『ライ麦畑でつかまえて』はアメリカの作家サリンジャーが60年以上前に書いた小説。
「永遠の青春小説」と言われているので、一度は読んでおこうと思ったんだけど。
正直、途中で読むのやめようかと、何度も思った・・・
この記事で紹介する本
こんな方におすすめ
- 小説『ライ麦畑でつかまえて』あらすじとみどころ
- 映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』
最新情報
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小説『ライ麦畑でつかまえて』とは?
”The Catcher in the Rye”は、1951年、アメリカで出版された長編小説。作者はJ.D.サリンジャー。
全世界発行部数累計6500万部を超え、現在も世界中で毎年25万部ずつ売れ続けている。
日本国内発行部数も累計320万部を超えた。
日本では、1952年、橋本福夫の翻訳により『危険な年齢』と題され、ダヴィッド社より刊行された。
1964年、野崎孝の翻訳により『ライ麦畑でつかまえて』と題され、白水社より刊行。
1967年、繁尾久により『ライ麦畑の捕手』と題され、英潮社より刊行。
2003年、村上春樹による新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が白水社より刊行。
参考:映画『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』公式サイト、Wikipedia
J.D.サリンジャー(著)
アメリカの作家。
1919年ニューヨークのマンハッタンで生まれる。
コロンビア大学在籍中の1940年、短編「若者たち(原題”The Young Folks”)」を文芸誌「ストーリー」に発表し作家デビュー。
1942年から1946年まで軍務に就き、ノルマンディー上陸作戦などに参加。
1951年、初の長編「ライ麦畑でつかまえて」で一躍脚光を浴び、世界的に知られる作家となる。
その後ニューハンプシャー州の田舎町コーニッシュに移住し、社会から孤立した生活を送るようになった。
2010年死去。
参考:映画『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』公式サイト、Wikipedia
代表作(小説)
野崎孝(訳)
アメリカ文学者、翻訳家。
1917年青森県弘前市生まれ。
東京帝国大学文学部(現東京大学)卒業後、教師の職に就く。
第二次世界大戦で出征。復員後、各地で教授の職に就く。
1964年、J.D.サリンジャーの ”The Catcher in the Rye” を『ライ麦畑でつかまえて』の題名で邦訳。
1995年死去。
参考:Wikipedia
代表作(翻訳)
白水社
書泉ブックタワーさん1階文芸書売場で、サリンジャー生誕100年(来年)フェア開催中。『ライ麦畑でつかまえて』『キャッチャー・イン・ザ・ライ』他関連書が並んでいます。『ライ麦』に魅了された青年を描いた映画『ライ麦畑で出会ったら』も公開中。 https://t.co/3htUq9af6n あわせてお楽しみ下さい。 pic.twitter.com/w2t7dMRhOU
— 白水社 (@hakusuisha) 2018年11月19日
白水社は、1915年創業の出版社。
1963年、「新しい世界の文学」シリーズを創刊。
1964年、野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』を刊行。
1983年、新書版の新シリーズ「白水Uブックス」が創刊。
2003年、『ライ麦』の愛読者であった村上春樹による新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を刊行。
2018年12月現在、”The Catcher in the Rye”の日本語翻訳権は白水社だけが持っている。
参考:『白水社 百年の歩み』白水社、2015年(Kindle版)
