小説『ムーミンパパの思い出』感想。若き日のパパの冒険と心の成長。

投稿日:2019年5月11日 更新日:

『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年


『ムーミンパパの思い出』はトーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズの4作目。

ムーミンパパが自分の若かりし頃を「思い出の記」につづり、息子たちに語り聞かせる。

ムーミンパパの冒険と友情、心の成長が描かれていて、共感要素がいっぱい。

こんな方におすすめ

  • 小説『ムーミンパパの思い出』のあらすじと見どころを知りたい
  • ムーミントロールやスナフキンのルーツを知りたい
  • 「ムーミン展」を観に行く前に本を読んでおこうと思っている
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1.『ムーミンパパの思い出』とは?

上段左から『ムーミン谷の彗星』下村隆一訳
『たのしいムーミン一家』山室静訳
『ムーミンパパの思い出』小野寺百合子訳
『ムーミン谷の夏まつり』下村隆一訳
下段左から『ムーミン谷の冬』山室静訳
『ムーミン谷の仲間たち』山室静訳
『ムーミンパパの海へいく』小野寺百合子訳
『ムーミン谷の十一月』鈴木徹郎訳
『小さなトロールと大きな洪水』冨原眞弓訳
いずれもヤンソン作、講談社、2011年

『ムーミンパパの思い出』(原題”Muminpappans bravader”)は、フィンランドの女流作家・画家のトーベ・ヤンソンにより、1950年に刊行された。

1945~1970年に刊行された小説「ムーミン」シリーズ全9作のうちのひとつ。

発表順としては『小さなトロールと大きな洪水』(1945年)『ムーミン谷の彗星』(1946年)『たのしいムーミン一家』(1948年)に続く4作目

ムーミンパパが若き日の思い出を自叙伝につづり、ときどきムーミントロールやスニフ、スナフキンに語って聞かせるような構造になっている。

日本では1969年、小野寺百合子訳で講談社より刊行された。

参考:Wikipedia

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小野寺百合子(訳)

小野寺百合子は、生前トーベ・ヤンソンと個人的にとても仲が良かった人。

『ムーミンパパの思い出』『ムーミンパパ海へいく』の翻訳を手がけている。

参考:『MOE』2015年12月号、白泉社

略歴・主な作品

翻訳家、作家。

1906年東京生まれ。

東京女子高等師範学校附属高等女学校専攻科卒。軍人家計の中で育ち、陸軍少将小野寺信と結婚。

夫とともにスウェーデンに滞在し、和平工作のための夫の情報活動を手伝い、暗号電文を作ったり、本国からの電文を解読したりした。

1998年死去。

参考:Wikipedia

主な翻訳作品(ムーミンシリーズ以外)

2.あらすじ

自由と冒険をもとめて、みなしごホームを抜け出したムーミンパパ

発明家・フレドリクソンやスニフの父・ロッドユール、スナフキンの父・ヨクサル。

旅先で出会った最高の仲間たちとともに「海のオーケストラ号」で大冒険へ!

波乱に満ちた青春時代を、ムーミンパパみずから「思い出の記」につづります。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2014年

登場人物

  • ムーミンパパ:ムーミントロールの父親。夢見がちでロマンチスト。
  • ムーミンママ:ムーミントロールの母親。にぎやかなムーミン一家を支える。常に黒いハンドバッグを携帯している。
  • ムーミントロール:ムーミン一家の好奇心旺盛な優しい男の子。
  • スニフ:小さなカンガルーのような外見の生き物。臆病で、宝石などキラキラ光る物が大好き。
  • スナフキン:ムーミントロールの親友。自由と孤独、音楽を愛する旅人。

「思い出の記」に登場

  • フレドリクソン:今作で一緒に冒険する、ムーミンパパの初めての友人。発明家。
  • ロッドユール:今作で一緒に冒険する友人。フレドリクソンの甥で、スニフの父。
  • ソースユール:今作終盤でロッドユールと結婚する。スニフの母。
  • ヨクサル:今作で一緒に冒険する友人。スナフキンの父。
  • ミムラ夫人:玉ねぎのようなお団子あたまの大柄な女性。ミムラの娘やミイ、スナフキンの母。
  • ミムラのむすめ:ミムラ夫人の一番上の娘。次作以降には「ミムラねえさん」として登場する。
  • ちびのミイ:今作で夏至の夜に生まれる、ムーミンシリーズの人気キャラクター。
  • ヘムレンおばさん:ムーミンパパが子ども時代にいた孤児院のおばさん。
  • ニブリング:群がって生活するネズミのような容姿の動物。ヘムレンおばさんを気にいる。
  • 王さま:ミムラたちが住んでいた島の王さま。いたずら好き。
  • ニョロニョロ:小さいお化け。白い靴下のような謎の生き物。
  • モラン:触れるものを凍りつかせる女の魔物。

