児童文学の名作とされている『赤毛のアン』。
じつは、大人になってから読むと味わいが倍増する作品でもあるよ。
今回は、新潮文庫刊の村岡花子翻訳『赤毛のアン』をもとにあらすじとみどころをお伝えするよ。
どの出版社の『赤毛のアン』を読めばいいか知りたいなら、次の記事からどうぞ。
この記事で紹介する本
シリーズ合本版
この記事のポイント
- モンゴメリの小説『赤毛のアン』のあらすじ
- 小説『赤毛のアン』の詳しい感想
小説『赤毛のアン』とは?
『赤毛のアン』(原題”Anne of GreenGables")は1908年、にカナダの女流作家、ルーシーモード・モンゴメリにより出版された。
日本では、村岡花子の翻訳により、三笠書房より1952年、のちに新潮文庫より1954年に出版。
新潮文庫では、シリーズ全11巻のうちの第1巻。
ルーシー・モード・モンゴメリの著作の中で最も有名な1冊でもあり、実写映画化やアニメ化、舞台化もされている。
ルーシー・モード・モンゴメリ/著
20世紀前半にカナダで活躍した女流作家。
『赤毛のアン』の作者であり、本作を第一作とする連作シリーズ「アン・ブックス」で有名。
プリンスエドワード島の美しい自然を背景にした小説をいくつも残す。
1874年カナダ・プリンスエドワード島クリフトン(現在のニューロンドン)に生まれる。1歳9ヶ月で母と死別、祖父母に育てられ教師になる。
1906年、教会の長老派牧師ユーアン・マクドナルドと婚約。
1908年、最初の長編小説『赤毛のアン』を出版し、世界的ベストセラーとなる。
1911年、モンゴメリ36歳の時、婚約者ユーアン・マクドナルドと結婚。
モンゴメリは続く11冊の本をリースクデールの牧師館で書いた。
1942年、トロントで亡くなる。
参考:Wikipedia
村岡花子/訳
村岡花子(訳)紹介
『赤毛のアン』を翻訳した村岡花子ってどんな人?その生涯と作品紹介
日本で初めて『赤毛のアン』の翻訳をした村岡花子。その人生と作品を紹介するよ。 こんな方におすすめ 村岡花子訳の『赤毛のアン』愛読者。どんな人か知りたい 村岡花子のほかの翻訳作品、創作作品を知りたい 村 ...
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主な登場人物
グリーン・ゲイブルス
- アン・シャーリー・・・・痩せていて、青白く、そばかすだらけの顔をした女の子。自分の赤毛に劣等感を抱いている。想像力豊かでおしゃべり好き。
- マリラ・クスバート・・・アンを引き取る老兄妹の妹。背が高く痩せており、現実主義者で働き者。
- マシュウ・クスバート・・・アンを引き取る老兄妹の兄。引っ込み思案で、特に女性が苦手。心臓が悪い。
アボンリーの大人たち
- リンド夫人・・・近所に住む主婦で、詮索好き。10人の子供を育てたベテラン主婦。マリラの古くからの友人。
- ミス・ステイシー・・・物語後半から登場する教師。アンのよき理解者となる。
- ミセス・アラン・・・物語後半から登場する、アボンリーの牧師の奥さん。アンの良き友人となる。
同級生
- ダイアナ・バーリー・・・アンの最初にして最大の親友。黒い髪と目、バラ色の頬を持つふくよかな少女。
- ギルバート・ブライス・・・アンのライバル。アンが初めて学校に行ったとき、アンの髪を「にんじん」と言ってからかったため、激怒したアンに石盤でたたかれる。
- ルビー・ギリス・・・アンの友人。美人でヒステリーの発作がある。早熟で恋人の話ばかりする。
- ジョシー・パイ・・・アンの友人。アンにいじわるばかりする。「命令遊び」でアンに屋根歩きを命じ、アンはくるぶしをケガする。
- ジェーン・アンドリュース・・・アンの友人。アン・ダイアナ・ルビーとともに物語クラブを結成する。
- チャーリー・スローン・・・目立たないがアンに思いを寄せる男の子。
クイーン学院
- プリシラ・グラント&ステラ・メイナード・・・クイーン学院のクラスメイト。のちに、レドモンド大学でルームメイトとして共同生活を送る。(『アンの愛情』)
参考:Wikipedia
あらすじ
