小説『ムーミンパパの思い出』あらすじと感想。若きパパの冒険と成長

2019年5月11日

『ムーミンパパの思い出』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの4作目。

ムーミンパパが自分の若かりし頃を「思い出の記」につづり、息子たちに語り聞かせる。

ムーミンパパの冒険と友情、心の成長が描かれていて、共感要素がいっぱい。

この記事で紹介する本

こんな方におすすめ

  • 小説『ムーミンパパの思い出』のあらすじと見どころを知りたい
  • ムーミントロールやスナフキンのルーツを知りたい

『ムーミンパパの思い出』とは?

『ムーミンパパの思い出』(原題”Muminpappans bravader”)は、フィンランドの女流作家・画家のトーベ・ヤンソンにより、1950年に刊行された。

1945~1970年に刊行された小説「ムーミン」シリーズ全9作のうちのひとつ。

発表順としては『小さなトロールと大きな洪水』(1945年)『ムーミン谷の彗星』(1946年)『たのしいムーミン一家』(1948年)に続く4作目

ムーミンパパが若き日の思い出を自叙伝につづり、ときどきムーミントロールやスニフ、スナフキンに語って聞かせるような構造になっている。

日本では1969年、小野寺百合子訳で講談社より刊行された。

参考:Wikipedia

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小野寺百合子(訳)

翻訳家、作家。

1906年東京生まれ。

東京女子高等師範学校附属高等女学校専攻科卒。軍人家計の中で育ち、陸軍少将小野寺信と結婚。

夫とともにスウェーデンに滞在し、和平工作のための夫の情報活動を手伝い、暗号電文を作ったり、本国からの電文を解読したりした。

1998年死去。

参考:Wikipedia

代表作(翻訳)

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登場人物

  • ムーミンパパ:ムーミントロールの父親。夢見がちでロマンチスト。
  • ムーミンママ:ムーミントロールの母親。にぎやかなムーミン一家を支える。常に黒いハンドバッグを携帯している。
  • ムーミントロール:ムーミン一家の好奇心旺盛な優しい男の子。
  • スニフ:小さなカンガルーのような外見の生き物。臆病で、宝石などキラキラ光る物が大好き。
  • スナフキン:ムーミントロールの親友。自由と孤独、音楽を愛する旅人。

「思い出の記」に登場

  • フレドリクソン:今作で一緒に冒険する、ムーミンパパの初めての友人。発明家。
  • ロッドユール:今作で一緒に冒険する友人。フレドリクソンの甥で、スニフの父。
  • ソースユール:今作終盤でロッドユールと結婚する。スニフの母。
  • ヨクサル:今作で一緒に冒険する友人。スナフキンの父。
  • ミムラ夫人:玉ねぎのようなお団子あたまの大柄な女性。ミムラの娘やミイ、スナフキンの母。
  • ミムラのむすめ:ミムラ夫人の一番上の娘。次作以降には「ミムラねえさん」として登場する。
  • ちびのミイ:今作で夏至の夜に生まれる、ムーミンシリーズの人気キャラクター。
  • ヘムレンおばさん:ムーミンパパが子ども時代にいた孤児院のおばさん。
  • ニブリング:群がって生活するネズミのような容姿の動物。ヘムレンおばさんを気にいる。
  • 王さま:ミムラたちが住んでいた島の王さま。いたずら好き。
  • ニョロニョロ:小さいお化け。白い靴下のような謎の生き物。
  • モラン:触れるものを凍りつかせる女の魔物。

参考:Wikipedia

 

あらすじ

自由と冒険をもとめて、みなしごホームを抜け出したムーミンパパ

発明家・フレドリクソンやスニフの父・ロッドユール、スナフキンの父・ヨクサル。

旅先で出会った最高の仲間たちとともに「海のオーケストラ号」で大冒険へ!

