小説『フランケンシュタイン』はイギリスの女流作家メアリー・シェリーが10代で書いた名作。
怖いイメージしかなかったけど、小説を読んで、ガラッとイメージが変わったよ・・・。
この記事で紹介する本
どの出版社の『フランケンシュタイン』を読めばいいか知りたいなら、次の記事からどうぞ。
翻訳別比較
『フランケンシュタイン』19作品比較。文庫・映画など特徴まとめ!
『フランケンシュタイン』は、イギリスの女流作家メアリー・シェリーが10代で書いた名作。 現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。 こんな方におすすめ 『フランケンシュタイン』 ...
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こんな方におすすめ
- 小説『フランケンシュタイン』のあらすじと見どころを知りたい
- メアリー・シェリーについて知りたい
小説『フランケンシュタイン』とは?
小説『フランケンシュタイン』(原題”FRANKENSTEIN;OR,THE MODERN PROMETHEUS”「フランケンシュタインまたは現代のプロメテウス」)は、イギリスの女流作家・メアリー・シェリーにより、1818年に発表された。
1831年、第三版の刊行にあたり、メアリー・シェリー自身により大幅な改稿が加えられた。
現在一般的なのは、この1831年の改訂版。
日本では、1948年、山本政喜訳により、『巨人の復讐 フランケンシュタイン』として新人社(のち角川文庫)より刊行された。
現在に至るまで、「フランケンシュタイン」の名が含まれた映画は30作以上制作され、舞台化・アニメ化も多くされている。
メアリー・シェリー(作)
イギリスの女流作家。
1797年生まれ。
急進的自由主義者の父ウィリアム・ゴドウィン、女性解放を訴えた思想家の母メアリー・ウルストンクラフトの間に一人娘として生まれる。
1814年、当時のイギリスを代表する詩人シェリーと出会い、1816年に彼の妻が亡くなると、正式に結婚。
1818年、『フランケンシュタイン』を出版。
1822年の夫の死後は相次ぐ子どもの死や経済的困窮などに見舞われる。
1851年死去。
引用元:シェリー 小林章夫:訳『フランケンシュタイン』/光文社古典新訳文庫
代表作(小説)
小林章夫(訳)
英文学者、上智大学名誉教授。
1949年東京生まれ。
専攻の18世紀イギリス文学を中心に近代のイギリスの文学・文化を多角的に研究する。
1985年、ヨゼフ・ロゲンドルフ賞受賞。
引用元:シェリー 小林章夫:訳『フランケンシュタイン』/光文社古典新訳文庫
代表作(翻訳)
光文社古典新訳文庫
「世界の文豪」も最初は「若手」だった
〈光文社古典新訳文庫で読む注目の若手作家!〉
『フランケンシュタイン』(シェリー/小林章夫訳)
1814年17歳で詩人シェリーと駆け落ちし、その後結婚。本作を書き始めたのは19歳の時。 pic.twitter.com/VbwHFB2n82— 光文社古典新訳文庫 (@kotensinyaku) 2016年3月2日
光文社古典新訳文庫は、2006年に創刊された文庫レーベル。
文学作品から哲学書まで、古典と呼ばれる作品を現代の読者にも読みやすい日本語で新訳するのがコンセプトの文庫シリーズ。
表紙のイラストはすべて望月通陽。
2008年にはドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫訳)の売上が全5巻合わせて100万部を突破し、亀山郁夫は、プーシキン・メダル受章をメドベージェフ大統領から授与された。
参考:Wikipedia
光文社古典新訳文庫を選んだ理由
小説『フランケンシュタイン』は、複数の出版社から刊行されているんだけど、今回ももちんが読んだのは光文社古典新訳文庫。
新潮文庫と迷ったんだけど、両方の無料サンプルをKindleで読んだときに、光文社古典新訳文庫の方が読みやすかったので。