主な登場人物
ホールデン・コールフィールド・・・今作の主人公で、17歳の少年。16歳の冬、全寮制の高校ペンシーに在学していたが退学となり、現在は病気療養中。ペンシーは彼にとって4つ目の高校だった。
D・B・・・ホールデンの兄で作家。現在は、ハリウッドで映画の脚本を書いている。
アリー・・・ホールデンの弟。11歳で白血病で亡くなる。
フィービー・・・ホールデンの妹。10歳で、ニューヨークの小学校に通う。ホールデンと仲が良い。
ロバート・アクリー・・・ペンシーの生徒。寮でホールデンの隣の部屋に住む。しょっちゅうホールデンのところに暇つぶしにやってくる。
ストラドレーター・・・ペンシーの生徒で、ホールデンのルームメイト。美男子で横柄な性格。
カール・ルース・・・ホールデンがかつて行っていた高校の生徒。日曜にバーでホールデンと酒を飲む。
ジェーン・ギャラハー・・・ホールデンの幼なじみで女友達。ホールデンは彼女をよく覚えており、好意をにおわせている。
サリー・ヘイズ・・・ホールデンの女友達。美人で、作中でホールデンとデートをする。
スペンサー先生・・・ペンシーの歴史の先生。ホールデンを心配して、家にたまに招いていた。
アントリーニ先生・・・ホールデンがかつてエルクトン・ヒルズ高校に在籍していた時の先生。現在はニューヨークで大学の先生をやっている。
あらすじ
一言あらすじ
17歳の少年ホールデンが語る、去年のクリスマス頃の体験。
高校を退学した日からの数日間、ホールデンはニューヨークにひとり滞在し、娼婦やガールフレンド、妹や先生と関わりながら、自分自身を見つめていく。
十代が感じる生きづらさや社会に対する怒りを生き生きと描いている。
このあとは詳しいあらすじ。
本の感想から読みたいならこちらからどうぞ。→→本を読んだ感想
舞台は1950年アメリカ。17歳のホールデン少年は、西部の町で療養中。
去年のクリスマス頃の数日間の体験を回想し、語る形式で物語はつづられている。
土曜日の出来事
スペンサー先生
ペンシー高校を辞めた日、ホールデンはペンシーのフットボールの試合を見る。
ホールデンが勉強に身を入れず、ペンシーを辞めることになった経緯が説明されている。
その後ホールデンは、スペンサー先生の家をたずねる。
別れのあいさつに行ったはずが、長いこと説教され、ホールデンは気が滅入る。
アクリーとの会話
ホールデンが寮の部屋に戻ると、隣の部屋のアクリーが暇つぶしにやってくる。
アクリーの悪癖にうんざりしているとき、ルームメイトのストラドレーターが入ってくる。
ストラドレーターのデートの相手がかつての幼なじみ、ジェーン・ギャラハーと知ったホールデンは気になる。
ホールデンの死んだ弟アリーのことがつづられている。
ストラドレーダーとのけんか
ストラドレーターが夜帰ってくる。
ホールデンはストラドレーターにジェーン・ギャラハーとのデートのことでつっかかり、ストラドレーターに殴られる。
ホールデンは突然思い立ち、荷物をまとめて今晩のうちに寮を出ていくことを決断する。
ホテルへ向かう
ニューヨークでホテルにチェックインしたホールデンはセクシーな気分になり、知っている女の子に電話をかけるが、断られる。
眠くなかったホールデンは、階下のナイトクラブへ行くことにする。
ナイトクラブで一緒に踊った女の子はダンスが上手だった。
ジェーンとの思い出
ナイトクラブを出たホールデンは、ロビーに座り、ジェーン・ギャラハーとの思い出にふける。
しばらくして、タクシーで「アーニーの店」というナイトクラブへ向かう。
アーニーの店で一人酒を飲み、タバコを吸っていたホールデンは、かつて兄のD・Bとつきあっていたリリアン・シモンズに声をかけられる。
海軍の男とデート中だったリリアンは、ホールデンに紹介するが、ホールデンは居心地の悪さをおぼえ、アーニーの店を出る。
娼婦サニー
ホテルに戻ったホールデンは、エレベーターボーイのモーリスという男に買春を持ちかけられ、5ドルで了承する。
しかし、部屋にやってきた娼婦サニーにホールデンは手出しせず、ホールデンは約束の5ドルを渡し帰す。
