『とびらをあけるメアリーポピンズ』感想。メリーポピンズ最後の訪問

投稿日:2019年1月23日 更新日:

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年


『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』は、児童文学の名作『メアリー・ポピンズ』シリーズの3作目。

メアリー・ポピンズの、3度目にして最後の訪問のお話。

今作でもメアリー・ポピンズの美しい魔法はもちろん、神話や童謡のキャラクターもたくさん登場するよ。

こんな方におすすめ

  • 1作目『風にのってきたメアリー・ポピンズ』を読んで面白かったので、2作目以降も読んでみたい。
  • 『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』のあらすじと見どころを知りたい。
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1.背景

左上『風にのってきたメアリー・ポピンズ』2000年
右上『帰ってきたメアリー・ポピンズ』2001年
左下『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』2002年
右下『公園のメアリー・ポピンズ』2003年
いずれもP.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)林容吉(訳)岩波書店

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』(原題”Mary Poppins Opens The Door”)は、イギリスの女流作家P.L.トラヴァースが1943年に発表した児童文学。

日本では、1975年、林容吉の翻訳で岩波書店より刊行された。

P.L.トラヴァースによる「メアリー・ポピンズ」関連書籍は全8作品。『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』は第3作目にあたる。

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2.主な登場人物

前作より継続

メアリー・ポピンズ・・・東風にのってバンクス家にやってきた不思議な乳母兼家庭教師。

バンクス一家

ジョージ・バンクス・・・桜町通17番地に住むバンクス家のお父さん。銀行で働き、短気で陽気。

バンクス夫人・・・バンクス家のお母さん。

ジェイン・・・バンクス家の長女。優しく弟・妹想い。メアリー・ポピンズのことを慕っている。

マイケル・・・ジェインの弟で、バンクス家の長男。知りたがりでよくメアリー・ポピンズに怒られている。

ジョンとバーバラ・・・バンクス家の双子の兄妹。今作では赤ちゃんで、鳥や風とお話ができる。

アナベル・・・今作で生まれる、バンクス家の5人目の子ども。

ブリルばあや・・・バンクス家の料理番。

エレン・・・バンクス家の小間使い。花粉症でいつもくしゃみをしている。お巡りさんといい感じの仲。

ロバートソン・アイ・・・バンクス家の使用人。暇さえあれば寝ていて、あまり仕事をしない。

ご近所さん・友人

ラークおばさん・・・バンクス家のお隣さん。アンドリューとウィロビーいう2匹犬を飼っている。

ブーム提督・・・桜町通に住み、まるで船のような形の家に住む。

バート・・・マッチ売り兼絵描き。メアリー・ポピンズの親しい友達。

公園番・・・桜町通にある公園の管理をしている。『風にのってきたメアリー・ポピンズ』に登場した「鳥のおばさん」の息子。

お巡りさん・・・町の交通を取り締まっている。エレンのことが好き。

コリーおばさん・・・双子の娘、ファニーとアニーと、不思議なお店でジンジャーパンを売っている。

ネリー・ルビナ・・・箱舟のような家に住む不思議な女性。「会話」を売る。

新登場

トイグリーさん・・・メアリー・ポピンズのいとこ。条件がそろった日には7つの願いをかなえることができる。

ミス・キャリコ・・・ペパミント・キャンディのステッキを売る不思議なおばあさん。

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3.あらすじ

前作『帰ってきたメアリー・ポピンズ』で、メリーゴーラウンドに乗って空へ旅発ったメアリー・ポピンズ。

今作では打ち上げ花火とともにマイケルとジェインのもとに舞い降りる。

マザーグースや神話の世界への不思議な冒険が始まる。

ストーリーとしては、今作がメアリー・ポピンズの最後の訪問となる。

エピソード一覧

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』エピソード内容
1.十一月五日メアリー・ポピンズが打ち上げ花火とともにふたたびやってくる
2.トイグリーさんの願いごとメアリー・ポピンズのいとこのトイグリーさんをたずねると、7つの願いごとをかなえている最中だった
3.王さまを見たネコ子ども部屋にあった瀬戸物の猫が動き出し、メアリー・ポピンズが物語を語り始める
4.大理石の少年いつもの公園に行くと、大理石の少年の像が話し始める
5.ペパミントの馬不思議なミス・キャリコからペパミント・キャンディのステッキを買うと、空をとび始める
6.高潮ジェインとマイケルは、タカラ貝に飛び込み海へ冒険する
7.末ながく幸福に古い年と新年のすきまで、子どもたちは物語の登場人物と楽しい時間を過ごす
8.別の扉メアリー・ポピンズは皆に別れを告げ、別の扉から旅発っていく