あと、光文社古典新訳文庫の『フランケンシュタイン』は、Kindle Unlimited対象商品なんだよね。(2018年12月現在)
ももちんはもともとKindle Unlimitedに登録していたので、追加料金払うことなく読むことができた。
スマホでストレスなく最後まで読めたよ。
レビュー記事を書くときはどうしても紙書籍の方が便利なので、図書館で紙書籍も借りてきています。
Kindle Unlimited感想記事
30代主婦がKindle Unlimitedを2年使った感想。月2冊で元が取れる
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主な登場人物
ウォルトン隊長・・・イギリスの探検家
ヴィクター・フランケンシュタイン・・・スイスに生まれた若い科学者。
怪物・・・フランケンシュタインが創造した醜く巨大な生き物。
ボーフォール・・・フランケンシュタインの父。誇り高く頑固な男性。
エリザベス・・・フランケンシュタインのいいなずけ。美しく優しい。
ヘンリー・クラーヴァル・・・フランケンシュタインの親友。
ウィリアム・・・フランケンシュタインの幼い弟。
ジュスティーヌ・・・フランケンシュタインの生家の女中。誠実。
あらすじ
一言あらすじ
北極を目指し抗海中のウォルトン隊長は、瀕死の男ヴィクター・フランケンシュタインを助ける。
フランケンシュタインは、研究への情熱から怪物を生み出し、それがもたらした想像を絶する悲劇の体験を語る。
フランケンシュタインが息絶えたあと怪物が現れ、自分も死ぬことをほのめかし姿を消す。
ここからは、『フランケンシュタイン』の詳しいあらすじ。
感想から読みたいならこちら(後ろへとびます)→→本を読んだ感想
始まり:ウォルトン隊長
舞台は18世紀のヨーロッパ。
ウォルトン隊長は北極を目指し航海しており、その様子を姉にあてた手紙で語るという形で物語は始まる。
ある日、ウォルトンは氷の海の上を漂流している瀕死の男を助ける。
男は名をヴィクター・フランケンシュタインといった。
北極探検への情熱を語るウォルトンに、フランケンシュタインは諭すように自分の過去を語り始める。
フランケンシュタインの告白
物語の大部分は、フランケンシュタイン自身が語る体験である。
幸福な子ども時代
告白はフランケンシュタインの幼少期から始まった。
父と母のなれそめ、エリザベスが一緒に暮らすようになった経緯、親友クラーヴァルのことなどが語られる。
豊かで幸福な子ども時代であり、科学への興味を持ち始めた。
高まる研究熱
フランケンシュタインが大学に進学する直前に母がしょう紅熱で亡くなる。
大学ではヴァルトマン教授に出会い、科学の探求への志がいっそうかたいものとなり、研究に没頭する。
フランケンシュタインは、生命の通わぬ物質に生命を与える研究に夢中になる。
怪物の誕生
ある夜、とうとう怪物が誕生する。
その巨大な醜さを目の当たりにしたフランケンシュタインは、嫌悪感と恐怖でいっぱいになる。
怪物を家に置き去りにしたまま、ふらふらと出かけているうちに、怪物は姿を消していた。
フランケンシュタインは安堵し、研究への情熱も冷め、故郷に帰ることを考える。
弟ウィリアムの死
フランケンシュタインは、父からの手紙で、幼い弟ウィリアムが何者かに首を絞められ殺されたという知らせを受ける。
故郷に帰ったフランケンシュタインは、怪物の犯行であることを確信する。
しかし、誠実な女中ジュスティーヌが疑われ、有罪となり、処刑されてしまう。
フランケンシュタインは後悔と絶望に打ちのめされる。
怪物の出現
ある日、フランケンシュタインの前に怪物が姿を現す。知性と感情を獲得した怪物は、生まれてから現在までの体験を語り、復讐をやめる交換条件を提示する。
その条件とは、自分と同じような女の怪物をもう1体創造することだった。
怪物の告白
怪物は生まれたときは何もわからなかったが、フランケンシュタインに再会するまでの2年の間に言葉を習得し、自由に操れるようになっていた。
