児童文学 『赤毛のアン』シリーズ

『アンの幸福』縁結び役のアンと魅力的な登場人物にくぎづけ!

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モンゴメリ『アンの幸福』村岡花子訳、2008年、新潮文庫

赤毛のアン・シリーズも5冊目に入りました。

今回は『アンの幸福』のみどころを紹介します。

  1. 象徴的な建物は『柳風荘』
  2. アンの存在が周りを照らしていく
  3. 縁結び役
  4. キャサリン・ブルックの人物描写
  5. テディ・アームストロング
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背景

『アンの幸福』(原題”Anne of Windy Willows”柳風荘のアン)は、新潮文庫では赤毛のアン・シリーズ第5作目となっている。

アンの22~25歳までの、ギルバートとの婚約時代を描いている。

物語の時系列としては、赤毛のアン・シリーズ第3作目の『アンの愛情』の次の時代にあたる。

モンゴメリは、一連のアン・シリーズ『アンの娘リラ(1921)』を出版した15年後の1936年に、時代をさかのぼって『アンの幸福』を発表した。

『アンの娘リラ』でアンの話は最後だと考えていたモンゴメリであったが、後に出版社の要請で書いたのがこの『アンの幸福』である。

ルーシー・モード・モンゴメリ、村岡花子について詳しくは、次の記事をどうぞ。

ルーシー・モード・モンゴメリの略歴

村岡花子の生涯・作品についてはこちら。

あらすじ

舞台は19世紀末のカナダ・プリンスエドワード島。

前作にあたる『アンの愛情』の最後に、アンとギルバートは親友から恋人へと変わり、婚約する。

アンはサマーサイド高校の校長になり、医者を目指すギルバートの卒業を待つことになった。

赴任したアンを迎えたのは、敵意に満ちたサマーサイドの有力者、プリングル一族だった。

人間嫌いの副校長、キャサリン・ブルックや、小さなエリザベスとのあたたかな交流。

二人の未亡人と、お手伝いレベッカ・デューと暮らす柳風荘での3年間を、婚約者ギルバートにあてた愛の手紙でつづる。

特徴①象徴する建物、今作は「柳風荘」

『赤毛のアン』ではグリン・ゲイブルス、『アンの青春』では山彦荘、『アンの愛情』ではパティの家・・・

アン・シリーズでは、作品の象徴となる建物も魅力的に描かれています。

『アンの幸福』では、「柳風荘」がその役割を担います。

「柳風荘」は、サマーサイド高校の校長として働く間、アンがホームステイすることになる家の通称です。

そこに大家として住むのは、ケイトおばさんとチャティおばさんと呼ばれる二人の未亡人。そして、家事全般をこなすレベッカ・デューと、猫のダスティ・ミラー。

アンはすっかりこの3人と1匹と仲良くなり、家族のようにあたたかい関係の中で3年間を過ごします。

特徴②アンの存在が周りを照らしていく

前作の『アンの愛情』でも感じましたが、アンはすっかり大人の女性に成長しています。

『赤毛のアン』のときのように、不器量でもなければかんしゃくも起こさない。失敗もしでかしません。

しかしながら、そのユーモアと朗らかさは健在。

初めは敵視されていた、サマーサイドの有力者、プリングル一族に、いよいよ追い出されるか、というところまできても、アンは決してプリングル一族と争うことなく、親切心で対応します。