4.本を読んだ感想

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

はじめに、前作までの『風にのってきたメアリー・ポピンズ』『帰ってきたメアリー・ポピンズ』の感想記事は、こちらです。

1作目
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2作目
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『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』では、メアリー・ポピンズの3度目の訪問が描かれる。

シリーズとしては3作目だけど、全体のストーリーとしては、今回が最後の訪問。

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』でも前作と同じように、最初と最後、エピソードの構成がどこか似ている。

その中でも、ひとつひとつのお話がこれまでよりちょっと長めで、いろんな情報がつまっているのが、今作の特徴。

また、最後だとわかっているので、メアリー・ポピンズが旅たつときにはちょっとしんみりする。

4-1.メアリー・ポピンズ、3度目の登場

メアリー・ポピンズが空から下りてくるときは、いつもわくわくする。

1度目は東風にのって、こうもり傘をさしてやってきた。

2度目は凧に乗ってやってきた。

3度目となる今回は、なんと、打ち上げ花火の火花とともにやってきた!

陽気な煙突掃除

打ち上げ花火をあげているのは、ジェインとマイケル、それに煙突掃除と公園番とマッチ売り。

前作からおなじみの親しみやすいキャラクターが、ジェインとマイケルに付き添って、自分たちも子どものように花火を楽しむところがほほえましい。

はじめ煙突掃除は、しっちゃかめっちゃかになって途方に暮れるバンクス夫人に助け舟を出して、ジェインとマイケルを公園へ連れ出すんだよね。

すすで真っ黒になっている手で、周りの人達と握手をする煙突掃除。

「さわらないでちょうだい、すすだらけの野蛮人!」エレンは、おびえた声で叫びました。しかし、煙突掃除に、しっかり手をにぎられると、エレンもまた、にっこりしました

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

最初は不機嫌だった人たちも、煙突掃除と握手すると、なぜか元気を取り戻すんだ。

1964年の映画『メリー・ポピンズ』でも似たようなシーンがある。

煙突掃除たちがたくさん出てきて歌って踊るシーンは明るく愉快だったよね。

子どもみたいな公園番

桜町通にある公園を管理しているのが、おなじみ「公園番」。

公園番は、前作『帰ってきたメアリー・ポピンズ』でも、ジェインとマイケルと一緒に凧をあげている

いつもは子どもたちに口うるさく注意をするんだけど、凧や花火を見せると、つい自分がやりたくなっちゃうんだよね。

「花火をもってるのかね?」と、とびつきそうな声でいいました。「じゃ、なぜ早くそういわん!」そして、煙突掃除の手から包みをひったくると、ひもをときだしました。「マッチーマッチがいるぞ!」と興奮で息をきらしながら、いいたしました。

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

今回も、花火を見たとたん、公園番の態度がひょう変するのがかわいい。

『メアリー・ポピンズ』シリーズでは、公園でのお話もたくさん出てくる。

当然、公園番はそのたびに登場するので、シリーズの中でかなりいい味出している。

公園番については、次作『公園のメアリー・ポピンズ』レビュー記事で詳しく書くね。

マッチ売りのバート

花火をあげるために、火のついたろうそくを差し出したのが、マッチ売り兼舗道芸術家のバート

誰にでも厳しいメアリー・ポピンズだけど、バートにだけは優しいんだよね。

メアリー・ポピンズは、色とりどりの字をみて、にっこりすると、「すてきなあいさつね、バート。」と、やさしくいいました。

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

バートの印象的なエピソードは、なんといっても1作目『風にのってきたメアリー・ポピンズ』の「外出日」というお話で、メアリー・ポピンズと一緒に絵の中でお茶をする場面。