その後、モーリスとサニーが部屋を訪ねてきて、約束は10ドルだから余分に払えと言われる。
ホールデンは断固として拒否し、殴られ、強引にお金を取られる。
日曜日の出来事
修道女とフィービー
10時ころ目を覚ましたホールデンは、女友達のサリー・ヘイズに電話をかけ、午後に会う約束を取り付ける。
グランドセントラル駅で朝食をとっていると、二人の修道女と知り合い、ホールデンは10ドル寄付する。
朝食後ホールデンは散歩をし、フィービーのために『リトル・シャーリー・ビーンズ』のレコードを買う。
フィービーのことを思いやるホールデンがつづられる。
女友達サリー・ヘイズ
サリーとあったホールデンは、芝居を見たあとアイススケートを楽しむが、お酒を飲んでいる最中けんかになる。
かんかんに怒ったサリーとわかれ、ホールデンはスケートリンクを出る。
ホールデンはジェーン・ギャラハーに電話をかけるが不在。
仕方なく男友達のカール・ルースに電話をかけ、夜に会う約束をする。
男友達カール・ルース
バーへ早く着いたホールデンは、カールに会わないうちから酒を飲む。
酔ったホールデンはカールの嫌がる性生活の話をしつこく聞きつづけ、ホールデンはカールに精神分析を勧められる。
カール・ルースが去った後もホールデンは酒を飲み、酔っぱらう。
夜中に突然フィービーに会いたくなり、家にこっそり帰ることにする。
秘密の一時帰宅
ホールデンが家に帰ると両親は不在で、フィービーは寝ていた。
フィービーをそっと起こすと、フィービーは飛び上がって喜ぶ。
ペンシーを退学になったことを察知したフィービーとホールデンは、しばし言い合いになる。
ロバート・バーンズの「ライ麦畑で会うならば」という詩を、ホールデンは「ライ麦畑でつかまえて」と間違って覚えていたことに気づく。
ホールデンはかつてのお世話になったアントリーニ先生に電話をかけ、泊めてもらうことにする。
アントリーニ先生
両親が帰ってきたところで、ホールデンはフィービーからお金を借り、ばれないようにこっそり家を抜け出す。
アントリーニ夫妻の家をたずねたホールデンは、ペンシーを退学になったことなどを話す。
その後ベッドで寝ていると、ホールデンはふいに目を覚ますと、アントリーニ先生がホールデンの頭をなでていた。
驚いたホールデンはすぐにアントリーニ先生の家を出る。
月曜日の出来事
決心
外に出ると夜明けだった。
ホールデンは、グランドセントラルステーションの待合室で仮眠をとった後、散歩をするうちに、ある決心をする。
家へは帰らず、ヒッチハイクで西部へ行こう。
出発する前にフィービーにお金を返すため、待ち合わせの手紙を学校の先生へわたす。
フィービーとのけんかと仲直り
待ち合わせの場所へやってきたフィービーは、自分も一緒に西部へ行きたいという。断るホールデン。
しばらく二人は口をきかず、距離をあけて歩く。
とちゅうでホールデンはフィービーを回転木馬へ乗せ、それをながめているうちに強い幸福感を感じる。
その後西部へは行かず、ホールデンは家に帰る。
『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ感想
ももちんは、『ライ麦畑でつかまえて』という小説のタイトルは知っていたけど、なかなか読む気にならなかった。
「10代の読み物でしょ?30代の私には合わなそうだな」という先入観があった。
最近、夫の実家にこの『ライ麦畑でつかまえて』(野崎訳)があるのを見つけた。
こんなに有名な小説なんだから、1回は読んでおこうと思い、借りてきたのがきっかけ。
読んでみたら、案の定、とっつきづらい語り口だった(笑)
だけど、読んでいくうちにホールデンの癖の強さに共感したり、忘れていたくすぶる気持ちを思い出したりした。
繰り返し読んでみたい小説だと思ったよ。
『ライ麦畑でつかまえて』ポイント
読み初めの心地悪さ
物語は、ホールデン・コールフィールドという17歳の少年が、延々としゃべり続けるスタイル。
最初から最後まで、ホールデン少年は「君」つまり読者に向かって、若者言葉で話し続ける。
