『クリスマス・キャロル』は、イギリスの作家ディケンズが生んだ、クリスマスには定番の物語。
現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。
こんな方におすすめ
- 『クリスマス・キャロル』を読んでみたいけど、どれを選んだらいいか迷っている
- 児童文庫、ハードカバー、電子書籍など、特徴で選びたい
- 映画やアニメなど映像の『クリスマス・キャロル』を知りたい
『クリスマス・キャロル』最新情報
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『クリスマス・キャロル』とは?
小説『クリスマス・キャロル』は、イギリスの作家チャールズ・ディケンズにより1843年に刊行された。
日本では、森田草平翻訳により、1927年、岩波書店より刊行された。
現在に至るまで、ディケンズの『クリスマス・キャロル』はクリスマス文学の中でもっとも有名であり、さまざまな翻訳が刊行されている。
また、絵本やコミック、映画化、舞台化などもされている。
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ケチで嫌われ者の老人スクルージは、クリスマス・イブの夜、4人の幽霊と出会う。
クリスマスの朝に目覚めたスクルージは良心をとりもどし、親切な人として街中からしたわれるようになる。
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本の感想
小説『クリスマス・キャロル』あらすじと感想。ディケンズ永遠の名作
『クリスマス・キャロル』はイギリスの文豪ディケンズの名作。 心温まる物語で、クリスマスの季節には読みたくなる。 どの出版社の『クリスマス・キャロル』を読めばいいか知りたいなら、次の記事か ...
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イチオシは、春風社のハードカバー
たくさんの『クリスマス・キャロル』の中で、大人が一番読みやすく、味わい深いと感じたのが、春風社より2015年に刊行されたもの。
ももちんは、初めに新潮文庫(村岡花子訳)を読んだんだけど、正直、意味が分かりづらいところもあったんだよね。
それで、この春風堂の『クリスマス・キャロル』を図書館で借りて、並行読みしたら、めっちゃわかりやすかった!
手に取りやすいA5サイズのハードカバー。
井原慶一郎の翻訳は、炉端での幽霊話を念頭においた語り口調とのこと。
「です・ます」調でとても読みやすく、美しい丁寧な日本語で訳されている。
ディケンズ公認の画家、ソロモン・アイティンジの絵は、初版のジョン・リーチのものより数が多く、生き生きと描かれている。
巻末の注釈・解説は40ページ以上にわたり、『クリスマス・キャロル』の文化的背景について詳しく書いている。
260ページ。ソロモン・アイティンジ絵、井原慶一郎訳、春風社、2015年。
「本気だ」スクルージが言いました。「クリスマスおめでとうだって!お前は何の権利があって、どういう理由でおめでたくなれるんだ。貧乏人のくせに」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』ソロモン・アイティンジ絵、井原慶一郎訳、春風社、2015年
手軽な文庫
『クリスマス・キャロル』は文庫版で複数刊行されている。
気軽に読めるベーシックな1冊を探すなら、文庫がおすすめ。
角川文庫
2020年11月に角川文庫より刊行されるのが、越前敏弥による新訳の『クリスマス・キャロル 』。
越前敏弥は多くの作品の翻訳を手がけていて、児童向けの角川つばさ文庫の『新訳 賢者の贈り物・最後のひと葉』でも一部翻訳を担当している。
新しい角川文庫版は表紙絵が美しく、手にとってみたくなる。
越前敏弥による新訳はテンポが良くスラスラ読める。
「大まじめさ」スクルージは言った。「メリー・クリスマスだと! おまえにどんな権利があって、愉快にやろうなどと言えるんだ。愉快になる理由がどこにある? 貧乏人のくせに」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル (角川文庫)』越前敏弥訳、角川文庫、2020年
新潮文庫
新潮文庫版『クリスマス・キャロル』は1952年、村岡花子翻訳により刊行された。
2011年、孫の村岡美枝・恵理による訂正が加えられた新装版が刊行された。
村岡花子は10代のころ、在学していた東洋英和女学院の図書室で、『クリスマス・キャロル』の原書に出会ったという。
短歌もたしなんだ村岡による、リズム感のある格調高い翻訳は一読の価値あり。
189ページ。村岡花子訳、新潮社、2011年。
「ああ、本気だともさ。何がクリスマスおめでとうだ!何の権利があってお前がめでたがるのかってことよ。貧乏人のくせに」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』村岡花子訳、新潮社、2011年
村岡花子紹介
『赤毛のアン』を翻訳した村岡花子ってどんな人?その生涯と作品紹介
日本で初めて『赤毛のアン』の翻訳をした村岡花子。その人生と作品を紹介するよ。 こんな方におすすめ 村岡花子訳の『赤毛のアン』愛読者。どんな人か知りたい 村岡花子のほかの翻訳作品、創作作品を知りたい 村 ...