波乱に満ちた青春時代を、ムーミンパパみずから「思い出の記」につづります。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2014年

 

ももちん
このあとは詳しいあらすじ。(ネタバレあり) 感想から読みたいならこちら(後ろへとびます)→→本を読んだ感想

  • プロローグ

    ムーミンパパが「思い出の記」を書き始める。


  • 序章

    「思い出の記」まえがき。


  • 第一章

    ムーミンパパがヘムレンおばさんの経営するみなしごホームに拾われる

    成長し家出をした若きムーミンパパは初めての友人・フレドリクソンと出会う。


  • 第二章

    若きムーミンパパはフレドリクソンのおいで後のスニフのパパ・ロッドユール、後のスナフキンのパパ・ヨクサルとの出会う。

    竜のエドワードの登場。

    フレドリクソンが作った船「海のオーケストラ号」で船出する。


  • 第三章

    ムーミンパパが海でモランから逃げるヘムレンおばさんを助けてしまう。

    規則を押しつけるヘムレンおばさんは、群れで生活するニブリングにさらわれる。

    小さなニブリングを海のオーケストラ号の中で発見。


  • 第四章

    海のオーケストラ号が嵐にあい、島を見つける

    島では竜のエドワードが待ち受けていた。


  • 第五章

    竜のエドワードをなだめ、若きムーミンパパたちは島に上陸する。

    島ではいたずら好きの王様の百歳の誕生日を祝う園遊会が開かれていた。

    ミムラのむすめ、その母親のミムラ夫人(後のスナフキンのママ)と出会う。


  • 第六章

    島にとどまりフレドリクソンが発明を続け、若きムーミンパパたちは新しい村づくりを始めることにする。

    若きムーミンパパはフレドリクソンとのすれ違いを感じる。

    住んでいる操舵室におばけが現れ、いすわる。


  • 第七章

    ミムラ夫人の末むすめミイが生まれる。

    フレドリクソンが新しい「海のオーケストラ号」を発明し、除幕式が行われる。

    試験運転で「うみいぬ」に襲われるが、竜のエドワードに助けられる。


  • 第八章

    ロッドユールがソースユール(後のスニフのママ)と出会い結婚する。

    結婚式の手紙でヘムレンおばさんがニブリングと仲良く暮らしていることがわかり、小さなニブリングは仲間の元へ帰る。

    若きムーミンパパはムーミンママと運命の出会いを果たす。


  • エピローグ

    現在に戻り、かつての友人たちがムーミン屋敷を訪ね再会する。

 

『ムーミンパパの思い出』感想

『ムーミンパパの思い出(講談社文庫)』トーベ・ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

『ムーミンパパの思い出』はこれまでわき役だったムーミンパパが主人公。

前作『たのしいームーミン一家』ですでに書き始めていた「思い出の記」が今作で公開される。

「思い出の記」にはムーミンパパの青春時代の思い出がいきいきと描かれ、ムーミンやスニフ、スナフキンの親も登場。

ムーミンシリーズの中でいちばん古い時代を描いていて、すべての物語はここから始まったと思うと味わい深い。

 

『ムーミンパパの思い出』ポイント

 

入れ子構造

今作はムーミンパパが「思い出の記」をつづり、ムーミントロールやスニフ、スナフキンに語って聞かせるような構造になっている。

ときどき過去の物語からはずれ、現在のムーミンパパと子どもたちが会話するところが、読んでいてほっと一息つける。

「思い出がどんなにリアルでも、あくまで過去であり幻想なんだなあ」と思えるんだよね。

ムーミンパパ自身も海や冒険へのあこがれをいまだにもっているけれど、家族とともにあたたかい家の中にいられる幸せをかみしめているんだよね。

 

