絵本『ゆきだるま(スノーマン)』は、少年とゆきだるまの一夜を絵だけで描いた物語。
絵本『さむがりやのサンタ』の作者が描いたもう一つの冬の絵本。
アニメ『スノーマン』の原作としても有名だけど、絵本は違った味わいがあるよ。
この記事で紹介する本
新装版
こんな方におすすめ
- 『さむがりやのサンタ』が好き。同じ作者の絵本を読んでみたい
- アニメ『スノーマン』が好き。原作絵本を読んでみたい
絵本『ゆきだるま』とは?
『ゆきだるま』(原題"THE SNOWMAN")は、イギリスの絵本作家レイモンド・ブリッグズ作で、1978年に出版された絵本。
日本では、1978年、評論社より初版が発行された。
2021年、同じく評論社より『スノーマン』と題した新装版が刊行された。
『ゆきだるま』と『スノーマン』の内容は同じ。
紙面が画用紙のような質感の『ゆきだるま』か、すべすべな質感の新装版『スノーマン』か、好きな方を選んでね。
この記事は2019年に書いたので、『ゆきだるま』を扱っています。
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内容紹介
雪が降ったある日、少年がつくったゆきだるま。
その夜ゆきだるまが動き出し、少年とゆきだるまの冒険の一夜が始まる。
家の中を案内したり、空を飛んだり・・・
『さむがりやのサンタ』のレイモンド・ブリッグズが絵だけで描く、ファンタスティックな冬の定番絵本。
絵本『ゆきだるま』を読んだきっかけ
ももちんは、『さむがりやのサンタ』という絵本が大好き。
サンタクロースのクリスマス・イブのおしごとの様子を描いた絵本なんだけど、皮肉屋のサンタがおもしろいんだよね。
同じレイモンド・ブリッグズの作で『ゆきだるま』という絵本があるのは知ってたんだけど、読んだことがなかった。
『さむがりやのサンタ』とならんで有名な絵本なので、今回読んでみました。
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絵本『ゆきだるま』感想
こどもの頃、だれでも一度はゆきだるまを作ったこと、作ってみたいと思ったことってあると思う。
絵本『ゆきだるま』では、少年とゆきだるまの一夜を、文字なし絵本で表している。
国や世代問わず、すべての人に共通の「雪ふる日のトキメキ」が、絵から直接心に伝わってくる。
文字なし絵本の魅力
今作のような文字なし絵本を読むたびに、「言葉ってヤボだよなあ」って思う。
絵本『ゆきだるま』では、絵を一コマ一コマじっくり見ていくと、五感や心の動きがしっかり伝わってくる。
雪の日の朝のひんやり感。
少年が雪の中に飛び出すときのドキドキ。
ゆきだるまが動き始めたときのわくわく。
もしここに文字があったら、自分の中にある感覚を、ここまでほりおこすことはない。
絵本『ゆきだるま』は、「不感症」になりつつある大人が「感じる」ことを思い出すためのリハビリ絵本にもなる。
実は、絵だけではわからない場面もいくつかありました。
冷蔵庫なのか、氷なのか、、、とかね。
後で紹介する『スノーマン』の絵本で答えがわかったよ。
当ブログで紹介した文字なし絵本
一生懸命作った雪だるまが動いたら・・・
絵本『ゆきだるま』では、物語のいたるところに、かつて子どもだった頃の自分が想像していたことが散りばめられている。
こどものとき、みんな思ったり感じたりすること。
雪が降ったら、外に飛び出したくて、いてもたってもいられない。
自分がつくったゆきだるまに、マフラーと帽子をかぶせて、ていねいに顔をつけてあげる。
もし、このゆきだるまが動き出したら?
一緒に空を飛んだら、楽しいだろうなあ。
男の子は、夜になっても雪だるまを気にして、テレビを見ながら、歯をみがきながら、窓からゆきだるまをながめる。
ながめながら、ゆきだるまに何を話しかけているんだろう?
あなたなら、自分のが作ったゆきだるまに、なんて話しかける?
ももちんは、「ひとりで寂しくないかな? あした、家族を作ってあげようかな?」って思うかも。
教えてあげるということの喜び
真夜中に目がさめた男の子が外に出ると、ゆきだるまは動き出す。
ゆきだるまは大きくてほほえんでいて、まるでトトロみたいな、包みこんでくれるような安心感がある。
動き出したゆきだるまにおどろきもせず、得意げに握手する男の子がかわいい。
心の中では一緒にはしゃぎたくてたまらない男の子のわくわく感も伝わってくる!