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集英社文庫
集英社『クリスマス・キャロル』は、中川敏の翻訳により、「世界文学全集 15」として1975年に刊行された。
1991年に文庫化された。
まず目を引くのは、ベストセラー絵本『よるくま』の酒井駒子による、趣きのあるカバーイラスト。
巻頭には、ディケンズ関連の写真資料が数ページにわたり掲載。
巻末にも、解説・年譜などが掲載されており、文庫のなかでは最も解説・資料が充実している。
中川敏の翻訳は原文に忠実に訳されている。
228ページ。中川敏訳、集英社、1991年
光文社古典新訳文庫
光文社古典新訳文庫『クリスマス・キャロル』は、池央耿翻訳により、2006年に刊行された。
数々のノンフィクション、推理小説、児童文学翻訳を手掛けている池央耿翻訳は、テンポの良い新訳。
村岡訳・中川訳に比べ、難解な語句もところどころ使われている。
巻末に解説・ディケンズ年譜あり。
192ページ。池央耿訳、光文社、2006年
「ああ、本気だとも」スクルージは吐き捨てるように言った。「クリスマスおめでとうだ?めでたがる権利がお前にあるのか?めでたい理由がどこにある?年が年中、素寒貧(すっかんぴん)のくせにして」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』池央耿訳、構文社、2006年
文庫はこんな人におすすめ
- 文庫版で気軽に読みたい
- 村岡花子訳で読みたい(新潮文庫)
- 酒井駒子の表紙絵がいい(集英社文庫)
読みやすい児童文庫
『クリスマス・キャロル』は児童文庫のラインナップが豊富。
それぞれ翻訳やイラストに特徴があるので、自分に合ったものがあるかチェックしてみよう。
岩波少年文庫
岩波少年文庫は、1950年に岩波書店より創刊された児童文庫。
イギリスの初版本のイラストを担当したジョン・リーチの挿絵を採用し、物語の古典的雰囲気が伝わりやすい。
脇明子の翻訳は「です・ます」調。
優しく美しい日本語で、丁寧に訳されている。
児童文庫だが、ふりがなは少なめ。
小学校5、6年以上向け。216ページ、脇明子訳、岩波書店、2001年。
「おっしゃりたいとも」と、スクルージは言いました。
「クリスマスおめでとうじゃと!何の権利があってめでたがる?めでたがる理由でもあるのか?この貧乏人が。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』脇明子訳、岩波書店、2001年
講談社青い鳥文庫
講談社青い鳥文庫は、1980年に創刊された児童文庫。
数多くの児童文学や絵本の翻訳を手掛けてきたこだまともこによる翻訳は、「です・ます」調で易しく読みやすい。
杉田比呂美による素朴なイラストが、物語の世界を広げるのを助けてくれる。
小見出しつきで読み進めやすく、ふりがなも多い。
小学校中学年以上向け、221ページ、こだまともこ訳、講談社、2007年。
「ああ、本気だとも。」スクルージは、いいました。「クリスマスおめでとう、だって?おまえにおめでたがる権利があるのかい?どうしてそんなにおめでたがるんだい?年じゅう、貧乏でぴいぴいしてるくせに。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』こだまともこ訳、講談社、2007年
角川つばさ文庫
2009年に創刊された角川つばさ文庫は、本を読むのがちょっと苦手という子にも「読んでみたい」気持ちを応援する児童文庫。
杉田七重訳は、難しい言葉や昔の言葉は極力使わず、現代語で読みやすく仕上げている。
カラフルで現代的なイラストは、講談社青い鳥文庫の『赤毛のアン』シリーズも手掛けるHACCANによるもの。
電子書籍版あり。総ルビ、小学校中学年以上向け、206ページ、杉田七重訳、KADOKAWA、2013年。
「本気だ。クリスマスおめでとうだと?いったいなにに、うかれてる?おまえにめでたいことなどなかろう。そんなにまずしくて」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』杉田七重訳、KADOKAWA、2013年