その親切が、はからずもプリングル家の和解のきっかけとなります。

小さなエリザベス

アンは成長しても、豊かな想像力は変わっておらず、年下の少年少女と心を通わせるのも得意です。

2作目『アンの青春』では、少年ポール・アーヴィングと心を通わせるようになりますが、今作でキーとなる少女は「小さなエリザベス」。

裕福だが愛情を注いでもらえないエリザベス。アンは、毎日エリザベスが牛乳をもらいにやってくる時間におしゃべりをし、心を通わせるようになります。

グリン・ゲイブルスで一緒に休暇を過ごしたり、音楽界でエリザベスが歌えるように画策したり。

最終的には、エリザベスも家族の愛情を得ることができ、ハッピーエンドとなります。

特徴③縁結び役

『アンの幸福』で特徴的なのは、アンが周りの人々の縁結び役をつとめる場面です。

アン自身はすでにギルバートと婚約しているため、サマーサイドの友人は、こぞってアンに相談しに来るようになったのです。

3組のカップルが結ばれますが、そのどれもが予想外でおもしろい展開です。あらすじを紹介します。

レノックス・カーター&エズメ・テイラー

エズメが心を寄せる従兄弟のレノックスが、テイラー家に食事に来ることになった。

エズメはいよいよ結婚を申し込まれるのではないかと期待しているが、同時に大きな不安を抱えていた。

その不安とは、父親サイラスの「ふくれ病」の発作だった。

食事の場を少しでも和やかなものにするために、アンはお客として食事に同席することになった。

食事当日、不安は的中し、サイラスは口をいっさいきかないまま食事の席についた。なんとか口をきかせようと、アンは爆弾の一言をはなつ。

それを皮切りに、家族がサイラスについて好き勝手なことを言う。

内気で父親想いのエズメは、絶望のあまり落ち着き払い、初めて真に賢いことを言い放った。

ジム・ウィルコックス&ノラ・ネルソン

友人サリー・ネルソンの結婚式のブライズ・メイドに呼ばれたアンは、サリーの姉・ノラと友だちになる。

28歳のノラは、姉妹の中でひとりだけ未婚でみじめな気持ちでいた。

幼なじみでいつも一緒にいたジム・ウィルコックスに思いを寄せていたが、何百回もけんかをしており、ここ数ヶ月は音信不通状態だった。

ノラは、「以前は、屋根裏部屋に灯りを置いておけば、ジムがすぐにボートで来てくれた」と話す。

アンは、翌日の晩、ノラが猛烈に怒るのを承知で屋根裏部屋に灯りをおいた。

その後待っている結末とは…

ジャーヴィス・モロー&ドヴィー・ウェスコット

ジャーヴィスとドヴィーは、一年以上婚約していた。ドヴィーの父親フランクリンは、ドヴィーに崇拝者を持つことを許さず、ジャーヴィスを出入り禁止にしてしまった。

頑固者のフランクリンの許しを得ることは無理だと、街の誰もが思っていた。

アンはジャーヴィスにドヴィーとの駆け落ちをすすめ、ジャーヴィスもその気だが、父親を怖がっているドヴィーはなかなか決断しない。

アンの説得によりとうとう駆け落ちを実行した二人。

ドヴィーに頼まれ、アンは気を滅入らせながら、フランクリンに二人の駆け落ちのことを知らせに行くが、待っていたのは予想外の展開だった。

特徴④キャサリン・ブルックの人物描写

『アンの幸福』で印象的な登場人物といえば、サマーサイド高校の副校長、キャサリン・ブルック。

キャサリンは、自分より年下のアンが校長であることを恨んでいました。

せまくて陰気な家に下宿しており、服装はたいそうだらしなく、ひどい皮肉屋で、いつもけんか腰。

アンからギルバートへの手紙に、以下のようなことを書いています。

キャサリンに話しかけるたびに、あたしは悪いことを言ったような気にさせられます。それでいて、キャサリンが気の毒でなりません。

もっともあたしの同情なんかキャサリンは猛烈に憤慨するでしょう。

(中略)

実を言えば、キャサリンと友達になろうと努力するのをやめてしまいたいのですが、あの不愛想な超然とした態度の裏では、キャサリンは人情に飢えているのだという、奇妙な不可解な感じが湧くのです。

出典:モンゴメリ『アンの幸福』2008新潮文庫

キャサリンからひどい態度をとられながらも、アンはあきらめずに、アヴォンリーでクリスマス休暇を一緒に過ごすためにキャサリンを誘います。

アヴォンリーでの休暇を一緒に過ごすうちに、二人は打ち解け、またとない親友となるのです。

アンが成長して、朗らかで上品な女性になっている今、キャサリンのような一癖も二癖もある存在は、作品の中でスパイスとしてとても効いています。

かつての『赤毛のアン』でのアンのように、欠点だらけでも憎めない、魅力的な存在です。

特徴⑤テディ・アームストロング

『アンの幸福』の中で、私が好きなエピソードが、テディ・アームストロングという少年が出てくるお話です。

アンと生徒のルイスが寄付金集めに家々を回っているとき、不愛想な男性に冷たくあしらわれてしまいます。

その直後二人の前に現れたのが、男性の息子、テディと飼い犬。

とても人懐こくかわいい少年で、父子家庭で暮らしていました。

ルイスがカメラを持っていたため、写真を撮ってあげました。

数週間後、現像した写真を届けに、二人はテディの家へ向かったところ、そこで知らされたのが、テディが肺炎で死んでしまったということ。

息子を失い、悲しみに暮れていた父親は、涙を流して写真を感謝します。

そしてこのエピソードは、ここで終わりではないのです。

もう一展開あって、さらにあたたかな結末になるところが、私はとても好きです。

他出版社の『アンの幸福』リスト

今回の記事は、村岡花子翻訳の新潮文庫『アンの幸福』(2008年、完訳版)をもとに書いています。

『アンの幸福』は2018年7月現在、新潮社以外では、2社から、4シリーズ出版されています。

それぞれの出版社ごとに、翻訳者や特徴をあげておきます。

①講談社

講談社文庫

講談社文庫は、掛川恭子による完訳版。

『アンの幸福 (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 4)』モンゴメリ、掛川恭子訳、2005年

講談社ハードカバー

講談社からの完訳版は、ハードカバーの児童向けでも出版されている。

銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。

『アンの幸福 (完訳 赤毛のアンシリーズ 4)』モンゴメリ、掛川恭子訳、1990年

講談社青い鳥文庫

講談社の児童文庫、青い鳥文庫からは、HACCANによるイラストがかわいらしい『アンの幸福』が出版されている。

『アンの幸福 赤毛のアン(4) (講談社青い鳥文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2013年

②グーテンベルク21(Kindle版)

Kindle版の出版社、グーテンベルグ21からは、角川文庫のアンシリーズで翻訳を手がけた中村佐喜子訳の『アンの愛の手紙』を読むことができる。

この『アンの愛の手紙』は、1961年に角川文庫より刊行されたものだが、現在紙書籍は絶版となっている。

角川文庫で中村佐喜子翻訳のアンシリーズを読み進めてきた人におすすめ。

『アンの愛の手紙 Kindle版』モンゴメリ、中村佐喜子訳、2014年

まとめ

『アンの幸福』みどころまとめ

  1. 象徴的な建物は『柳風荘』
  2. アンの存在が周りを照らしていく
  3. 縁結び役
  4. キャサリン・ブルックの人物描写
  5. テディ・アームストロング

みどころ盛りだくさんです。ぜひ読んでみてね。

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