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絵本『ひみつがあります』感想。動物達の「好きなこと」を丁寧に描く

2020年6月4日

『ひみつがあります』布川愛子(作)白泉社、2020年

絵本『ひみつがあります』は、森の動物たちの「ひみつ」を丁寧に描いた絵本

絵の可愛らしさと、動物たちが「好きなこと」にとことん愛を込める姿に癒やされる。

この記事で紹介する本

こんな方におすすめ

  • 森の動物たちが登場する絵本が大好き
  • 雑誌「MOE」での連載と絵本の違いが知りたい

絵本『ひみつがあります』とは?

絵本『ひみつがあります』は、白泉社より2020年に刊行された。

白泉社の月刊誌「MOE」で2018年〜2020年に連載され、絵本として刊行するにあたり加筆・再構成された。

作者はイラストレーターとして活躍する布川愛子。

布川愛子(作)

イラストレーター。

2005年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。

絵本、広告、書籍の装画、雑貨のデザインなどで活躍している。

絵本の文・絵両方を手がけるのは今作が初めて。

参考:『ひみつがあります』布川愛子(作)白泉社、2020年

Aiko Fukawaオフィシャルサイト

代表作(絵)

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内容紹介

ひとこと内容紹介

森に住む動物たちには、ひとりひとり「ひみつ」の趣味があります。

植物から香水をつくるキツネのハナさん秋の夜にヴァイオリンを響かせるうさぎのヴィオ・・・

「好き」を大切にする動物たちの暮らしをのぞいてみると、あたたかな気持ちがよみがえります。

人気イラストレーターの布川愛子が、初めてお話と絵の両方を手がけたオリジナル絵本。

 

収録されているエピソード

  1. きつねのハナさん
  2. ふたごのねこ
  3. うさぎのヴィオ
  4. かんがるーのタッシェ
  5. ねずみのキキさん
  6. いぬのシーザ
  7. りすのココ
  8. くまのビービー

 

絵本『ひみつがあります』を読んだきっかけ

『MOE』左から2019年2、4、6、8、12月号、2020年3月号(白泉社)

『ひみつがあります』を初めて見たのは、定期購読している絵本雑誌『MOE』での連載

ひと目見て、可愛い洋服を着る猫たちの絵に引き込まれた。

人間のように生活する動物たち、インテリアやファッションの可愛さ、森の季節感、どこを切り取っても好きな世界。

『MOE』を開くたびに「今回はどんなお話かな?」と楽しみにしていました。

そんな「ひみつがあります」が絵本になると知って、迷わずポチりました

ももちん

2020年6月号の「MOE」で作者の布川愛子さんのインタビューを読める。

同世代で、手作りで人を喜ばせるのが好き、というところに親近感がわいた。

インタビュー掲載

雑誌『MOE』感想

【2019年2〜12月号】絵本雑誌『MOE(モエ)』1冊ずつの特集と感想

絵本雑誌『MOE』は、絵本や児童文学の最新情報を知れる月刊誌。 特集や付録が充実していて後で読み返してもおもしろいので、定期購読して毎号読んでいるよ。 今回は、2019年『MOE』1冊ずつの内容と付録 ...

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絵本『ひみつがあります』感想

『ひみつがあります』布川愛子(作)白泉社、2020年

この本のポイント

絵本『ひみつがあります』から伝わるのは、とことん「好き」に注ぐことの大切さ

その幸せと情熱が、周りをも幸せにする!

 

絵本『ひみつがあります』では、森に住む動物たちの「ひみつの趣味」をのぞくことができる

絵本で登場する「ひみつの趣味」はさまざま。

ももちん

香水づくり、お裁縫、ヴァイオリンを弾く、ポケットづくり・・・

聞いただけでワクワクする。

なぜ「ひみつ」なんだろう?

ももちんはこう思う。

それは、その趣味がちょっと変わっていて、純粋に自分の喜びのための趣味だから

誰かにわかってもらう必要もなく、センスの良さをみとめてもらう必要もない

むしろ「ひみつ」にしておきたいくらい大切に愛おしんで育んでいる趣味なんだよね。

ももちん

こちゃこちゃと「好き」が散りばめられた世界は、かつて「シルバニアファミリー」にときめいた大人の女性なら好きなはず。

 

絵本『ひみつがあります』感想

  • 「効率」から自由な世界
  • 「手作り」の楽しみ
  • 喜びが周りに伝わる
  • 布川愛子の絵の世界

 

「効率」から自由な世界

動物たちの「ひみつの趣味」をのぞくと、細かいところまで愛を注ぎ、プロセスそのものを楽しんでいる

そこには「たくさん作ろう」「節約しよう」「これで何かを得よう」みたいな考えが、一切入り込んでいない

そこにあるのは純粋な「好き」という気持ち

「効率」「対価」という観念は、人が生きていくにつれ、自然にしみついてしまうもの。

絵本『ひみつがあります』では、そんな考えから完全に自由な、「好き」中心でまわっていく世界を描いている。

 