男の子は、両親を起こさないようにしずかにしずかに、ゆきだるまを家に招きいれる。
家の中のことがわからないゆきだるまに、ひとつひとつ教えてあげる男の子。
明かりをつけてみたり。
両親の寝室に忍び込んで、お父さんの服を着せてみたり。
食べ物を準備して、精一杯のもてなしをしたり。
どんなときも男の子は笑顔で、そこには「なにかを教えてあげることの喜び」があふれている。
ひとつひとつの新しい体験に、おどろいたり、失敗したりもするゆきだるま。
男の子と同じ目線でものごとを一緒に体験するゆきだるまは、親しみやすくて、もっと好きになる。
ゆきだるまとの冒険
家の中でたくさんの初体験をしたゆきだるま。
今度は、ゆきだるまが男の子を連れ出す番。
男の子の手を取り空にジャンプ、大冒険が始まる!
日常から冒険へ、スケールが大きくなる。
絵のカットも大きくなり、壮大な風景がくりひろがる。
広い雪原に広がる空をどんどん飛んでいく、ゆきだるまと男の子の場面は圧巻。
宮殿や歩く人々を下に見ながらゆうゆうと飛ぶ気持ちって、どんなに爽快だろう。
絵を見ているだけで、ひんやり、気持ちよさが伝わってくる。
空を飛ぶのも、夜の空も、ゆきだるまが一緒なら怖くない。
男の子はゆきだるまに守られながら、最後に我が家に到着するまで安心して冒険を味わう。
冒険が終わり家に入るとき、しっかりとハグし合うゆきだるまと男の子。
男の子は、どんなことを思ったのかな?
また、明日も遊ぼうね。
って思ったんじゃないかな?
夢の終わり
朝がきてとびおきた男の子は、真っ先にゆきだるまのところへ行く。
そこにあったのは、ゆきだるまが溶けたあとと、マフラーと帽子。
それを見つめてたたずむ男の子のうしろ姿が印象的。
だけど、きっとこのあとまたすぐに遊び始めるんだろうな、とも思う。
大冒険が終わるあっけなさと寂しさ、そしてまた始まる日常の予感を、この一つの絵から感じる。
ブリッグズの絵
絵本『ゆきだるま』のブリッグズの絵は、色鉛筆のもの。
『さむがりやのサンタ』のようにはっきりした絵じゃないんだよね。
色鉛筆で描かれる夢の世界は、やさしく、どこかはかなく、幻想的。
物語のほとんどは夜なんだけど、部屋のうすぐらさ、暗い中にも月明かりに照らされているところなど、繊細に伝わってくる。
同じ明るいでも、ランプの明るさと月明かり、太陽の日差しの違いがちゃんとわかるのがすごい。
空を飛ぶ場面の壮大さもすばらしい。
一面のほとんどが雪と夜におおわれているのに、そこには心地よい風が吹いていて、決して怖いものじゃない、ということがわかるんだよね。
そして、少ない登場ながらも存在感があるのが、お父さんとお母さん。
その表情から、お母さんは男の子を愛して見守っているのがわかる。
両親の寝室には男の子の写真が飾られている。
何気ない日常の絵の中に、家族の愛を感じる。
ブリッグズの絵本
『ゆきだるま(スノーマン)』関連アニメ・絵本
絵本『ゆきだるま(スノーマン)』は、アニメ『スノーマン』の原作絵本としても有名。
ここでは関連絵本やアニメを紹介するよ。
アニメ『スノーマン』
(アニメ『スノーマン』の冒頭ナレーションより)
この屋根裏には思い出が詰まっています。冬は暖炉のそばで過ごし、窓から雪を眺めたり、ゆきだるまを作ったり。これはスノーマンが僕にくれたマフラー。彼は本当にいたのです。 pic.twitter.com/2CghnByCwZ
— デヴィッド・ボウイ 名言集 (@DavidBowieBot) January 26, 2019
アニメ『スノーマン』(原題”The Snowman”)は、絵本”The Snowman”を元に1982年に制作された、26分のアニメーション映画。
日本では1986年にVHSが販売された。
全編音楽と映像のみで、セリフはなし。
オープニングのナレーションをミュージシャンのデヴィッド・ボウイが担当している。
1983年にアカデミー賞アカデミー短編アニメ賞にノミネートされた。
映画でも原書の色鉛筆のやさしい質感や色合いが際立っている。
絵本のストーリーをさらにひろげ、他のゆきだるまたちやサンタクロースに会うなど、アニメオリジナルの場面もある。
絵本は知らないけど、こどものときアニメを大好きでよく見た、という30代は多いみたい。
参考:Wikipedia
アニメを元にしたお話つき絵本『スノーマン』
絵本『スノーマン』(原題”The Snowman The Book of the Film”)は、アニメ『スノーマン』をもとに編集し、絵本にしたもの。
