この記事にはプロモーションを含みます。

『風にのってきたメアリーポピンズ』感想。映画メリーポピンズ原作本

2019年1月8日

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

児童文学『風にのってきたメアリー・ポピンズ』は、ディズニーの超有名映画『メリー・ポピンズ』の原作。

最近初めて本を読んでみて、映画にはない魅力を感じて、メアリー・ポピンズが大好きになった。

今回は、児童文学『風にのってきたメアリー・ポピンズ』を紹介するよ。

この記事で紹介する本

こんな方におすすめ

  • 映画『メリー・ポピンズ』『メリー・ポピンズリターンズ』の原作を読んでみたい。
  • 映画を大人になってから見たがピンとこなかった。
  • 児童文学『メアリー・ポピンズ』シリーズの大人が読んでもおもしろいところを知りたい

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』とは?

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』(原題”Mary Poppins”)は、イギリスの女流作家P.L.トラヴァースが1934年に発表した児童文学

日本では、1954年、林容吉の翻訳で岩波書店より刊行された。

P.L.トラヴァースによる「メアリー・ポピンズ」関連書籍は全8作品。『風にのってきたメアリー・ポピンズ』は第1作目にあたる。

1964年のディズニーによるミュージカル映画『メリー・ポピンズ』でも知られる。

参考:Wikipedia

 

P.L.トラヴァース(作)

P.L.トラヴァース(1924年ごろ)[public domain]

1906-96。

イギリスの作家。

オーストラリアのクイーンズランドで生まれ、子ども時代をその海岸で過ごした。

17歳でイギリスへ。バレエや演劇の経験を経て、1934年に出版した”Mary Poppins”が大好評を博した。

1963年に日本を訪れている。

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

P.L.トラヴァースの作品をAmazonで見る

P.L.トラヴァースの作品を楽天ブックスで見る

 

メアリー・シェパード(絵)

イギリスのイラストレーター。

1909-2000。

父親は、A.A.ミルンの『クマのプーさん』などの挿絵を描いたE・H・シェパード。

1934年の第一作以降、人気シリーズとなった『メアリー・ポピンズ』はいずれもメアリーが挿絵を担当している。

参考:Wikipedia

 

林 容吉(訳)

翻訳家。1912-69。

財政学者でもあり、長年、早稲田大学で経済学を講じた。

2010年公開のジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』原作の「小人の冒険シリーズ」(メアリー・ノートン作)の翻訳でも知られる。

参考:Wikipedia

代表作(翻訳)

林容吉の翻訳作品をAmazonで見る

林容吉の翻訳作品を楽天で見る

 

主な登場人物

メアリー・ポピンズ・・・東風にのってバンクス家にやってきた不思議な乳母兼家庭教師。

バンクス一家

ジョージ・バンクス・・・桜町通17番地に住むバンクス家のお父さん。銀行で働き、短気で陽気。

バンクス夫人・・・バンクス家のお母さん。人から「時代遅れ」と言われることが嫌い。

ジェイン・・・バンクス家の長女。優しく弟・妹想い。メアリー・ポピンズのことを慕っている。

マイケル・・・ジェインの弟で、バンクス家の長男。知りたがりでよくメアリー・ポピンズに怒られている。

ジョンとバーバラ・・・バンクス家の双子の兄妹。今作では赤ちゃんで、鳥や風とお話ができる。

ブリルばあや・・・バンクス家の料理番。

エレン・・・バンクス家の小間使い。花粉症でいつもくしゃみをしている。

ロバートソン・アイ・・・バンクス家の使用人。暇さえあれば寝ていて、あまり仕事をしない。

ご近所さん

ラークおばさん・・・バンクス家のお隣さん。桜町通りで一番大きな家に住む。アンドリューという犬を溺愛している。

ブーム提督・・・桜町通に住み、まるで船のような形の家に住む。

鳥のおばさん・・・セント・ポール寺院でハトのえさを売っているおばさん。

メアリー・ポピンズの友人や身内

バート・・・マッチ売りと絵描き。メアリー・ポピンズの親しい友達。

ウィッグさん・・・メアリー・ポピンズのおじさん。誕生日と金曜日が重なると、体が宙に浮いてしまう。

コリーおばさん・・・双子の娘、ファニーとアニーと、不思議なお店でジンジャーパンを売っている。

 

