村岡花子の翻訳作品が好きです。
『赤毛のアン』シリーズはとっても有名。
だけど、実は『赤毛のアン』以外にも、村岡花子翻訳の名作がたくさんあります。
今日はその中の1冊、『スウ姉さん』を紹介するよ。
この記事で紹介する本
小説『スウ姉さん』とは?
『スウ姉さん』(原題”Sister Sue”)は、アメリカの女流作家エレナ・H・ポーターが1920年に発表した小説。
日本では、村岡花子の翻訳により1932年(昭和7年)に単行本として出版された。当時の題名は『姉は闘ふ』だった。
村岡花子は、『スウ姉さん』を読んだときに、出世作である『パレアナ』より数倍も強く心を惹かれた、と後に記している。
村岡花子について詳しくは、次の記事をどうぞ。
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エレナ・H・ポーター(作)
作者のエレナ・H・ポーターは、1868年アメリカのニューハンプシャー生まれ。
結婚後マサチューセッツに移り住み、作家活動を開始した。
多くの恋愛小説・家族小説・ギャグ小説を手がけ、中でも『パレアナ(ポリアンナ)』シリーズは最大のヒット作になった。
半自伝的小説『スウ姉さん』を出版した1920年、51歳でこの世を去る。
代表作(小説)
『スウ姉さん』あらすじ
今朝のNHK「花子とアン」冒頭で、花子が翻訳していた原書は、エレナ・ポーター「Sister Sue」! 村岡花子が翻訳した『スウ姉さん』は、河出文庫で発売中。一人の女性が家庭の困難にもめげず、夢を負い明るくタフに生きていく物語です。http://t.co/33nplNc5tz
— 河出書房新社@プレゼント企画実施中 (@Kawade_shobo) 2014年8月15日
主人公の「スウ姉さん」ことスザナ・ギルモア嬢は、世界的なピアニストになる夢と、それに見合う天分を備えていた。
しかしながら、14歳の時に母親が亡くなってからというもの、弟妹や父親に頼られ、忙しい日々を送っていた。
そんなとき、父親の経営する銀行が破綻し、一家は片田舎の村への引っ越しをしいられる。
ショックで認知症を発症してしまった父親の介護、家事全般、そして生計を立てるため、村の子どもたちへピアノを教える仕事。
数々のトラブルに見舞われてもなお、持ち前のユーモアを支えに、与えられた場所でタフに生きていく「スウ姉さん」。
そして、波乱万丈の物語は、思いがけないハッピーエンディングを「スウ姉さん」にもたらす。
『スウ姉さん』感想
ももちんが『スウ姉さん』を読んだ感想は次のとおり。
『スウ姉さん』ポイント
あなたはスウ姉さんに共感できる?
日々、家族のために、気が遠くなるような雑事を日々こなしていくスウ姉さん。
でも、家族や婚約者はスウ姉さんのピアニストになる夢を応援しない。
むしろ自己中心的に要求してくることばかり。
こんな日々に、スウ姉さんはときには愚痴をこぼしたり、泣き崩れたり、ピアノで発散したりする。
けど、やっぱり自分に与えられた役割、義務を優先し、タフにこなしていく。
それも、いやいややるのではなく、ユーモアたっぷりに、おもしろがりながら。
こんな姿に、ももちんは、正直息苦しくなってしまった。
現代人だったら、とっくに壊れて家出しちゃってるような激務。
なんでスウ姉さんは笑顔で引き受けることを選ぶのか。
でも、これが100年前の女性の現実であり、被害者気分でいても、何にも進まないんだよね。
どうせやるなら、おもしろくやった方がいいもんね。
スウ姉さんは、義務ですら、自分の意志で選びとっている。
好きでやっているんだよね。そこが救いかな。
これが誰かのせいとか、恨み節になってしまったら、誰もハッピーにならないもんね。
100年前のお話ではあるけれど、現代でも、似たような状況はあると思うんだ。
女性が介護・育児・仕事に追われ、自分をなくしている状況が。
そういう日々を送っている女性には、スウ姉さんは力強いアイコンとなるのかもしれない。
弟妹と婚約者がわからず屋!