ちょっとした手違いから、グリン・ゲイブルスの老兄妹に引き取られたやせっぽちのアン。
初めは戸惑っていた2人も、明るいアンを愛するようになり、夢のように美しいプリンス・エドワード島の自然の中で、アンは少女から乙女へと成長していくー。
出典:モンゴメリ『赤毛のアン』村岡花子訳、(新潮文庫、2008年)
ここからは、『赤毛のアン』のあらすじ。
感想から読みたいならこちら(後ろへとびます)→→本を読んだ感想
男の子と間違われて引き取られる
舞台は1870年代のプリンスエドワード島。
田舎の一軒家、通称「グリン・ゲイブルス」にはマシュウとマリラという老兄妹が住んでいる。
二人は畑仕事を手伝ってくれる男の子を養子にしようと考えていた。
ところがちょっとした手違いからやってきたのは、11歳のやせっぽちの赤毛の女の子、アンだった。
アンを引き取ることを決める
初めはアンを孤児院に返すつもりだったマリラ。
アンを仲介したスペンサー夫人に手違いを伝えに行く途中で、マリラはアンのかわいそうな身の上を聞き心が揺れる。
スペンサー夫人の家に行ってみると、そこには女の子を欲しがっているブリュエット夫人がいた。
子どもをこき使うとうわさのブリュエット夫人におびえるアン。
マリラはアンをブリュエット夫人に渡さず、自分で引き取ることを決意する。
リンド夫人へのかんしゃく
マリラが女の子を引き取ったといううわさを聞きつけて見にやってきたリンド夫人。
アンの外見をけなしたリンド夫人にアンはかんしゃくを起こし、最悪の初対面となる。
マシュウがこっそりアンに行って聞かせ、アンはリンド夫人に謝罪し仲直りする。
ダイアナとの出会い
学校が始まる前に日曜学校に行ったアンは帽子をたくさんの花で飾り、子どもたちのうわさの的になる。
隣の家にすむ同い年の少女ダイアナと出会い「腹心の友」の誓いを交わす。
ブローチ事件
ある日マリラの大切にしているブローチがなくなる。
マリラはアンがなくしたと疑い、謝罪するまで楽しみにしているピクニックに行くことを禁止する。
アンは身に覚えがなかったが、ピクニック行きたさに「自分が川に落としてなくした」とマリラに謝罪。
マリラは悪気なさそうなアンに激怒し外出禁止にし、アンは悲しみにくれる。
ピクニック当日マリラは自分の部屋にブローチが落ちているのを見つけアンに謝罪、ピクニックに行かせる。
マリラとアンの信頼関係が揺るぎないものになった。
ギルバートとの出会い
アンが学校に通いはじめる。
ハンサムでいたずらっぽい少年ギルバートは、アンの気を引くためにアンの髪を「にんじん!」といってからかう。
アンは激怒し、石盤をギルバートの頭にたたきつけ石盤を割ってしまう。
ギルバートは謝罪するがアンは無視をきめこむ。
いちご水事件
アンがグリーンゲイブルスでお茶会を開き、ダイアナをお客さまに呼ぶ。
アンはダイアナにいちご水と間違えてぶどう酒を出してしまい、ダイアナは酔っ払って家に帰る。
ダイアナの母親が激怒しアンにダイアナとの一切の関わりを禁止し、2人は悲しみにくれる。
数週間後ダイアナの両親が不在のとき、ダイアナの妹ミニー・メイが急病になりアンが助けたことで2人は交際を許される。
ミス・ステイシー
新しくやってきた先生ミス・ステイシーをアンは大好きになる。
ミス・ステイシーのもとでアンは一生懸命勉強し、朗読などの芸術的才能も開花させていく。
命令遊び
アンが学校の友達とはやりの「命令遊び」をする。
意地悪な同級生ジョシー・パイはアンに「家の屋根にのぼる」ことを命令する。
負けず嫌いのアンは屋根に登り、すべり落ち、くるぶしを骨折する。
ダイアナの父親に抱かれてやってくるアンを見たマリラは取り乱し、アンへの愛情を思い知らされる。
マシュウのプレゼント
マシュウはアンのクリスマスプレゼントに、秘密で「ふくらんだ袖」のドレスを用意する。
それまでマリラはアンに実用的で質素な服しか作らず、アンはひそかに「ふくらんだ袖」に憧れていた。
プレゼントを見たアンは大喜びし、マシュウに抱きつく。
緑の髪
アンは13歳になった。
自分の赤毛に悩んでいたアンは、家にやってきた物売りから「真っ黒な髪になる」よいう毛染めを買う。