「きつねのハナさん」の香水づくり

きつねのハナさんは、草花をじっくり観察し、世界にひとつの香水づくりに没頭する。

自分だけの実験室で、煮出したり、植物を組み合わせてみるって、絵を見るだけでワクワクがとまらない。

完成した香水もとっても魅力的だけど、そこに至る時間が幸せそのものなんだよね。

ももちん

きつねのハナさんを見ていると、子どもの頃、無心に草花をこねこねしていたことを思い出す。

子どもの頃の純粋な喜びを、大人になってから追求してもいいんだ!って教えてくれる。

 

「かんがるーのタッシェ」のポケット

カンガルーのタッシェと子どものポッシェは、ポケットが大好き

着ているチョッキには、「キャンディーのポケット」「はなのたねのポケット」など、一つ一つのもののためのポケットがついている。

ももちん

ポケットの形や布の模様も違っていて、思わず見とれてしまう。

今日もタッシェとポッシェは、大切なものを入れるためのポケットを、絶妙な場所につくる

傘には、てるてるぼうずのためのポケット。

マグカップには、角砂糖のためのポケット。

そこには、「便利」「たくさん入る」という野暮な考えは混じらない

一つ一つの大切な「もの」たちに「ポケット」という自分の場所をつくってあげることの純粋な喜びがにじみ出ている。

ももちん

子どもの頃、たくさん仕掛けがついているハイテク筆箱が流行ったのを思い出した。

一つの場所に一つのものって、なんだかワクワクする

 

「手作り」の楽しみ

動物たちの「ひみつの趣味」をのぞくと、どの登場キャラクターも「手作り」することを大事にしているんだよね。

手作りすることは「手を動かすこと」自体が楽しい

出来上がったものは、世界でひとつだけのオリジナル。

「流行り」とか「センスの良さ」とか、周りからみた基準はどれも当てはまらない

そのユニークさを楽しんでいる姿を見ると、うれしくなる。

 

「ふたごのねこ」のお裁縫

ふたごのネコのミーヨとニーヨは、お裁縫が趣味なんだけど、その楽しみ方が独特

買ってきた2種類のブラウスやスカートを、なんでも半分に切っちゃう!

そして、チクチク縫い合わせて出来上がるのは、左と右半分ずつ違う形と柄のオリジナルの洋服。

ももちん

ちょっと変わったおそろいの洋服を着たミーヨとニーヨ、とても可愛い。

洋服だけでなく、靴や靴下、ぬいぐるみまで半分こ。

もはや「半分にして、つなぎあわせる」こ自体が、ミーヨとニーヨにとっての「好きなこと」なんだよね。

一から何かを作るだけが「オリジナル」というわけじゃない。

「楽しみ方」から自分に合うように変えていって良いんだよね。

 

喜びが周りに伝わる

動物たちは、「ひみつの趣味」に没頭するその「瞬間」を楽しんでいる

純粋に自分が楽しいからやっているんだよね。

その結果、自然と幸せがあふれて、周りにも伝わっていく

そこには「誰かを喜ばせよう」という考えありきではなく、「自分の喜び」ありきで回っていく世界がある。

ももちん

自分が好きなことをしているだけで、いつの間にかその幸せが全体に伝わっていくって、とても心地良い。

 

「うさぎのヴィオ」のバイオリン

うさぎのヴィオは、「暮らし」そのものが喜び

おふろでゆっくりと本を読む時間。

お気に入りの食事を味わう時間。

日々のルーティンを丁寧につむぐヴィオを見ると、心が不思議と満ちていく

そんなヴィオの「ひみつの趣味」は、月がきれいな夜にバイオリンを弾くこと。

こうやって「月がきれいな夜だけ」っていう特別感をも、ヴィオは楽しんでいる

森に響きわたるバイオリンの音色は、知らないところで誰かをうっとりさせている

目を閉じると聞こえてきそうです。

ももちん

地中にはりめぐらされたヴィオの家がとっても素敵!

子どものころ憧れたドールハウスを思い出します。

 

「りすのココ」のチョコレートづくり

りすのココは、木の実のたっぷり入ったチョコレート作りが得意。

森で木の実ひろいをしていると、いろいろな落とし物にも出逢う。

りすのココは、「チョコレートをおくる」「落とし物を持ち主に届ける」2つの喜びを組み合わせちゃう

秋が深まる日に開かれる「おとしものを見つける日」は、森の動物たちにとって、落とし物が戻ってくるだけでなく、ココの手作りチョコレートももらえて、二重に嬉しい日。

なにより大切なのは、ココ自身が「おとしものを見つける日」を一番楽しんでいること。

ココにとって、チョコレートを作ること、贈り物をして誰かが喜ぶ顔を見ることは、自分自身の喜びなんだよね。

ももちん

丁寧につくられたチョコレートが可愛らしく美味しそう・・・

 

他にも、「いぬのシーザ」の美容室、「ねずみのキキさん」の夏至の集会、「くまのビービー」のはちみつのお話を読むことができる。

どのお話もあたたかい。

 

布川愛子の絵の世界

絵本『ひみつがあります』は、イラストレーターの布川愛子氏が、はじめて「絵」と「お話」両方を手がけた絵本。

描かれる世界に、作者自身の「好きなこと(描くこと)の喜び」がふんだんにつまっていて、みていて飽きない。

ももちん

服を着た動物たち、森の中の家、手作りがいっぱい・・・

女の子がときめき憧れる世界が広がる。

 