あらすじ

一言あらすじ

桜町通りに住むバンクス家では、やんちゃざかりの子どもたちの面倒を見てくれる乳母兼家庭教師を募集していた。

そこへある日、東風にのって空から降りてきたのは、きっちりしているがどこか風変わりな女性、メアリー・ポピンズ。

バンクス家の子どもたちとメアリー・ポピンズの不思議な冒険の日々が始まる。

エピソード一覧

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』エピソード内容
1.東風メアリー・ポピンズが東風にのって、空からこうもり傘でバンクス家へやってくる
2.外出日メアリー・ポピンズがバートと絵の中でお茶をする
3.笑いガスメアリー・ポピンズと子どもたちはウィッグさん宅で空中でお茶をする
4.ラークおばさんの犬お隣のラークおばさんの愛犬アンドリューと友だちの犬ウィロビーのお話
5.踊る牝牛バンクス家の家の前を牛が通り、メアリー・ポピンズはその牛にまつわる物語を話す
6.わるい火曜日反抗的な気分になったマイケルは、メアリー・ポピンズは魔法の磁石を勝手にいじる
7.鳥のおばさんセント・ポール寺院前で鳥のえさを売っているおばさんのお話
8.コリーおばさんメアリー・ポピンズと子どもたちは、コリーおばさんのお店でジンジャーパンを買うと、不思議なことが起こる
9.ジョンとバーバラの物語赤ちゃんのジョンとバーバラは、鳥や風と会話することができるが、いずれ忘れてしまう
10.満月ある満月の夜、ジェインとマイケルは不思議な声に呼ばれて動物園に行く
11.クリスマスの買い物メアリー・ポピンズと子どもたちがクリスマスの買い物に出かけると、マイアという不思議な少女に出会う
12.西風メアリー・ポピンズは、何の前触れもなく、西から吹き上げる風にのって空へ旅立っていく

 

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』を読んだきっかけ

ももちんは、『メアリー・ポピンズ』は、映画も本も、大人になるまで見たことも読んだこともなかった。

何年か前に、1964年のミュージカル映画『メリー・ポピンズ』を見たけど、正直ピンとこなかった。

初めて見るには大人になりすぎていて、いまいちノリきれなかったんだよね。

最近ニュースで2019年2月に映画『メリー・ポピンズ リターンズ』が公開されると知った。

それで今回は、原作の児童文学を読んでみようと思って手に取ったのがきっかけ。

読んでみて、映画とは違うその世界観に、ももちんはしっくりきた。

メアリー・ポピンズが大好きになったよ。

映画の感想

映画『メリーポピンズリターンズ』感想。美しい映像と歌にくぎづけ!

ディズニーの新しいミュージカル映画『メリー・ポピンズリターンズ』を見てきたよ。 児童文学やミュージカルが好きな人なら絶対おすすめ。 今回は、映画『メリー・ポピンズリターンズ』の見どころを紹介するよ。 ...

続きを見る

 

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』感想

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』を読んで感じたのは、混じりけなしの純粋な「魔法の物語」であるということ。

メアリー・ポピンズの周りで起こる魔法には、一切説明はないし、メアリー・ポピンズの気持ちの描写なんてものもない。

不思議は不思議のまま、ひとつひとつの魔法が違う輝きを放っていて、宝石みたいにキラキラしてる。

メアリー・ポピンズとバンクス家の子どもたちを中心した物語なんだけど、それぞれのエピソードが完結しているので、短編集の感覚で読める。

 

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』ポイント

 

メアリー・ポピンズというキャラクター

もしあなたが、『メリー・ポピンズ』を映画だけで知っていたとしたら、本を読んでちょっと驚くと思う。

メアリー・ポピンズってこんな人だったんだ!って。

本の中のメアリー・ポピンズは、ほとんど笑わないし、かなり自己中で、うぬぼれ屋に見える。

 

機嫌の悪いメアリー・ポピンズ

本の中のメアリー・ポピンズの好きなところは、子ども相手だからってこびないし、変に優しくしないところ。

物語に出てくるたいていのお母さんって、やさしくて物分かりが良くて、聖母マリアみたいな人、多くない?

