあたりの数日間が祝日になり、国をあげて夏の訪れをお祝いする。

フィンランドの夏至祭の特徴は、次のとおり。

  • 夏至祭の日を「ユハンヌス」と呼ぶ。
  • この時期に婚約、結婚する人が多い。
  • 湖のそばでkokko(コッコ)と呼ばれるたき火を燃やす。
  • 夏至祭の前夜(イブ)につむ薬草が神聖視され、占いやおまじないに使われる。
  • 女性が7種類または9種類の花を摘んだり、枕の下に置いたりすると、恋がかなえられる
  • 酔っ払った人が溺れる事故が多い。

参考:Wikipedia

今作では、夏至にちなんで次のようなことが起こる。

  • ムーミントロールとスノークのおじょうさんは、小さい動物がたき火をしているのに出会う
  • フィリフヨンカは、夏祭りのお祝いの準備でドアに花輪をかける
  • フィリフヨンカとムーミントロールたちは、夏祭りのたき火をし、歌い踊る
  • スノークのおじょうさんは、「たき火の後に一言も話さず九つの種類の花をつみとって、まくらの下へしくと、その夜見た夢はかなう」という
  • スノークのおじょうさんは、「おまじないを唱えたあとに7回まわり、後ろ向きに井戸まで歩いて井戸をのぞくと、将来の夫が見える」という
  • ニョロニョロは、一年に一度夏祭りのイブに種をまくと土から生えてくる

おまじないをいくつも知ってるスノークのおじょうさんが女の子らしくてかわいい。

今作以外でも、「ムーミン」シリーズでも、次のような夏至にちなんだエピソードがある。

  • ニョロニョロは年に一回、夏至の日に会合(『たのしいムーミン一家』)
  • おばけが、夏至の夜だけは心おきなくおどかしたがる(『ムーミンパパの思い出』)
  • ミイが誕生したのは夏至のころ(『ムーミンパパの思い出』)

物語の中でもいろいろな夏至の言い伝えが盛り込まれているんだよね。

3−2.洪水とムーミン一家

今作のムーミン一家の構成は、ムーミントロール、パパ、ママ、スノークのおじょうさん、ミムラねえさん、ミイ。

一家にミムラねえさんとミイが加わったことで、さらにハチャメチャ感が増した感じ(笑)

「ムーミン」シリーズでは、たびたび自然災害に見舞われるけど、今作でも、ムーミン一家は火山噴火と洪水におそわれるんだよね。

洪水の後でも悲観的にならないで、なんでも楽しんでしまうところは、さすがムーミン一家。

ムーミンママ

 

この投稿をInstagramで見る

 

Moominさん(@moominofficial)がシェアした投稿 -

今作ではまだ洪水が起きていない序盤の平和な感じがとってもいい。

その大きな役割をになっているのが、やっぱりムーミンママなんだよね。

ムーミントロールのために木の皮の船を作ってあげてプレゼントする場面、あいかわらず仲良し親子にほっこり。

ムーミントロールは、じぶんの鼻をムーミンママのに、やさしくすりよせて、いいました。

これ、ママがいままでにつくった中で、いちばんすてきだね

って。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ムーミンママはムーミントロールが話すことに心から賛成するし、ムーミントロールも、やさしいママに素直にくっつくところがかわいい。

水没した我が家を楽しむ

洪水が起きて、ムーミン屋敷の下の階は水没してしまい、暗くなっていたムーミンママ。

ムーミンパパの提案で、上の階の床に穴をあけ、天井から水の中の台所をながめたとたん、ムーミンママはころっと変わってしまう。

まあ、おかしい!

ムーミンママはこうつぶやいて、わらいだしました。あんまりけろけろわらって、ゆりいすにこしかけねばならないくらいでした。こんなふうにして台所を見たら、すっかり気分がよくなったのです

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

視点を変えたとたん、居場所への執着までさらっと流してしまう。

水の中を潜りたがるムーミントロールへの対応も素敵。

そんなこと、やめさせて! ね、ね

と、スノークのおじょうさんが、心配そうにたのみました。

どうして? だめよ。この子は、いまスリルを感じているんだもの

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

危ないことを止めたいスノークのおじょうさんと、やらせるムーミンママの対比がおもしろい。

この対比は、『ムーミン谷の彗星』で彗星が近づく中、ムーミントロールにスニフを探しに行かせるときも見られた。

愛してるからといって危ないことを禁止するというのではなく、信頼して体験させるというのが、ムーミンママの考え方なんだよね。

『ムーミン谷の彗星』感想

『ムーミン谷の彗星』本の感想。地球の危機に不気味さを感じる異色作

『ムーミン谷の彗星』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年 『ムーミン谷の彗星』はフィンランドの作家トーベ・ヤンソンのファンタジー小説。 ムーミンたちがスナフキンやスノークのおじょうさんたちと出会 ...

