クリスマスの絵本 絵本

絵本『ゆきのひのおくりもの』感想!『しんせつなともだち』と比較。

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左:『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎 右:『しんせつなともだち』方 軼羣 作、村山 知義絵、君島久子訳、1987年、福音館書店

『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』は、かわいらしい動物の絵と、友達を思いやる気持ちにほっこりする絵本。

絵とお話が似ていると有名な2冊の絵本だけど、読み比べてみるとちがいがわかって面白い。

今回は『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』を紹介するよ。

  1. 原作は同じ中国民話
  2. 無私の精神がもたらす豊かさ
  3. それぞれの著者紹介
  4. 似ているけど違う2冊
  5. ロシア民話から『くりすますのおくりもの』
この記事はこんな人におすすめ
  • 『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』の違いを知りたい
  • どちらかの絵本を読んだことがあり、気に入っている

 

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1.『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』が似ている理由

ももちんは、初めに『ゆきのひのおくりもの』でこの物語を知った。

だけど、調べてみると、『ゆきのひのおくりもの』と物語のあらすじも、絵もよく似ている絵本があった。

それが、福音館書店から出ている『しんせつなともだち』。こっちをよく知っている、という人も多いと思う。

原作は同じ中国民話

『ゆきのひのおくりもの』『しんせつなともだち』どちらも、大元は同じ中国の民話絵本なんだよね。

その中国の民話絵本というのが、方軼羣(フアン・イーチュン)『夢ト回来了』。

1955年 方軼羣『夢ト回来了』が中国で少年兒童出版社より出版。(参考:worldcat

1959年 ポール・フランソワ『LES BONS AMIS』がフランスで出版。これは、方軼羣『夢ト回来了』を原書として作られたもの。

1965年 日本で福音館書店より『しんせつなともだち』が出版。これも、方軼羣『夢ト回来了』を原書として作られたもの。

2003年 パロル舎より、『ゆきのひのおくりもの』が出版。これは『LES BONS AMIS』を原書として、絵はそのまま、翻訳されたもの。

物語も絵もよく似ている

『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』、どちらも同じ民話をもとにしていることが分かった。

ところが、この二冊の絵本、物語だけでなく、絵もよく似ているというところがおもしろい。

両者の原書である、1955年初版刊行の方軼羣『夢ト回来了』の絵は、両者とは全く異なる。(参考:20世紀以降の中国本土の児童図書の概観(英文)

『しんせつなともだち』の絵を担当した村山 知義と『LES BONS AMIS』のゲルダ・ミューラーは、どちらが先に絵を描いたのだろう?