初め怪物は優しい心を持ち、人間からの愛を獲得したいと願っていた。
しかし、どんなに望んでも、人間からは忌み嫌われるばかりであることをさとった怪物は、こんな自分を創造したフランケンシュタインへの復讐を誓った。
怪物の復讐
一旦は怪物の条件を受け入れ、旅先で怪物の創造を始めたフランケンシュタインだったが、過ちに気づき、それを放棄する。
怒りに燃えた怪物は、フランケンシュタインの親友ヘンリー・クラーヴァルを殺害する。
ショックで心身ともに衰弱したフランケンシュタインは、故郷に戻り、エリザベスとの結婚を決意する。
しかし、エリザベスもまた、怪物の手によって殺害される。
それを知ってショックを受けたフランケンシュタインの父も、数日後に亡くなる。
フランケンシュタインは怪物を追い、全てを終わらせることを決意する。
その道中でウォルトン隊長に助けられたのだった。
終わり:フランケンシュタインの死
場面は変わり、再びウォルトンから姉へあてた手紙になる。
手紙によると、フランケンシュタインは自らの体験を語った後、しばらくして亡くなった。
ウォルトンは北極への航海を断念し、イギリスへ戻る。
フランケンシュタインの遺体の前に姿を現したのは、なんと、怪物だった。
怪物は、フランケンシュタインが死んだ今、自らも死ぬをことをほのめかせ、姿を消す。
『フランケンシュタイン』を読んだきっかけ
ももちんが小説『フランケンシュタイン』を読んでみようと思ったのは、作者のメアリー・シェリーに興味を持ったから。
メアリー・シェリーは、19歳の時に『フランケンシュタイン』を書き始めてるんだよね。出版は21歳。
てっきり怖いおじさんが書いた小説だと思ってた・・・
こんな若い時に、現在まで語り継がれるキャラクターを作り出す才能ってすごい!と思って、読んでみました。
19歳の女性が怪奇小説を書いた経緯
『フランケンシュタイン』の前書きに、メアリー・シェリーがこの物語を書いた経緯が記されている。
もともと文学的に名高い両親のもとに生まれたメアリーは、17歳の時に詩人のパーシー・シェリーと駆け落ち、後に結婚する。
夫とその友人で詩人のバイロン、ポリドリとの交流の中で、ある日、「それぞれ幽霊の話を書いてみよう」ということになった。
そんな中、メアリー・シェリーが書いたのが『フランケンシュタイン』、ポリドリが書いたのが『吸血鬼』だというのだから、びっくり。
200年も語り継がれている伝説が、この場で同時に生み出されたんだ。
メアリーは前書きで、『フランケンシュタイン』を「わが醜い子供」「この子には愛情がある」と表現している。
救いのない悲劇、怪奇小説として有名な『フランケンシュタイン』だけど、メアリーは後々までこの作品に愛着を感じていたんだね。
「フランケンシュタイン」は怪物じゃない!
『フランケンシュタイン』の本の情報を読んで、もう一つびっくりしたことがあった。
「フランケンシュタイン」て何の名前だと思う?
ももちんは、てっきり、怪物の名前だと思ってたんだよね。
本当は、「フランケンシュタイン」は怪物を創造した科学者の名前なんだ。
小説の中で、怪物はあくまで「怪物」でしかなく、名前はない。
めっちゃ勘違いしていたな、と思った。
『フランケンシュタイン』感想
『フランケンシュタイン』を読んで感じたのは、ホラー映画で感じるような恐怖ではなかった。
始まりは純粋な研究への情熱だったけれど、目を覆いたくなるような悲劇という結末。
思わぬ結果を生んでしまった、科学者フランケンシュタインの後悔と罪悪感。
知性を持ってしまったがゆえに怪物が感じた孤独と復讐心。
意図しない方向へ回っていく運命の歯車に、ずしんと心が重くなったまま、最後まで読みました。
小説『フランケンシュタイン』ポイント
三層構造
物語は、探検家ウォルトンが姉にあてて書いた手紙という形で語られる。
その手紙の中でフランケンシュタインが登場し、そのフランケンシュタインの告白の中に怪物が登場する、という三層構造になっているんだよね。
