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絵本『クリスマスの森』感想。サンタクロースと動物達の心温まる物語

2018年10月31日

『クリスマスの森』ルイーズ・ファティオ著、ロジャー・デュボアザン絵、つちやきょうこ訳、2015年、福音館書店

絵本『クリスマスの森』は、おっちょこちょいなサンタクロースと森の動物たちのあたたかな交流を描いた絵本。

ファンタジックな絵童話は、大人の絵本タイムにもぴったり。

同じあらすじの絵本『サンタおじさんのいねむり』との違いもまじえながら紹介するよ。

この記事で紹介する本

こんな方におすすめ

  • 大人にもおすすめのクリスマス絵本を探している
  • サンタクロースが登場する絵本を探している

絵本『クリスマスの森』とは?

”The Christmas Forest”は、スイス出身の女流童話作家ルイーズ・ファチオの文と、ロジャー・デュボアザンの絵により、1950年に発表された絵本。

日本では、『サンタおじさんのいねむり』と題され、1969年、前田三恵子の文、柿本幸造絵により、偕成社より刊行された。

2015年、ロジャー・デュボアザンのオリジナルの絵の『クリスマスの森』が、土屋京子訳により、福音館書店より刊行された。

 

ルイーズ・ファチオ(文)

女流童話作家。

1904年スイス・ローザンヌ生まれ。

ジュネーブの女子大学卒業後、アメリカの絵本作家、ロジャー・デュボアザンと結婚。

こどもたちに物語を聞かせるうちに、自分でも童話を書き始めるようになった。

アメリカに移住し、夫のデュボアザンと組んで発表した作品も多数ある。

今作”The Christmas Forest”はファチオがデュボアザンと組んだ初めての作品。

1993年死去。

代表作(文)

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ロジャー・デュボアザン(絵)

絵本作家・デザイナー。

1904年、スイス・ジュネーブに生まれ。

美術学校を卒業後、テキスタイルデザイナーとしてアメリカに渡り、帰化。

あざやかな色彩と大胆な構図で世界中から愛されている絵本作家。

1980年死去。

代表作(絵)

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土屋 京子(訳)

翻訳家。1956年、愛知県出身。東京大学教養学部卒業。

英語の文学作品などを翻訳、『EQ~こころの知能指数』『ワイルド・スワン(講談社+α文庫)』『マオ―誰も知らなかった毛沢東』などをベストセラーにしている。

出典:Wikipedia

代表作(翻訳)

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内容紹介

奥さんに見送られ、クリスマスのお仕事に出かけるサンタクロース。

これまでのプレゼントの準備のお仕事が忙しかったサンタクロースは、プレゼントを配る前に眠くなってしまう。

眠気さましに、奥さんが持たせてくれたコーヒーを飲むと、サンドイッチも食べたくなってしまったサンタクロースは・・・

森の動物たちとサンタクロースの心温まる物語。

 

絵本『クリスマスの森』を読んだきっかけ

『サンタおじさんのいねむり』ルイーズ・ファチオ作、前田三恵子訳、柿本幸造絵、1969年、偕成社

ももちんが絵本『クリスマスの森』を読んだきっかけは、初めに『サンタおじさんのいねむり』を読んでいたから。

『サンタおじさんのいねむり』はももちんのお気に入りの絵本なんだけど、原書が同じ『クリスマスの森』という絵本がもう1冊あると知ったのは最近のこと。

ロジャー・デュボアザンが絵を担当したオリジナルを翻訳した絵本が、2015年、福音館書店より刊行された『クリスマスの森』なんだよね。

読み比べてみると、『サンタおじさんのいねむり』とお話の筋は同じだけれど、描かれる世界観が全く違う!

それぞれ違う魅力がある絵本だよ。

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絵本『クリスマスの森』感想

『クリスマスの森』ルイーズ・ファティオ著、ロジャー・デュボアザン絵、つちやきょうこ訳、2015年、福音館書店

『クリスマスの森』を開いてみて、びっくりしたのが、物語の長さ。

それまで読んでいた『サンタおじさんのいねむり』は、ファティオの文をそのまんま訳したものではなく、あらすじを押さえて省略されたものだったのだ、とわかった。

それはそれで、絵をよく楽しめるのでよかったんだけどね。

『クリスマスの森』の特徴は次の通り。

  • 文が長く、物語を楽しめる
  • 一部漢字が使われている(『サンタおじさんのいねむり』は全部ひらがな)
  • 本のサイズが『サンタおじさんのいねむり』より小さめ
  • ロジャー・デュボアザンの絵が素敵