ムーミンママという伴侶

今作ではムーミンママは時々しか出てこないけど、ムーミンパパの一番の理解者として的確なアドバイスをするところが素晴らしい。

はじめにムーミンパパに「思い出の記」を書くことを提案するのもムーミンママ。

「思い出の記」を語って聞かせたとき子どもたちの反応が良くなかった時も、ムーミンママはムーミンパパを励ます。

「思い出の記」はなによりパパ自身のためのものであって、子どもたちを満足させることが第一の目的ではないこと、ママはよくわかっている。

スランプだったムーミンパパも、このママの一言でまた書き始める気持ちになるんだよね。

 

スナフキンが子どもっぽい

今作では、ムーミントロールやスニフ、スナフキンは「思い出の記」聞いているときだけ登場する。

ムーミントロールにとっては、憧れるお兄さん的存在のスナフキン。

前作まではスナフキンはひょうひょうと一人を好む雰囲気だったけど、今作ではなんだか「子ども」感が出ているんだよね。

子どもらしい口調で父ヨクサルや母ミムラ夫人のことをきいて、ちょっとやきもちを焼いている姿が新鮮

 

孤児院時代

「思い出の記」はムーミンパパが赤ちゃんのとき「みなしごホーム」の前に置きざりにされていたところから始まる。

規則だらけで孤独な環境で過ごしたムーミンパパの少年時代は、決して幸せなものではなかった。

その語り口からは、ムーミンパパ自身が「自分ってなんてかわいそうなんだろう」って酔っているのが伝わってくる。

どこまでが本当のことでどこからが誇張して書かれているのか区別がつかない。

主人公なのにムーミンパパに共感できない、もやっとした気持ちで読み始めた。

 

ヘムレンおばさんとそりが合わない

赤ちゃんのムーミンパパを見つけたのは、みなしごホームを経営するヘムレンおばさん。

ヘムレンおばさんは教育好きで、子どもたちを愛情よりも規則で育てるんだよね。

ももちん

朝は「この世のスーパー・ヘムレン」の歌をうたうんだって。

ヘムレンおばさん、悪い人ではないんだけど、、、ももちんもちょっと苦手だなー。

 

ムーミンパパの質問

なかでもムーミンパパが不満だったのが、質問にまともに答えてくれないところ。

好奇心が強い子ども時代のムーミンパパは、ヘムレンおばさんにさまざまな質問を投げかける。

  • なぜ、ぼくはぼくであって、ぜんぜんべつのだれでもないの
  • おばさんはなぜヘムルで、ムーミンじゃないの
  • ぼくがゆめで見たムーミンがほんもので、ここに立っているムーミンは、ただおばさんが、ゆめで見ているやつじゃないの

この質問たちを見て、ムーミンパパは生まれながらの哲学者なんじゃないかと思った。

今現実だと思っていることが夢じゃないって思いこんでいるだけで、ほんとうのことは誰にも分っていないのかもしれないって、ももちんも思うことがある。

このムーミンパパに対して、ヘムレンおばさんはまともに返事をすることはない。

ヘムレンおばさんは何かを変える、変わることにはいっさい興味がなく、ただこの世界の中で規則正しく生きていくことだけが大切なんだね。

何の疑問もなくこの世界を受け入れるということが、ヘムレンおばさんの正義なのかもしれない。

 

目覚めの体験

質問しても答えは得られないと感じたムーミンパパは次第に質問することをやめ、内側へ意識が向かっていく

ある朝ムーミンパパはみなしごホームを抜け出して浜辺に行き、海に張った氷の上に乗り出して落ちてしまう。

わたしのたよりない足は、底知れない危険なくらやみを下にして、ばたばたやっていました。そのあいだも、雲はたえまなく空を流れていき、なにごともなかったように、あたりはひっそりとおだやかだったのです。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

すぐ隣にある死というものの、恐怖と安堵を感じた瞬間。

この体験はムーミンパパにとって重要な「目覚めの体験」だったんだと思う。

この日の夜ムーミンパパはみなしごホームを出ていく。

何も確証はないけど、こわいけど「運命の星がみちびくままに、自分を投げ出す」と決めたムーミンパパの旅立ちだった。

 

