映画『猫は生きている』は戦争を題材とした人形劇映画。
このまえ新宿の平和祈念展示資料館に見に行ってきました。
初めて見た感想をお伝えするよ。
映画『猫は生きている』とは?
映画『猫は生きている』は、映画センター全国連絡会議により制作され、1975年完成された。
早乙女勝元(原作)、島田開(監督)、いずみたく(音楽)。人形劇団京芸協力。俳優座、テアトルエコーの声の出演。
1973年理論社より出版された絵本『猫は生きている』(早乙女勝元/著、田島征三/絵)を原作としている。
早乙女勝元(原作)
早乙女 勝元(さおとめ・かつもと)は、日本の作家・児童文学作家。
東京の働く姿を描いた作品が多く、また反戦・平和をライフテーマとする。
代表作(原作)
島田開(監督)
映画監督、映画プロデューサー。
代表作(企画)
いずみたく(音楽)
作曲家。
1930年東京生まれ。仙台陸軍幼年学校に在学中、敗戦を迎える。
1950年(昭和25年)に舞台芸術学院演劇学科を卒業後、ダンプの運転手などをしながら芥川也寸志に師事し、作曲活動を始める。
歌謡曲、フォークソング、CMソング、アニメソング、ミュージカル、童謡、校歌、交響曲と幅広いジャンルの曲を作曲。多作で知られ、総作数は15,000曲にのぼるという。
1992年死去。
代表作(作曲)
人形劇団京芸
1949年、京都で設立された人形劇団。2018年7月現在も活動を続ける。
京都を活動の拠点として、日本全国で上演する《人形劇公演》を大きな柱として活動。
人形劇団京芸公式サイト→→http://www.kyougei.com/index.php/
テアトルエコー
1956年、東京で設立された劇団。2018年7月現在も活動を続ける。
恵比寿に劇場を構え、喜劇を中心に上演している。
テアトルエコー公式サイト→→https://t-echo.co.jp/
あらすじ
戦時中、昌男の家の縁の下に一匹の猫が住みつき、「稲妻」と名付けました。
昌男は妹の光代と一緒にえさをやっていました。
そうこうしているうちに、ちいさなかわいい子猫がたくさん生まれました。
三月九日、北風のはげしい夜、空襲が始まり、稲妻たちは昌男たちと一緒に一面の火の中を逃げました。
おかあさんや妹とはぐれ、ひとりになった正男は猫たちを守ります。
映画を観るきっかけ
絵本を読んでいた
ももちんは初め、絵本を通じて『猫は生きている』と出逢った。
実家に昔からあったその絵本。子どものころは読んだことがなかった。
初めて読んだのは、つい数年前、実家に帰った時に、たまたま見つけたからなんだよね。
読んで、衝撃を受けたよ。
絵本『猫は生きている』について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。
絵本『猫は生きている』感想。衝撃の結末に戦争を考えさせられる。
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映画を観てみたいけど、機会がない!
絵本のレビュー記事を書いたのは2018年5月なんだけど、その時に初めて、この『猫は生きている』の映画があることを知ったんだよね。
映画のレビューを読んでみると、だいたいが、「子どものころに上映会で観て、いまだに心に残っている)」というもの。
それと、人形劇映画という、特殊な方法で制作されたことも知った。
絵本を読んでストーリーを知っているだけに、これを人形劇映画にしたら、それを子どもの時に観たら、そうとうトラウマとして残るだろうなぁ、と想像できた。
大人になった今だからこそ、観てみたいなぁ、と思ったんだけど、どうやらDVD化や動画配信は一切されていないみたい。
かろうじて「VHS販売」を見つけたけど、高価なうえに、VHSを観れる機材がない。
だから、どこかの上映会がないか探していたんだよね。
※映画『猫は生きている』は、京都の映画配給会社、シネマ・ワークでVHS販売されているよ。
シネマ・ワーク公式サイト→→http://www.cinemawork.co.jp/
【2018夏】上映情報@平和祈念展示資料館
【館内夏休みイベント】
~いまこそ知りたい、戦争のこと~明日、8/22(水)11:00/14:00
アニメーション上映 「猫は生きている」https://t.co/zpbYKXY6FW#新宿 #資料館 #博物館 #夏休み #自由研究 #映画 #無料 pic.twitter.com/yvbBkGMxrT— 平和祈念展示資料館 (@heiwakinen) 2018年8月21日
映画『猫は生きている』の上映会情報を探していたら、西新宿にある平和記念展示資料館の2018年夏休みイベントをみつけた。
ももちんが観に行ったのは7月19日(木)14:00~の回。
観客、ももちん含めわずか4人。
いくら平日といえど、この東京のど真ん中で、認知度の低さにびっくりした・・・。
2018年夏休み、残る上映日は、8月2日(木)・8月22日(水)の二日間。
11:00~、14:00~の一日二回上映。
無料で観ることができるので、興味がある人は行ってみてね。
平和祈念展示資料館(東京)について
平和祈念展示資料館は、戦争が終わってからも労苦(苦しくつらい)体験をされた、兵士、戦後強制抑留者、海外からの引揚者の三つの労苦を扱う施設です。
開館時間
9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日