集英社みらい文庫
「集英社みらい文庫」は、小学生&中学生のための新しい読みものシリーズ。
数々の少女文学の翻訳を手掛ける木村由利子による新訳は、シンプルでわかりやすい。
ミギーによるイラストはかわいらしく幻想的。
巻末にクリスマス・プディングのレシピ付き。
小学校中学年以上向け。総ルビ。192ページ。木村由利子訳、集英社、2011年。
「そんなつもりだよ。何がめでたいものか。どういうわけで、めでたいなんて思えるんだ。貧乏人のくせに。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』木村由利子訳、集英社、2011年
金の星社フォア文庫
フォア文庫は、岩崎書店、金の星社、童心社、理論社が協力出版している児童文庫レーベル。
フォア文庫の『クリスマス・キャロル』は1991年、金の星社より刊行された。
浜田洋子によるイラストは、クリスマスにぴったりの幻想的な絵。
小学校高学年以上向け。196ページ。夏目道子訳、金の星社フォア文庫、1991年。
「本気さ。メリー・クリスマスだと? 陽気(メリー)になるどんな権利が、おまえにあるのかね。陽気になるどんな理由があるのかね。そんなに貧乏なくせして。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』夏目道子訳、金の星社フォア文庫、1991年
児童文庫はこんな人におすすめ
- 一般の文庫では難しく感じる。もう少し易しい翻訳がいい
- 一般的な文庫より大きめのサイズがいい
- 挿絵も楽しみたい
- 大きな字やふりがな付きがいい
愛蔵版にしたいハードカバー
名作『クリスマス・キャロル』は毎年読む!
特別感のある1冊を持っておきたい!
そんな人たちにおすすめの、ハードカバーの単行本を紹介するよ。
西村書店
2013年、西村書店より刊行された大型本『クリスマス・キャロル』。
特徴は、2008年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞した、『百年の家』でも知られるイタリアの画家・イノチェンティが描くカラーイラスト。
精密で時代の空気感が丁寧に描かれている。リアルすぎて、子どもは怖いと思ってしまうかも。
もきかずこの翻訳は、子どもにこびない読み応えのあるしっかりとした言葉づかいで、当時の空気感が伝わってくる。
ふりがなはほとんどなく、難しい言葉も入っているので、大人が大切に読みたい1冊におすすめ。
152ページ。ロベルト・インノチェンティ絵、もきかずこ訳、西村書店、2013年。
「本気だとも」と、スクルージは答えた。「クリスマスおめでとうだと!どこをとってめでたがるんだ。めでたがるわけでもあるのか。まるっきり貧乏人のくせして」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』もきかずこ訳、西村書店、2013年
岩波書店の愛蔵版
岩波書店より2009年に刊行されたのは、岩波少年文庫の『クリスマス・キャロル』を愛蔵版に仕立てたもの。
初版本に用いられているジョン・リーチのイラスト(モノクロメイン・ところどころカラー)が収録されている。
また、初版本以外のジョン・リーチの絵も掲載されていて、その説明もあとがきで詳しく説明されている。
脇明子の訳はもともと岩波少年文庫のものなので、子どもへのおくりものにもぴったり。
青い箱に入った特別な造本。
195ページ、ジョン・リーチ絵、脇明子訳、岩波書店、2009年。
ハードカバーはこんな人におすすめ
- 特別感のあるハードカバーで読みたい
- イラストも存分に楽しみたい
- 解説で文化的背景を知りたい(春風社)
電子書籍だけで読める
名作『クリスマス・キャロル』は、電子書籍でしか読めないものもある。
名訳を無料で読める電子書籍もあるので、電子書籍未体験の人も、これを機にチャレンジしてみては?
