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漫画『赤毛のアン』杉本啓子版の感想。絵で伝える心情描写が魅力!

2018年9月6日

『赤毛のアン』を読んでみたいが文字が多い小説はなかなか読めない!

そんなあなたにおすすめなのが、漫画『赤毛のアン』。

ももちん
今回は杉本啓子の漫画『赤毛のアン』をレビューするよ。

この記事で紹介する本

この本のポイント

  • 背景・あらすじ・登場人物
  • 「スキマ」で全話無料で読める
  • いがらしゆみこ漫画『赤毛のアン』と読み比べ

杉本啓子『赤毛のアン』

『赤毛のアン』(原題”Anne of GreenGables")は1908年、にカナダの女流作家、ルーシーモード・モンゴメリにより出版された。

日本では、村岡花子の翻訳により、三笠書房より1952年、のちに新潮文庫より1954年に出版。

杉本啓子による漫画『赤毛のアン』は、1983~84年にかけて、講談社より出版された。

全3巻で、第1巻、第2巻が『赤毛のアン』の内容。第3巻は『アンの青春』の内容となっている。

195ページ×3冊。小学校中学年以上向け。

現在はAmazon Kindle他複数の電子書籍サイトで読むことができる。

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漫画:杉本啓子

漫画家。1947年、静岡県生まれ。

高校時代から漫画を描きはじめ、1966年、『別冊少女フレンド』の「うわさのあの子」で雑誌デビュー。

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あらすじ

第1巻・第2巻(内容:『赤毛のアン』)

舞台は1870年代のプリンスエドワード島。

田舎の一軒家、通称「グリン・ゲイブルス」には、マシュウとマリラという老兄妹が住んでいる。

二人は、畑仕事を手伝ってくれる男の子を養子にしようと考えていた。

ところが、ちょっとした手違いからやってきたのは、やせっぽちの赤毛の女の子、アンだった。

初めは戸惑っていた二人も、想像力豊かで明るいアンのペースに巻き込まれていく。

アンが巻き起こす愉快な事件の数々。

泣いたり笑ったりしながら、いつしか3人に、深い愛情が育まれていく。

第3巻(内容:『アンの青春』)

16歳になったアンは、小学校の新任教師となり、理想と希望でいっぱいだ。

新しくやってきたふたごの世話などで忙しく日々は過ぎていく。

ミス・ラヴェンダーやポール・アーヴィングとの出会いがあり、楽しい出来事もつづく。

少女から一人の女性へと成長する、多感な時期を描いている。

 

杉本啓子『赤毛のアン』を読んだきっかけ

小説『赤毛のアン』が大好きなももちん。

漫画の『赤毛のアン』があることを知ったのは、いがらしゆみこの漫画でだった。

あの『キャンディ・キャンディ』のいがらしゆみこが描くアンはどんな感じなんだろうと、最初に読んでみたのがきっかけ。

調べてみると、『赤毛のアン』を漫画で描いている人が他にもいることがわかった。

それで読んでみたのが、この杉本啓子の漫画『赤毛のアン』。

 

いがらしゆみこ『赤毛のアン』について

モンゴメリ『赤毛のアンPART1~3』いがらしゆみこ(画)、くもん出版、1997年

『キャンディ・キャンディ』で有名ないがらしゆみこがてがけた漫画『赤毛のアン』。

夢見る少女アンの成長を、美しい自然を背景にえがいた原作の魅力をそのままにまんが化。

Part1~3まで、全三冊で『赤毛のアン』1冊分を描くという、ボリューミーな編成。

続編の『アンの青春』『アンの愛情』は各1冊ずつで出版されている。

小学校高学年以上向け。208ページ×3冊。くもん出版、1997年。

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漫画『赤毛のアン』がおすすめな理由。

『赤毛のアン』はもともと小説で、ページ数はかなり多い。(新潮文庫版で500ページ超。)

映画やアニメで観て、原作も読んでみたい!と思った人にも読んでほしいけれど、児童向けのものでも、活字が苦手だとハードルが高い。

そんな人におすすめなのが漫画『赤毛のアン』。

小説ではなかなかイメージできない人物像が、漫画によってすぐにイメージできる。

ストーリーを簡単に、楽しみながら知ることができるので、『赤毛のアン』に触れたことがなく、話も知らない人にもおすすめ。

 