続きを見る

ミイ

前作『ムーミンパパの思い出』で生まれたちびのミイ。

今作ではすっかりムーミン一家の一員で、しょっぱなからエンジン全開!

裁縫かごの中に隠れられるほど小さな体から吐き出される、爆弾のようなセリフの数々に、思わず吹き出してしまう。

ムーミンママが火山の噴火について説明すると、ミイがはしゃぐ。

みんな、もえちゃうのね! どこのおうちも、お庭も、おもちゃも。それから、小さい弟や妹たちも、その子たちのおもちゃも、全部もえちゃうんだ!

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

嬉々として噴火をまちのぞむ姿、さすがミイ(笑)

洪水の後、ムーミン屋敷を訪ねてきたホムサとミーサに放つ一言もおもしろい。

「ミーサです」

と、ミーサがいいました。

「ホムサです」

と、ホムサがいいました。

ばかみたい!

ちびのミイが、つぶやきました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ふつうに自己紹介してるだけなのに、「ばかみたい!」って(笑)

遠慮なく辛らつな言葉を放つミイだけど、その言葉は不思議と人を傷つけることがないんだよね。

ミイにはまったく嘘がなく、悪意もないということが、みんなどこかでわかっているからなのかもしれないね。

ミムラねえさん

前作で初めて登場した「ミムラのむすめ」ことミムラねえさん。

前作ではほらふきで幼いところも多かったけど、今作ではミイをしっかりしつけるお姉さんに成長している。

その一方で、自信満々の、筋のとおった物の言い方は変わらず、周りを納得させるものがある。

すぐに隠れてしまうミイを大声で呼び出しているとき、ムーミンパパが逆効果だというけど、ミムラねえさんの返しがすごい。

わたしは、じぶんの気がすむように、どなってるだけよ。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ミイを見つけるためでなく、自分のためにやっているということをよくわかっているんだね。

ミムラねえさんは、洪水を前にしても動じない。

「世界が、しずんじゃうの?」

と、ちびのミイがききました。

そうだわよ。もうすぐわたしたち、天国へいくんだから、あんたもいまのうちに、いい子になるようにしなさい

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ミイの気をなだめるために、優しい言葉を言おうとは、一切考えないのが痛快。

ムーミンママなら、ムーミントロールを不安にさせないやさしい言葉をかけるところ。

両者の対応は正反対だけど、どちらの対応も、一緒にいる者に怖さを感じさせないところがすごいって思う。

3−3.おかしな建物にすみつく

みんなが水没したムーミン屋敷を楽しんでいると、なにやらおかしな形をした建物が流れてくる。

避難するようにその建物に引っ越してみると、建物は、ムーミン屋敷よりずっと大きくて、壁が落ちてしまっていた。

実はこの建物、「劇場」なんだよね。

だけど、劇場というものを見たことも聞いたこともないムーミン一家は、おかしな家としか見ていない。

ここで、ムーミン一家とスノークのおじょうさん、ミムラねえさんとミイ、ホムサとミーサの共同生活が始まる。

それぞれの反応

おかしな家に引っ越したときの反応がそれぞれちがっておもしろい。

ムーミンママ

ムーミンママは、さっそく夕方のお茶のしたくを始める。

どんな環境でもお茶の時間をかかさない、ムーミンママの安定感にほっとする。

「ここには、わけのわからないことが、いっぱいあるわ。だけど、ほんとうは、なんでもじぶんのなれているとおりにあるんだと思うほうが、おかしいのじゃないかしら?