例えば、『赤毛のアン』シリーズのアンだって、母親になったら、めっちゃ子どもの気持ちわかって、素晴らしいお母さんだよね。

だけど、メアリー・ポピンズは、マイケルの知りたがりをいつも嫌がっているし、自分の機嫌で子どもたちへの態度も変わるんだよね。

「買い物をしているのは、わたくしですか、あなたですか?」と、メアリー・ポピンズが、ききました。

「あなたです。」と、ジェインはたいへん小さな声でこたえました。

「おや、そうですか?あべこべなのかと思ったら。」と、メアリー・ポピンズは、あざ笑うようにいいました。

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

メアリー・ポピンズ、完全に態度で子どもを威圧してるよね(笑)

他にも、メアリー・ポピンズの気まぐれな振る舞いをあげると、こんな感じ。

  • 自分は魔法を当然のように使いながら、子どもたちのマナー違反をゆるさない
  • 子どもたちが、さっき起こった不思議な体験のことを話すと本気で怒る
  • 子どもたちの質問に答えない
  • 歩くペースが早く、子どもたちはいつも小走りでついていく
  • うぬぼれが強く、いつも鏡をながめている
  • 子どもがもらったり拾ったりした物を勝手に使う
  • 高飛車に子どもたちを鼻であしらったり、あわれむ顔つきをする

世の中の「いい親、家庭教師」のイメージを完全にくつがえすメアリー・ポピンズ。

子どもたちも、周りの人たちも、文句の一つや二つ言いたくなるけど、メアリー・ポピンズの自信満々で堂々とした振る舞いに、誰も何も言えないんだよね。

そんな中で、ここぞというときにちらりと見える優しさや微笑みに、ぐっとくる。

なんだかんだ言って、子どもたちはメアリー・ポピンズのことが大好きだし、メアリー・ポピンズも子どもたちを思ってるんだよね。

 

バートとメアリー・ポピンズ

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』の中で、ちょっと他とは感じが違うお話がある。

それが、メアリー・ポピンズが外出日(お休みの日)に、絵描き兼マッチ売りの青年バートと会うお話

バートが恋人なのか、親しい友人なのかははっきりしないんだけど、ここではめずらしく、メアリー・ポピンズの心の中が描かれているんだよね。

メアリー・ポピンズにも、こんな女性らしい優しさがあるんだと、ほっこりする。

他のエピソードでは、子どもたちが一緒に不思議な出来事を体験することが多いけど、このお話だけは、子どもたち抜きで、メアリー・ポピンズとバートが二人の時間を楽しんでる。

それも、バートが描いた田園風景の絵の中に飛び込んで、お茶したり、メリーゴーラウンドに乗ったりする。

めっちゃキラキラしてて楽しそう。

 

説明不要のキラキラ魔法

魔法を描いた物語はたくさんあるけれど、あなたはどんな物語を思い出す?