参考:Wikipedia

エピソード一覧

  1. プロローグ:ムーミンパパが「思い出の記」を書き始める
  2. 序章:「思い出の記」まえがき
  3. 第一章:ムーミンパパの孤児院時代と家出、フレドリクソンとの出会い
  4. 第二章:ロッドユールとヨクサルとの出会い、海のオーケストラ号の出発
  5. 第三章:ムーミンパパがモランから助けたのはヘムレンおばさん
  6. 第四章:海のオーエストラ号があらしに会い、島にたどりつく
  7. 第五章:ミムラ夫人、ミムラの娘との出会い、王さまのいたずら
  8. 第六章:フレドリクソンが島で発明を続けるので、ムーミンパパは新しい村づくりを始める
  9. 第七章:ミイの誕生と、新しい海のオーケストラ号の除幕式
  10. 第八章:ロッドユールの結婚、ムーミンママとの出会い
  11. エピローグ:ムーミン屋敷で友人たちとの再会
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3.本の感想

『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

『ムーミンパパの思い出』は、これまでわき役だったムーミンパパが主人公。

前作『たのしいームーミン一家』で、すでに書き始めていた「思い出の記」が、今作で公開される。

「思い出の記」には、ムーミンパパの青春時代の思い出がいきいきと描かれ、ムーミンやスニフ、スナフキンの親たちも登場。

海の冒険と友情を通してムーミンパパはさまざまな心の変化を体験し、成長をとげ、ムーミンママとの出会いも果たす。

ムーミンシリーズの中でいちばん古い時代を描いていて、すべての物語はここから始まったと思うと味わい深い。

3-1.入れ子構造

今作は、ムーミンパパが「思い出の記」をつづり、ときどきムーミントロールやスニフ、スナフキンに語って聞かせるような構造になっている。

ときどき物語から外れ、ムーミンパパと子どもたちが会話するところが、読んでいてほっと一息つける。

「思い出がどんなにリアルでも、あくまで過去であり、幻想なんだなあ」と思えるんだよね。

ムーミンパパ自身も、海や冒険へのあこがれをいまだにもっているけれど、家族とともにあたたかい家の中にいられる幸せをかみしめているんだよね。

ムーミンママ

今作ではムーミンママは時々しか出てこないけど、ムーミンパパの一番の理解者として的確なアドバイスをするところが素晴らしい。

はじめにムーミンパパに「思い出の記」を書くことを提案するのもムーミンママ。

「思い出の記」を語って聞かせたとき、子どもたちの反応が良くなかった時も、ムーミンママはムーミンパパを励ます。

「思い出の記」はなによりパパ自身のためのものであって、子どもたちを満足させることが第一の目的ではないこと、ママはよくわかっている。

スランプだったムーミンパパも、このママの一言で、また書き始める気持ちになるんだよね。

スナフキンが子どもっぽい

今作では、ムーミントロールやスニフ、スナフキンは「思い出の記」聞いているときだけ登場する。

ムーミントロールにとっては、憧れるお兄さん的存在のスナフキン。

前作まではスナフキンはひょうひょうと一人を好む雰囲気だったけど、今作ではなんだか「子ども」感が出ているんだよね。

子どもらしい口調で父ヨクサルや母ミムラ夫人のことをきいて、ちょっとやきもちを焼いている姿が新鮮

3-2.孤児院時代

「思い出の記」は、ムーミンパパが赤ちゃんのとき、「みなしごホーム」の前に置きざりにされていたところから始まる。

規則だらけで孤独な環境で過ごしたムーミンパパの少年時代は、決して幸せなものではなかった。

