この前、銀座教文館のバージニア・リー・バートン展に行ってから、バートンが描いた絵本たちをおさらいしてみたくなった。
『ちいさいおうち』は子どものころに読んでから、数十年ぶりに読んでみた。
新しい発見があったので、書いてみるね。
この記事で紹介する本
この記事でわかること
- 絵本『ちいさいおうち』内容と見どころ
- 英語版やディズニーアニメの『ちいさいおうち』
絵本『ちいさいおうち』とは?
『ちいさいおうち』(原題”The little house”)は、ヴァージニア・リー・バートンの代表作で、1942年アメリカで出版された絵本。
1952年にウォルト・ディズニー・カンパニーによって短編アニメ映画が製作された。
日本語訳は石井桃子によって翻訳され、岩波書店から1954年に発行された。
ヴァージニア・リー・バートンは『ちいさいおうち』でコルデコット賞を受賞した。
コルデコット賞は、アメリカでその年に出版されたもっとも優れた子ども向け絵本に毎年授与している賞。
バートンは、1938年ころ、交通量の多い大通りに面した家を静かな丘に曳家して移した経験がある。
この経験が『ちいさいおうち』の構想につながった。
バージニア・リー・バートン
1909-1968。アメリカの画家・絵本作家・デザイナー。
バージニア・リー・バートン紹介
バージニア・リー・バートン展感想。絵本『ちいさいおうち』の世界!
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石井桃子(いしい・ももこ)/訳
【#神奈川近代文学館】企画展「没後10年 石井桃子展」を開催中。「ノンちゃん雲に乗る」「ちいさなうさこちゃん」など誰もが一度は読んだことのある本の作者、#翻訳者 として活躍した #石井桃子 さんの展覧会です。イベントももりだくさん。詳しくはhttps://t.co/tHWk5T2s6F #児童文学 #絵本 pic.twitter.com/bM0MorHDcL
— 神奈川県庁広報 (@KanagawaPref_PR) 2018年8月1日
1907-2008。埼玉県生まれ。日本の児童文学作家・翻訳家。
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内容紹介
静かな田舎に建てられた、ちいさいおうち。
季節の移り変わりを楽しみながら、穏やかに暮らしていました。
やがて、周りを自動車が通り、高い建物が建ち始めます。
変わりゆく景色の中で、変わらないちいさいおうちの物語。
絵本『ちいさいおうち』感想
『ちいさいおうち』ポイント
変わらないおうちと、変わりゆく時代
ちいさいおうちは、どのページでも変わらず真ん中に描かれている。周りがどんどん変わっていく様子を、定点観測で描いているんだ。
だから、ちいさいおうちと、人間の社会の時間の流れの違いが一目瞭然。
はじめは、いなかの静かな環境のなかにたてられたちいさいおうち。
季節ごとに移ろいゆく周りの景色をながめながら、静かに過ぎていく日々。
幸せに暮らしていたちいさいおうち。
だけど、ある日自動車があらわれてから、またたくまにあらわ建物や乗り物が増えていく。
同じ場所に同じようにたっているだけなのに、見える景色がどんどん変わって、聞こえる音もどんどん大きくなる。
ちいさいおうちからみたら、人間たちはせわしなく動きつづけて、つくっては壊して、理解できない存在なんだろうなぁ。
ちいさいおうちは、なすすべなくそこにいることしかできないんだよね。
家の気持ちを描く斬新さ
『ちいさいおうち』では、ちいさいおうちが主人公。
人間はわき役だから、ちいさいおうちから見た人間の社会の違和感が描かれている。
ちいさいおうちの絵には、表情は描かれていないのに、その気持ちはすぐに伝わってくるんだよね。
それだけ読む側の人間も、ビルの立ち並ぶ街のなかより、静かな自然の中のほうがいいって、どこかでわかっているんじゃないかな。
便利さを追い求める中で失われていく美しさを、建物の視点という、新しい形で描いているよね。
読んでると、主人公の「ちいさいおうち」が悲しい思いをしているのがかわいそうになってくる。
けれど、ちいさいおうちに悲しい思いをさせているのは、自分たち、人の手によるものなんだよね。
大人になってから「ちいさいおうち」をみていると、いろんな気持ちが出てくる。