正直、読み初めは、読むのやめようかと思った・・・(笑)
それくらい、とっつきづらい内容だった。
とっつきづらいというのは、何も内容が難しいというわけではない。
あらすじを見てもらえばわかる通り、内容は、なんのことはない、ホールデン自身の数日間の体験。
ホールデンのくだらないおしゃべりを延々と聞かされ続けることに、単純に抵抗を感じたんだよね。
ホールデンの子供っぽさに反応
まず感じたのは、ホールデンとももちんが徹底的に違うので、共感できる部分がすくない!ということ。
世代、性別、時代、国籍、、みごとに違う。
それに加えて、ホールデンはどうやら裕福な家庭の息子。
恵まれた環境にもかかわらず全寮制の高校を4度も退学している。
もう、意味わからん。何やっとんねん、ホールデン・・・
初めは、世の中に不満をおぼえた思春期のお坊ちゃんがグダグダ言ってるようにしかとれなかった。
誰のなかにもいる「ホールデン」
ホールデンは、人の外見やしぐさで、表面的ジャッジをすごいするんだよね。
そして、友人だろうが大人だろうが、だいたいの人を見下してる。
僕のすぐ隣のテーブルには、三十かそこらぐらいの女が三人坐ってた。その三人が三人とも相当なブスでね、見てすぐニューヨークの人間じゃないなってわかるような帽子を、みんなかぶってんだよ。
引用元:『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー(著)野崎孝(訳)白水社、1984年
・・・ホールデン、ストレートすぎ( ;∀;)
こういうことをいちいち話すホールデンだから、それを聞くこっちもしんどかったんだよね。
だけど、読んでいくうちに、くすっと笑えたり、「それ、わかるわー」と思うブラックなももちんが、ところどころ出てきた。
そういう面、もれなくももちんにもある。
10代のときだけじゃなく、いまだにふつうにもってる。
ホールデンはあけっぴろげに人を見下しているから「ひどい」と思うけど、実は、誰の心のなかにもそういう一面はあるんじゃないかな?表に出さないだけで。
「不良」なホールデン
物語では、ホールデンの個性が爆発している。
- ヘビースモーカー(16歳当時。17歳の現在はやめさせられている)
- 大酒飲み
- 平気でうそをつく
- セックスのことで頭がいっぱい
- 身長は約188cm、頭の片一方に白髪がたくさん生えている
表面だけ見たら「不良」かもしれない。
だけど、読んでいくと、ホールデンの純粋さや正しさへの熱みたいなものが感じられる。
「正しさ」を貫くホールデン
ホールデンはニューヨークのホテルに泊まったとき、エレベーターボーイに「娼婦を買わないか」と持ちかけられ、5ドルで約束をするんだよね。
16歳の少年が・・・いかんでしょ!って思うよね?
なんだけど、いざ娼婦のサニーが部屋にやってきたとき、ホールデンは気がめいってしまい、手出しをしなかった。
5ドルを渡してサニーを帰すものの、あとでエレベーターボーイがやって来て「約束は10ドルだ。差額の5ドルを払え」といわれる。
このとき、泣きじゃくりながらも、絶対に5ドルを払おうとしないホールデンの頑固さが印象的だった。
結局は殴られてお金を持っていかれてしまった。
16歳の不器用さとまっすぐさが共存していて、ダサいけれどすごくかっこいいというか、何とも言えない気持ちになった。
ホールデンの反発に共感
ホールデンがところどころで感じる反発に、共感するところがあった。
たとえば、初めて会った人に、建前で「会えてうれしかった」なんていうところ。
会ってうれしくもなんともない人に向かって「お目にかかれてうれしかった」って言ってるんだから。でも、生きていたいと思えば、こういうことを言わなきゃならないものなんだ。
引用元:『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー(著)野崎孝(訳)白水社、1984年
もう二度と会うことはないとお互いわかっているのに、このセリフを言い合う白々しさ。
あなたは違和感感じない?