その語り口からは、ムーミンパパ自身が「自分ってなんてかわいそうなんだろう」って酔っているのが伝わってくる。

どこまでが本当のことで、どこからが誇張して書かれているのか区別がつかない。

そんな感じで、「思い出の記」に描かれている文章を読んでも、なんだかちっとも同情の気持ちがわかなかったんだよね。

主人公なのにムーミンパパに共感できない、もやっとした気持ちで読み始めた。

ヘムレンおばさん

赤ちゃんのムーミンパパを見つけたのは、みなしごホームを経営するヘムレンおばさん。

ヘムレンおばさんによると、ムーミンパパは天才の星の元に生まれたらしい。

自分が天才であるということをすんなりと肯定しているムーミンパパ、うぬぼれ強い・・・。

ヘムレンおばさんは教育好きで、子どもたちを愛情よりも規則で育てるんだよね。

ももちん

朝は「この世のスーパー・ヘムレン」の歌をうたうんだって。

ヘムレンおばさん、悪い人ではないんだけど、、、ももちんもちょっと苦手だなー。

ムーミンパパの質問

なかでもムーミンパパが不満だったのが、質問にまともに答えてくれないところ。

好奇心が強い子ども時代のムーミンパパは、ヘムレンおばさんにさまざまな質問を投げかける。

  • なぜ、ぼくはぼくであって、ぜんぜんべつのだれでもないの
  • おばさんはなぜヘムルで、ムーミンじゃないの
  • ぼくがゆめで見たムーミンがほんもので、ここに立っているムーミンは、ただおばさんが、ゆめで見ているやつじゃないの

この質問たちを見て、ムーミンパパは生まれながらの哲学者なんじゃないか、と思った。

今現実だと思っていることが夢じゃないって思いこんでいるだけで、ほんとうのことは誰にも分っていないのかもしれないって、ももちんも思うことがある。

このムーミンパパに対して、ヘムレンおばさんはまともに返事をすることはない。

ヘムレンおばさんは何かを変える、変わることにはいっさい興味がなく、ただこの世界の中で規則正しく生きていくことだけが大切なんだね。

何の疑問もなく、この世界を受け入れるということが、ヘムレンおばさんの正義なのかもしれない。

家出

質問をまわりにぶつけても答えは得られないと感じたムーミンパパは、次第に質問することをやめていく。

だんだん自分の内側へ意識が向かっていくあたりに、ムーミンパパの変化を感じた。

目覚めの体験

ムーミンパパが家出の決意をしたきっかけになった出来事は、ムーミンパパにとって重要な「目覚めの体験」だった。

ある春のはじめの朝、ムーミンパパはみなしごホームを抜け出して浜べに向かう。

ムーミンパパは、海に張った氷にうつった自分の全身像をじっくり見ようと氷の上に乗り出したとき、氷が割れ、海の中へおちてしまう。

わたしのたよりない足は、底知れない危険なくらやみを下にして、ばたばたやっていました。そのあいだも、雲はたえまなく空を流れていき、なにごともなかったように、あたりはひっそりとおだやかだったのです。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

すぐ隣にある死というものの、恐怖と安堵を感じた瞬間。

この体験は、ムーミンパパにとって大きなものだったんだと思う。

この日の夜、ムーミンパパはみなしごホームを出ていく。

何も確証はないけど、こわいけど、「運命の星がみちびくままに、自分を投げ出す」と決めたムーミンパパの旅立ちだった。

3-3.友だちとの出会い

 

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ムーミンパパは一晩じゅう森を歩いて、だんだん日が差してくると、森の美しさと、自分が自由であるということに喜びを感じるんだよね。