ちくま文庫
1991年に筑摩書房より刊行された『クリスマス・ブックス』には、ディケンズの短編『クリスマス・キャロル』と『鐘の音』の2編がおさめられている。
翻訳を手掛けた小池滋は「はじめに」で『クリスマス・キャロル』を落語調に訳したと記している。
「です・ます」調でまるで落語家が話しているような言葉づかいがおもしろく、どんどんひきこまれる。
ジョン・リーチによる挿絵入り。
電子書籍のみ(紙書籍絶版)。229ページ、筑摩書房、1991年(Kindle版2014年)。
「ああ本気だよ。クリスマスがめでたいだと?何がめでたいんだよ。何でめでたいんだよ。金がなくてぴいぴいしてるくせに」
引用元:ディケンズ『クリスマス・ブックス』小池滋・松村昌家訳、筑摩書房、1991年
旧角川文庫(グーテンベルク21)
安藤一郎訳『クリスマス・カロル』は、1950年に角川文庫より刊行された。
挿絵はないが、安藤一郎のクラシカルで丁寧な訳文でいきいきと情景が思いうかぶ。
2012年、グーテンベルク21より電子書籍として刊行された。
巻末には解説、ディケンズの年譜が掲載されている。
「本気で言っているんだよ」とスクルージ、「クリスマスおめでとうだって! お前におめでたがる権利がどこにあるんだい? おめでたがる理由がどこにあるんだい? お前は貧乏じゃないか」
引用元:ディケンズ『クリスマス・カロル』安藤一郎訳、グーテンベルク21、2012年
安藤一郎訳『若草物語』紹介
小説『若草物語』34作品比較。文庫や児童文庫、電子書籍の特徴まとめ
『若草物語』は、アメリカの女流作家ルイーザ・メイ・オルコットが生んだ名作。 現在さまざまな出版社から刊行されているので、特徴別にまとめてみた。 映画やアニメの『若草物語』は別記事でまとめています。→→ ...
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青空文庫(森田草平訳)
Kindleの青空文庫になっている森田草平訳『クリスマス・カロル』は、日本で最初に翻訳されたもの。
昔の言葉遣いそのままに、漢字を多用しているので読みづらさもある。
電子書籍のみ。無料。89ページ、2012年。
「そういう積りだよ」とスクルージは云った。「聖降誕祭お目出とうだって!お前が目出たがる権利がどこにある?目出たがる理由がどこにあるんだよ?貧乏しきっている癖に。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・カロル』森田草平訳、Amazon、2012年
原文と対訳掲載(ゴマブックス)
『クリスマス・キャロル』(チャールズ・ディケンズ=著、櫛田理絵=翻訳)が、 #Kindle ストア【英米の小説・文芸】ランキングで1位を獲得!! https://t.co/OHB64h0Vc1 pic.twitter.com/hYR7Qj4V90
— ゴマブックス【公式】 (@gomabooks) 2015年12月25日
電子書籍専門出版社、ゴマブックスより刊行されたのは、英語の原文も一緒に楽しめる『クリスマス・キャロル』。
前半に英語原文、後半に櫛田理絵による翻訳が掲載されている。
翻訳は「です・ます」調でわかりやすい日本語。
「本気さ」スクルージが返します。「何がクリスマスおめでとうだ!何の権利があってめでたいなんて思うんだ?おめでたい理由がどこにあるっていうんだ?貧乏人のくせに」
引用元:ディケンズ『新装版 クリスマス・キャロル』櫛田理絵訳、ゴマブックス、2017年
新装版。244ページ、ゴマブックス、2017年。
望林堂完訳文庫
毛利孝夫訳の『クリスマス・キャロル』は、電子書籍専門出版社、望林堂書店から望林堂完訳文庫として刊行。
セカンド・ベストともいわれるソロモン・アイティンジのモノクロ挿絵を29点収録。
電子書籍のみ。117ページ、毛利孝夫訳、望林堂書店、2017年。
「本気さ」スクルージが言った。「クリスマスおめでとうだと!どんな権利があっておめでたくなれるんだ?何かおめでたくなれる理由でもあるのか?おまえはひどい貧乏人なんだぞ」
引用元:ディケンズ『クリスマス・ブックス』毛利孝夫訳、望林堂書店、2017年
電子書籍はこんな人におすすめ
- 紙書籍はかさばるので買いたくない
- ふだんの読書は電子書籍
- 無料で読みたい(青空文庫)
- 電子書籍でしか読めないめずらしいものを読みたい
活字が苦手な人でも読みやすい!児童書