初めの探検家ウォルトンだけの場面はちょっと退屈だった。
フランケンシュタインが登場してからは、一気にひき込まれた。
探検の野望に燃えるウォルトンに、自身の悲劇を語って聞かせるフランケンシュタインの語り口は、知性にあふれていて、表現力が豊か。
絶望の淵にいるからこそ説得力があるんだな、と思った。
幸福な子ども時代ー悲劇とのギャップ
初め、瀕死のフランケンシュタインの口から語られるのは、幸福な子ども時代。
愛にあふれた過去と、悲劇にまみれた瀕死の現在。
ギャップがすごすぎて、胸がしめつけられる。
理想化された家族や友人
フランケンシュタインの生家は、スイスでも屈指の名家の一つ。
父は誠実な行政官。母は若く優しい。
幼少のころから、いいなづけとしてともに育ったエリザベスは愛らしく優しい。
親友のクラーヴァルは気高い志をもち、冒険心にあふれる。
非の打ちどころのないほど恵まれた環境の中で、フランケンシュタインは育った。
フランケンシュタインの言葉から、自分がいかに幸福な子ども時代をおくったか、それに感謝しているかが伝わってくる。
母の死ですら幸福に思える
フランケンシュタインが大学に進学するとき、母親が病気で亡くなる。
フランケンシュタイン自身も、このときの悲しみを語っている。
ももちんは最初読んだとき、家族の死ってとても深い悲しみだよね・・・って共感した。
だけど、最後まで読み終わった後で、もう一度この場面読んだら、「ベッドの上で安らかに死ぬなら、救いだな・・・」って思っちゃったんだよね。
それだけ、後半でやってくる死が罪深く、重く、恐怖と憎しみに彩られているものだということ。
研究への情熱と後悔
フランケンシュタインは、子ども時代から「研究への情熱」の片りんを見せていた。
回想では、科学的な関心の揺れ動きや、本や教授との出会いも語られている。
そのどれか一つが欠けても現在には至らなかったのだろうし、全てが運命のように必然だったんだと思わせる。
研究への異常な情熱
やがてフランケンシュタインは、生命発生の原因を発見し、「生命の通わぬ物質に生命を吹き込む」研究に没頭する。
寝食を忘れ、ひとり部屋に閉じこもり、動物の死体の断片や骨をいじり続ける姿は、狂気としか言いようがない。
抑えようのない、ほとんど取り憑かれたとも言える衝動が、わたしをつき動かしていました。
魂も感情もすべてこの探求ただ一つに賭けていたと言えるでしょう。
引用元:シェリー 小林章夫:訳『フランケンシュタイン』/光文社古典新訳文庫
ももちんは、研究者でも何でもないので、ちょっとその異常な探求心は、想像がつかない。
だけど、なにかに夢中になっているときは、夢中になったその先に何が待っているか、なんて想像しないんだろうと思う。
ただ、やりたい!突きつめたい!その一心に動かされているような状態なんだよね。
怪物を一目見た瞬間の後悔
フランケンシュタインは、最愛の家族とも音信不通になり、健康を害しながら、命を吹き込む研究に明け暮れた。
だけど、自分が生み出した怪物を一目見たとき、一瞬にしてその熱意が冷めるんだよね。
人の気持ちがここまで一瞬で反対に変わってしまうものなのかと、ちょっとびっくりする。
この気持ちの変化は、おそらくフランケンシュタイン自身も予想できなかったと思う。
ふつうは、長い間情熱注いでやっと生み出したものなら、「子ども」とおもって愛情を持つもの、と思うかもしれない。
だけど、「見た目の醜さ」が、これほどまでに簡単に情熱を冷めさせてしまう。
表面的なことにここまで左右される、すべての人間に共通する弱さと浅はかさを感じずにはいられない。
知性と感情を持った怪物
物語の中で、最もいきいきと描かれているキャラクターは、言うまでもなく、フランケンシュタインと怪物。
特に、怪物が発する言葉から伝わってくる、豊かな知性と感情には、心を揺さぶられるものがある。
知性を持ってしまった残酷さ
怪物が持って生まれた不幸は、二つある。
一つは、「醜く生まれてしまったこと」、もう一つは、「知性を持ってしまったこと」。