この描写からムーミンパパのはちきれそうなわくわくが伝わってきた。

ムーミンパパは森の中に美しい場所を見つけ、ここに家を建てることを思いつく。

気持ちの良い森に抱かれ、小鳥がさえずる中で、設計図を地面に書いているときのムーミンパパのイラスト、とてもうれしそう。

今作では設計図を書いただけだったけど、後にムーミンパパは想像していた通りの「ムーミン屋敷」をたてて、ムーミンママやムーミントロールと住むことになるもんね。

少年時代からの想像力と意志の強さを感じることができる。

フレドリクソン

ムーミンパパは三人の友人と出会い、その後の旅を一緒に行くことにする。

初めに出会ったフレドリクソンは発明家で、ムーミンパパが人生で初めてもった友だちだった。

口数は少ないけど、自分の話を熱心に聞いてくれるフレドリクソンに、ムーミンパパは感動をおぼえるんだよね。

これまでムーミンパパが接してきた大人はヘムレンおばさんくらいしかいなかった。

ムーミンパパの話を聞いてくれず、規則を押し付けてくるヘムレンおばさんとは全く違うフレドリクソンを、ムーミンパパは信頼する。

翌日、ムーミンパパはフレドリクソンが発明した船「海のオーケストラ号」があることを知り、一緒に冒険に出ることに決めるんだ。

ロッドユール

フレドリクソンと出会った次の日に出会うのが、フレドリクソンのおいのロッドユール。

ロッドユールはムーミントロールの友だちスニフのお父さんになるキャラクターなんだよね。

なんでも集めたがったり、臆病な性格は、息子のスニフにそのまんま受け継がれている。

ロッドユールの方が腰が低く、すぐ謝っちゃうところがかわいいと思った。

ロッドユールはときどきおっちょこちょいなミスをするんだけど、なんか笑えるんだよね。

お人よしなんだけど、たまたま助けてしまったヘムレンおばさんには我慢できずに悪態をつくところもおもしろい。

ヨクサル

 

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海のオーケストラ号の立ち入り禁止の操舵室にしのびこみ眠っていたのは、のちにスナフキンの父となるヨクサル

禁止されたことはしなければ気が済まない性格は、スナフキンに受け継がれた。

※スナフキンは『ムーミン谷の夏まつり』で公園の番人を敵にして、禁止札をひき抜いていたずらをする。

究極のマイペース

ヨクサルはいつも眠そうにしていて、食べるか眠るかしない、息子のスナフキンに輪をかけてマイペースな性格。

航海中も、緊張して舵をとるムーミンパパに、ヨクサルは「どこに向かって舵をとっているのやら。」と知らん顔。

その態度に疑問を持つムーミンパパに、フレドリクソンは告げる。

ぼくたちは、いちばんたいせつなことしか考えないんだなあ。きみはなにかになりたがっている。ぼくはなにかをつくりたいし、ぼくのおいは、なにかをほしがっている。それなのにヨクサルは、ただ生きようとしているんだ

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

それぞれが考えることに本当は優劣はないし、どっちが重大、どっちが正しいというのもないんだよね。

ムーミンパパは体験することに重要な意味を見出したい、何か立派なものになりたいという望みがあって、ヨクサルにはそれがないというだけのこと。

「今を生きている」という点を見ると、ヨクサルは悟りの境地にいるなあ、と思う。

ニョロニョロとの違い

あるときヨクサルが「波にゆられて眠るだけで、どこへも行きつかなくたってかまわない」と言うと、フレドリクソンに「ニョロニョロみたいだ」と言われる。

ヨクサルは、常に今にいてくつろいでいる自分と、常に水平線にたどり着こうとしているニョロニョロとの違いをはっきり示す。

ヨクサルには自分がしていることが自分にとって最善だし、その理由だってわかっているんだね。

3-4.海のオーケストラ号

いよいよ海のオーケストラ号に仲間たちが乗り込み、船は出発する。

船が川から広い海に出ると、ムーミンパパは自分が海に強くひきつけられていることに気づく。

『ムーミンパパ海へいく』では、ムーミンパパは、再び家族を連れて大航海する。

ムーミンパパと海は、深いところで結ばれているんだよね。

ヘムレンおばさんを助ける

船での出来事でおもしろかったのが、ムーミンパパがヘムレンおばさんを助けてしまう場面。

ムーミンパパたちは川で誰かがモランにおそわれているところを見つける。

おそろしいモランだけど、ムーミンパパは死を覚悟で助けるために海へ飛び込むんだ。

ところが、助けた人を引き上げてみると、ムーミンパパが大嫌いなヘムレンおばさんだった。

ヘムレンおばさんは助けられて感謝をいうでもなく、さっそく我が物顔で規則を押しつけ始める。

特にムーミンパパたちがうんざりしたのが、タバコとコーヒーを禁止されたこと。

ロッドユールが「モランがもどってきて食べないかしら」と望んでしまうのもわかる・・・。

ももちん
ヘムレンおばさん、まじうぜぇ・・・(笑)

おまえの船じゃないんですけど??