『クリスマス・キャロル』は子ども向けに、挿絵や解説、大きな字などで工夫されている書籍もたくさん刊行されている。
子どもが読む本と侮ってはいけない。
実は、活字が苦手な大人にもおすすめなんだよね。
【2022年11月刊行】小学館世界J文学館
引用元:小学館世界J文学館 「新しい「名作全集」の扉が開きます」編/小学館公式チャンネル
2022年11月に刊行された『小学館世界J文学館』は、1冊の本(紙の書籍)を買うことで125冊の世界名作を電子書籍として読める、新しいタイプの全集。
紙の書籍は各作品をイラストやあらすじで紹介していて、名作ガイドブックのような役割。
気になる作品はページ内のQRコードを読み込むことで、スマートフォン、タブレットなどの端末で読むことができる。
現代の子どもたちが読みやすい新訳を採用し、イラストも第一線で活躍している画家が手がけている。
『クリスマス・キャロル』は、英米文学・児童文学の翻訳を多く手がける千葉茂樹の訳。
イラストは小説『ザリガニの鳴くところ』日本版の装画でも知られるしらこが手掛ける。
小学校中学年以上が対象。
1話のみ電子書籍
全集
絵本(光村教育図書)
2017年に光村教育図書から刊行されたのは、難解な言葉もある原作を、読みやすく絵本にまとめた『クリスマス・キャロル』。
アメリカのイラストレーター、ブレット・ヘルキストによる絵は、見開きで大きく描かれているので迫力がある。
文章は短くまとめられていて読みやすいが、漢字も多く使われている。
21世紀版少年少女世界文学館
講談社「少年少女文学館シリーズ」は、楽しく読みながら世界各国の歴史や文学を学べる決定版シリーズ。
難しい言葉には丁寧な解説があり、確かな国語力が身につく。
全24冊の中の第7巻が『クリスマス・キャロル』。
講談社青い鳥文庫と同じくこだまともこの翻訳。
大人っぽい作風が特徴の宇野亜喜良のカラー挿絵も豊富に入っている。
小学校高学年以上。254ページ。こだまともこ訳、講談社、2010年。
「ああ、本気だとも。」スクルージは、いいました。「クリスマスおめでとう、だって?おまえにおめでたがる権利があるのかい?どうしてそんなにおめでたがるんだい?年じゅう、貧乏でぴいぴいしてるくせに。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル』こだまともこ訳、講談社、2010年
セット
少年少女世界名作の森
集英社「少年少女世界名作の森」は、楽しみながらさまざまな知識が学べる名作シリーズ。
本文の上や下のスペースでは、むずかしい言葉や歴史的背景、鑑賞ポイントなどの情報を満載。
全20巻のうち2番目が『クリスマス・キャロル』。
絵本の文も手掛ける八木田宜子による翻訳。
さまざまな児童書のイラストも手がけるたじまじろうの挿絵は迫力がありひきこまれる。(表紙画像とは全く違うイラスト)
巻末に解説、読書案内を掲載。
小学校高学年以上向け。240ページ。八木田宜子訳、集英社、1989年。
「本気だとも。」と、スクルージ。「クリスマス、おめでとう、だと! めでたがる権利があるのかね? めでたがる理由があるのかね? おまえはびんぼうじゃないか。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル―少年少女世界名作の森〈2〉』八木田宜子訳、たじまじろう絵、集英社、1989年
セット
ポプラ世界名作童話
ポプラ社の「ポプラ世界名作童話シリーズ」は、小学校に入ってはじめて世界名作に出会う子どもたちのためのシリーズ。
編訳は、自身も児童文学作家として活躍する芝田勝茂。
多くの児童書のイラストを手がける長谷川知子の挿絵がちりばめられ、活字が苦手でも読み進めやすくなっている。
小学校低学年以上向け。
「本気だよ。なにがメリー・クリスマスだ。おまえがクリスマスをめでたがるわけでもあるのか? びんぼう人のくせに。」
引用元:ディケンズ『クリスマス・キャロル (ポプラ世界名作童話)』芝田勝茂文、長谷川知子絵、ポプラ社、2018年
セット
児童書はこんな人におすすめ
- ふだん小説を読まない、活字が苦手な大人
- イラストがたくさんある方が好き
- 解説やコラムつきがいい
- 大きな字の本がいい
1冊にたくさんのお話がつまった名作集3選
次に紹介する3冊は、いろいろな名作を短くまとめたお話を集めた「参考書」のようなもの。