メアリー・ポピンズの女性らしさが感じられるお話でもある。

「外出日」のお話についてはこちら。(『風にのってきたメアリー・ポピンズ』レビュー記事へ)

変わらないメアリー・ポピンズ

打ち上げ花火と一緒にやってきたっていうのに、ツンとすましたたたずまいをくずさないメアリー・ポピンズは、とってもシュール。

だけど、今作では、ちょっと嬉しさもにじませているんだよね。

メアリー・ポピンズのくちびるが、ちょっとうねって、ほほえみの気配をうかべました。やがて、子どもらを、こわい目でにらみました。

「わたしのくつをはなしてください!」と、きめつけました。

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

このメアリー・ポピンズの「決めつけ」をきかないことには、なんか落ち着かない。

最初の魔法

メアリー・ポピンズは、子ども部屋に入ってすぐに、メジャーを取り出す。

前作での体温計を同じように、このメジャーは測った人の性格を示す不思議なメジャー。

ジェインは「ごうじょうで、ぶしょうで、わがままな子」、マイケルは「ますますわるい」、ジョンとバーバラは「けんかずき」、アナベルは「むずがりやのあまえんぼ」

メアリー・ポピンズ自身はというと、「いよいよ善良。完ぺきに近し。」と表示され、得意げ。

子ども相手に平然と理不尽さを発揮するやり方も健在。

不思議なメジャーの描写は1964年映画『メリー・ポピンズ』でも描かれている。

前作『帰ってきたメアリー・ポピンズ』登場シーンはこちら。(『帰ってきたメアリー・ポピンズ』レビュー記事へ)

4-2.前作とどこか似ているキャラクターたち

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』では、全部で8つの物語が描かれている。

そのうちの二つは、メアリー・ポピンズの訪問と旅たち(最初と最後)。

間のお話は、それぞれ新しく読むお話なんだけど、前作までとキャラクターがどこか似ている。

トイグリーさん

「トイグリーさんの願いごと」というお話で登場するのが、メアリー・ポピンズのいとこのトイグリーさん

バンクス家のピアノの調律をお願いしに、メアリー・ポピンズと子どもたちが訪問したところ、トイグリーさんは宙から降りてくる。

トイグリーさんは「5月3日のあとの、二度目の雨降りの日曜のあとで、初めての新月の日」に7つの願いごとを叶えることができるんだよね。

オルゴールの上で回って踊ったり、願いごとでピーチ・クリームを出してお茶をする。

「新月の日に願いごと」というのは、日本ではスピリチュアルな分野で近年広まっているよね。(参考:新月の願いは効くのか?/鏡リュウジ公式サイト

70年以上前の児童文学で書かれているということは、イギリスの伝統の考えなのかな、と思った。

トイグリーさんが教えてくれる、「みんながもっている自分のほんとうの音楽」のお話が素敵。

「だって、木ののびる音はきこえないでしょ。」と、マイケルが文句をいいました。「そんな音楽ってないんじゃない?」

(中略)「むろん、あるとも! なににだって音楽はあるんだ。(中略)この世のものはなんでもー木や、岩や、星や、人間やーなんでもみんな、じぶんのほんとうの音楽をもってるんだよ。