ニブリングには好かれる

その後ヘムレンおばさんは、ニブリング(群れで生活する小さな動物)たちにさらわれてしまい、ムーミンパパたちは一安心する。

だけど意外なことに、ヘムレンおばさんとニブリングは気が合って仲良く暮らすんだよね。

ニブリングたちは、教育してもらうことが大好き。

嫌で当然と思っていたヘムレンおばさんの個性を好む存在もいる、と知ったときのムーミンパパのショックは大きかったと思う。

ヘムレンおばさん自身も、ニブリングといるときの方がいきいきと楽しそう。

どんな個性も合う人と合わない人がいて、その個性自体が悪いわけではなく、OKなんだということを教えてもらった。

ロックなムーミンママ

ムーミンパパがこのエピソードを子どもたちに聞かせているとき、ムーミンママがいう言葉がロックでおもしろい。

パパはたばこがすきだけど、それでもふるえもはげもこないし、鼻だって黄ばみはしません。気持ちのいいものは、なんだっておなかにもいいのよ。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

「たばこもコーヒーも気持ちがいいから体にいい」っていう独自の意見。

ヘムレンおばさんのしつけを涼しい顔で真っ向から否定するムーミンママ、かっこいい。。

ニョロニョロ

「思い出の記」のも不気味な存在として描かれているのが、ニョロニョロ。

海の上を小舟の大群でただようニョロニョロを、このとき初めてみたムーミンパパは、どこかひきつけられる。

この場面は、物語の時系列ではこの次のお話となる『小さなトロールと大きな洪水』への暗示となっている。

『小さなトロールと大きな洪水』では、ムーミンパパはニョロニョロとともにどこかへ行ってしまい、ムーミンママとムーミントロールが探しに行くんだよね。

冒険を求めて、家族をおいてふらふらと出かけてしまうムーミンパパ、なかなかダメな男なのかも、と思った。

『小さなトロールと大きな洪水』感想

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3-5.島でのできごと

海のオーケストラ号は、航海中にあらしにあい、はなれ島にたどりつく。

島では、ちょうど王さまの百歳の誕生日の宴会が行われていた。

この宴会では、ムーミンパパたちはミムラ族と出会うことになる。

ミムラ族との出会い

ミムラ族とは、タマネギのように結った髪型が特徴の女性の一族

今作では、ミムラ夫人、ミムラのむすめ、ミイが登場する。

ミムラのむすめ

 

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Have a wonderful #Friday guys! Enjoy your weekend 💕 #Moomin #ToveJansson

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ムーミンパパたちが、島で初めに会う島民がミムラのむすめ。