もし、高い知性を持たずにつくられたなら、動物のように、自分の見てくれなど気にせず、本能のまま生きることができたかもしれない。
ところが、怪物は、人間と同じような知性を持ったがゆえに、人間と同じものを望んだ。
人間が当たり前のように求め、与えているもの。
それが、愛情であり、共感だった。
自分が彼らの前に姿を現したとき、どのように迎えてくれるかを、頭のなかで何度も繰り返し思い描いた。
最初は見るのもいやだと思うかもしれない。しかし、こちらの穏やかな仕草と親しみのこもった言葉に好意を持ってくれ、やがては愛してくれると想像したのだ。
引用元:シェリー 小林章夫:訳『フランケンシュタイン』/光文社古典新訳文庫
初対面の相手と仲良くなれるか?受け入れてもらえるか?を繰り返し思い描く、怪物の期待と不安。
人間のもつ気持ちとなんら変わらない繊細さが、そこにある。
しかし、持って生まれた醜さゆえに、求めている唯一のものが得られないことがわかったとき怪物が感じた孤独は、人間にはわかりえないものだったと思う。
復讐心へと変わる心
ももちんが心を揺さぶられたのは、怪物が感じていた「嫌われること」への恐怖。
怪物の心は決して強いものではなく、人間のようにもろく、傷つきやすかったんだ。
何度も勇気を出して人間に好意を示しても、拒否され、恐れられ、攻撃される・・・
人間から繰り返し忌み嫌われた孤独と悲しみは、創造主フランケンシュタインへの憎しみとなって募っていった。
やがて、創造主フランケンシュタインへの憎しみは、復讐心へと変わっていく。
視覚から訴えるものの重さ
ももちんは、『フランケンシュタイン』関連の映画を観たことはないんだけど、初めに小説で読めてよかったと思った。
怪物に対して、醜さへの嫌悪よりも、同情・共感の方を強く感じることができたから。
あくまで外から物語をのぞいている「読者」だから、距離を置いて怪物の心の内を感じることができた。
怪物がどんなに美しく優しい心を持っていたとしても、それを知る前に外見を見てしまったら、心のことなんて受け止める余裕がなかったと思う。
それだけ、人間にとって「目に見えるもの」は強力で、判断に大きく影響する。
だけど、そういう自分の判断の偏りがわかっていたなら、相手の目に見えない部分を知ろうとする努力をするのだろうと思う。
現実社会でも、無意識に視覚から訴えるものが判断に影響していること、よくわかっていたい。
フランケンシュタインの苦悩
怪物をつくりあげたあと、フランケンシュタインが味わった苦悩は、想像を絶するものだった。
人間が味わう最大の苦悩のオンパレード、と言ってもいいと思う。
人間が味わう最大の苦悩って何だと思う?
ももちんは、愛する者が目の前で死んでいくことだと思ったんだよね。
しかもフランケンシュタインの場合、それは、自分がつくりあげた怪物の手による死だった。
一人目は、幼い弟。
二人目は、その殺人犯に仕立て上げられ、処刑された女中ジュスティーヌ。
三人目は、親友クラーヴァル。
四人目は、妻エリザベス・・・。
フランケンシュタインは、彼らを手にかけた怪物を憎む一方で、自分自身も責めつづけた。
罪もない人間を殺したのはぼくなんです。彼らはみんなぼくの手で死んだんだ。
彼らの命を救えるのなら、自分の血を一滴一滴流してみせても構いはしなかった。でも父さん、できなかったのです。
引用元:シェリー 小林章夫:訳『フランケンシュタイン』/光文社古典新訳文庫
自分一人が死ぬことより、愛する者たちが死んでいくことの苦しみが何倍も深い。
その罪の重さにフランケンシュタインは押しつぶされていく。
絶対に話さないフランケンシュタイン
ももちんがちょっとやきもきしたのは、フランケンシュタイン、怪物をつくったこと誰にも話さず、一人で解決しようとするんだよね。
ようやく警察に話すのは、エリザベスが死んだあと。
話しても信じてもらえない、確かにそうかもしれない。
だけど、あんなに優しく親身に想ってくれる家族や友人が周りにいるのだから、頼ってもよかったんじゃないかな?