あと、中高生の時、友人たちとのうわさ話がとっても苦手だった。
だけど、その会話についていけないと、自分が一人になってしまう・・・と、必死で「うわさ」についていってた。
大人の今より、むしろ10代のころのほうが、合わせることに頑張ってたと思う。大変だったなー。
女の子へのまなざし
『ライ麦畑でつかまえて』では、ちょくちょくホールデンと女の子との話題が登場する。
ホールデンは、女性に対しても容赦なくけなしたり見下したりして、「持論」を展開する。
だけど、ところどころで女の子のしぐさに対する「参った!」的な降参が出てくるところが、かわいい。
ジェーン・ギャラガーへの恋心
ジェーン・ギャラガーという女の子は、ホールデンの話のなかでは、想い出として出てくる。
ホールデンがジェーンのことを語るときは、優しく、愛情が感じられて、恋してたんだな、ということが伝わってくる。
序盤で、ホールデンのルームメイトのストラドレーターが、ジェーンとデートするときいたホールデン。
帰ってきたストラドレーターに、ジェーンとどこまで行ったのか問いつめ、けんかになる。
ホールデンは、女たらしのストラドレーターに、大事なジェーンを利用されたように感じたのかもしれない。
美人のサリーとのデート
もう一人、ホールデンと仲のいい女友達として登場するのが、美人のサリー。
ホールデンはニューヨーク二日目にサリーとデートするんだけど、待ち合わせの時の表現がチャーミング。
会いに来る女の子がすてきな子なら、時間におくれたからって、文句をいう男がいるもんか。絶対にいやしないよ。
引用元:『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー(著)野崎孝(訳)白水社、1984年
だけど、ホールデンはサリーのミーハーな部分を見抜いていて、しょっちょう「へどが出そうに」なってる。
一時的にサリーに恋した気分になって、駆け落ちまで持ちかけたホールデン。
しまいには、サリーにブチ切れられて別れてしまう。
子どもたちへの崇拝
大人たちや同年代の友人たちに対しては、鋭い批判や反発をあらわにするホールデン。
その一方で、子どもたち、とりわけ妹のフィービーや、死んだ弟のアリーに対しては、愛情深く、崇拝すらしているのが伝わってくる。
全体的に、世の中に対して毒づき、いらだつホールデンの描写が多い中で、「こども」へのまなざしは、一貫して神聖なものをみる目線。
小学校の壁にかかれた下品な落書きを見つけたホールデンは「フィービーやほかの小さな子供たちがこれを見るとこ」を考えて激怒する。
その犯人を残酷に殺すところまで想像するあたり、振れ幅の激しい、だからこそ生きづらいんだろうな、ということが伝わってくる。
妹・フィービー
10歳の妹フィービーを、ホールデンはとてもかわいがっている。
ホールデンがフィービーのために買ってあげたレコードを割ってしまうんだけど、それを伝えたとき「そのかけらをちょうだい」というフィービーが優しくてかわいい。
このフィービーのしぐさのことを、すてきだと思うホールデンもなんかいい。
人を見抜く力
『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいて感じるのは、ホールデンの人を見抜く力。
人にこびたり、お世辞を言ったり、上からたしなめたりしてくる相手をホールデンは鋭く見抜く。
世代に限らず、こういうの違和感感じるひとはけっこういると思うんだよね。
この記事を読んでいるあなたも、そうなんじゃない?
ももちんも、すごいわかる。
相手の言ってることと、言葉以外の部分から伝わってくることがずれてると、なんか気持ち悪いし、信用しなくなったりする。
そしてその癖は、ときとして、めっちゃ生きづらい。
特に10代のころはそれを強く感じて、自分のこともよくわからずに苦しかったなあ。
物語の面白さではない
『ライ麦畑でつかまえて』は、読んだ後の気持ちよさとか、おもしろかった!っていう感覚は、あまりない。
むしろ、「ふーん、こういう感じで終わるんだ」という、なんかニヤニヤしてしまう感じが残る。
初めは強くあったホールデンへの抵抗感が、なんか消えてる。
一度読んだらもういいやって人と、二度三度と読み返す人と、わかれるような気がする。
ももちんは、くり返し読んで、ニヤニヤしたいなあって思った。
ちなみに、新訳を手がけた村上春樹は、高校生の時一度読んだ後、「反抗的とはいえ、お坊ちゃんの神経症的な話だから」と、何年も読まなかったらしい。
感想おさらい
野崎訳と村上春樹訳を読み比べ!