原書は1992年に刊行され、日本では1994年、樹山かすみ訳で竹書房より刊行された。
アニメーションの絵のカットにお話がついていて、ストーリーもアニメに沿っている。
基本的に、1ページに4〜6カットの絵があり、文章で説明する感じ。
絵本『ゆきだるま』のような空を飛ぶときの迫力とかはない。
アニメが好きなあなたはこっちの『スノーマン』のほうが楽しいかも。
アニメ『スノーマンとスノードッグ』
今日の深夜にNHK Eテレで『スノーマンとスノードッグ』の再放送がありますが、このアニメ、アイラン・エシュケリとアンディ・バロウズの音楽がとてもいいのです。お見逃し&お聴き逃しなく。https://t.co/teGXbahPba pic.twitter.com/94mV2DaFoA
— Morigold (@mgmu_mol) December 25, 2015
アニメ『スノーマンとスノードッグ』(原題”The Snowman and the Snowdog”)は、2012年に制作された、25分のアニメーション映画。
アニメ『スノーマン』から30周年を記念して制作された。
全編音楽と映像のみで、セリフはなし。
主人公は、前作『スノーマン』と同じ家に引っ越してきた男の子ビリー。
愛犬を亡くしたビリーは、部屋の床下からスノーマンと見知らぬ男の子がうつった写真を見つける。
ビリーは庭に、写真とそっくりのスノーマンと、愛犬を思いスノードッグをつくる。
その夜、スノーマンとスノードッグとの魔法の一夜が始まる。
空を飛んだり、世界中のスノーマンが集まったり、前作『スノーマン』と似たような場面もある。
前作ファンにも、今の子どもたちにもおすすめ。
参考:Wikipedia
アニメを元にしたお話つき絵本『スノーマンとスノードッグ』
絵本『スノーマンとスノードッグ』(原題”The Snowman and the Snowdog””)は、アニメ『スノーマンとスノードッグ』をもとに編集し、絵本にしたもの。
原書は2012年に刊行され、日本では2013年、樹山かすみ訳で竹書房より刊行された。
アニメーションの絵のカットにお話がついていて、ストーリーもアニメに沿っている。
カットもお話も工夫されていて、絵本ならではの魅力があふれている。
アニメーションが色鉛筆で描いたような繊細なタッチなので、絵本になっても美しい色合いが楽しめる。
ストーリーも感動的。
絵本『ゆきだるま ストーリー・ブック』
絵本『ゆきだるま ストーリー・ブック』(原題”The Snowman Story Book”)は、『ゆきだるま』の絵にブリッグズ自身がお話をつけた絵本。
原書は1990年に刊行。
日本では松川真弓訳で、1994年に評論社より刊行された。
『ゆきだるま』の絵をそのまま使っているが、お話にそって半分弱の絵がカットされている。
絵は物足りないけど、ストーリーがわかりやすい。
絵をじっくり味わうなら、だんぜん『ゆきだるま(スノーマン)』!
『ゆきだるま ストーリー・ブック』は、読み聞かせにはおすすめ。
有名作家がお話をつけた児童書『スノーマン クリスマスのお話』
絵本『スノーマン クリスマスのお話』(原題”The Snowman by Michael Morpurgo and Robin Shaw”)は、ブリッグズの『スノーマン』を原案にして、児童文学作家のマイケル・モーパーゴがお話をつけた。
日本では佐藤見果夢訳で、2022年に評論社より刊行された。
児童文学『アーニャは、きっと来る』などでも知られるマイケル・モーパーゴが、自身もリスペクトするブリッグズの許可を得て、物語を書きおろした。
イギリスのアニメーターで、アニメ『スノーマン』も手がけたロビン・ショーが絵を担当した。
まとめ
絵本『ゆきだるま(スノーマン)』みどころまとめ。
ココがおすすめ
- 文字がないので絵をじっくり味わえる
- 色鉛筆の繊細なタッチ
- こどものときのトキメキを思い出す
- 親しみやすいゆきだるま
- 関連映画、絵本
絵本『さむがりやのサンタ』の作者が描いたもう一つの冬の絵本。
『ゆきだるま』と『スノーマン』の内容は同じ。
紙面が画用紙のような質感の『ゆきだるま』か、すべすべな質感の新装版『スノーマン』か、好きな方を選んでね。
定番
新装版
ブリッグズの絵本
文字なし絵本
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