もっと早くそのこと誰かに話してたら、打つ手はあったかもしれないって思った。
一貫して怪物を否定し続ける
フランケンシュタインは、最初から最後まで、自分がつくった怪物を嫌いつづける。
一度は同情を示し、怪物の要求通り、女の怪物をつくることを承諾するけれど、後になってそれも拒否する。
「怪物」は最後まで「怪物」であり、名前すらつけてもらえない。
自分を生んだものからさえ愛されない、孤独と悲しみ。
終盤、フランケンシュタインは、すべてを終わらせるために怪物を追い続ける。
たとえ憎しみからでも、追い求められることは、怪物にとって満足だったのだと思う。
すべてを終わらせた怪物
フランケンシュタインがすべてを語り終え、息絶えたとき、怪物の復讐も終わった。
船に現れた怪物の最後の語りは、人間以上に雄弁で驚く。
自分のしたことの自己中心的な考え、自分自身に感じた絶望、嫉妬と強い怒り。
かつて持っていた美徳を愛する心、愛と友情を望んでいた自分。
自らも死んですべてを終わらせることを宣言し、怪物は姿を消す。
フランケンシュタイン同様、自らの犯した罪の意識に苦しんでいた怪物にとって、死は救いでしかなかったのだと思う。
感想おさらい
プロメテウスとは?
『フランケンシュタイン』原題は、”Frankenstein or,The Modern Prometheus”(フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス)って言うんだよね。
じゃ、プロメテウスってなんだろう?って思わない?
プロメテウスっていうのは、ギリシャ神話に登場する男性の神。
粘土から人間を創造し、天界の火を盗んで人類に与えた神としても知られている。
人間は与えられた火を利用し、文明や技術の進化をもたらした一方で、武器をつくり戦争をするようにもなった。
このことから、「プロメテウスの火」は、行きすぎた科学技術のもたらす危険を暗示する言葉としても使われる。
科学者フランケンシュタインがたどった運命に通じるものを感じる。
参考:Wikipedia
他出版社の『フランケンシュタイン』
小説『フランケンシュタイン』は光文社古典新訳文庫以外にも、複数の出版社から出版されているよ。
出版社別・特徴別におすすめの『フランケンシュタイン』をまとめたので、参考にしてみてね。
まとめ記事
『フランケンシュタイン』19作品比較。文庫・映画など特徴まとめ!
『フランケンシュタイン』は、イギリスの女流作家メアリー・シェリーが10代で書いた名作。 現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。 こんな方におすすめ 『フランケンシュタイン』 ...
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映画『メアリーの総て』
引用元:映画『メアリーの総て』公式サイト
🌛ギレルモ・デル・トロ監督からの素敵なコメントをご紹介🦇
傑作!メアリー・シェリーの生き様に胸を打たれる。
夢を諦めかけたり、人から夢を嘲笑われる度に、彼女の存在を思いだし、励まされ続けるだろう。#シェイプ・オブ・ウォーター #パンズ・ラビリンス #クリムゾン・ピーク pic.twitter.com/kX5bU99gAZ— 映画『メアリーの総て』12.15公開 (@maryshelley_jp) 2018年11月26日
『フランケンシュタイン』を書いたメアリー・シェリーをモデルにした映画が、2018年12月に公開された。
メアリー・シェリー自身、17歳で駆け落ち、18歳で出産、相次ぐわが子の死と、波乱万丈の人生を駆け抜けた人だった。
そんなメアリー・シェリーをエル・ファニングがどんな感じで演じているのか、興味深い。
感想記事
映画『メアリーの総て』感想。フランケンシュタイン著者の人生を描く
『メアリーの総て』は、怪奇小説『フランケンシュタイン』の著者、メアリー・シェリーの人生を描いた映画。 エル・ファニングが、情熱的で聡明な美少女メアリー・シェリーを演じている。 『フランケンシュタイン』 ...
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まとめ
小説『フランケンシュタイン』見どころまとめ。
小説を読むと、これまで「フランケンシュタイン」にもっていたイメージがガラッと変わるはず。
映画しか観たことがない人も、ぜひ原作を読んでみてね。
著者メアリー・シェリーについて知りたいなら、こちらの記事をどうぞ。
映画『メアリーの総て』感想。フランケンシュタイン著者の人生を描く
『メアリーの総て』は、怪奇小説『フランケンシュタイン』の著者、メアリー・シェリーの人生を描いた映画。 エル・ファニングが、情熱的で聡明な美少女メアリー・シェリーを演じている。 『フランケンシュタイン』 ...
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書籍の表紙画像について、各出版社/著者ご本人から許諾を得るか、版元ドットコム等許諾申請不要の確認のもと掲載しています。表紙画像掲載不可または可否不明の書籍については、Amazonアソシエイトの商品画像リンクを掲載しています。