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

慣れない家をながめたときのムーミンママのひとりごとにはっとする。

違う環境に行ったとき、今まで慣れ親しんでいたことが「当たり前」じゃなかったことに気づくんだよね。

今の日常がほんとうは当たり前じゃなく、自分が「当たり前」と考えているだけなんだということ、いつでも忘れないようにしたい。

ミムラねえさん

ミムラねえさんとミイ、ホムサがおかしな家の中で見つけたのが、がらくたが所せましと並んでいる部屋。

この建物が劇場とわかっていれば、その部屋が「道具部屋」だとわかるんだけど、もちろん三人はそんなことは知らない。

食べ物を探しているのに、その部屋にあるのは、石こう細工のジャムの瓶や、木でできたりんごなど、そっくりなにせものばかり。

そこでミムラねえさんはほがらかに言う。

わたし、ここがすきだわ。ほんとうに、なんにも意味がないんだもの

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

もともと意味のないウソをつくのがすきなミムラねえさんは、このにせものばかりの道具部屋を気にいるんだよね。

これって、けっこうすごいことだよね。

にせものである理由をわかっていたら納得できるけど、ももちんなら「意味わかんねえ!本物の食べ物がほしいのに!」ってむかつくと思う。

ホムサ

今作で初登場するホムサは真面目で正直な性格で、無口な少年。

ひとつひとつの物事にいつも「なぜなんだろう?」と問いかけているんだよね。

そんなホムサは、にせものばかりの道具部屋で気が重くなる。

じぶんのしょうじきな心をきずつけられて、ホムサは、これはいったいどういうわけなのだろうかと、考えこみました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

なんの意味もないにせものを見て、ほがらかになるミムラねえさんと、ゆううつになるホムサが対照的。

ホムサは意味がわからないものを知りたくなる性格なので、ときどき周りが習慣でやっていることにもつっこみをいれるんだよね。

ムーミン屋敷でも明らかにお世辞を言うミーサにたいして、「ほんとに、そう思うの?」と聞く。

おかしな建物の中でも、深いことは気にせず軽いノリで過ごすムーミン一家たちにも疑問を持つ。

(どうも、ここの連中は、ぼくとまるっきりちがうなあ。あいつらは、(中略)なにを感じたり見たりきいたりしたかも、なぜあばれまわるかも、ぜんぜん気にしちゃいないんだ

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ムーミン一家は、意味がわからなくても目の前で起こるそのままを味わっちゃうから、ホムサにとって不思議だったんだよね。

わけを知って納得したいホムサは、どこか人間ぽさを感じる

ミーサのコンプレックス

今作でホムサと一緒に登場するのが、ひがみ屋で泣き虫の女の子ミーサ。

ミーサははじめからぐちばっかり言ってる、ある意味とっても親近感がわくキャラクターなんだよね。

洪水のときだって、一緒にいるホムサに「なにもかもが、私に辛くあたる」とやつあたり。

ホムサがムーミン屋敷に行こうと誘っても、「私は誘われてない」とひがむ。

コンプレックスのかたまりで、自分に自信がないところが、ももちんの思春期のころとよく似てる。

爆発するコンプレックス

 

この投稿をInstagramで見る

 

Moominさん(@moominofficial)がシェアした投稿 -

おかしな家に引っ越した仲間の中では、ミムラねえさんとスノークのおじょうさん、ミーサが年頃の女の子。

スノークのおじょうさんもミムラねえさんも、突き抜けて自分を肯定しているキャラクター。

そんな二人と一緒に身だしなみを整えているとき、ミーサのコンプレックスが爆発するんだよね。

二人から髪型をアドバイスされたとたん、ミーサは泣き叫ぶ。

あんたたちの、古ぼけたわた毛が、なんだっていうのよ! なんでも、知ったかぶりしてさ。スノークのおじょうさんなんか、洋服もきてないじゃないの。(中略)きものなしに歩くくらいなら、死んだほうがましよ!

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

自分の外見に心底満足している二人からアドバイスされたミーサは、劣等感が刺激されたんだよね。

そんな劣等感を制御できずにぶちまけてしまったことで、さらに自己嫌悪って強くなるよね・・・

スノークのおじょうさん

ミーサからぶちまけられて、痛いところをつかれたのが、スノークのおじょうさん。

洋服を着ていない自分を恥ずかしいと思い始めるんだよね。

この事件のあと、ミーサはかつらの部屋、スノークのおじょうさんは衣装部屋を見つける。

それぞれのコンプレックスをなんとかしようと、かつらをかぶったり衣装をあててみたりするんだけど、しまいには、外見を変えることの無意味さを感じて、悲しくなるんだよね。

わたし、うんとうんと見て、うんとうんとからだにあわせてみたのよ。そしてら、だんだんかなしくなっちゃったわ

と、スノークのおじょうさんは、つづけました。

あんたが!