「あらすじだけを知りたい!」「次に読む作品を選ぶための情報がほしい」というときにおすすめ。
『1話5分!12歳までに読みたい名作100』
『1話5分!12歳までに読みたい名作100』では、日本と世界の名作100作品を、1話5分程度(見開き1ページ)で読めるよう短くして掲載している。
監修は麻布中学・高校国語教師の中島克治。
ページの構成は短くしたお話を中心に作者紹介、語句説明がされ、お話の最後に作品解説とおすすめの図書(『クリスマス・キャロル』なら集英社みらい文庫など)が掲載されている。
本書を読んで「作品を読んでみたい」という気になりそう。
『クリスマス・キャロル』は「高学年向け」で紹介されている。
後半では本書で紹介しきれなかった名作のブックリストが掲載されている。
漢字にはふりがなつきなので低学年〜高学年まで対応。
『毎日読める!小学生のための 日本と世界の名作200』
『毎日読める! 小学生のための 日本と世界の名作200』では、日本と世界の名作200作品を、1話5分程度で読めるよう短くして掲載している。監修は教育学者でメディアにもよく出ている齋藤孝。
小学生の1年の登校日数とほぼ同じ200話を掲載することで、毎日の読書の習慣がつくようになっている。
ページの構成は先に紹介した『1話5分!12歳までに読みたい名作100』と似ているが、本書ではお話の最後に「読むヒント」としてお話のポイントをまとめている。
『クリスマス・キャロル』は「中学年向け」で紹介されている。
漢字にはふりがなつきなので低学年〜高学年まで対応。
『5分で読む!名作&文豪ビジュアル大事典』
『5分で読む! 名作&文豪ビジュアル大事典』では、日本と世界の名作48作品のあらすじや魅力をオールカラーイラストで解説している。
1作品あたり見開き1ページで、作品ごとに担当イラストレーターが違い、見ていて飽きない。
また「主人公年表」では7人の主人公の生涯を解説し、自分に似ているキャラクターチャートもおもしろい。
「文豪図解」では、25人の作者のミニ伝記が掲載され、作品への理解をより深めることができる。
コラムも充実していて、作品を読むだけではわからない豆知識も学べる。
『クリスマス・キャロル』は「あらすじ図解」で紹介されている。
漢字にはふりがながないものもあるが、イラスト主体なので低学年から対応。
名作集はココがおすすめ
- たくさんのお話を1冊で知ることができる
- イラストがたくさんある
- 解説やコラムつき
- あらすじとみどころがわかりやすい
『クリスマス・キャロル』を漫画で読もう
『クリスマス・キャロル』は漫画でも読むことができるよ。
「まんがで読破」シリーズ
イーストプレスの「まんがで読破」シリーズは、2007年に創刊。
日本や世界の名作を、親しみやすいまんがで仕立て、人気を得ている。
はじめに「主な登場人物」を掲載することで、より分かりやすくなっている。
182ページ、バラエティ・アートワークス絵、イーストプレス、2009年
坂田靖子の漫画
古典新訳文庫を刊行している光文社から、池央耿訳『クリスマス・キャロル』のコミカライズ版が刊行された。
漫画を手がけたのは、40年以上のキャリアを持ち、原画展なども開催する人気漫画家、坂田靖子。
池央耿訳のちょっと難しい言葉づかいも、独特の画風がどんどん読ませていく。
117ページ、坂田靖子絵、池央耿訳、2009年
学習まんが世界名作館(小学館)
小学館『学習まんが 世界名作館』は、名作に現代の子ども達が親しんでもらうための、新しい学習まんがシリーズ。
まんがの表現形式を利用することでイメージを膨らませやすくなり、「次は小説でも読んでみたい!」と思わせる構成となっている。
まんがを担当したのは、学習まんがの分野で科学から歴史まで幅広く活躍している小林たつよし。
小学校低中学年以上向け。総ルビ。159ページ。小林たつよし(画)、小学館、2012年。
漫画はこんな人におすすめ
- ふだんの読書は漫画がメイン
- あらすじとみどころをわかりやすく知りたい
映画『クリスマス・キャロル』
名作『クリスマス・キャロル』は、これまでに何度も映画化されている。
その中のいくつかを紹介するね。
3Gアニメ『Disney's クリスマス・キャロル』
出典:Disney's クリスマス・キャロル - 予告編/You Tube ムービー
字がたくさんの小説を読むのは苦手!だけど『クリスマス・キャロル』の物語を楽しみたい!