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

マイケルはこのお話が気に入ったらしく、「大理石の少年」のお話ではカシの木の幹に耳を押しつけ、「育つ音が、きこえるよ!」とか言っててかわいい。

1作目「笑いガス」では、メアリー・ポピンズのおじのウィッグさんのところへ訪問し、天井でお茶会をした。

2作目「あべこべターヴィーさん」では、メアリー・ポピンズのいとこターヴィーさんのところへ訪問し、逆立ちしたままお茶をした。

ミス・キャリコ

「ペパミントの馬」というお話では、ペパーミント・キャンディでできたステッキを売るミス・キャリコが登場する。

『メアリー・ポピンズ』シリーズでは、不思議なものを売っている人がちょいちょい登場するんだよね。

そして、メアリー・ポピンズと目くばせをしあって、夜中にいろんな「お仕事」をすることもあるんだ。

今作では、ペパーミント・キャンディのステッキで、まるでほうきのように空をとぶことができる。

公園番や鳥のおばさん、アイスクリーム売りやほかの人もステッキに乗り始め、空は大渋滞。

そして夜中には、ミス・キャリコがそっと現れ、それぞれの家にもっていかれたステッキを集めるんだ。

それぞれのステッキには名前も特徴もあって、まるで空をとぶ馬のよう。

1作目の「コリーおばさん」では、ジンジャー・パンを売るコリーおばさんが、夜中に現れ、メアリー・ポピンズと一緒に星に色を塗った。

2作目の「ネリー・ルビナ」では、「会話」を売るネリー・ルビナが、夜中に現れ、メアリー・ポピンズと一緒に春をもたらす作業をした。

「風船、風船!」では、風船ばあさんから風船を買うと、皆が宙に浮いてしまった。

シリーズのどの本を読んでも、ちょっと似ているエピソードが描かれている。

海での祝祭

「高潮」というお話では、ジェインとマイケルは貝がらに飛び込んで、海中へ冒険するんだ。

たどり着いたのは、海中のパーティー。

マスやスケソウダラなどの魚たち、タコ、クジラ、サケも登場。

アンコウたちは、なんとミス・アンドリューをルアーにして釣りをしている。

海のなかのいろんな生き物たちが勢ぞろいして、もちろんメアリー・ポピンズも一緒に再会できたお祝いをするんだ。

長老的存在の大ウミガメが、メアリー・ポピンズに美しいヒトデをプレゼントし、深い言葉をいう。

わたくしは、存在するありとあらゆるものより、年老いているのです。(中略)この、わたくしのほらあなには、あらゆるものが、その起源をもっておるのです。そしてまた、あらゆるものが、ついには、わたくしのところにもどるのです。(中略)」

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

前作でも、長老たちの名セリフはさえわたっていて、そこだけ児童文学ではなく、哲学書を読んでいるみたいだった。

1作目の「満月」では、夜の動物園で動物たちが勢ぞろい。長老的存在のメアリー・ポピンズのいとこのキング・コブラがメアリー・ポピンズに自分の革をプレゼントした。

2作目の「夜の外出日」では、メアリー・ポピンズと子どもたちは、夜空にのぼって星座のサーカスを見た。長老的存在の太陽が、メアリー・ポピンズとダンスをした。

4-3.ギリシャ神話からの引用

ギリシャ神話の海の神ポセイドン(ネリウスの父)[public domain]

『メアリー・ポピンズ』シリーズでは、たびたびギリシャ神話のキャラクターが登場する。

今作の「大理石の少年」というお話では、ネリウスという大理石の像の少年とイルカが動き出す。

ネリウスはギリシャ神話の海の神ポセイドンの息子で、双子の弟はぺリウスっていうんだ。

ネリウスは家族とはなればなれになって、箱に入れられてこの公園にやってきた。

「(中略)ぼくたちの一族は、とても、みんながほしがるんだ。公園や、博物館や、美術館なんかに要るんだね。だから、ぼくらを買って、小包郵便で送るのさ。ぼくたちだって、だれかは淋しがるーかもしれないなんてことは、考えてもみないらしいね。」そういって、ちょっと、のどをつまらせました。