と、ミーサは、大きな声をだしました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

自信満々に見えたスノークのおじょうさんも悲しくなることがあることを知って、ミーサは少し明るさを取り戻す。

それにしても、ミーサの攻撃を根に持つことなく、自分から仲直りしようとするスノークのおじょうさん、とっても優しくて女の子らしい。

スノークのおじょうさんは、このあと登場するフィリフヨンカや小さなヘムルとも、いち早く心を通わせる。

女の子同士の友情をみれるのも、今作の見どころの一つ。

エンマの登場

ムーミン一家がそれぞれのやり方で新しい生活になじみ始めたころ、「エンマ」がようやく姿をあらわす。

エンマは、もともとこの劇場に住んでいた年取った女のねずみ。

洪水のあとずっと身を隠して、ムーミン一家を観察していたんだ。

エンマはみんなの前に姿を現したとたん、ムーミン一家をバカにし、怒りまるだしで攻撃する。

おまえさんがたは、芝居のことを、なんにも知らん! ただ知らんちゅうよりも、もっと知らんのじゃ。知らんということも、知らんのじゃ!

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

劇場と芝居に身も心も捧げてきたエンマは、ムーミン一家がこの建物を「劇場」とわからないどころか、「劇場」がなにをするところかすら知らないことに怒りをつのらせていたんだよね。

その夜、ムーミントロールとスノークのおじょうさんはたどりついた森の木の上で一夜を明かすことにし、ムーミントロールが口笛を吹いたことが、エンマの怒りを静かに刺激する。

口笛は、劇場では決してやってはならないマナー違反(芝居がおもしろくないという意味)だったんだよね。

夜中にエンマは、こっそり劇場と木をつないでいた綱をほどき、劇場は流れていく。

みんなが起きたころには、ムーミントロールとスノークのおじょうさんは、遠くはぐれてしまっていた。

このエンマの行動は、いたずらを超えた悪意を感じ、「人間ぽい怖さ」に通じるものがある

3−4.夏まつりのイブの森

やがてムーミントロールとスノークのおじょうさんが目をさまし、自分たちが森に取り残されたことに気づく。

おびえて泣くスノークのおじょうさんを元気づけ、リードして森を進んでいくムーミントロールは、男らしく成長したなって思う。

わたし、あんたにさらわれたってことにしておくわ

スノークのおじょうさんが、小さい声でいいました。

うん、それがいい。きみは、おそろしくわめいたけれど、ぼく、とうとう、きみをさらってきたのさ

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

森の二人ぼっちの状況でもユーモアを失わない二人のやりとりにほっこりする。

フィリフヨンカ

この夜、ムーミントロールとスノークのおじょうさんが出会うのが、女性のねずみのようなキャラクターのフィリフヨンカ。

ヘムルのようにフィリフヨンカも、同じ名前のちがうフィリフヨンカが、作品ごとに登場する。

今作では、フィリフヨンカは夏まつりのお祝いの準備をしっかり整えたのに、招待したお客がこなくて、一人ぼっちでしょげかえっている。

自分がそうしたいかよりも、「義務」を優先して行動してしまう性格だから、呼びたくもない親戚を招待していたんだよね。

そこをたずねたムーミントロールとスノークのおじょうさんと一緒に過ごすことで、夏まつりの本当の楽しさを知る。

ハメをはずす

 

この投稿をInstagramで見る

 

Moominさん(@moominofficial)がシェアした投稿 -

お祝いの夕食後に三人が見つけるのが、「〜べからず」とかいてある、ひっこぬかれた大量の立て札。

いい晩だわ! このたてふだを、みんなもしちゃわない? これで、夏まつりの火をたいて、それがもえつきるまで、おどりましょうよ!

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

フィリフヨンカは自分からこの立て札を燃やすことを思いつき、うたったり、おどったりしてはっちゃけるんだ。

義務感から解放され、ハメをはずすフィリフヨンカの姿にスカッとした。

スノークのおじょうさんが夏まつりのおまじないや占いをフィリフヨンカに教えてあげ、二人で楽しむところも女子らしくてかわいい。

だけど、突然おまわりさんのへムルが現れ、三人をつかまえてしまう。

おまわりヘムルは、三人が立て札を引っこ抜いて燃やしたと思ったんだよね。

ほんとうは、立て札を引っこ抜いたのはスナフキンで、三人は燃やしただけなんだけど、抵抗できず、ろうやに連れて行かれる。

3−5.スナフキンとミイ

 

この投稿をInstagramで見る

 

Moominさん(@moominofficial)がシェアした投稿 -

このときスナフキンはなにをしていたかっていうと、ムーミン谷が洪水にあったことも知らずに、のんびりキャンプをしていた。

スナフキンが釣りをしていると、ちびのミイが眠っている裁縫かごをひっかける

ちびのミイは、劇場の床の小さなドアから水の中に落っこちて、裁縫かごに乗ったまま流れてきたんだよね。

前作『ムーミンパパの思い出』でわかったけど、スナフキンとミイは異父兄弟。

しかも、ミイのほうが年上(笑)

この不思議な姉弟が出会い、一緒に行動することになる。

『ムーミンパパの思い出』感想

小説『ムーミンパパの思い出』感想。若き日のパパの冒険と心の成長。

『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年 『ムーミンパパの思い出』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの4作目。 ムーミンパパが自分の若かりし頃を「思い出の記」に ...