染めてみると黒ではなく緑色の髪になり、アンは悲しみに暮れる。
夕方に帰ってきたマリラはアンの惨事を発見し、潔く髪を短く切るように伝える。
ギルバートの謝罪
ある日友達と劇の練習をしボートに乗って流されてしまったアンは、ギルバートに助けられる。
アンの髪をからかったことを謝罪するギルバートをはねつけ、無視してしまうアン。
その反応にギルバートも怒り、2人はライバル関係になる。
勉強と音楽会
向学心に燃える14歳のアンはミス・ステイシーのもとで一生懸命勉強し、クイーン学院に合格する。
初め不器量といわれていたアンは、今では清楚でほっそりと美しい娘に成長していた。
村の音楽会で詩を暗唱したアンは拍手喝采を浴びる。
クイーン学院生活
アンはクイーン学院に進学する他の同級生とともに親元をはなれ、下宿しながら一年間学ぶ。
勉強の合間に新しい友達との交際も楽しみ、視野を広げる。
アンは最終的にレドモンド大学へ行くためのエイブリー奨学金を獲得する。
マシュウの死
大学進学が近づくある日、マシュウが突然死んでしまう。
のこされたマリラとアンは悲しみにくれる。
マリラは自分の目が悪くなっていることを知り、農場と家を売ることをアンに伝える。
アンは大学進学をあきらめ、教師として働きながら村に残りマリラを支えることを決める。
ギルバートと仲直り
アンが地元で教師になることを決めたことをきいたギルバートは、自分がつとめるはずだったアボンリーの教師の座をアンにゆずる。
それを知ったアンはギルバートに感謝と謝罪を伝え、2人は仲直りをする。
次は、ももちんが『赤毛のアン』を読んだ感想だよ。
『赤毛のアン』を読んだ感想
ももちんが初めて小説『赤毛のアン』を読んだのは、社会人になってからだった。
もともとドラマ『大草原の小さな家』が大好きで、19世紀後半~20世紀初頭の欧米を舞台にした物語に惹かれていたんだよね。
それで購入したのが新潮文庫版。
読んでみたら、まあおもしろい。
仕事漬けで心がくさくさしていた時でもあったので、この時代にはあこがれたなぁ。
仕事の休憩中に『赤毛のアン』の世界に没入し、また仕事の世界へ戻る・・・というサイクルが妙にはまって、この時期にシリーズ全部読んだ。
完ぺきではないアン・シャーリー
あなたがこれまで読んできた物語の主人公の女の子には、どんなキャラクターがいる?
たいていは、容姿がきれいで心もきれいな子か、容姿端麗でなくても心はきれいな子か・・・
そう、心がきれいな子、というのは共通しているよね。
『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーは、もっと血が通っていて、普通に現実にいる女の子みたい。
外見は、とてもやせていて、青白く、そばかすだらけ。
自分の赤毛に劣等感を抱いている。
想像力豊かでおしゃべり好きだけど、かんしゃくもちで、おっちょこちょいなところもある。
容姿も性格も、長所も短所も一緒くたに持ち合わせているのがアン・シャーリーなんだ。
もちろん、心はきれいなんだけど、それだけじゃない、とっても親近感がわくキャラクター。
実は、続編以降になると、アンのかんしゃくもちや、おっちょこちょいは激減してくる。
器量もよくなり、素敵な女性に成長していくので、このハラハラドキドキするキャラクターは、『赤毛のアン』が一番楽しめるんだ。
アンに限らず、『赤毛のアン』のキャラクター描写は、とても細かい。
決していいところだけではなく、醜いところもきっちり表現されているのが、読者の共感を呼ぶ。
謝罪は心からじゃなくていい?
アンのかんしゃくをよく表してるシーンに、レイチェル・リンド夫人の初対面のシーンがある。
その言い合いが、けっこうひどい(笑)
初対面のアンに対して、「きりょうがわるい」とか「にんじん」「そばかす」とずけずけ言うリンド夫人。
リンド夫人もひどいけど、アンは倍返しで反撃するんだよね。
もしあんたがそんなふうに言われたらどんな気がするの?
でぶでぶふとって、ぶかっこうで、たぶん、想像力なんかひとっかけもないんだろうって、言われたらどんな気持?