悲しい気持ち、あきらめの気持ち、昔をなつかしむ気持ち、責められる気持ち、あまり感じたくない気持ちも感じるんだよね。
きっとそれは、絵本の世界だけじゃなくて、現実にも起こる気持ち。
自然から受け取る豊かさ
改めて『ちいさいおうち』を読んでみると、四季折々の自然の美しさが際立っているなぁ、って思った。
ちいさいおうちは常に同じ場所にいて、季節の移り変わりを眺めていたんだよね。
時には、ちょっと街の様子を想像してみたりしながら。
けど、周りが都会になってしまうと、田舎にたっていたころの静かさや自然の美しさがなつかしくなった。
春・夏・秋・冬の季節の移ろいがまったく感じられなくなってしまった。
幸いなことに、さいごには、ちいさいおうちは、初めにたててくれた人の子孫の家族に見つけてもらえることができた。
そして、その家族は、ちいさいおうちを広い野原の真ん中の小さな丘に移すんだ。
そして再びちいさいおうちは元気をとりもどし、静かな日々にもどっていく。
こうして長い長いちいさいおうちの時間をたどっていくと、人間の一生とも少なからずリンクするものを感じる。
バートンはなによりも自然の移ろいの美しさを愛し、その中で暮らしていくことに喜びを感じていた。
その自然への愛がとても伝わってくる。
感想おさらい
英語版 ”The Little House”
子どもの頃に読んだことがありましたが、大人になり息子に読み聞かせながら改めて読み返して、また大好きになりました。訳文が素敵なので英語版も買い、読み比べています。byウーフ(30代)#ちいさいおうち #石井桃子展 pic.twitter.com/NinFKMqFAm
— わたしの本棚の石井桃子さん@神奈川近代文学館 (@tAwabfq7y0CF2zj) 2018年7月18日
図書館で『ちいさいおうち』の英語版”The Little House”があったので、借りてみたよ。
表紙でピンと来たのが、ちいさいおうちの絵の下に、”HER-STORY”という表記があるんだよね。
つまり、主人公のちいさいおうちは女性だということ。物語の中でも、常にちいさいおうちは”She”と表記されている。
ちいさいおうちが女性だと知って読んでみると、また違う感覚で読めるよね。
あと、表紙の右下には、”THE CALDECOTT MEDAL”のマークがある。
表紙に印刷されちゃうくらい、コルデコット賞というのは、アメリカで名誉ある賞なんだね。
ディズニーが映画化
ディズニー短編映画『小さな家』(1952)は、バージニア・リー・バートンの名作絵本『ちいさいおうち』(1942)が原作。ただしディズニーらしい改変アリ。バートンに比べディズニーは、家を擬人化することで感情移入しやすく演出。そのため都市化という災厄に堪え、心ある人に救済される物語に回収される。 pic.twitter.com/1Tow6G06kp
— たけうち (@take_housing) 2018年11月16日
『ちいさいおうち』は、1952年にディズニーの短編アニメ映画としても製作されたんだ。邦題は『小さな家』。
ももちん、実際に観てみたんだけど、絵本とだいぶ違った…。
まず、ちいさいおうちに顔がついてるんだよね。だから、より人に近い感覚で表情がわかる。
絵本のように定点観測じゃないから、周りの自然の移ろいの美しさがあまり伝わってこない。
あと、周りの建物が燃えちゃったり、絵本にはない描写もある。
おうちが移設されるとき、ちいさいおうちは壊されると思って、「いつか壊される運命なんだ・・・」としょんぼりしながらひかれていくんだけど、その姿がまるで公開処刑みたい。
絵本では、そういう気持ちは描かれていないので、ちょっとびっくりした。最後はハッピーエンドでよかったけど。
絵本とは別物のアニメとしてみたら、楽しめると思う。
まとめ
絵本『ちいさいおうち』みどころまとめ!
大人になってから読むと新たな魅力発見!
ちいさいサイズの子どもの本版と、大型絵本版がある。
手ごろなのは子どもの本版だけど、絵を楽しむなら大型絵本版が断然おすすめ。
図書館にもあると思うから、探してみてね。
大型本
小さいサイズ
バージニア・リー・バートンのもう一つの名作、絵本『せいめいのれきし』については、こちらの記事をどうぞ。
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