続きを見る

ミイとスナフキンのかけあい

子ども扱いしてくるスナフキンをミイはバカにし、真逆のことをやってのけるのがおもしろい。

スナフキンが「ミルクしか飲まないんだろ?」というと、ミイはコーヒーを飲む

スナフキンが「おどろいた子だなあ」というと、「おどろいた子はあんたのほうよ。」と言い返す

だけど、すぐ眠くなってスナフキンのポケットの中にもぐりこむ姿が愛らしい。

そんなミイに、スナフキンがかける言葉も素敵。

たいせつなのは、じぶんのしたいことを、じぶんで知ってるってことだよ

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

さらっと深い言葉をいうスナフキン、かっこいい。

公園番へのいたずら

いつも穏やかなスナフキンだけど、たったひとり大嫌いな人がいる。

それが、公園番のヘムル。

公園番のヘムルは、自分が管理する公園に、なにかを「禁止」する立て札をたくさん立てているんだよね。

  • たばこをすうべからず
  • 草の上へすわるべからず
  • わらったり、口ぶえをふいてはいけない
  • とびはねるべからず
    などなど。

毎日やってくる小さな森の子どもたちは、走り回ったり寝ころんだりしたいのに、公園番のヘムル夫妻が座りこんで見張っているから、おとなしくするしかない。

スナフキンは、この「なにかを禁止されること」が大嫌いなんだよね。

前作『ムーミンパパの思い出』では、スナフキンの父ヨクサルが、わざわざ「立入禁止」のロープをこえて居眠りをしていた。

ももちん
「禁止されることを嫌う」という性格は、ヨクサルからスナフキンにしっかり受け継がれているんだね。
ニョロニョロの種

スナフキンは、一年にたった一日、夏まつりのイブにしかできないいたずらを思いつき、公園番のヘムルをおどかしてやろうと考えていた。

そのいたずらとは、ニョロニョロの種を公園にまくこと。

今までどうやって生まれるかわからなかったニョロニョロ、なんと夏まつりのイブに種をまくと生まれる、ということなんだね。びっくり!

種から生えたばかりのニョロニョロは、特別な電気を帯びていて、囲まれた公園番のヘムルの体が光りだし、公園番のヘムルは退散した。

すかっとしたわ!

ちびのミイが感心していいました。

そうだろ!

スナフキンは、ぼうしをおしあげて、いいました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

いたずら成功!

つづいてスナフキンはたくさんの立て札を引っこ抜く。

この立て札をフィリフヨンカとスノークのおじょうさんとムーミントロールが見つけ、燃やしてしまうんだよね。

森の子どもたち

 

この投稿をInstagramで見る

 

Moominさん(@moominofficial)がシェアした投稿 -

スナフキンのいたずらを全部見ていたのは、小さな森の子どもたち。

森の子どもたちは、スナフキンを「じぶんたちをたすけにきてくれたいい人」と思い込み、スナフキンがどんなにはなれようとしても、ついてきてしまうんだ。

なにしろ、ぼくは、ぜんぜん子どもになれていないからなあ! この子たちが、すきかどうかも、ぼくにゃわからん!

でも、この子たちのほうは、あんたがすきなのよ

ちびのミイは、にやにやしていいました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

にやにやしてみまもるミイ、おもしろい(笑)

結局スナフキンは無視することもできず、24人の森の子どもたちとミイを引き連れていく。

めばえる父性

意外だったのは、スナフキンは森の子どもたちを放っとくのかなと思ったら、子どもたちの食べ物やケガの心配を初めからしているんだよね。

親ともなれば、こんなふうになってしまうんだなあ。きょうは、あの子たちに、なにをたべさせたものだろう?

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

一人を好むスナフキンは、子どもが一緒だとすっかり父親になってしまうんだね。

一生懸命なだめても泣きやまない子どもを前にして、スナフキンとミイのやりとりもおもしろい。

わたしのねえさんみたいにするのがいいわ。なきやまないと、たたきころしちゃうぞ!っていうのよ。そのあとであやまって、キャンデーをやるの

そうすりゃ、ききめがあるのかい?