子だくさんのミムラ夫人の一番上の子ども。

ほらふきでよく人をからかう子どもっぽい性格だけど、たくさんいる弟妹たちを洗ってあげる一面もある。

カラッとして落ち込むことがなく、思ったことをズバッというところも気持ちいい。

ミムラのむすめは、次作以降は「ミムラねえさん」として登場する。

次作以降はうそをつくことはなくなり、人にアドバイスしたり身なりをきれいにしていたり、成長した姿が見られる。

ミムラ夫人

ミムラ夫人は、ミムラのむすめをはじめとして、19人の子どもを持つ丸くて大きなお母さん。

子どもの多さに動じることなく、いつもニコニコして、子どもたちを自由に育てている

ヨクサルはミムラ夫人のおおらかさにひかれ、仲良くなり、後に生まれるのがスナフキン

孤独を好みそうに見えるヨクサルが、ミムラ夫人にひかれるって、なんか意外。

最後にムーミン屋敷をたずねてきたときは、ミムラ夫人の子どもは36人に増えていた。

母性の象徴みたいなキャラクター。

ミイ

ムーミンパパたちが島に滞在中の夏至のころ、ミムラ夫人が産んだのが、ちびのミイ

今作では一番の末娘だけど、このときまだスナフキンは生まれてないから、スナフキンの異父姉ということになる。

生まれたてのミイだけど、さっそくいたずらやおしゃべりを始めている。

今作でも、海のオーケストラ号の排気管にオートミールを流し込むいたずらをして、ミムラ夫人は「なんて個性のある子なんでしょ」と感激するところがおもしろい。

ミイの辛口な個性を本格的に楽しめるのは次作以降。

ムーミンパパの成長

みなしごホームから飛び出して、仲間たちと冒険を続けてきたムーミンパパ。

島では仲間との意見の違いや新しいことへの挑戦を経験し、心の成長をとげていく。

フレドリクソンとの仲たがい

これまでの旅でいろいろな知恵を働かせ、ムーミンパパの信頼が厚かったフレドリクソン。

フレドリクソンは王さまに、島にとどまって発明を続けるように言われるんだ。

早く冒険に出たいムーミンパパと、空飛ぶ船を発明したいフレドリクソンは、ここで一度距離ができるんだよね。

このすれ違いによって、ムーミンパパは深いゆううつな気もちに落ちていく。

この心の葛藤の場面、まだ子どものムーミントロールたちに話して聞かせてもつまらないという反応だった。

だけど、ムーミンママとかももちんとか、大人の読者にとっては興味をそそる部分なんだよね。

考えても考えても、すっきりと結論が出ないもやもやした気持ち、よくわかる。

大好きな人と同じ方向を見れないもどかしさに悩んだ期間は、ムーミンパパの心の成長にとって貴重なものだったんだね。

おばけ登場

島にとどまって発明を続けるフレドリクソンに合わせるようなかたちで、ムーミンパパも島にとどまる。

ムーミンパパが海のオーケストラ号の操舵室に住みつきゆううつな気持ちにおちいっているとき、現れるのが「白いおばけ」。

おちこんでいる最中にあらわれてきたおばけは、ムーミンパパの心の闇をわかりやすく象徴している。

おばけは、ムーミンパパやほかのひとたちを怖がらせようと頑張るんだけど、なかなか怖がってもらえない、ちょっと残念なおばけなんだよね。

しまいにはムーミンパパの操舵室に住みついて、編み物をはじめる始末。

おばけも心の闇も、仲良くなってしまえばこわがる必要もなく、共存できるものなんだよね。

「自由」から「良識」へ

 

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その後、フレドリクソンの空飛ぶ船ができあがり、スリル満点の除幕式と試験飛行をし、ムーミンパパは、いよいよ冒険の再開か?と期待する。

だけど、そんな期待もつかのま、フレドリクソンは発明をつづけ、島での生活に戻る。

ロッドユールはソースユールと運命の出会いをし、結婚する。

ミムラ一家やヨクサル、ロッドユール夫妻やフレドリクソン、みんながムーミンパパの操舵室の家で住みはじめ、ムーミンパパはかえって孤独感をつのらせていくんだよね。

はじめは自由と冒険の精神を持っていたはずなのに、仲間たちとの共同生活で冒険心がどんどん遠のいていく。

その生活を抵抗なく受け入れている自分に、ムーミンパパは寂しさを感じているんだよね。

運命の出会い

あるあらしの夜、ムーミンパパは魔法に導かれるような感覚で、浜べにふらりと出かける。

あれくるう波の中、一枚の板きれにつかまったなにかが、流されてくるんだ。

水の中へ飛び出し、必死で助けるムーミンパパ。

若かりしムーミンママとの出会いは、なんの前触れもなく突然な感じがする。

最後まで、ムーミンママがどんな経緯で流されてきたのかは語られないけど、とってもロマンティック。

ムーミンママを助ける場面の挿絵も、海の大きさとムーミンパパたちの小ささの対比がはっきりしていて迫力がある。

こんな命の危機のときでも、ハンドバックをしっかり握っているのもムーミンママらしい。

はじめからおしとやかで女らしいムーミンママと、ムーミンママに「きみはきれいだよ」と素直に伝えるムーミンパパ、素敵。

息子のムーミントロールとスノークのおじょうさんの関係にも通じるものを感じる。

意識の変化

ムーミンママとの出会いがきっかけで、ムーミンパパの意識は転機を迎える。

これからあとは、彼女のやさしい理解ある目に見まもられて、わたしの道楽は、正しい観察力や良識にかわっていきました。そのかわりに一方では、無鉄砲で自由な勇気は、わたしからなくなっていきました。