孤独と自由

ムーミンパパは一晩じゅう森を歩いてだんだん日が差してくると、森の美しさや自分が自由であるということに喜びを感じるんだよね。

この描写からムーミンパパのはちきれそうなわくわくが伝わってきた。

気持ちの良い森に抱かれ小鳥がさえずる中で、自分が住む家の設計図を地面に書いているときのムーミンパパのイラスト、とてもうれしそう。

今作では設計図を書いただけだったけど、後にムーミンパパは想像していた通りの「ムーミン屋敷」をたてて、ムーミンママやムーミントロールと住むことになる。

少年時代からの想像力と意志の強さを感じることができる。

 

友だちとの出会い

ムーミンパパはフレドレクソン・ロッドユール・ヨクサルという3人の友人と出会い、その後の旅を一緒に行くことにする。

ももちん

ロッドユールはスニフの父親。

ヨクサルはスナフキンの父親。

 

フレドリクソン

初めに出会ったフレドリクソンは、ムーミンパパが人生で初めてもった友だち

フレドリクソンは発明家で、今作で登場する船「海のオーケストラ号」を作ったのもフレドリクソン。

自分の話を熱心に聞いてくれ自分のことは多く語らないフレドリクソンに、ムーミンパパは信頼と尊敬を抱く。

後半ムーミンパパの想いが強すぎて、フレドリクソンにつれなくされたときの落ち込みもみどころ。

ムーミントロールがスナフキンに抱く憧れと信頼に近い気持ちを感じる。

 

ロッドユール

ロッドユールはフレドリクソンのおいで、後にスニフのパパとなるキャラクター。

なんでも集めたがったり臆病な性格はスニフにそのまんま受け継がれているけど、ロッドユールの方が腰が低くすぐ謝っちゃうところがかわいい。

ときどきおっちょこちょいなミスをするんだけど、なんか笑えるんだよね。

お人よしなんだけどヘムレンおばさんには我慢できずに悪態をつくところもおもしろい。

今作後半でソースユールと恋に落ち結婚する。

 

ヨクサル

海のオーケストラ号の立ち入り禁止の操舵室にしのびこみ眠っていたのは、のちにスナフキンの父となるヨクサル

いつも眠そうにしていて食べるか眠るかしない、息子のスナフキンに輪をかけてマイペースな性格。

その態度に疑問を持つムーミンパパに、フレドリクソンは告げる。

ぼくたちは、いちばんたいせつなことしか考えないんだなあ。きみはなにかになりたがっている。ぼくはなにかをつくりたいし、ぼくのおいは、なにかをほしがっている。それなのにヨクサルは、ただ生きようとしているんだ

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

それぞれが考えることに本当は優劣はないし、どっちが重大、どっちが正しいというのもないんだよね。

ムーミンパパは体験することに重要な意味を見出したい、何か立派なものになりたいという望みがあって、ヨクサルにはそれがないというだけのこと。

「今を生きている」という点を見ると、ヨクサルは悟りの境地にいるなあと思う。

 

海のオーケストラ号

海のオーケストラ号での航海では、ヘムレンおばさんやモラン、ニョロニョロといった不気味・苦手キャラクターが登場。

ハプニングに見舞われながらも、ムーミンパパは自分と海は深いところで結ばれていることに気づいていく。

 

ヘムレンおばさんを助ける

おもしろかったのが、ムーミンパパがヘムレンおばさんを助けてしまう場面。

ムーミンパパは誰かがモランにおそわれているところを見つけ決死の覚悟で海へ飛び込むんだけど、助けた人を引き上げてみると大嫌いなヘムレンおばさんだったんだよね。

ヘムレンおばさんは助けられて感謝をいうでもなく、さっそく我が物顔で規則を押しつけ始める。

特にムーミンパパたちがうんざりしたのが、タバコとコーヒーを禁止されたこと。

ロッドユールが「モランがもどってきて食べないかしら」と望んでしまうのもわかる・・・。

ももちん
ヘムレンおばさん、まじうぜぇ・・・(笑)

おまえの船じゃないんですけど??