電子コミックサイト「スキマ」なら全話無料

杉本啓子の漫画『赤毛のアン』は、紙書籍ではすでに絶版となっているけれど、電子書籍サイトで読むことができることがわかった。

後でも紹介するけれど、たくさんのサイトで読むことができるから、無料で読めるところを探した。

それで見つけたのが「スキマ」という電子コミックサイト。

会員登録しなくても10,000冊以上の漫画が無料で読める。(会員登録すると28,000冊以上読み放題)

ももちんが読みたかった杉本啓子『赤毛のアン』は、会員登録なしでも全話無料で読める作品だったので、ラッキー!って感じで読んでみました。

「スキマ」を見る

 

杉本啓子『赤毛のアン』感想

物語の内容そのものについての感想は、新潮文庫版『赤毛のアン』レビュー記事に書いています。

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ここからは、杉本啓子の漫画『赤毛のアン』を実際に読んでみた感想を書いていくよ。

  1. 空気感が伝わってくる
  2. マリラの心情描写
  3. 易しさ

空気感が伝わってくる

杉本啓子『赤毛のアン』は全3巻で、第1巻と2巻が『赤毛のアン』、第3巻が『アンの青春』の物語となっている。

面白いエピソードが満載の『赤毛のアン』だけど、エピソードだけを漫画に盛り込もうとすると、何となくただの「ダイジェスト版」になりかねない。

杉本啓子の漫画『赤毛のアン』では、メリハリをつけて省略するところは潔くカット。その分大事なエピソードは丁寧に描かれているんだよね。

また、自然や風景の描写を大きなカットで描いたり、会話がない心で感じる場面も、絵で伝わるように工夫されている。

アンがマシュウとともに、初めてグリーン・ゲイブルスに向かう途中、風景の美しさにアンが感動する場面は、アンの気持ちがよく伝わってきた。

あと、漫画の表紙の絵を見てもわかるように、アンの容姿の描き方は、かなり原作のイメージに近いと思う。

ほっそりしていて背が高く、そばかすだらけの赤毛。

この描写がぶれると、なんか違う・・・と小説ファンのももちんは思ってしまうので。

 

マリラの心情描写

読んでいて特徴的なのが、マリラの心の動きを丁寧に描いていること。

小説でも、マリラはセリフではなく、心の中でいろいろ考えてることが多い。

その「心のセリフ」もうまい具合に、漫画の中に盛り込まれている。

アンの身の上を聞いたとき、マリラがアンをふびんに思うところや、ブリュエット夫人に対する怒り。

アンがリンド夫人にかんしゃくを起こしたとき、マリラが過去に自分も不器量と言われ傷ついたことを思い出すところ。

『赤毛のアン』はアンの成長の物語というだけではなく、マリラの心の変化も大きなウェイトを占めているので、そこを描いているのは読者としてはうれしかった。

いがらしゆみこ漫画『赤毛のアン』では、セリフのみで展開していくので、心の動きは描写されていなくて、どうしてもマリラの心の変化は伝わりにいんだよね。

 

易しさ

ルビは全ての漢字にふってあるので、子どもが読むにも困らない。

電子書籍(スマホやタブレット、PC)で読むのがメインになってくるので、ネット環境は必要になってくる。

大人が空いた時間に気軽に読んで楽しむのにはとってもおすすめ。

いがらしゆみこ版の紙書籍には、巻末に解説が載っていて楽しめるけど、杉本啓子版は解説・注釈はない。

ストーリー的にも、おちゃめなキャラクター描写が際立ついがらしゆみこ版は子ども向け、余白や心情描写が丁寧な杉本啓子版は大人向けなテイストかなぁと感じる。

 

いがらしゆみこ版と読み比べ!