引用元:『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

自分にとって大切なものと出会ったとき、ムーミンパパはこの地のとどまることを進んで受け入れるようになっていくんだよね。

「思い出の記」はここで終わる。

3-6.エピローグで全員集合

「思い出の記」が終わり、息子たちのいる現代に戻ってきたエピローグ。

かつての友人たちがムーミン屋敷をおとずれ、久しぶりの再会を果たす。

フレドリクソン、ヨクサルとミムラ夫人と子どもたち(ミムラのむすめとミイも!)、ロッドユールとソースユール、なんとおばけまでもが一緒になって現れる。

スナフキンとスニフは両親と初めて顔を合わせ、抱きあい、喜び合う。

ラム入りトディで何度も乾杯する夜が、楽しくふけていく・・・。

ももちん
ラム入りトディはラム酒に砂糖やはちみつ、レモンを加えてお湯で割ったホットカクテルのこと。

お酒を飲みながら昔を懐かしむ大人の夜は最高だよね。

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4.『ムーミンパパの思い出』が読める本の形

今回ももちんが読んだのは、講談社文庫の『ムーミンパパの思い出』。

『ムーミンパパの思い出』は、講談社文庫以外にも、児童文庫やハードカバーで刊行されている。

中でも、2019年3月から刊行が始まっているソフトカバーの新版は、翻訳が読みやすくクリアな挿絵とのこと。

一度手に取って読んでみたいなぁ。

【2019年6月】ソフトカバーの新版刊行!

2019年3月に講談社より新しく刊行されているのが、ソフトカバーの『ムーミン全集[新版]』

講談社1990年刊のハードカバー『ムーミン童話全集』を改訂したもの。

翻訳を現代的な表現・言い回しに整え、読みやすくし、クリアなさし絵に全点差し替えられている。

ソフトカバーなので持ち歩きやすい。

これから「ムーミン」シリーズを買って読もうと思っているなら、最新版のこちらがおすすめ。

『ムーミンパパの思い出』は2019年6月刊行。

電子書籍版あり。

新版はココがおすすめ

  • 翻訳が現代的な表現、言い回しに整えられているので読みやすい
  • クリアなさし絵に全点差し替え
  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • ソフトカバーなので持ち歩きやすい
  • 電子書籍で読める

講談社文庫

『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2011年

講談社文庫の「ムーミン」シリーズは、1978年に初めて刊行された。

2011年に新装版が刊行。

写真では2011年刊行時の表紙だが、2019年3月現在、フィンランド最新刊と共通のカバーデザインに改められている。

文庫版だけど挿絵が豊富で、ふりがなも少なく読みやすい。

大人が手軽にムーミンを読みたいなら、講談社文庫がおすすめ。

電子書籍版あり。

文庫はココがおすすめ

  • ふりがな少なめで大人が読みやすい
  • 値段がお手頃で気軽に読める
  • 電子書籍で読める

青い鳥文庫

『ムーミンパパの思い出』ヤンソン作、小野寺百合子訳、講談社、2014年

講談社青い鳥文庫は、1980年に創刊された児童文庫。

「ムーミン」シリーズは2014、2015年に新装版が刊行された。

児童文庫だけど、字は小さく漢字も多い。ふりがなもふられているが、難易度は文庫版とそんなに変わらない

児童文庫はココがおすすめ

  • 文庫よりサイズが大きめで読みやすい
  • ふりがな付き
  • 児童文庫にしては文字が小さいので、子どもが読むなら童話全集か新版の方がおすすめ

5.パペットアニメーションの「ムーミンパパの思い出」

1979年、トーベ・ヤンソンとラルス・ヤンソン監修のもとポーランドで制作されたのは、パペットアニメーション(全78話)のムーミン。

日本では、カルピスまんが劇場シリーズでムーミンの声をつとめた岸田今日子が一人ですべてのキャラクターの吹替を演じ、1990年にNHKBS2で放映された。

2012年、フィンランドでデジタル・リマスター版が制作されると、日本でも松たか子・段田康則の吹替で再吹き替えされた。

どちらの吹替版でも小説『ムーミンパパの思い出』を元にしたエピソードが8話収録されており、原作の世界をパペットアニメーションでたっぷり味わえる。

参考:Wikipedia、『pen』2015年2月15日号(CCCメディアハウス)

岸田今日子版・全78話

松たか子・段田康則版・パパの青春の巻・全10話

まとめ

小説『ムーミンパパの思い出』見どころまとめ。

『ムーミンパパの思い出』感想

  • 入れ子構造で息抜きしながら読む
  • 強烈教育キャラ、ヘムレンおばさん
  • ムーミンパパの目覚めと旅たち
  • フレドリクソン、ヨクサル、ロッドユールとの出会い
  • 海のオーケストラ号の冒険
  • ミムラ族との出会い
  • ムーミンパパの心の成長
  • ムーミンママとの出会い

ムーミンパパの冒険と友情、心の成長が描かれていて、共感要素がいっぱい。

ムーミンママとの出会いや、スナフキンやスニフの両親との出会いもみどころだよ。

次作『ムーミン谷の夏まつり』については、こちらの記事をどうぞ。

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