刊行されたのは『LES BONS AMIS』のゲルダ・ミューラーの方が早いけれど、だからと言ってゲルダ・ミューラーが先に描いたとは言えない。

2冊はよく似ているからこそ、違っているところも目立って感じられる。

共通する魅力と、それぞれにしかない魅力があるのも、読み比べてわかったよ。

2.2冊の絵本に共通する魅力

あらすじと絵がよく似ている絵本『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』。

元となる中国民話が、わかりやすくあたたかい物語なので、紹介するね。

内容紹介

おなかをすかせたこうさぎが食べ物をさがしていると、雪にうもれたにんじん(『しんせつなともだち』ではかぶ)を2本みつけた。

こうさぎは、にんじんを1本食べると、おなかいっぱいになった。

こうまくん(『しんせつなともだち』では、ろばさん)も食べ物がなくて困っているにちがいないと、もう1本のにんじんこうまの家へ持っていくことにした。

にんじんは、こうまからひつじ(『しんせつなともだち』ではこやぎ)へ、ひつじからこじかへ・・・

最後にはまたこうさぎのもとへ帰ってくる、というお話。

無私の精神がもたらす豊かさ

この物語をじっくり読み進めると、自分には思いやりの精神はまだ宿っているだろうか?と問わざるを得ない。

ももちんなら、1本のにんじんは今後の食料にとっておくだろう、間違いなくそうするだろう。

その選択が悪いわけでもないんだけど、何事も自分の内にひきとめておこうとするパターンは、この物語のように広がっていかない。

この物語に出てくる動物たちは、明日の食料とか、損するとか、そういう計算は一切ないんだよね。

その計算のなさ、無私の思いやりが、結果的に豊かさをもたらしてくれるということ。

人間のように、見返りを期待して何かをするのとは、スタートラインが根本的に違うんだよね。

この物語を読むことで、自分の言動がどこからやってきているのか、振り返ることになる。

シンプルなメッセージなだけに、大人読みすることもできる絵本。

森の中の動物たちがいきいきと描かれる

『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』の絵に共通して言える特徴が、擬人化した動物たち。

それぞれの絵本に登場する動物は違うんだけど、どちらもいきいきと描かれている。

それぞれの動物の特徴が的確にとらえられていて、読んでいるとどんな特徴なのかが自然に理解できる。

しかもそんなリアルな動物たちが、服を着て、家具もある家に住んでいる、というところも似ている。

物語もシンプルだし、絵も的確で、いわゆる夢中になる面白さはないんだけど、森の中では本当にこんな世界がくり広がっているのかも・・・?と「本当にありそうな世界」を絵で表現しているんだよね。

ひつじが首から下げてるカゴににんじんを入れてる姿は、何とも言えずほのぼのする。

3.それぞれの著者紹介

『ゆきのひのおくりもの』

『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎

『ゆきのひのおくりもの』(原題”LES BONS AMIS”)は、1959年に「ペール・カストール(ビーバーおじさんの意味)」シリーズの1冊としてフランスで出版された。

日本ではふしみみさをの翻訳により、パロル舎から2003年に出版された。

「ペール・カストール」シリーズ

「ペール・カストール(ビーバーおじさんの意味)」シリーズは、1931年、ポール・フォーシェにより創刊された。

単なる知識本ではない、文化的芸術的教育をめざして作られた子どものための絵本。

散文や詩だけでなく、切り抜きやぬり絵まで内容も豊富。

本国フランスだけでなく、世界各国の絵本制作にも影響を与えた、画期的な作品群。

引用元:『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎

主な作品「ペール・カストール」シリーズ

  • 『マルラゲットとオオカミ』マリイ コルモン (著)、ゲルダ ミューラー (イラスト)、ふしみ みさを (翻訳) 、2018年、徳間書店
  • 『さるとつばめのやおやさん』ジャン=ミシェル ギルシェ (著)、ゲルダ ミューラー (イラスト)、ふしみ みさを (翻訳)、2003年、パロル舎
  • 『オレンジいろのめうし』ナタン アール (著)、リュシル ビュッテル (イラスト)、ふしみ みさを (翻訳) 、2004年、パロル舎
  • 『ミシュカ』マリー コルモン (著)、フョードル ロジャンコフスキー (イラスト)、みつじ まちこ (翻訳) 、2012年、新教出版社

ポール・フランソワ(作)

フランスの教育者、ポール・フォーシェのペンネーム。

1898年生まれ。

ロシアの絵本運動に影響を受け、1931年、作家である妻のリダの助けをえて「ペール・カストール」シリーズを創刊。

子どもが楽しんで自発的に学べる絵本づくりを実践。

また、絵本の実験学校ともいえる場所を作り、子どもや絵本作家に開放。

ナタリー・バラン(1897~1958)、フェオドール・ロジャンコフスキー(1891~1970)など、童画を超えた多ジャンルの画家を発掘・育成につとめた。

1967年没。

引用元:『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎

ゲルダ・ミューラー(絵)

オランダの画家、絵本作家。

1926年生まれ。アムステルダムのデザイン学校卒業後、ロジャンコフスキーに憧れ、パリに移住。

フォーシェの絵本実験学校で学び、「ペール・カストール」シリーズでも多くの作品の絵を担当。

20代から現在に至るまで、精力的に絵を描きつづけている。

引用元:『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎

主な作品(絵本)

ふしみみさを(訳)

翻訳家。

1970年埼玉県生まれ。

とくに翻訳の勉強をしたことはなく、かわりに絵本の輸入卸をしたり、ラジオ局のタイムテーブルを作って、イラストを描いたりしていた。

餃子店経営のかたわら、絵本の翻訳、紹介につとめている。

引用元:『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎

主な作品(翻訳)

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子どもの文化普及協会

『しんせつなともだち』

『しんせつなともだち』方 軼羣 作、村山 知義絵、君島久子訳、1987年、福音館書店

方 軼羣(フアン・イーチュン)(作)