- 月曜日
※祝日または振替休日の場合はその翌日
※夏休み期間は除く - 年末年始(12月28日~1月4日)
- 新宿住友ビル全館休館日
観覧料
無料
交通アクセス
〒163-0233 東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル33階
- 都営大江戸線「都庁前」駅より徒歩 約3分
- 東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅より徒歩 約7分
- JR線、小田急線、京王線「新宿」駅西口より徒歩 約10分
映画『猫は生きている』を観た感想
『猫は生きている』のストーリーについての感想は絵本のレビュー記事に書いています。
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絵本の内容に忠実
ももちんは、先に絵本を読んでストーリーを知っていたから、自然と「絵本と映画の違い」に思いをはせて観ていた。
観ていて感じたのは、映画のストーリーは、原作の絵本に忠実に再現されているということ。
前半のささやかな平和のシーンは丁寧に描かれているし、後半の大空襲のシーンも目を覆いたくなるようなところもきちんと表現されている。
映画のみで描かれるオリジナルのシーンもところどころあった。
- 稲妻の先輩ノラ猫が意味深なメッセージを残すところ。
- 「将軍」という名の犬が出てくるところ。
- 戦火の中を逃げ惑ううちに、稲妻と子猫たちが壁に隔てられて、頑張って一緒になるところ。
などなど。
最後は稲妻と子どもたちが、はぐれた1匹と会えるところで終わるんだけど、チイ子のことについては触れないんだな、と思った。
さすがに、そこまでやると子ども向けには救いがないもんな、と思ってたら、エンディングの歌で、しっかり歌ってました。。
それが戦争のむごさ。美化したり、あいまいにしないことが大切なんだろうな、と思った。
母親のわが子への愛
映画を観て特に感じたのは、「母親の子どもへの愛」。
映画で登場するお母さんは、若くてきれいで、子どもたち想いのお母さん。
絵本から受ける印象(たくましくて強いイメージ)とちょっと違った。
愛するものを命がけで守ろうとする母親の姿に、心が打たれる。
光代を失った時のお母さんの叫びが、いまだに耳にこびりついて離れない。
そして、母親の愛の強さは、猫の稲妻も同じ。
戦火の中、すべての子どもたちを必死で守り抜こうとする。
人間も猫も関係なく、生きようとする気持ちは共通するものがある。
「美しい顔」の描写がない
絵本『猫は生きている』で印象的だったのは、お母さんは苦しかっただろうにもかかわらず、死に顔がとても美しかったということ。
これは、須田卓雄氏の記録「美しい顔」を参考に早乙女勝元が書いた場面で、実話がもとになっている。
映画では、この描写がなかったような気がする(見逃しただけかも)。
映画では表現するのが難しかったのかもしれない。
人形のリアルさ
それにしても、映画が始まったときは、「あ、人形だ」って思ったけれど、物語が進むにつれて、人形だなんて思わなくなる。
表情に変化はないはずなのに、表情が見える。
前半は、あんなに生き生きと笑っていた昌男と光代。
どうか、助かって!という思いむなしく、いなくなっていく・・・
子どもはもちろんだけど、中学生、高校生、大人まで、ずっしり何かを感じるような映画になっている。
ツイッター感想集
本土空襲を描きながら「我々の戦争が他者に何をもたらしたか」を描いた映画といえば、島田開監督『猫は生きている』(大映労組、1975)を挙げねばなるまい。傑作だから。「死」ではなく「生」を前面に押し出したのも凄いし、人形劇だからこそのセットのリアリティも圧倒されるから。
— 若林 宣 (@t_wak) 2015年2月22日
『猫は生きている』を観た。京芸が74年に作った作品を75年に映画化したもの。東京大空襲の下を逃げる人間の一家と猫の一家。描写が情け容赦無く、かつ非連続であることで、戦争の本質をえぐり取っているような気がする。人形映画のリアリティてすごい。
— きつねうま (@kitsuneuma) 2011年2月5日
「猫は生きている」。小学生だった頃見たこの映画が気になり、ネットで調べてみる。少ない情報の中で、ある程度のあらすじがわかった。かなり悲惨な内容が記憶のおくからよみがえって来た。
— あぶだび (@abutan42) 2010年4月9日
まとめ
映画『猫は生きている』みどころまとめ。
- 【2018夏】上映情報@平和祈念展示資料館
- 原作・早乙女勝元著の絵本『猫は生きている』に忠実
- 母親のわが子への愛
- 人形のリアルさ
なかなか観る機会がない映画なので、興味がある人は、チャンスを逃さないようにしよう。
ストーリーそのものの感想や、元になった「美しい顔」については、絵本のレビュー記事に書いています。
絵本『猫は生きている』感想。衝撃の結末に戦争を考えさせられる。
1973年に出版された『猫は生きている』っていう戦争の絵本。 幼少期に読んでトラウマになっている人もいる衝撃的な内容。 大人になってから読むと、また深く考えさせられる。 この記事でわかること 絵本『猫 ...
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参考文献:『映画で平和を考える』上田精一、草の根出版会、2000年