読み進めていくうちに、強く感じたのが、スウ姉さんの弟妹、婚約者の自分勝手なわがままっぷり!
ほんと、むかむかしてしょうがなかった。
婚約者ケント。認知症になったスウ姉さんの父親と絶対に会いたがらない。スウ姉さんの大変な状況を理解せずに、結婚をせまる。後半には、裏切ってしまう。
弟のゴルドン。スウ姉さんが必死で働いて学費を工面しているにもかかわらず、どんどん使って、自分では働こうともしない。あげくの果てに、恋人ができて、結婚のために学業を捨ててしまう。
妹のメイ。ずっとわがまま。家事も手伝おうとしない。スウ姉さんが収入のためにピアノレッスンの仕事をしているときに、ケントの相手をして、できてしまう。
自立してからも、たまに帰ってきてはわがまま放題のゴルドンとメイ。
父親が亡くなった後は、お手伝いとしてスウ姉さんを取り合いする。
どんだけ自分勝手なん。スウ姉さんの夢を1ミリも考慮しないのね。。
スウ姉さんを本当に理解してくれる人は、この中には誰もいない。
それと同時に、スウ姉さんにも腹立ってくるんだよね。
弟妹を甘やかしてるようにしか見えない。それ、ちゃんと説教した方がいいって!っていう。
最後には、弟妹も目を覚まして、心を入れ替える。ここまで来て、ようやくすっきり。
それもスウ姉さんの苦労をずっと見てきた近所の小母さんから言われてようやくきづく。
夢をあきらめる展開に納得できない?
父親が亡くなって、弟妹も自立し、ようやく自分の夢を叶えようと動き出すスウ姉さん。
ふつうなら、ここで夢へ向かって歩き出し、ハッピーエンドって予想しませんか?
『スウ姉さん』は違うんです。
忙しく働いていた5、6年の間、ろくにピアノの練習もできていなかったスウ姉さん。試験を受けたが、世界的ピアニストを目指すには、手遅れだった。
けれど、その結果を教授から聞く前に、スウ姉さん自身が、もっと大切なものを自覚し、自ら夢を手放したんだよね。
その大切なものって何だと思う?
それは、読んでからのお楽しみ。(こんなにネタバレしておいて)
そして物語は、思いもかけないハッピーエンドへとつながっていく。
この結末を、幸せか、そうじゃないかって、けっこう意見が分かれると思う。
ももちんは、幸せだと思ったよ。
でも、夢への理想をもっている人には、納得できない結末かも。
読み返すとまた違う感想を持つ
ここまで読んできてわかると思うけど、ももちんが初め『スウ姉さん』を読んだとき、怒りや抵抗感が大きかったんだよね。
でも、『スウ姉さん』は、読む人がおかれた境遇によって、またいつ読むかによって、感想が変わってくる。
ももちん、何年かたってからまた読んだとき、そんなに腹が立たなかった。
スウ姉さんの強さを感じることができた。
誰にもわかってもらえないけど、役割をまっとうする人の強さ。
これって、どの時代にも共通する、決して表に出てくることのない、でも、家族を、社会を支えている存在なんだよね。
大人になればなるほど、共感する部分は大きくなっていくのかもしれない。
感想おさらい
まとめ
『スウ姉さん』の感想まとめ。
- スウ姉さんに共感できるか微妙なところ
- 弟妹と婚約者がわがまますぎてむかついた
- 夢をあきらめる展開だけど、ハッピーエンド
- 読み返すとまた違う感想を持つ
個人的には、同じ作者の『パレアナ』シリーズよりも、こっちのほうが好き。
大人の女性が直面する現実と苦悩が、リアルに共感をよぶ。
あなたも気になったら、読んでみてね!
村岡花子の他の翻訳作品については、次の記事をどうぞ。
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