ないわ

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ききめ、ないんかい!(笑)

おとなしくならない子どもたちと自由なミイに、ためいきをつくスナフキン

やがて、ろうやに入れられて留守になっていたフィリフヨンカの家にたどり着き、スナフキンたちはしばらく落ち着くことにする。

3−6.夏まつりの劇

ムーミントロールとスノークのおじょうさん、ミイとはぐれてしまった劇場のみんなは、もちろん心配していた。

特にムーミンママの心配は大きかったけど、もちろん心配して終わりじゃないんだよね。

ムーミントロールとスノークのおじょうさんのほうが劇場を見つけられるように、みんなで劇をやることを思いつく

劇をつくる

劇のことをなにも知らないムーミンママだったけど、エンマの機嫌をうまくとりながら話を聞くうちに、劇というものがどんなものかを理解していく。

初めは怒っていたエンマも、ムーミンパパ、ホムサ、ミーサ、ミムラねえさんもその気になっていく。

脚本は文筆家のムーミンパパが手がけることになり、ホムサは照明、ミーサとミムラねえさんはプリマドンナになりたがる。

ミーサとミムラねえさん

ひがみ屋で自分に自信がない性格のミーサだけど、劇をやる話になると、がぜんやる気になった。

自分とまったく別の人間になれることに憧れを感じたんだよね。

悲劇の芝居をやると聞いて、率先して死ぬ役をやるというところもミーサらしい。

いいわ。わたし、しまいには死にますよ

と、ミーサ。

そしたら、わたし、ミーサをたたきころす役になれない?

と、ミムラねえさんがいいました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

死ぬ役をやりたいというミーサに、殺す役をやりたいというミムラねえさん(笑)

二人とも、心の中でやってみたいこと(だけど現実では難しいこと)を思いっきりできるという、お芝居の醍醐味をわかってる。

それはそうと、ミムラねえさん、ちょいちょいミーサに辛口なんだよね。

ミーサの自信がない言葉をきいたときの返しも辛口。

もし、わたしが世界でいちばんすてきなミーサだったら、すっかりようすがかわるんだけど・・・」(中略)

そうね。だけど、あんたはそうじゃないんだから

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

はっきりいうけど悪意を感じないところが、ミムラねえさんのサバサバした性格をあらわしている。

仕上げの練習はさんざんのできだったけれど、ミーサははじめて拍手をもらう喜びを知り、お芝居を続けることを決めるんだよね。

エンマの変化

初めあらわれたときは性格が悪くて怖かったエンマは、劇の練習が始まるとどんどん変わっていく

そもそもエンマの初めの怒りは、自分がすべてを捧げてきた「お芝居」を、ムーミン一家が全く知らないということへの怒りだった。

ひとたび劇をやることになれば、それはエンマの腕の見せどころ、ときには根気強く、やさしく指導し、みんなを導いていく。

仕上げの練習でもカオス状態だった役者たちにも、ひとり落ち着いてアドバイスをするエンマ。

でも、口の悪さは変わらない(笑)

もうこうなりゃ、くそおちつきに、おちつくことさ。そしたら、ひとりでに、うまくいくわい。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

「くそおちつきにおちつく」っていう言葉、初めて聞いた(笑)

翻訳の下村龍一氏の言葉のセンス、すごいなー。

3−7.再び一つに

劇のできはともあれ、翌日に初日興行が決まり、宣伝のチラシがそこら中にまかれた。

ムーミントロールたちがつかまっているろうや、スナフキンたちがいるフィリフヨンカの家にもチラシが届き、いよいよみんなが劇場に集合する。

小さなヘムル

ムーミントロールたちをつかまえたおまわりヘムルは、大の芝居好き。

チラシを見て、初日興行を見に行きたくてしかたなくなったおまわりヘムルは、いとこの小さな娘のヘムルにろうやの番をかわってもらう。

この小さなヘムル、とても優しくおとなしくて、一番ろうや番にしちゃいけない性格なんだよね。

結局、三人をろうやから出してしまい、自分の家へ招待する。

劇場へ行こうとする三人を見て「いとこががっかりする」と泣きそうになるけど、悪いことをしていないことがわかると、すぐに意見を変える。

どうして、それを、すぐにいわなかったの

小さなヘムルは、ほっとしたように、こういったのでした。

だったら、もちろん、劇場へいくほうがいいわ。でも、わたしがいっしょにいって、いとこに、すっかり話すのがよさそうね

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

三人を逃がすだけでなく、一緒に行って説明しようとする小さなヘムル。

一見弱々しいけれど、正しいことが何かよくわかり、自分を信頼できる心の強さを感じる。

初日興行

スナフキンももちろんチラシを見て、森の子どもたちやミイと一緒に初日興行に向かう。

でもミイは「劇」というものがどんなものかわかってなくて、劇をみて、そのまんま本当のことだとかんちがいしちゃうんだよね。

ライオンがミムラねえさんを追いかけると、ミイは叫ぶ。

あたいのねえさんを、たすけて! ライオンを、ぶちころして!