1914年生まれ。

現中華人民共和国江蘇省蘇州出身。上海民立中学高等中学卒業。元少年児童出版社第二編集室副主任。中国作家協会会員。

引用元:『しんせつなともだち』方 軼羣 作、村山 知義絵、君島久子訳、1987年、福音館書店

村山 知義(絵)

村山知義『アサヒグラフ』 1955年3月16日号、朝日新聞社[public domain]

小説家、画家、演出家。

1901年東京生まれ。

東京大学を中退、ドイツに遊学。ドイツ表現主義美術運動を紹介。

プロレタリア文学運動に参加。劇作演出に活躍。

戦後「新協劇団」を組織、後東京芸術座の代表として演出など多方面で活躍。

画中に「Tom」というサインがありTomの童画と言われた。

妻の村山籌子(むらやまかずこ)作の童話のイラストも多く手掛けている。

1977年死去。

参考:『しんせつなともだち』方 軼羣 作、村山 知義絵、君島久子訳、1987年、福音館書店、Wikipedia

主な作品(挿絵)

君島久子(訳)

中国文学者、民族学者。1925年、栃木県生まれ。

慶應義塾大学文学部卒業。東京都立大学大学院修士課程修了。国立民族学博物館教授名誉教授。

中国民族学、文学を専攻、特に民間伝承および児童文学を研究。

参考:Wikipedia

主な作品(翻訳)

4.読み比べ!『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』

左:『ゆきのひのおくりもの』ポール・フランソワ作、ゲルダ・ミューラー絵、ふしみみさを訳、2003年、パロル舎
右:『しんせつなともだち』方 軼羣 作、村山 知義絵、君島久子訳、1987年、福音館書店

物語のちがい

『ゆきのひのおくりもの』は、直で方軼羣『夢ト回来了』を訳したものではなく、『LES BONS AMIS』を経由しているので、話の筋は似ていても、文章や登場する野菜や動物がちがっている。

『しんせつなともだち』は、白菜や青菜が出てくるので中国っぽさを感じる。

いっぽうで、『ゆきのひのおくりもの』はあえて「東洋くささ」を消し、ヨーロッパ風に仕上げているように感じられる。

感想としては、文は『しんせつなともだち』、絵は『ゆきのひのおくりもの』の方が好きでした。

物語全体の感じ

物語全体の感じは、それぞれ、まったく違う。

『ゆきのひのおくりもの』は、全体的に文の量が多い。

動物たちのセリフ、野菜を食べるときの音など、声に出して読むとリズミカルに楽しく感じる工夫がされている。

『しんせつなともだち』は、物語の展開をシンプルに追っていてわかりやすい。

文の量は少ないが、この絵本から読み取れる「教訓」みたいなものがはっきり理解しやすい。

だれが届けたか?問題

どちらの絵本でも、にんじん(かぶ)は、その家の主の留守中に届けられる。

『しんせつなともだち』では、「だれがかぶを届けたか?」はわからないまま、かぶは動物たちの家をぐるぐる回る。

『ゆきのひのおくりもの』では、「だれがにんじんを届けたか?」は、足跡を見てわかる設定。

最後には、こうさぎが眠っている間にかぶ(にんじん)が戻ってくる。

『しんせつなともだち』では、こうさぎが起きたときには誰もいなくて、かぶだけが置いてあり、こうさぎはだれが持ってきてくれたかわかる、という設定。

『ゆきのひのおくりもの』では、にんじんを届けにきたこじかさん、こうさぎが起きるまで待っていて、起きたこうさぎに話しかける、という設定。

最後にあらすじをまとめたり、「ああ、ともだちっていいなあ!」と書いているあたり、個人的には「くどいなー」って思った。

『ゆきのひのおくりもの』の方が、子どもに道徳的なことをわかってもらうために、よりはっきりと言葉にしてあらわしているという意図が読み取れる。

絵のちがい

絵は、動物たちが来ている服とかそっくりなんだけど、絵から受ける印象は違う。

『しんせつなともだち』は、基本見開きで1シーンの大きいカット。その分動物たちも大きく描かれ、迫力がある。(ロバが若干こわい。)