 

ニブリングには好かれる

その後ヘムレンおばさんはニブリング(群れで生活する小さな動物)たちにさらわれてしまい、ムーミンパパたちは一安心。

だけど意外なことに、ヘムレンおばさんとニブリングは気が合って仲良く暮らすんだよね。

ニブリングたちは教育してもらうことが大好き。

嫌で当然と思っていたヘムレンおばさんの個性を好む存在もいる、と知ったときのムーミンパパのショックは大きかった

ヘムレンおばさん自身もニブリングといるときの方がいきいきと楽しそう。

どんな個性も合う人と合わない人がいて、その個性自体が悪いわけではないということを教えてもらった。

 

ロックなムーミンママ

ムーミンパパがこのエピソードを子どもたちに聞かせているとき、ムーミンママがいう言葉がロックでおもしろい。

パパはたばこがすきだけど、それでもふるえもはげもこないし、鼻だって黄ばみはしません。気持ちのいいものは、なんだっておなかにもいいのよ。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

「たばこもコーヒーも気持ちがいいから体にいい」っていう独自の意見。

ヘムレンおばさんのしつけを涼しい顔で真っ向から否定するムーミンママ、かっこいい。。

 

ニョロニョロ

「思い出の記」でも不気味な存在として描かれているのが、ニョロニョロ。

海の上を小舟の大群でただようニョロニョロをこのとき初めてみたムーミンパパは、どこかひきつけられる。

この場面は、物語の時系列ではこの次のお話となる『小さなトロールと大きな洪水』への暗示となっている。

『小さなトロールと大きな洪水』では、ムーミンパパはニョロニョロとともにどこかへ行ってしまい、ムーミンママとムーミントロールが探しに行くんだよね。

冒険を求めて家族をおいてふらふらと出かけてしまうムーミンパパ、なかなかダメな男なのかも、と思った。

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島でのできごと

海のオーケストラ号は航海中に嵐にあい、はなれ島にたどりつく。

この島での滞在でムーミンパパは、ミムラ族との出会い、フレドリクソンとのすれ違い、ムーミンママとの出会いなど人生にとって重要な出来事を経験する。

 

ミムラ族との出会い

ミムラ族とは、タマネギのように結った髪型が特徴の女性の一族

今作では、ミムラ夫人、ミムラのむすめ、ミイが登場する。

 

ミムラのむすめ

ムーミンパパたちが、島で初めに会う島民がミムラのむすめ。

子だくさんのミムラ夫人の一番上の子ども。

ほらふきでよく人をからかう子どもっぽい性格だけど、たくさんいる弟妹たちを洗ってあげる一面もある。

カラッとして落ち込むことがなく、思ったことをズバッというところも気持ちいい。

ミムラのむすめは、次作『ムーミン谷の夏まつり』以降は「ミムラねえさん」として登場する。

次作以降はうそをつくことはなくなり、人にアドバイスしたり身なりをきれいにしていたり、成長した姿が見られる。

 

ミムラ夫人

ミムラ夫人は、ミムラのむすめをはじめとして、19人の子どもを持つ丸くて大きなお母さん。

子どもの多さに動じることなく、いつもニコニコして、どもたちを自由に育てている

ヨクサルはミムラ夫人のおおらかさにひかれ仲良くなり、後に生まれるのがスナフキン

孤独を好みそうに見えるヨクサルがミムラ夫人にひかれるって、なんか意外。

最後にムーミン屋敷をたずねてきたときは、ミムラ夫人の子どもは36人に増えていた。

母性の象徴みたいなキャラクター。

 