モンゴメリ『赤毛のアンPART1~3』いがらしゆみこ(画)、くもん出版、1997年

いがらしゆみこの漫画『赤毛のアン』と読み比べをしてみた。

それぞれの漫画で描かれているエピソードは下の表な感じ。

いがらしゆみこ版は全5冊で『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』を描いている。

杉本啓子版は全3冊で『赤毛のアン』『アンの青春』を描いている。

新潮文庫版『赤毛のアン』いがらしゆみこ『赤毛のアン』杉本啓子『赤毛のアン①②』
第1章 レイチェル・リンド夫人の驚き〇(PART1)〇(①-1話)
第2章 マシュウ・クスバートの驚き〇(PART1)〇(①-1話)
第3章 マリラ・クスバートの驚き〇(PART1)〇(①-1話)
第4章『グリン・ゲイブルス』の朝〇(PART1)〇(①-2話)
第5章 アンの身の上〇(PART1)〇(①-2話)
第6章 マリラの決心〇(PART1)〇(①-2話)
第7章 アンのお祈り〇(PART1)〇(①-3話)
第8章 アンの教育〇(PART1)〇(①-3話)
第9章 レイチェル・リンド夫人あきれかえる〇(PART1)〇(①-4話)
第10章 アンのおわび〇(PART1)〇(①-4話)
第11章 アン日曜学校へ行く〇(PART1)〇(①-5話)
第12章 おごそかな誓い〇(PART1)〇(①-5話)
第13章 待ちこがれるピクニック〇(PART1)(省略)
第14章 アンの告白〇(PART1)(省略)
第15章 教室異変〇(PART1)〇(①-6話)
第16章 ティー・パーティの悲劇〇(PART2)〇(①-7話)
第17章 新しい刺激〇(PART2)〇(①-8話)
第18章 アンの看護婦〇(PART2)〇(①-8話)
第19章 音楽会と災難と告白〇(PART2)(省略)
第20章 行きすぎた想像力(省略)(省略)
第21章 香料ちがい〇(PART2)〇(②-1話)
第22章 アンお茶に招かれる(省略)〇(②-1話)
第23章 アンの名誉をかけた事件〇(PART2)〇(②-2話)
第24章 音楽会〇(PART3)〇(②-3話)
第25章 マシュウとふくらんだ袖〇(PART3)〇(②-3話)
第26章 ストーリークラブの結成(省略)(省略)
第27章 虚栄の果て〇(PART3)△(一部省略。②-4話)
第28章 たゆとう小舟の白ゆり姫〇(PART3)〇(②-4話)
第29章 忘れられないひとこま(省略)(省略)
第30章 クイーン学院の受験〇(PART3)〇(②-5話)
第31章 二つの流れの合うところ〇(PART3)〇(②-5話)
第32章 合格者発表〇(PART3)〇(②-5話)
第33章 ホテルの音楽会(省略)(省略)
第34章 クイーンの女学生〇(PART3)〇(②-6話)
第35章 クイーン学院の冬〇(PART3)〇(②-6話)
第36章 栄光と夢〇(PART3)〇(②-7話)
第37章 死のおとずれ〇(PART3)〇(②-8話)
第38章 道の曲り角〇(PART3)〇(②-8話)
新潮文庫版『アンの青春』いがらしゆみこ『アンの青春』杉本啓子『赤毛のアン③』
第1章 怒りっぽい隣人(省略)
第2章 あとのまつり(省略)
第3章 ハリソン氏の家(省略)
第4章 さまざまの意見△(設定変更)〇(1話)
第5章 新米の先生〇(1話)
第6章 人さまざま(省略)(省略)
第7章 双生児(ふたご)の運命〇(1~2話)
第8章 マリラ双生児をひきとる〇(2話)
第9章 色の問題(省略)(省略)
第10章 デイビーの退屈しのぎ〇(2話)
第11章 子供たちの手紙(省略)(省略)
第12章 ヨナの日〇(3話)
第13章 たのしいピクニック(省略)(省略)
第14章 神のたすけ(省略)
第15章 暑中休暇〇(4話)
第16章 すばらしい便り(省略)(省略)
第17章 待ちあぐねた日(省略)(省略)
第18章 トーリー街道の冒険(省略)(省略)
第19章 幸福な日々(省略)〇(5話)
第20章 思いがけない客(省略)(省略)
第21章 ミス・ラヴェンダー〇(6話)
第22章 お茶のひととき〇(6話)
第23章 ミス・ラヴェンダーのロマンス〇(6話)
第24章 予言者エイブおじさん(省略)(省略)
第25章 静かな村の醜聞(スキャンダル)(省略)(省略)
第26章 道を曲ったところ〇(7話)
第27章 石の家の午後(省略)(省略)
第28章 魔法の城へ王子きたる〇(8話)
第29章 詩と散文〇(8話)
第30章 石の家の結婚式〇(8話)