服を着た動物たち

絵本『ひみつがあります』に登場する動物たちは、服を着ている

服だけでなく、実験したりお裁縫したり、暮らしそのものが、ほぼ人間。

動物を動物としてでなく、人のように描くことで、すぐに想像の世界だとわかる

現実ではありえない世界だからこそ、心のなかでふくらませたファンタジーが存分に込められている

そこから伝わる「好きを大切にする」というメッセージが、すんなりと読み手の心にしみわたる

 

「森への憧れ」を刺激する

絵本『ひみつがあります』に登場する動物たちは、森に暮らしている

絵本では、動物たちの家の中での生活がメインなので、森の風景がたっぷり描かれているわけではない

だけど、お話や絵から、森の季節感、自然を大切にする暮らしが伝わってくるんだよね。

動物たちのファッションやインテリアの色使いや模様は、誰の心にもある「森への憧れ」を刺激する。

 

作者自身の「描く」ことへの喜び

絵本『ひみつがあります』では、たくさんの「手作り」が描かれる

1話1話に描かれる「手作りのもの」たちは、バリエーション豊かで、じっくり見てしまう

ももちん

カンガルーのタッシェがつくるポケットは23種類。

ふたごのネコがつくる半分の洋服や雑貨は10種類以上。

どれも絵柄が細かく、丁寧に描かれている。

MOE (モエ)2020年6月号 [雑誌]」のインタビューによると、作者自身手作りしてプレゼントするのが大好き、とのこと。

「自分だったらどう作るかな?」「どんな物を作りたいかな?」って考えるのが好きだからこそ、この世界を描ける。

写真にはできない、活字だけでも表現できない、まさに「絵本」だからこそ生き生きと伝わってくるワクワク感がありました。

 

雑誌「MOE」連載と絵本の違い

左『MOE』2019年2、4、6、8、12月号、2020年3月号
右『ひみつがあります』布川愛子(作)2020年
いずれも白泉社

絵本『ひみつがあります』は、雑誌『MOE』の連載を加筆・再構成したもの。

絵本と雑誌では、違っているところがいくつかあった。

『ひみつがあります』絵本と雑誌の違い

  • 描き下ろし部分
  • 絵本は全部ひらがな・カタカナ
  • 雑誌では手書き文字が、絵本ではフォントに
  • 開きの向きが反対

 

描き下ろし部分

雑誌『MOE』で連載されていた『ひみつがあります』のお話は7話。

絵本『ひみつがあります』では、「くまのビービー」という描き下ろしのお話が加えられ、全8話の構成になっている。

ももちん

前の7話の登場キャラクターが最後に勢揃いする場面は、見ていてほっこりする。。

 

絵本は全部ひらがな・カタカナ

雑誌『MOE』連載では、お話に漢字が使われ、大人が読みやすいようになっていた。

絵本では、全てひらがな・カタカナのみで書かれている。

言葉も、連載では「裁ちバサミ」だけど、絵本では「ハサミ」となっていたり、小さな子どもでも読みやすい工夫がされている。

文も少し変更されていて、よりシンプルで易しい表現になっている。

ももちん

お話だけ見ると、大人には連載のときのほうが読みやすい。

 

雑誌では手書き文字が、絵本ではフォントに

雑誌『MOE』連載では、洋服の種類やポケットの中身など、絵の中に説明が必要なものは、作者の手書きの文字で書かれていた。

絵本では、それらの手書きの文字がフォントに変更されていた。

一部手書きのセリフがカットされているところもあった。

ももちん

手書き文字がかわいくて、絵に調和していたので、ちょっともったいないかな。

 

開きの向きが反対

雑誌と絵本で大きく違うのが、開きの向きが反対なこと。

雑誌では右開きで、絵本では左開き。

初め雑誌連載用に描かれたからか、登場キャラクターが左に歩いていく場面が多い。

ところが絵本だとページが右に続くので、ちょっと違和感を感じた。

「左に歩いていったら右に戻ってるぞ?」みたいに。

慣れたら気にならなくなりました。

 

ももちん

雑誌連載、絵本、それぞれの良さがある。

絵本は子どもも易しく読めるようにつくられている。

雑誌で読んでいないお話も、絵本でまとめて味わえてうれしい。

 

まとめ

絵本『ひみつがあります』感想まとめ。

絵本『ひみつがあります』感想

  • 「効率」から自由な世界
  • 「手作り」の楽しみ
  • 喜びが周りに伝わる
  • 布川愛子の絵の世界

 

『ひみつがあります』絵本と雑誌の違い

  • 描き下ろし部分
  • 絵本は全部ひらがな・カタカナ
  • 雑誌では手書き文字が、絵本ではフォントに
  • 開きの向きが反対

 

布川愛子氏の絵の可愛らしさと、動物たちが「好きなこと」にとことん愛を込める姿に癒やされる絵本だよ。

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「ひみつがあります」が連載されていた雑誌「MOE」については、こちらの記事をどうぞ。

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  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

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