現在”The Catcher in the Rye”の日本語訳で定番なのは2冊。
1964年に刊行された野崎孝訳の『ライ麦畑でつかまえて』と、2003年に刊行された村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。
次の記事で、それぞれの翻訳の特徴を書いているよ。
小説『ライ麦畑でつかまえて』翻訳比較。おすすめは野崎訳?村上訳?
サリンジャーの小説”The Catcher in the Rye”(1951年)は、日本では2種類の翻訳を読むことができる。 1964年に刊行された野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』と、2003年に刊行 ...
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関連トピック
”The Catcher in the Rye”に関連する話題を紹介するよ。
”The Catcher in the Rye”の影響
”The Catcher in the Rye”は発売から話題を呼び、29週にわたってニューヨークタイムズのベストセラーリストに留まった。
10代の孤独や、ふさぎがちな心情を表すスラング混じりのホールデンの語り口が、若者の熱烈な支持を得たと言われている。
その一方で、保守層からは反道徳的との批判を浴びた。
1954年、カリフォルニア州の教育委員会がホールデンの言葉遣いや態度を問題とし、”The Catcher in the Rye”は学校や図書室から追放されることになった。
暗殺犯の愛読書?
”The Catcher in the Rye”は、1980年代に有名人を射殺または射殺未遂した3人の犯人が読んでいたことでも知られる。
もっとも有名なのは、1980年にジョン・レノンを路上で射殺したマーク・チャップマン。
彼は警察が到着するまで歩道で座って”The Catcher in the Rye”を読んでおり、法廷でも作中の一節を大声で読みあげていたという。
1981年には当時のアメリカ大統領ロナルド・レーガンが射撃された。犯人のモーテルの部屋に”The Catcher in the Rye”があった。
また1989年には女優のレベッカ・シェイファーが射殺され、犯人の拳銃と血だらけのシャツと共に”The Catcher in the Rye”が発見された。
参考:映画『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』公式サイト、Wikipedia
”The Catcher in the Rye”で歌われていた歌
ところで、”The Catcher in the Rye”はどこからやってきた言葉なのか、気にならない?
物語の中に、こんなやりとりがある。
「君、あの歌知ってるだろう『ライ麦畑でつかまえて』っていうの。僕のなりたいー」
「それは『ライ麦畑で会うならば』っていうのよ!」とフィービーは言った。「あれは詩なのよ。ロバート・バーンズの」
引用元:『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー(著)野崎孝(訳)白水社、1984年
日本語訳だとわかりづらいよね。
元の詩は、本当は”If a body meet a body coming through the rye”(日本語訳だと『ライ麦畑で会うならば』)っていうんだ。
それをホールデンは”meet”を”catch”(日本語訳だと『ライ麦畑でつかまえて』)だと覚え違えてた。
だから、”The Catcher in the Rye”という歌も詩も本当は存在しなくて、ホールデンの思い違いの言葉ってことなんだよね。
参考:『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J.D.サリンジャー(著)村上春樹(訳)白水社、2003年
ロバート・バーンズとは
ロバート・バーンズは、18世紀のスコットランドの国民的詩人で、実際に存在した人。ロバート・バーンズが書いた詩は、曲をつけて世界中で歌われているものも数多くある。
そして、日本で『故郷の歌』として知られる原曲の詩が、ロバート・バーンズの“Comin' Thro' the Rye”。
“Comin' Thro' the Rye”は「Comming Through the Rye」の方言で、「ライ麦畑で出逢うとき」などと訳されているんだ。
つまり、小説”The Catcher in the Rye”に登場する歌なんだよね。
詩だけ読むと、ライ麦畑で戯れる男女の歌なようで、品のない歌としてとらえる人も多いみたい。
引用元:Julie London - COMIN' THRU THE RYE/YouTube futykoolzちなみに、“Comin' Thro' the Rye”の歌はこんな歌。めっちゃ聞いたことある曲だよね。
歩行者用信号の青の時に流れているのを聞いたことがある。。
参考:Wikipedia
『ライ麦畑でつかまえて』で引用されている本や曲について、次の記事でまとめているよ。
小説『ライ麦畑でつかまえて』で引用されている本・歌・映画まとめ
小説『ライ麦畑でつかまえて』はアメリカの作家サリンジャーの青春小説。 1950年代のニューヨークを舞台にして描かれた物語の中には、当時流行った本・映画・歌もたくさん登場。 今回は、『ライ麦畑でつかまえ ...