メアリー・ポピンズの周りで起こる魔法は、誰も傷つかないし、責任も、戦いもない。

日常に役に立つかといえば、そうでもない。

ただひたすらに、見ていてハッピーになる、そんな魔法なんだよね。

例えば、こんな魔法。

  • 子どもたちに薬のようなものをスプーンひとさじずつ飲ませると、アイスクリームやジュースの味がする(映画でも有名)
  • 絵の中に飛び込んで入る
  • 金色の紙を空にはりつけ、それが星になる
  • 笑いガスで宙に浮く
  • 魔法の磁石であらゆる方角の人と交流する
  • プレアデス星団からきた星の少女と交流する

他にも、たくさんのプチハッピーな魔法が起こる。

この、はじけて消えてしまうようなミラクルで、皆が楽しくなるんだよね。

 

動物たちや自然と話ができる

メアリー・ポピンズの不思議な力はたくさんあるんだけど、その中の一つが、動物や自然と会話できるところ。

物語では、この能力は、「生まれてすぐの赤ちゃんは皆できること」として描かれている。

双子の赤ちゃんジョンとバーバラが、日の光や、鳥や風とお話するエピソードがあるんだよね。

ふつうは、大きくなるにつれてこの能力はなくなって、忘れてしまう。

だけど、大人になってもそれができるのが、メアリー・ポピンズなんだよね。

「ほら、ほら、風がお話してる。」と、ジョンが、耳をかたむけていいました。「ほんとに、なんなの、ぼくらも、もっと大きくなったら、あれがきこえなくなるの、メアリー・ポピンズ?」

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

自分と他人の境界、人間と自然の境界。

生まれたばかりのときは、はっきりしていなかった境界が、成長していくにつれ、よりはっきりとしていく。

もしかすると、この地球の常識に染まる前の赤ちゃんのほうが、いろんなことをよくわかっているのかもしれない、と感じるエピソード。

大人になってもその境界がないメアリー・ポピンズは、人間と目に見えないもの、大人と子ども、そのすべての要素を持っているんだな、と思った。

ちなみに、赤ちゃんが鳥とお話する場面は、次作『帰ってきたメアリー・ポピンズ』で、五人目の子どもアナベルが赤ちゃんの時の「新入り」というお話にもある。

『帰ってきたメアリー・ポピンズ』感想

『帰ってきたメアリーポピンズ』感想。映画メリーポピンズ原作本続編

『帰ってきたメアリー・ポピンズ』は、児童文学の名作『メアリー・ポピンズ』シリーズの2作目。 前作『風にのってきたメアリー・ポピンズ』で風にのっていってしまったメアリー・ポピンズが、凧にのって帰ってきた ...

続きを見る

 

バンクス家の子どもたち

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』では、バンクス家の子どもたちは4人いる。

メインでメアリー・ポピンズと一緒に不思議を体験するのは、一番上の女の子ジェインと、すぐ下の男の子マイケル

たぶん5,6歳くらいかな?やんちゃ盛りでいたずらすきの子どもたちなんだけど、メアリー・ポピンズがやって来てから、どんどん変わっていくんだよね。

 

空気を読む子どもたち

メアリー・ポピンズは最初の登場から風変わりで、ジェインとマイケルとひきつけた。

階段の手すりをすべり上がってきたり、空っぽのじゅうたんのバッグから大きなテントを出したり。

そんな不思議なことを見て、メアリー・ポピンズと一緒におもしろいことを体験したい子どもたちは、早い段階からメアリー・ポピンズの機嫌を読むんだよね。

メアリー・ポピンズの気まぐれさが、自然と、子どもたちを賢く行儀のいい子になるのに作用している

ももちん

ジェインとマイケルがお互いに顔を見合わせて合図する様子、子どもらしくてかわいい。

 

子どもらしさになごむ

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』の中にある「わるい火曜日」というお話は、マイケルがご機嫌ななめになったときのお話。

むしゃくしゃしていたずらばかり、口答えばかりするマイケル。

悪い魔法に巻き込まれて、最後にメアリー・ポピンズに助けてもらった時のマイケルの安心した様子がめっちゃかわいい。

そして、怖い思いをしたマイケルに、牛乳を差し出すメアリー・ポピンズも優しい。

メアリー・ポピンズのそっけない返事も、どこかうれしくなるお話。

ちなみに、次作『帰ってきたメアリー・ポピンズ』では、ジェインがご機嫌ななめになる「わるい水曜日」というお話もある。

 