出典:モンゴメリ『赤毛のアン』村岡花子訳、(新潮文庫、2008年)
「あんた」呼ばわり、「でぶでぶ」「ぶかっこう」・・・
アン、けっこう言っちゃってるね。。
ここまでは子どもにありがちな失敗なんだけど、注目すべきは、そのあとのおわびの場面。
アンはリンド夫人に謝るとき、心から反省しているわけではない。
「早く済ませたほうがいい」とマシュウに言われたから・・・
自分は悪くないけど、ことを丸く収めるために、謝ってもいいかって思えたから・・・なんだよね。
だから、おわびもゲームにしてしまう。
そして、マリラもそれをよしとする。
子ども向けの読み物にありがちな、わかりやすく教訓めいた展開になっていないんだよね。
血ではない家族の絆
『赤毛のアン』の見どころの一つは、アンとマシュウ・マリラの絆。
血のつながり以上に愛情で深い絆を築いていくプロセスが尊く、おもしろいんだよね。
独身老兄妹の兄、マシュウは、非常に内気な性格で、女性が苦手。
妹のマリラは、背が高く髪をひっ詰めていて、女性らしいふくよかさがない。現実主義者。
子どもには縁のなかったマシュウとマリラが、慣れないながらもアンとかかわっていく様子がよく伝わってくる。
はじめから信用するわけじゃない
人を信じることって大事だと思うけど、まだ心が打ちとけてないうちは、なかなか信じきることは難しい。
マリラは、アンを引きとることに決めたけど、すぐにアンを心から信頼したわけじゃなかった。
マリラの大事なブローチがなくなった時、マリラの心にはアンへの疑いの心がわいた。
そして、アンが盗ったと決めつけたことが、アンの「うその告白」(盗ってないのに盗ったと言いことを早く済まそうとした)につながった。
結局はマリラはブローチを見つけて、アンに謝罪し、仲直りする。
マリラも初めからアンを受け入れたわけじゃなかったんだよね。
人間としては当然の心理だけど、児童文学では善人、悪人がはっきりしてることが多いから、よく描かれているなと思った。
次第に深まる家族の絆
時が流れる中で、マシュウ・マリラ・アンの絆は深まっていく。
象徴的なシーンが、アンが「命令遊び」でくるぶしをケガしたとき。
ダイアナのお父さんがアンを抱えているのをみたとき、いつも冷静なマリラが取り乱す。
その瞬間、マリラは天の示しを受けたような気がした。
突然に心臓をぐさりと突きさされたような恐怖におそわれると同時に、マリラは自分にとってアンがいかに大事な存在であったかを悟った。
出典:モンゴメリ『赤毛のアン』村岡花子訳(新潮文庫、2008年)
映画やアニメにはない文学の良さのひとつは、この心情描写にある。
映画やアニメでは、どうしても「何が起こったか」に目が向いてしまう。
でも、原作を読んでみたら、目からうろこが落ちた。
目に見えない心の描写が、いかにこの物語を豊かにしているか。
『赤毛のアン』の真髄は、文字でしか表すことができないのだ、とすら感じたよ。
ほかにも、マシュウがアンに袖がふくらんだドレスをプレゼントするエピソードも好き。
マシュウの決死のお店訪問や、マリラのアンへの理解されない愛情など、細やかに描かれていて、アンが愛されていることがよくわかる。
ダイアナとの友情
『赤毛のアン』で欠かせないキャラクターが、アンの「腹心の友」ダイアナ・バーリー。
その黒い目と髪、バラ色の頬とえくぼは、初対面からアンを魅了した。
生まれ持った陽気さで、周りを明るく照らす存在。
ダイアナは当時の時代背景を象徴する少女像だと思う。
進学はせず、『アンの青春』で婚約、『アンの愛情』で結婚、『アンの幸福』で出産と、アンより一足先に女性としての役割の道を行くダイアナ。
違う道を歩むアンとダイアナだけど、親友としての絆は強く、友情はずっと続いていくんだよね。
「腹心の友」の誓い
アンとダイアナの記憶に残るシーンと言えば、「腹心の友」の誓い。
アンにとって初めての友達ともいえるダイアナに、アンは熱情ともいえる気持ちを持つ。
「おお、ダイアナ」やっとのことでアンは、手を組み合わせ、ささやくような声で言った。
「あのう、あのう、ねえ、あんた、あたしをすこしばかり好きになれると思って?あたしの腹心の友となってくれて?」
モンゴメリ『赤毛のアン』村岡花子訳、新潮文庫、2008年
この、誓いの儀式みたいなものって、子どもながらに神聖なものを感じるよね。
少女時代特有の、女の子同士の恋愛にも似た感情、ももちんにも経験あるな。
イチゴ水事件
アンとは違って大人からの評判が良いダイアナだけど、けっこう失敗もしでかしてるんだよね。
その一つがイチゴ水事件。
アンがダイアナをお茶に招いたときに、イチゴ水と間違えてぶどう酒を出してしまう。