 

いがらし版にあって杉本版にない場面

いがらし版と杉本版ではそもそものページ数が違うので、描かれているエピソードは杉本版の方が少ない。

丁寧に描いているところとカットしているところ、ちゃんとメリハリがあるからいいと思った。

そんななかで、やっぱりなくて寂しいと思ったのは次の2つ。

 

マリラのブローチの場面

マリラがブローチをなくし、アンを疑い、アンがうその告白をする有名なエピソード。

杉本版ではそっくりカットされている。

マリラが反省し、アンとの絆が深まる場面なので、ないと物足りない。

 

アンが髪を緑色に染める場面

アンが髪を緑色に染める場面は、アンが短い髪で登校し、失敗を回想するという描かれ方になっている。

アンの虚栄心や赤毛に対する劣等感をありありとあらわしている場面なので、ないと寂しい。

他にも『アンの青春』で登場するハリソンさんや、改善会の場面はまるごとカットされている。

 

いがらし版と杉本版の描写の違い

小説『アンの青春』で出てくる場面が、いがらし版と杉本版で違っていた。

新任教師となったアンとギルバートとジェーン。

初出勤のまえのある夕方、3人は教師としての理想を語り合う。

意見が違ったのは「生徒に鞭をあてることは必要か」ということ。

「生徒がいうことをきかないときは鞭をあてる」というジェーンに対し、アンは「もし鞭があてるようなことがあれば、自分は教師を辞める」とまで言い放つ。

間に立たされたギルバートは、「体罰は最後の手段」という意見で、どちらの味方にもならないという場面。

いがらし版ではジェーンは登場せず、アンとギルバート二人だけの会話となっている。

これがちょっと物足りない。

杉本版は原作に忠実に、3人で語り合っている。

この場面は後に、アンがとうとう生徒に鞭をあててしまい後悔する場面へとつながっていくので、丁寧に描いている杉本版の方が好き。

ちなみに、この鞭をあててしまうのは、アンが朝から歯痛でイライラしていたことに加え、悪いことが重なったから。

ここの描き方も杉本版の方が丁寧。

漫画『赤毛のアン』、結局どっちがおすすめかっていうと、原作に忠実に表現している杉本啓子の『赤毛のアン』の方が好き。

 

『赤毛のアン』関連漫画

『赤毛のアン』に関連した漫画は他にもあるので、紹介していくよ。

高見まこ『赤毛のアン』

小学館『学習まんが 世界名作館』は、世代を超えて愛されてきた文学史にのこる名作に、現代の子ども達が親しんでもらうための、新しい学習まんがシリーズ。

まんがの表現形式を利用することでイメージを膨らませやすくなり、さらに解説記事を充実させることで、楽しみながら深く理解することができるようになっている。

題名は知っていてもなんとなく手にとりづらかった「名作」に、子ども達が触れる最初の一歩であり、「次は小説でも読んでみたい!」と思わせる構成となっている。

週刊ヤングジャンプに1984年連載の『いとしのエリー』がヒットした漫画家高見まこがまんがを手がけている。

小学校低中学年以上向け。160ページ。小学館、2013年。

 

原ちえこ『虹の谷のアン』

原ちえこが描いたのは、『赤毛のアン』シリーズの中の第9作(新潮文庫版)にあたる『虹の谷のアン』。

アンが母親になってから、6人の子どもたちをメインに描いている。

作者の原ちえこは、『赤毛のアン』シリーズの大ファンなんだって。

わざわざ『虹の谷のアン』を選ぶところがおもしろい!

上巻165ページ、下巻171ページ。講談社、2003年。

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 まとめ

杉本啓子の漫画『赤毛のアン』みどころまとめ。

  1. 背景・あらすじ・登場人物
  2. 漫画『赤毛のアン』を読んだきっかけ
  3. 「スキマ」で全話無料で読める
  4. いがらしゆみこ漫画『赤毛のアン』と読み比べ
  5. 関連漫画紹介

スマホでサクサク『赤毛のアン』を楽しみたい人にもおすすめの漫画だよ。

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いがらしゆみこの漫画『赤毛のアン』についてはこちらの記事をどうぞ。

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  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

-書評(小説・児童文学), 『赤毛のアン』シリーズ
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