そして、だしぬけに、むちゅうで舞台にとびあがると、ライオンにとつげきして、そのするどい歯で、ライオンのあと足に、かみついたのです。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ここで、ちんぷんかんぷんな劇は崩壊し、それぞれがありのままの姿にもどっていく。

ミムラねえさんは帰ってきたミイの鼻にキスをする。

スナフキンは森の子どもたちと一緒に舞台に上がる。

ムーミンママは、みんなのためにコーヒーをいれる。

劇がいつのまにか本当のことになり、お客さんも舞台上に上がり、コーヒーを楽しむ・・・

よくわからない作り物の劇よりも、「日常」のほうがよっぽどおもしろいし、くつろげるんだよね。

再び一つに

ムーミントロールたちも劇場に到着するんだけど、おまわりヘムルに見つかってしまう。

劇場ではなんとか逃げるんだけど、水が引いてムーミン谷に帰る途中で、やっぱりおまわりヘムルにつかまってしまうんだよね。

そこで活躍するのが、小さい娘のヘムル。

なんと、ノートに「するべからず」と5000回書く罰を肩代わりしてあげていたんだ。

そうやって、どのページにもいっぱい書いていくことは、この小さいヘムルにとって、たいへんうれしいことでした。

やっぱり、しんせつにするって、ほんとにすてきなことね!

ヘムルのむすめは、しずかにそう考えていました。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

小さなヘムルは、誰かのために親切にすることに喜びを感じる、尊い精神の持ち主だったんだよね。

だれかにとっては絶対にやりたくないことが、別の誰かにとってはやりたいことなのかもしれないって教えてもらった。

小さなヘムルのおかげでおまわりヘムルからも解放され、ムーミン一家一行はムーミン谷にたどり着く。

ミーサは悲劇専門の女優として、ホムサは舞台監督として、森の子どもたちの何人かは役者として、エンマとともに劇場に残る。

フィリフヨンカは、残った森の子どもたちを引き取り、我が家へ帰っていった。

自分の友だちが、それぞれの人にぴったりしたことができるようになるのは、うれしいものでしょ?

うん、とってもうれしいよ

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ムーミンママとムーミントロールの会話が心地よく残る。

それぞれが自分の好きなものをよく知って、そのとおりにしていれば、自然とおさまるところにおさまるようになっているんだね。

3-8.トーベとビビカ

文庫版の下村隆一氏によるあとがきに、興味深いことが書いてあった。

この本の扉には、「ビビカにささぐ」と書いてあります。(中略)ビビカ=バンドレルさんといって、舞台監督で劇場も経営している女の人の名まえなのです。ヤンソンさんととても仲がよいそうです。

引用元:『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

ヴィヴィカ・バンドレルは、トーベ・ヤンソンのかつての恋人だった人。

トーベ・ヤンソンのパートナーとしては、トゥーリッキ・ピエティラが有名だけど、そのずっと前に恋人関係にあったのが、ヴィヴィカ・バンドレルなんだよね。

ムーミンシリーズの『たのしいムーミン一家』に登場するトフスラン・ビフスランも、トーベとヴィヴィカがモデルになっている。

ムーミンの物語は、トーベ・ヤンソンの脚本により二度舞台化されている。

  • 舞台『ムーミントロールと彗星』(1949年):子ども向けのクリスマス劇。脚本はトーベ・ヤンソン、監督はヴィヴィカ・バンドレル。
  • 舞台『舞台袖のムーミントロール』(1958年):脚本はトーベ・ヤンソン、監督はヴィヴィカ・バンドレル。

どちらも監督をつとめたのはヴィヴィカ・バンドレル。

恋人関係を解消した後も、良い友人・仕事仲間として交流があったんだね。

参考:『Pen』2015年2月15日号

『たのしいムーミン一家』感想

『たのしいムーミン一家』本の感想。ムーミンの人気を決定づけた名作

『たのしいムーミン一家』ヤンソン作、山室静訳、講談社、1990年 『たのしいムーミン一家』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの3作目。 ムーミンシリーズで日本で一番読まれているのはこの「たの ...