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『ライ麦畑でつかまえて』は誤訳?
ちなみに、野崎孝は”The Catcher in the Rye”を『ライ麦畑でつかまえて』と訳しているんだけど、村上春樹は『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のままなんだよね。
これにかかわる部分も物語の中に出てくる。
ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。
引用元:『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー(著)野崎孝(訳)白水社、1984年
ここの原文は、”I'd just be the catcher in the rye and all.”となっている。
つまり、”The Catcher in the Rye”の本来の意味は「ライ麦畑のつかまえ役(捕手、キャッチャー)」ということになる。
だから、『ライ麦畑でつかまえて』は野崎孝の誤訳ではないか、という意見もあるみたい。
ももちんは英語に詳しくないのでよくわからないんだけど、語感をくずさないための意図的な意訳だと思っている。
真相はわからないけどね。
参考:『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J.D.サリンジャー(著)村上春樹(訳)白水社、2003年
関連映画
来年2019年は、『ライ麦畑でつかまえて』の著者J.D.サリンジャー生誕100周年。
この節目の時期、「ライ麦」をタイトルに冠した映画が2本、今秋と年明けに公開されます。『ライ麦畑で出会ったら』 https://t.co/3htUq9af6n
『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』 https://t.co/9VukkwDeZK pic.twitter.com/dLhTUUpbiM— 白水社 (@hakusuisha) 2018年7月20日
2019年は、なんとJ.D.サリンジャー生誕100周年の年なんだよね。
それにちなんで、2018年、2019年は、二つの『ライ麦畑でつかまえて』関連映画が公開された。
『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』
出典:映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』予告編/FILM PHANTOM公式チャンネル2019年1月に公開されたなのが、映画『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』。
J.D.サリンジャーの20代から”The Catcher in the Rye”出版にいたる経緯、表舞台を去るまでの半生を映画化。
主役はニコラス・ホルトというイケメン俳優。
この人、どこかで見たことあるー、どこで見たんだろう・・・って思ってたら、思い出した。
2002年の映画『アバウト・ア・ボーイ』に出ていた子役でした。当時13歳くらいかな?
監督・脚本・製作は、『大統領の執事の涙』(2013)、『ハンガーゲームFINAL』(2014.15)などを手がけたダニー・ストロング。
原作は、ケネス・スラウェンスキー(著)田中啓史(訳)の『サリンジャー生涯91年の真実』(晶文社刊)
原作本
動画配信
『ライ麦畑で出会ったら』(2015年米)
出典:映画『ライ麦畑で出会ったら』公式サイト2018年10月に劇場公開されたのは、”The Catcher in the Rye”に心奪われた少年の青春映画『ライ麦畑で出会ったら』。
1969年、アメリカの冴えない高校生の主人公が、”The Catcher in the Rye”を演劇にすることを思い立つ。
舞台化にはJ.D.サリンジャーの許可が必要だと知り、少年はサリンジャー探しの旅に出る。
主演は『ジュマンジ/ウェルカムトゥジャングル』のアレックス・ウルフ。
監督は長編映画初監督のジェームズ・サドウィズ。
まとめ
小説『ライ麦畑でつかまえて』見どころまとめ。
心の中にある行き場のないくすぶりや違和感と、再び出会える作品。
青春小説と言われているけど、大人になって読むとまた感じ方が違うと思う。
興味があったら読んでみてね。
野崎孝訳
村上春樹訳
『ライ麦畑でつかまえて』で引用されている本や曲について知りたい?こちらの記事をどうぞ。
小説『ライ麦畑でつかまえて』で引用されている本・歌・映画まとめ
小説『ライ麦畑でつかまえて』はアメリカの作家サリンジャーの青春小説。 1950年代のニューヨークを舞台にして描かれた物語の中には、当時流行った本・映画・歌もたくさん登場。 今回は、『ライ麦畑でつかまえ ...
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『ライ麦畑でつかまえて』記事一覧
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