子どもが読むなら『クリスマスの森』は『サンタおじさんのいねむり』より少し年上の子が対象になる。

 

物語を楽しむ

『クリスマスの森』では設定やセリフが細かくたくさん描かれているので、情景をイメージしやすい。

サンタクロースと奥さん

おもしろいのは、「サンタクロースに奥さんがいる」という設定。

サンタクロースが出かけるときに、奥さんが言うセリフは、仲のいい熟年夫婦そのもので、親しみがわく。

「きょねんみたいに手ぶくろをなくしちゃだめよ。コートのボタンもしっかりとめてね。」

「おべんとうはおしごとがすんだあとでたべてね」と、言い聞かせられたサンタ。

お弁当の中身は、「ハムとピクルスとチーズのサンドイッチ」と「クリスマスケーキ3切きれ」と「あつあつのコーヒー」。おいしそう。。

サンタが奥さんに「いってきますのキス」をするところも、ほのぼのする。

 

眠くなってしまうサンタ

はりきって出かけ、一生懸命そりを走らせるサンタクロース。

プレゼントを配る最初の家が見えてきたところで、眠くなってしまう。

眠気さましのために、コーヒーを一杯飲むことにする。

コーヒーを飲んで、眠気がふきとんだサンタクロース。

読んでいると、「さあでかけよう!お弁当食べちゃだめー!」と声をかけたくなる。

でも読者の心配の通り、案の定、弁当も食べたくなってしまうんだよね。

サンドイッチもクリスマスケーキも平らげてしまい、おなかいっぱいで眠りこんでしまうサンタクロース。

ごきげんな夢まで見て、いい気持ちが伝わってくる。

さあ、どうしよう?

 

キツネのやさしさ

サンタクロースの様子を陰からじっとうかがっていたのは、1匹のキツネ。

偶然通りかかったわけではなく、お弁当の食べ残しを狙っていたんだ。

サンタクロースが眠ったので近づいてみると、お弁当は空っぽでがっかり。

ふとそりを見ると、そりにはいっぱいのプレゼント。

ここで、キツネはどんなことを考えたと思う?

キツネはサンタクロースにいたずらをするのかな?

プレゼントを持って行ってしまうかな?

それとも、サンタクロースを起こしてあげるかな?

実は、このキツネはとっても優しくて、サンタクロースのためにあることを思いつくんだ。

 

森の動物たちの連携

キツネは森の動物たちをよびあつめる。

ここからが、森の動物たちの大活躍!

集まった動物たちに、きつねは何と呼びかけたと思う?

「森のみんなで手わけしてそりにつんであるプレゼントをえんとつにとどける、っていうのはどうですか?」

「これは、森のみんなからサンタさんへのクリスマス・プレゼントです。」

きつねの演説は、『サンタおじさんのいねむり』より雄弁で、たくさんのことを語っている。

動物たちは賛成し、手分けして夜通しプレゼントを配って回る。

ここで素敵なのが、どんな動物たちにも役割があるってことなんだよね。

小さい鳥たちは小さいプレゼント。ゆっくりしか歩けないスカンクは、近くの家へ運ぶプレゼント。クマやシカは一番重いプレゼント。

それぞれの動物たちが、サンタクロースのために喜んで行動するところがすごい。

 

ラストシーンから受ける感じ

朝、目が覚めたサンタクロースは、まっさおになる。

みてみると、そりは空っぽ。

そのとき、雪の地面に森の動物たちからのメッセージを見つける。

感謝したサンタクロースは、お礼の返事を書くんだ。

このラストシーンは、『サンタおじさんのいねむり』も一緒なんだけど、そこから感じることがちがったのが不思議だった。

『サンタおじさんのいねむり』は、眠ってしまったサンタに突っ込みを入れたくなるんだよね(笑)

「サンタおじさん、一番大事な日に眠っちゃって、助けてもらってめでたしめでたしって、、、いいんかーい!」って。

『クリスマスの森』は、「ああ、ほんと良かったね、サンタさん!」って言いたくなる。

『クリスマスの森』は、言葉で詳しくサンタクロースの気持ちを描いているから、より共感しやすいんだろうな。

 