描かれる野菜や、家のインテリアに「和」を感じて、「昔ばなし」っぽさを感じる。

『ゆきのひのおくりもの』は、基本、1ページ1カットなので、見開きだと2カット。

絵は小さいけど洋風で、かわいらしく繊細な感じ。

どっちがいいかは、完全な好みの問題。

ももちんは、絵の雰囲気は『ゆきのひのおくりもの』の方が好きだった。

比較ポイント 『ゆきのひのおくりもの』 『しんせつなともだち』
動物 こうさぎ
こうま
ひつじ
こじか
こうさぎ
ろば
こやぎ
こじか
野菜 にんじん
かぶ
キャベツ
モミのめ
かぶ
さつまいも
はくさい
あおな
文の特徴 説明が多い
セリフが多い
シンプル
わかりやすい
絵の特徴 カットが小さくたくさん
洋風
繊細でかわいらしい
カットが大きく少なめ
インテリアなど和風
素朴で迫力がある

5.ロシア民話をもとにした『くりすますのおくりもの』

『クリスマスのおくりもの』ロシア民話、木村由利子(文)、松村雅子(絵)、至光社、1987年

このまえ書店で、もう1冊、物語の内容がそっくりの絵本を発見した。

1987年、至光社より出版された絵本『くりすますのおくりもの』は、ロシア民話をもとにしている。

同じお話でも、読んでみてわいてくる感覚が違う。

著者紹介

木村由利子(文)

翻訳家。主に児童書の翻訳が多い。

大阪府出身。大阪外国語大学デンマーク語学科卒業。

近年はモンゴメリなどの新訳、北欧の推理小説の翻訳も手がける。

参考:Wikipedia

主な作品(翻訳)

松村雅子(絵)

絵本作家・画家。

1970年、関西女子美術短期大学デザイン科卒業。

1977年、「空のペンキやさん」シリーズで絵本デビュー。まつむらまさこ文・松村太三郎絵。

1984年、夫、松村太三郎とともに八ヶ岳に「図書館えほん村」を開設。

参考:マジョのアトリエ

主な作品(絵、文)

『ゆきのひのおくりもの』『しんせつなともだち』と比較

話の展開が同じ

うさぎが食べ物を探しに出かけ、にんじんを2本見つける。

1本食べたらおなかがいっぱい。ろばさんにあげることにする。

めぐりめぐってにんじんは、うさぎの元へ返ってくる。

話の展開が全く同じ・・・!

ルーツは中国?ロシア?謎が深まってしまった・・・

文の特徴

物語全体の感じは、『しんせつなともだち』に近く、シンプルでやさしい。

「あれれ」とか、「うわあ」とか、動物たちのセリフにかわいい感情が感じられるのがいい感じ。

『しんせつなともだち』と同じく、「だれがにんじんを届けたか?」はわからないまま、にんじんは動物たちの家をぐるぐる回る。

最後には、こうさぎが起きたときには誰もいなくて、にんじんだけが置いてあり、こうさぎは「だれかわからないけどともだちがもってきてくれた」と気づく、という設定。

絵の特徴

やさしくシンプルな木村由利子の文に合わせた松村雅子の絵は、ほっこり、柔らかく優しいテイスト。

『ゆきのひのおくりもの』『しんせつなともだち』とは動物の描き方も構図も全く違うイラスト。

動物たちが服を着ておらず、より自然に近い描き方がされている。

見開きで1シーンの大きいカットで物語が進んでいく。

「クリスマスの日の出来事」という設定なので、モミの木やリース、ろうそくが描かれ、あたたかさを感じる。

3冊読んでみて、結果的に、ももちんは『くりすますのおくりもの』が一番好きになりました。

比較ポイント 『くりすますのおくりもの』
動物 うさぎ
ろば
ひつじ
のろじか
野菜 にんじん
じゃがいも
キャベツ
ほしくさ
文の特徴 クリスマスの日という設定
シンプル
わかりやすい
絵の特徴 柔らかく優しい雰囲気
他2冊とは似ていない

まとめ

絵本『ゆきのひのおくりもの』と『しんせつなともだち』まとめ。

  1. 原作は同じ中国民話
  2. 無私の精神がもたらす豊かさ
  3. それぞれの著者紹介
  4. 似ているけど全然違う2冊
  5. ロシア民話から『くりすますのおくりもの』

シンプルな文と素朴で大きな絵の『しんせつなともだち』と、表現が細かく洋風な絵の『ゆきのひのおくりもの』

好みで読み比べてみると面白いよ。

『ゆきのひのおくりもの』を初めに出版したパロル舎はいまはなくなっていて、現在は、鈴木出版から出版されているよ。

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