そんな人におすすめなのが、ディズニーの3Gアニメ『Disney's クリスマス・キャロル』。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督に、スクルージ初め7役を演じ分けるジム・キャリー。
アニメの域を超えた精密な映像で名作を楽しめる。
幽霊のリアルさと、いろんなクリスマスを旅するアドベンチャー感が素晴らしい。
登場人物の表情も豊かで、おもしろくて、心があたたまったよ。
1984年映画『クリスマス・キャロル』
1984年にアメリカで制作されたのは、テレビ映画『クリスマス・キャロル』。
スクルージ役をつとめたジョージ・C・スコットは、アカデミー賞の主演男優賞に2度、助演男優賞に2度ノミネートされたが、全て辞退している。
映像だからこそ伝わるクリスマスの活気と表情の豊かさが印象的。
スクルージが甥のフレッドのところを訪問した場面では泣いてしまった。
ファンが妹ではなく姉、父親の登場など、原作と違う設定がいくつかある。
映画『Merry Christmas!ロンドンに奇跡を起こした男』
出典:Youtube東北新社 映画チャンネル2018年劇場公開されたのが、映画『Merry Christmas!ロンドンに奇跡を起こした男』。
スランプに陥ったディケンズが『クリスマス・キャロル』を書きあげるストーリーを、スクルージや幽霊なども登場させながら描いている。
わかりやすさを極めた「超訳吹替版」で、原作を読んだことがなくても楽しめる仕上がりになっている。
ディケンズ役をつとめるのは、映画『美女と野獣』の王子役で人気を博したダン・スティーブンス。
吹替でスクルージを演じるのは、ミュージカル『スクルージ~クリスマス・キャロル~』でスクルージ役もつとめる市村正親。
STAR CHANNEL公式サイト『Merry Christmas!ロンドンに奇跡を起こした男』ページ
まとめ
小説『クリスマス・キャロル』出版社別まとめ。
※画像をクリックするとAmazon商品ページに飛びます。
文庫・電子書籍
文庫名 | 翻訳 | 挿絵 |
角川文庫 | 越前敏弥 | |
新潮文庫 | 村岡花子 | ー |
集英社文庫 | 中川敏 | 酒井駒子(表紙絵) |
光文社古典新訳文庫 | 池央耿 | ー |
【電子書籍】ちくま文庫 | 小池滋 | ジョン・リーチ |
【電子書籍】旧角川文庫 グーテンベルク21 | 安藤一郎 | ー |
【電子書籍】青空文庫 | 森田草平 | ー |
【電子書籍】原文対訳 ゴマブックス | 櫛田理絵 | ー |
【電子書籍】望林堂完訳文庫 | 毛利孝夫 | ソロモン・アイティンジ |
児童文庫『クリスマス・キャロル』
文庫名 | 翻訳 | 挿絵 |
岩波少年文庫 | 脇明子 | ジョン・リーチ |
講談社青い鳥文庫 | こだまともこ | 杉田比呂美 |
角川つばさ文庫 | 杉田七重 | HACCAN |
集英社みらい文庫 | 木村由利子 | ミギー |
金の星社フォア文庫 | 夏目道子 | 浜田洋子 |
ハードカバー・絵本『クリスマス・キャロル』
出版社名 | 翻訳 | 挿絵 |
春風社 | 井原慶一郎 | ソロモン・アイティンジ |
西村書店 | もきかずこ | イノチェンティ |
岩波書店 | 脇明子 | ジョン・リーチ |
絵本 光村教育図書 | 三辺律子 | ブレット・ヘルキスト |
文学集シリーズ
シリーズ・出版社名 | 翻訳 | 挿絵 |
21世紀版少年少女世界文学館 講談社 | こだまともこ | 宇野亜喜良 |
少年少女世界名作の森 集英社 | 八木田宜子 | たじまじろう |
ポプラ世界名作童話 ポプラ社 | 芝田勝茂 | 長谷川知子 |
名作集
出版社名 | 監修 | お話の数 |
12歳までに読みたい名作100 新星出版社 | 中島克治 | 100 |
小学生のための 日本と世界の名作200 西東社 | 齋藤孝 | 200 |
名作&文豪ビジュアル大事典 学研プラス | ー | 48 |
マンガ『クリスマス・キャロル』
出版社名 | 翻訳 | マンガ |
「まんがで読破」シリーズ | ー | バラエティ・アートワークス |
光文社コミック | 池央耿 | 坂田靖子 |
学習まんが世界名作館 小学館 | ー | 小林たつよし |
文庫やハードカバー、挿絵などの特徴はもちろん、翻訳家による違いもある。
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