ミイ

ムーミンパパたちが島に滞在中の夏至のころ、ミムラ夫人が産んだのがちびのミイ

今作では一番の末娘だけどこのときまだスナフキンは生まれてないから、スナフキンの異父姉ということになる。

生まれたてのミイだけど、さっそくいたずらやおしゃべりを始めている。

今作でも海のオーケストラ号の排気管にオートミールを流し込むいたずらをして、ミムラ夫人は「なんて個性のある子なんでしょ」と感激するところがおもしろい。

ミイの辛口な個性を本格的に楽しめるのは次作『ムーミン谷の夏まつり』以降。

 

ムーミンパパの成長

仲間たちと冒険を続けてきたムーミンパパは、島では仲間との意見の違いや新しいことへの挑戦を経験し、心の成長をとげていく。

 

フレドリクソンとの仲たがい

これまでムーミンパパの信頼が厚かったフレドリクソンは、王さまに島にとどまるように言われる。

早く冒険に出たいムーミンパパと空飛ぶ船を発明したいフレドリクソンは、ここで一度距離ができるんだよね。

このすれ違いによって、ムーミンパパは深いゆううつな気もちに落ちていく。

この心の葛藤の場面、まだ子どものムーミントロールたちに話して聞かせてもつまらないという反応だった。

だけど大人の読者にとっては興味をそそる部分なんだよね。

考えても考えてもすっきりと結論が出ないもやもやした気持ち、よくわかる。

大好きな人と同じ方向を見れないもどかしさに悩んだ期間は、ムーミンパパの心の成長にとって貴重なものだったんだね。

 

おばけ登場

島にとどまって発明を続けるフレドリクソンに合わせるようなかたちで、ムーミンパパも島にとどまる。

ムーミンパパが海のオーケストラ号の操舵室に住みつきゆううつな気持ちにおちいっているとき、現れるのが「白いおばけ」。

おちこんでいる最中にあらわれてきたおばけは、ムーミンパパの心の闇をわかりやすく象徴している。

おばけは、ムーミンパパやほかのひとたちを怖がらせようと頑張るんだけどなかなか怖がってもらえない、ちょっと残念なおばけなんだよね。

しまいにはムーミンパパの操舵室に住みついて、編み物をはじめる始末。

おばけも心の闇も、仲良くなってしまえばこわがる必要もなく共存できるものなんだよね。

 

「自由」から「良識」へ

その後フレドリクソンの空飛ぶ船ができあがり、ムーミンパパは「いよいよ冒険の再開か?」と期待する。

だけどそんな期待もつかのま、フレドリクソンは島で発明をつづけ、ロッドユール結婚する。

ミムラ一家やヨクサル、ロッドユール夫妻やフレドリクソン、みんながムーミンパパの操舵室の家で住みはじめ、ムーミンパパはかえって孤独感をつのらせていくんだよね。

はじめは自由と冒険の精神を持っていたはずなのに、仲間たちとの共同生活で冒険心がどんどん遠のいていく。

その生活を抵抗なく受け入れている自分に、ムーミンパパは寂しさを感じているんだよね。

 

運命の出会い

若かりしムーミンママとの出会いは、なんの前触れもなく突然な感じがする。

あれくるう波に流されてくるムーミンママをムーミンパパが助ける場面の挿絵は、海の大きさとムーミンパパたちの小ささの対比がはっきりしていて迫力がある。

こんな命の危機のときでも、ハンドバックをしっかり握っているのがムーミンママらしい。

はじめからおしとやかで女らしいムーミンママと、ムーミンママに「きみはきれいだよ」と素直に伝えるムーミンパパ、素敵。

ムーミンママとの出会いがきっかけで、ムーミンパパの意識は転機を迎える。

これからあとは、彼女のやさしい理解ある目に見まもられて、わたしの道楽は、正しい観察力や良識にかわっていきました。そのかわりに一方では、無鉄砲で自由な勇気は、わたしからなくなっていきました。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