続きを見る

スポンサーリンク

4.『ムーミン谷の夏まつり』が読める本の形

今回ももちんが読んだのは、講談社文庫の『ムーミン谷の夏まつり』。

『ムーミン谷の夏まつり』は、講談社文庫以外にも、童話全集や児童文庫で刊行されている。

中でも、2019年3月から刊行が始まっているソフトカバーの新版は、翻訳が読みやすくクリアな挿絵とのこと。

一度手に取って読んでみたいなぁ。

【2019年8月】ソフトカバーの新版刊行!

2019年3月に講談社より新しく刊行されているのが、ソフトカバーの『ムーミン全集[新版]』

講談社1990年刊のハードカバー『ムーミン童話全集』を改訂したもの。

翻訳を現代的な表現・言い回しに整え、読みやすくし、クリアなさし絵に全点差し替えられている。

ソフトカバーなので持ち歩きやすい。

これから「ムーミン」シリーズを買って読もうと思っているなら、最新版のこちらがおすすめ。

『ムーミン谷の夏まつり』は2019年8月刊行予定。

電子書籍版あり。

新版はココがおすすめ

  • 翻訳が現代的な表現、言い回しに整えられているので読みやすい
  • クリアなさし絵に全点差し替え
  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • ソフトカバーなので持ち歩きやすい
  • 電子書籍で読める

講談社文庫

『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2011年

講談社文庫の「ムーミン」シリーズは、1978年に初めて刊行された。

2011年に新装版が刊行。

写真では2011年刊行時の表紙だが、2019年3月現在、フィンランド最新刊と共通のカバーデザインに改められている。

文庫版だけど挿絵が豊富で、ふりがなも少なく読みやすい。

大人が手軽にムーミンを読みたいなら、講談社文庫がおすすめ。

電子書籍版あり。

文庫はココがおすすめ

  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • 値段がお手頃で気軽に読める
  • 電子書籍で読める

青い鳥文庫

『ムーミン谷の夏まつり』ヤンソン作、下村隆一訳、講談社、2013年

講談社青い鳥文庫は、1980年に創刊された児童文庫。

「ムーミン」シリーズは2014、2015年に新装版が刊行された。

児童文庫だけど、字は小さく漢字も多い。ふりがなもふられているが、難易度は文庫版とそんなに変わらない

児童文庫はココがおすすめ

  • 文庫よりサイズが大きめで読みやすい
  • ふりがな付き
  • 児童文庫にしては文字が小さいので、子どもが読むなら童話全集か新版の方がおすすめ

5.『劇場版ムーミン パペット・アニメーション 〜ムーミン谷の夏まつり〜』

引用元:Moomin and Midsummer Madness/YouTube ムービー

『ムーミン谷の夏まつり』は、パペットアニメーションの映画にもなっている。

1979年、トーベ・ヤンソン監修のもとポーランドで制作されたのは、パペットアニメーション(全78話)のムーミン。

パペットアニメーションとは、人形やぬいぐるみを被写体とし、コマ撮りで制作されたアニメーションのこと。

劇場版用に再編集され2008年に公開されたのが、『劇場版ムーミン パペット・アニメーション 〜ムーミン谷の夏まつり〜』

ナレーションを小泉今日子がつとめた。

まとめ

小説『ムーミン谷の夏まつり』見どころまとめ。

『ムーミン谷の夏まつり』感想

  • 北欧の夏まつり(夏至祭)
  • ミムラねえさんとミイ
  • ミーサのコンプレックス
  • ムーミントロールとスノークのおじょうさんがはぐれる
  • スナフキンの父性
  • 劇をみんなでつくる

劇場に移り住み、はなればなれになったムーミン一家が、夏まつりの劇でひとつになる。

ミイやミムラねえさんなど、ムーミン一家以外のキャラクターの活躍もみどころだよ。

次作『ムーミン谷の冬』については、こちらの記事をどうぞ。

おすすめ
『ムーミン谷の冬』本の感想。ひとり冬眠からさめたムーミントロール

『ムーミン谷の冬』ヤンソン作、山室静訳、講談社、2011年 『ムーミン谷の冬』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの6作目。 ムーミントロールがひとリ冬眠から目をさまし、初めて冬の世界を見る。 ...

続きを見る

スポンサーリンク

Kindleまとめ

そもそも電子書籍って何?っていうところから、Kindleアプリの操作、Kindle Unlimitedまで、Kindleの記事をまとめたよ。

関連記事と広告

-書評(小説・児童文学), 『ムーミン』シリーズ
-

Copyright© ももちんの書評情報 , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.