両親の存在感うすめ。

子どもたちのしつけを主に引き受けているメアリー・ポピンズだけど、子どもたちには、もちろんちゃんとお父さんとお母さんがいる。

いつもぷりぷり怒っているお父さんと、メアリー・ポピンズがいないとき、やんちゃな子どもたちをどう扱っていいかわからないお母さん。

お母さんの存在感が薄いのが、ちょっと心配になった。

子どもたち、明らかにメアリー・ポピンズのこと大好きなんだもん。

ジェインは、わっと泣きだしました。

「世界じゅうで、メアリー・ポピンズだけいれば、いいんだ!」マイケルは、悲しい叫びをあげると、床のうえに、うつぶしてしまいました。

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

物語では、「そうはいってもやっぱり家族の絆」みたいな、人間的なものは描かれていない。

ひたすら純粋に、メアリー・ポピンズをめぐる不思議な出来事がちりばめられているところが、とてもいい。

 

映画にはないエピソードがいっぱい!

映画と原作、両方をみて感じたのは、映画では、原作本(『風にのってきたメアリー・ポピンズ』1冊)の2割くらいのエピソードしか描かれていない、ということ。

大部分は、原作本の中でしか出会えないエピソードばかりなんだよね。

だから、映画だけ見て、原作読んでないなら、めっちゃもったいない。

ここでは、原作だけで読めるエピソードを少し紹介するね。

 

メアリー・ポピンズが語る物語

メアリー・ポピンズは、ふだんは子どもたちの質問には答えない。

だけど、たまに、じっとどこかを見つめて、思い出すように「物語りモード」に入るんだよね。

メアリー・ポピンズが語るお話は、奇想天外で、本当なのか作り話なのかわからない。

夢の世界すぎるんだけど、いつも冷たいメアリー・ポピンズが語ると、胸焼けしないし、なんだか信じられるんだよね。

踊る牝牛

  引用元:Hey Diddle Diddle - Nursery Rhyme - With Text/NurseryRhymeTV

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』では、「星が落ちてきて角にささって、踊りが止まらなくなった牝牛」についてのお話が語られる。

この「踊る牝牛」の元になっているのは、『マザー・グース』の”Hey Diddle Diddle”という童謡うなんだよね。

歌詞に”The cow jumped over the moon.(ウシが月を飛びこえた)”という一節があるんだ。

「踊る牝牛」「月をとびこした牝牛」は『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』『公園のメアリー・ポピンズ』でも登場するよ。

参考:世界の民謡・童謡

マザーグースの引用紹介

児童文学『メアリーポピンズ』シリーズで引用されている歌・本まとめ

『メアリー・ポピンズ』シリーズは、ディズニー映画化もされているイギリス児童文学の名作。 物語の中には、イギリスの子どもたちなら必ずと言っていいほどなじみ深い「マザー・グース」もたくさん登場する。 今回 ...

続きを見る

 

星空を見たくなるエピソード

「クリスマスの買い物」というお話では、メアリー・ポピンズと子どもたちは、おもちゃ屋さんで不思議な少女マイアに出会う。

マイアはプレアデス星団の星の子で、他の星たちのためにおもちゃを買いにきたんだよね。

もう、星の子がおもちゃ屋さんに現れるということが、当然のように起こるって、素敵すぎる。

おもちゃをたくさんもったマイアは、空気の階段を上って空へ帰っていくんだ。

『メアリー・ポピンズ』シリーズでは、星座やギリシア神話にちなんだお話もちょくちょく出てきて、スケールが大きい。

次作『帰ってきたメアリー・ポピンズ』では、星座のサーカスもみることができるよ。

 