自分にとって大切なものと出会ったとき、ムーミンパパはこの地のとどまることを進んで受け入れるようになっていくんだよね。

ももちん

「思い出の記」が終わり、現代に戻ってきたエピローグでかつての仲間がムーミン屋敷をおとずれる。

久しぶりの友人・親子の再会の場面はとっても楽しそう。

 

感想おさらい

 

『ムーミンパパの思い出』が読める本の形

今回ももちんが読んだのは、講談社文庫の『ムーミンパパの思い出』。

『ムーミンパパの思い出』は、講談社文庫以外にも、児童文庫やハードカバーで刊行されている。

 

ソフトカバーの新版

『ムーミン全集[新版]3 ムーミンパパの思い出』トーベ・ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2019年

2019年3月に講談社より新しく刊行されているのが、ソフトカバーの『ムーミン全集[新版]』

講談社1990年刊のハードカバー『ムーミン童話全集』を改訂したもの。

翻訳を現代的な表現・言い回しに整え、読みやすくし、クリアなさし絵に全点差し替えられている。

ソフトカバーなので持ち歩きやすい。

これから「ムーミン」シリーズを買って読もうと思っているなら、最新版のこちらがおすすめ。

電子書籍版あり。

新版はココがおすすめ

  • 翻訳が現代的な表現、言い回しに整えられているので読みやすい
  • クリアなさし絵に全点差し替え
  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • ソフトカバーなので持ち歩きやすい
  • 電子書籍で読める

 

講談社文庫

『ムーミンパパの思い出(講談社文庫)』トーベ・ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

講談社文庫の「ムーミン」シリーズは、1978年に初めて刊行された。

2011年に新装版が刊行。

写真では2011年刊行時の表紙だが、2019年3月現在、フィンランド最新刊と共通のカバーデザインに改められている。

文庫版だけど挿絵が豊富で、ふりがなも少なく読みやすい。

大人が手軽にムーミンを読みたいなら、講談社文庫がおすすめ。

電子書籍版あり。

文庫はココがおすすめ

  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • 値段がお手頃で気軽に読める
  • 電子書籍で読める

 

青い鳥文庫

『ムーミンパパの思い出 (新装版) (講談社青い鳥文庫)』トーベ・ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2014年

講談社青い鳥文庫は、1980年に創刊された児童文庫。

「ムーミン」シリーズは2014、2015年に新装版が刊行された。

児童文庫だけど、字は小さく漢字も多い。ふりがなもふられているが、難易度は文庫版とそんなに変わらない

児童文庫はココがおすすめ

  • 文庫よりサイズが大きめで読みやすい
  • ふりがな付き
  • 児童文庫にしては文字が小さいので、子どもが読むなら童話全集か新版の方がおすすめ

 

パペットアニメーションの「ムーミンパパの思い出」

1979年、トーベ・ヤンソンとラルス・ヤンソン監修のもとポーランドで制作されたのは、パペットアニメーション(全78話)のムーミン。

日本では、カルピスまんが劇場シリーズでムーミンの声をつとめた岸田今日子が一人ですべてのキャラクターの吹替を演じ、1990年にNHKBS2で放映された。

2012年、フィンランドでデジタル・リマスター版が制作されると、日本でも松たか子・段田康則の吹替で再吹き替えされた。

どちらの吹替版でも小説『ムーミンパパの思い出』を元にしたエピソードが8話収録されており、原作の世界をパペットアニメーションでたっぷり味わえる。

参考:Wikipedia、『pen』2015年2月15日号(CCCメディアハウス)

岸田今日子版・全78話

松たか子・段田康則版・パパの青春の巻・全10話

 

まとめ

小説『ムーミンパパの思い出』見どころまとめ。

『ムーミンパパの思い出』感想

 

ムーミンパパの冒険と友情、心の成長が描かれていて、共感要素がいっぱい。

ムーミンママとの出会いや、スナフキンやスニフの両親との出会いもみどころだよ。

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  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

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