ロジャー・デュボアザンの絵

デュボアザンの描く絵は、赤と緑を基調としている。

森の背景や動物たちの姿も、繊細に描かれている印象。

ファンタジックでカラフルな柿本幸造絵と、また違う味わいがある。

 

貫禄のあるサンタクロース

なにより違うのは、サンタクロースの姿。

デュボアザンの描くサンタクロースは、貫禄のあるゆったりした姿のサンタクロース。

外国の絵本でよく見る、典型的なサンタクロースという感じ。

 

森の風景が美しい

美しい星空と、まんまるお月様、太くて葉の落ちたたくさんの木々・・・

デュボアザンは、広大で美しい、冬の夜の森の風景を丁寧に描いている。

森の動物たちも数や種類をたくさん描いていて、生き生きとした動物たちの様子が伝わってくる。

上空から見ているようなアングルで、広い雪原に散らばっていくたくさんの動物たちのシーンは圧巻。

 

ロジャー・デュボアザンのクリスマスの絵本

『クリスマスの森』で絵を担当したロジャー・デュボアザンは、他にもクリスマスの絵本や絵童話を手がけている。

デュボアザンの絵が好きな人は、手に取ってみてね。

 

『クリスマスにはおひげがいっぱい!?』

『クリスマスにはおひげがいっぱい?』ロジャー・ドュボアザン(作)今江祥智・遠藤育枝(訳)BL出版、2008年

『クリスマスにはおひげがいっぱい!?』は、1978年に佑学社より発行された『クリスマスはサンタ・クロースのひげだらけ』を新訳で刊行したもの。

ロジャーデュボアザンが絵と文を手がけている。

クリスマスの日に現れる、たくさんの「にせものサンタ」に怒った「ほんとのサンタさん」は、にせものサンタたちのおひげを奪ってしまう。

帰ってきたサンタクロースに、奥さんが言った言葉とは?

『クリスマスの森』と同じく奥さんがいる設定や、ちょっと怒りっぽい人間味あふれるサンタさんが魅力。

 

『サンタクロースのはるやすみ』

『サンタクロースのはるやすみ』ロジャー・デュボアザン作、小宮由訳、2017年、大日本図書

『サンタクロースのはるやすみ』は、ロジャー・デュボアザンが絵と文を手がけた童話。

ここに登場するサンタクロースも、奥さんがいる設定。

春に変装して町歩きをするサンタクロース、子どもたちににせものと疑われ・・・。

変装するサンタさんは、レイモンド・ブリッグズの『サンタのなつやすみ』でも描かれている。

サンタさんも出かけたいよね。

 

『サンタをたすけたくじら』

『サンタをたすけたくじら』ロジャー・デュボアザン(作)なかにしゆりこ(訳)新世研、1999年

『サンタをたすけたくじら』は、ロジャー・デュボアザンが絵と文を手がけた。

クリスマスの直前、トナカイたちが病気で寝込んでしまった!

困ったサンタは、いろいろ考えた結果、くじらに助けてもらうことにする。

ここでも奥さんが登場し、サンタクロースをサポートする。

なかにしゆりこの翻訳は、なんと関西弁!

ももちんは全然なじめなかったけど(笑)関西人なら楽しめるかも!

出版社の新世研は現在はなく、絵本も絶版。図書館や中古本でさがしてみてね。

 

『クリスマスのまえのよる』

『クリスマスのまえのよる』クレメント・C・ムーア著、ロジャー・デュボアザン絵、小宮由訳、2011年、主婦の友社

『クリスマスのまえのよる』は、クレメント・C・ムーアの有名な詩”The night before Christmas”にロジャー・デュボアザンが絵をつけた絵本。

絵本の形が縦長でユニーク。

”The night before Christmas”の絵本は、ロジャー・デュボアザンの絵のものだけでなく、たくさん出ているので、自分のお気に入りを見つけてみてね。

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まとめ

絵本『クリスマスの森』まとめ。

  1. 著者紹介
  2. 原作が同じ絵本『サンタおじさんのいねむり』
  3. 物語と、デュボアザンの絵を楽しもう
  4. ロジャー・デュボアザンのクリスマス絵本

ロジャー・デュボアザンとルイーズ・ファティオが夫婦で作ったあたたかな絵本。

同じあらすじの『サンタおじさんのいねむり』とは雰囲気が全く違うので、読み比べてみるのもおすすめだよ。

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『サンタおじさんのいねむり』について知りたい人は、こちらの記事をどうぞ。

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  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

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