ちょっと毒をきかせたエピソード

全体的にシンプルに楽しいお話達の中で、ちょっとブラックユーモアの要素が入った「満月」というお話がある。

メアリー・ポピンズの誕生日と満月が重なった夜、ジェインとマイケルは、動物園に招待されるんだよね。

そこでは、いつも檻に入っている動物たちが外にいて、人間たちが檻に入れられていた。

檻の中で叫んでいる人間たちに餌をやり、外から眺めては喜ぶ動物たち

いつも人間たちが動物園でやっていることが逆になったとたん、居心地の悪さを感じる。

動物たちの長であるキング・コブラ(なんとメアリー・ポピンズのいとこ!)の言葉も深い。

おなじ物質が、わたくしどもをつくりあげているのですー頭のうえの木も、足のしたの石も、鳥も、けものも、星も、わたしたちはみんな、かわりはないのです。すべて、おなじところにむかって、動いているのです。

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

大人でもふに落ちないことがさらっと書いてある。

精神世界系の本ならわかるけど、『メアリー・ポピンズ』にこういう哲学的なことが書いてあってびっくりした。

 

次作以降への伏線となるお話たち

児童文学の「メアリー・ポピンズ」シリーズ作品は、全部で8作品ある。

バンクス家の人物のみならず、隣人や友人たちも、シリーズ通して同じキャラクターが登場するんだよね。

1作目の『風にのってきたメアリー・ポピンズ』では、その初登場シーンを読むことができる。

「ラークおばさんの犬」というお話では、ラークおばさんが犬を2匹飼うことになったきっかけを知ることができる。(次作以降は当然のように2匹一緒)

「鳥のおばさん」というお話は短いけれど、次作以降はそのおばさんの息子が公園番としてレギュラー登場する。

メアリー・ポピンズシリーズ本

『メリー・ポピンズ』原作シリーズ本・絵本・映画15作品まとめ!

『メリー・ポピンズ』の映画、見たことある? ももちんは大人になってから昔の映画を見たんだけど、いまいちノリきれなかった・・・ だけど、原作の物語を読んだら、メリー・ポピンズがめっちゃ好きになったよ。 ...

続きを見る

 

イギリスの文化

『風にのってやってきたメアリー・ポピンズ』の時代背景ははっきり描かれていないけれど、様子からわかるのは、20世紀初頭のロンドンかな、と思う。

物語の中では、現代の日本人にはなじみのない文化や生活習慣があっておもしろい。

 

メアリー・ポピンズの職業

まず一番興味がわくのは、メアリー・ポピンズの「住み込みの乳母兼家庭教師」という職業

これは、当時のイギリスでは一般的だった「ナニー」という職業らしい。

ナニーは子どもたちと一緒に子ども部屋で寝起きをし、洗顔から朝食など一日中面倒をみる。

子どもが学校に行くようになるまでの時期に子育てをする重要な職業で、中流家庭でも一般的だったみたい。

参考:Wikipedia

 

バンクス家は裕福?

『メアリー・ポピンズ』では、バンクス家の建物は「小さく古ぼけている」と書いてある。

だけど、その家に、料理人、小間使い、使用人、ナニーまでいるというのが、なんかよくわからなかった。

そんなにたくさんの人を雇えるということは、裕福な家庭しかできないことだよね。

世界の英語を映画で学ぶ研究会によると、1964年の映画『メリー・ポピンズ』で話されている英語から察するのは、裕福な中流家庭としてのバンクス家、とのこと。

一方、バートや小間使いのエレンは労働者階級の英語を話す。

20世紀初頭のイギリスでは、階級によって職業もはっきり分かれていたんだね。

参考:『メリー・ポピンズ』世界の英語を映画で学ぶ研究会

 

食事の時間、メニュー

『風にのってきたメアリー・ポピンズ』では、お茶の時間がたびたび登場し、おいしそうな料理もたくさん出てくる。

  • 木イチゴ・ジャムのケーキ
  • バターをつけたパン
  • やわらかそうな菓子パン
  • ヤシの実入りのお菓子
  • 桃色の砂糖でころもをかけた、干しブドウ入りのケーキ
  • ジンジャー・パン