イチゴ水だと思い込んだダイアナは、それをコップに3倍も飲んで、酔っぱらってしまうんだ。
この事件でダイアナのお母さんから、交際を禁じられたアンとダイアナ。
このシーンは、映画やドラマでも必ず再現される名シーン。
しばらくおしゃべりできない日々が続くんだ。
ミニー・メイ事件
交際を禁じられたアンとダイアナに転機が訪れたのは、ミニー・メイ事件。
ダイアナの妹のミニー・メイがクウルプという病気にかかる。
両親は留守中でダイアナはアンに助けを求め、アンは見事にその看病をやってのける。
かつて双子の世話をしていた時にクウルプにかかったことがあって、対処法を知っていたんだよね。
ミニー・メイの命を救ったアンは、再びダイアナとの交際を許される。
話は変わるけど、赤毛のアンシリーズの『アンの娘リラ』でも似たような場面がある。
リラが育てていた赤ん坊がクウルプにかかり、死にそうになっていたところにメアリー・ヴァンスが間に合うんだ。
アンもメアリー・ヴァンスも、時代は数十年違えど、孤児で赤ん坊の世話をしていたという境遇は一緒。
当時は子どもが子守をするというのは、当たり前の役割だったんだよね。
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ギルバートとの出逢い
さて、『赤毛のアン』で描かれている人間模様は、もちろん学校にもおよぶ。
その象徴的なものがギルバートとの出会い。
ギルバートは言わずと知れた、後にアンの夫となる男の子。
『赤毛のアン』の登場人物の中で数少ない「非の打ち所がない」キャラクターとして描かれている。
ハンサムで頭が良い。誠実で優しい。自立心があり、未来への希望に燃えている。
読者の多くの女の子のハートを射抜いてきたキャラクターだよね。
4年間口をきかない
ギルバートは出逢った最初からアンに惹かれる。
アンの気をひこうと、アンの髪の毛をつかんで「にんじん!にんじん!」とからかう。
怒りに燃え上がったアンはギルバートを石盤でたたいてしまう。
石盤が割れる。
『赤毛のアン』のなかで最も有名なシーンだよね。
この事件以降、アンはギルバートと口を利かなくなる。
石盤事件から2年たったある日、あらためてギルバートからの謝罪と仲直りの申し出を受けたアン。
でもその謝罪を拒絶してしまうんだよね。
そこでギルバートも怒り、アンとギルバートはライバルになるんだ。
結局4年間まともに口をきかない2人、なかなか頑固・・・
最後には仲直り
アンとギルバートが仲直りするのは、『赤毛のアン』の最後の最後。
アンがアボンリーに残り教師をするうわさを聞いたギルバートは、アボンリーの教師の座をアンにゆずる。
それを知ったアンはギルバートに感謝の気持ちを伝える。
アンもギルバートも、内心では仲直りしたくてしょうがなかったんだよね。
ここでようやく長年のわだかまりが溶けるんだ。
続編の『アンの青春』以降、アンとギルバートは良き友人→恋人→夫と妻へと関係が変化していくけれど、ギルバートのアンへの崇拝ぶりは変わらない。
このギルバートのアンへの一途な愛は、シリーズ通して見どころとなっていくよ。
後にプロポーズする二人も登場
「赤毛のアンシリーズ」の『アンの愛情』で、アンはギルバートのプロポーズを受ける。
『アンの愛情』ではアンはモテモテで、ギルバート以外に4人の男性のプロポーズを受けるんだよね。
その中の二人、チャーリー・スローンとビリー・アンドリュースは、この一作目『赤毛のアン』ですでに登場。
ちょい役なんだけど、この二人がアンにプロポーズするんだよなぁ。と思って読むとちょっとおもしろい。
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プリンス・エドワード島とグリーン・ゲイブルス
『赤毛のアン』の舞台となるプリンスエドワード島は、実在するカナダの島。
作者のモンゴメリ自身、プリンスエドワード島生まれで、プリンスエドワード島を舞台にした作品を多くのこしているよ。
『赤毛のアン』を読んでいると、その自然描写の美しさにとてもひきつけられる。
プリンスエドワード島、一度は行ってみたいなぁ。
『赤毛のアン』のグリーン・ゲイブルスのモデルになったとされる家は、プリンスエドワード島に実在する。
窓から見えるリンゴの木は倒れちゃったらしいんだけど、ここ数年でまた若い芽を出しているとのこと。
広がる『赤毛のアン』
『赤毛のアン』には続きがあって、新潮文庫ではシリーズ全作品を読むことができる。
アンの成長、恋愛、結婚、家庭の様子を味わうことができるよ。
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