どれもこれも、おいしそう。

イギリスでは、夕食は軽め、お昼にしっかりした食事をとるのが一般的

午後のティータイムにも、お茶と一緒にケーキや甘いものを食べるので、なかなかハイカロリーな食生活だよね。

『台所のメアリー・ポピンズ』では、物語に登場する料理のレシピを紹介しているよ。

 

メアリー・シェパードの絵

物語の中でいい味出してるのが、メアリー・シェパードのイラスト。

岩波少年文庫の4作品と、『台所のメアリー・ポピンズ』では、メアリー・シェパードのイラストを見ることができる。

メアリー・ポピンズのツンとした表情や、ピシッとした姿勢や服装が、文章で描かれるメアリー・ポピンズのイメージそのままなんだよね。

子どもたちの表情や、他の登場人物たちの風貌も描かれているので、物語を読み進めやすい。

 

林容吉の訳

林容吉の日本語訳はすばらしいなあと思う。

子どもたちの会話や様子が、いちいちかわいくて、翻訳者の子どもたちへの愛が感じられる。

このまま子どもに話して聞かせても、すんなり聞いてもらえるような優しい訳文で、心があたたかくなる。

メアリー・ポピンズのきりっとした言葉づかいもはまっている。

「あなたは、ピカリというまに、うちへ帰ってたでしょうーまったくの、ピカリでしょうよ!」

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

「けさは、どっちもわるかったんですよ、おりこうやさん!

引用元:『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店、2000年

「ピカリ」とか「おりこうやさん」とか、絶妙な言い回しがくせになる。

現在では一般的には使われていない古い言葉づかいもあるけれど、それはそれでクラシカルな味が出ている。

 

感想おさらい

 

広がる「メリー・ポピンズ」

左上『風にのってきたメアリー・ポピンズ』2000年
右上『帰ってきたメアリー・ポピンズ』2001年
左下『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』2002年
右下『公園のメアリー・ポピンズ』2003年
いずれもP.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店

現在読むことができる『メアリー・ポピンズ』シリーズ本は全8冊。

まずはこの記事で紹介している『風にのってきたメアリー・ポピンズ』をはじめとした岩波少年文庫の4冊を読んでみよう。

その他、アノニマ・スタジオから刊行の『台所のメアリー・ポピンズ』、復刊ドットコムから刊行のメアリー・ポピンズ3作品があるよ。

次の記事で、シリーズ作品、映画について詳しく紹介しています。

check
『メリー・ポピンズ』原作シリーズ本・絵本・映画15作品まとめ!

『メリー・ポピンズ』の映画、見たことある? ももちんは大人になってから昔の映画を見たんだけど、いまいちノリきれなかった・・・ だけど、原作の物語を読んだら、メリー・ポピンズがめっちゃ好きになったよ。 ...

続きを見る

「岩波少年文庫」公式ページ

 

まとめ

児童文学『風にのってきたメアリー・ポピンズ』あらすじと感想まとめ。

 

ツンとしているけど謎に満ちたメアリー・ポピンズと、ひとつひとつ輝く宝石のようなエピソードを、好きにならずにいられない。

映画を見ようと思っているなら、原作本も合わせて読んでみることをお勧めするよ。

P.L.トラヴァースの作品をAmazonで見る

P.L.トラヴァースの作品を楽天ブックスで見る

 

書籍の表紙画像について、各出版社/著者ご本人から許諾を得るか、版元ドットコム等許諾申請不要の確認のもと掲載しています。表紙画像掲載不可または可否不明の書籍については、Amazonアソシエイトの商品画像リンクを掲載しています。

Kindle Unlimited読み放題【PR】

↑↑↑30日間無料↑↑↑

Amazonの電子書籍読み放題サービス”Kindle Unlimited”では、常時200万冊以上が読み放題! ちょっと興味がある小説、雑誌、趣味の本も、買わずにサクサク読める!

あなたはどのプラン?

Kindle Unlimitedお得プランをチェック

Kindle Unlimited公式ページへとびます。

  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

-書評(小説・児童文学), 『メアリー・ポピンズ』シリーズ, クリスマスの小説
-,