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

確かに有名な美術館にはギリシャ神話の登場人物の像があるし、たいていは一人ずつはなればなれになっている。

もし像に心があったなら、像にとって人間はとっても身勝手な存在なのかもしれない。

物語では、ギリシャ神話について詳しく書かれているわけではないけれど、Wikipediaとかで神話の背景も照らし合わせながら読んだらおもしろかった。

Wikipedia:ネーレウス (ギリシア神話の英雄)ポセイドーンペリアース

ネリウスと子どもたちはすぐに友だちになるんだけど、通りかかった大人たちの反応はさまざま。

ラークおばさんは、イルカを見て「動物虐待!」と騒ぎ出し、裸のネリウスを見て警察に届け出る。

市長は、「像が消えたのは公園番のしわざだ!」と、公園番を責める。

子どもたちと心を通わせる、アイスクリーム売りや新聞売場のフォリーさんは、ネリウスに気さくに話しかける。

メアリー・ポピンズはどうしたかっていうと、裸のネリウスに、お気に入りの新品の上着をあげてしまうんだよね。

公園番はそんなメアリー・ポピンズに、自分の上着をかけてあげる。

子どもたちだけでなく、大人たちの心の交流にも、ほっこりするお話。

4-4.子どもたちの成長とお別れ

さまざまな不思議な冒険を、子どもたちや町の人にもたらしたメアリー・ポピンズ。

今作の「別の扉」というお話で、いよいよ空へ旅たっていくんだ。

1作目や2作目では、「また来てくれるかも?」と希望を持てるような終わり方だけど、今作では、本当に最後なんだなあ、と寂しくなった。

ジェインとマイケルの成長

1作目『風にのってきたメアリー・ポピンズ』から読んでみて感じられるのが、「メアリー・ポピンズの厳しさ」みたいなものがやわらいでいること。

それは同時に、ジェインとマイケルが確実に成長している、ということでもあるんだよね。

メアリー・シェパードの絵を見ると、一目瞭然。

1作目では、ぽっちゃりした幼児として描かれていたジェインとマイケル、今作では、しっかり女の子と男の子になっているんだよね。

双子のジョンとバーバラ、2作目で生まれたアナベルの面倒も見られるようになっているんだ。

コリーおばさんがメアリー・ポピンズにかけた言葉からもわかる。

「フーム! ずいぶん大きくなったじゃないか、メアリー・ポピンズ! なるほど、そう長いこと、あんたが必要じゃないわけだ!

メアリー・ポピンズが賛成してうなずいたとき、マイケルは、抗議するように叫んで、メアリー・ポピンズのそばにとんでいきました。

いつまでも、必要なんですーいつまでだって!

引用元:『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード/アグネス・シムズ(絵)林容吉(訳)岩波書店、2002年

子どもたちも、いつかはメアリー・ポピンズとお別れしなければいけないことをどこかで感じているんだよね。

キャラクター勢ぞろい!

「別の扉」では、これまでに登場したキャラクターがたくさんやってきて、メアリー・ポピンズにお別れの挨拶をするんだ。

  • 『帰ってきたメアリー・ポピンズ』でメアリー・ポピンズと春をもたらした、ネリー・ルビナとドジャーおじさん
  • 『帰ってきたメアリー・ポピンズ』ですべてがさかさまになった、ターヴィー夫妻
  • 『風にのってきたメアリー・ポピンズ』で、ジンジャー・パンを売っていたコリーおばさんとファニー&アニー
  • 『風にのってきたメアリー・ポピンズ』で、笑いガスで宙に浮いていたウィッグさん
  • ご近所に住む、元船乗りのブーム提督
  • 『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』で7つの願いごとをかなえたトイグリーさん
  • 『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』でペパーミント・キャンディのステッキを売っていたミス・キャリコ
  • 『風にのってきたメアリー・ポピンズ』で、メアリー・ポピンズと絵の中でお茶をしたマッチ売りのバート
  • 2匹の犬アンドリューとウィロビーを飼っている、お隣に住むラークおばさん

みんなが集い、公園で音楽に合わせて踊り、新たな門出をお祝いする。

お別れだからって、全然しめっぽくないところが素敵。

ハーディ・ガーディって?

フランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの描くハーディ・ガーディ弾き[public domain]

「別の扉」では、みんなで「ハーディ・ガーディ」っていう楽器に合わせて踊るんだよね。

「ハーディ・ガーディ」っていうのは上の絵のような楽器で、アコーディオンとヴァイオリンが合わさったような楽器。

音はこんな感じ↓。

参考・引用元:Wikipedia

4-5.挿絵にアグネス・シムス

児童文学『メアリー・ポピンズ』では、シリーズを通してメアリー・シェパードが挿絵を手がけている。

ただ、この『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』だけ、他の画家(アグネス・シムス)の挿絵も使われているんだよね。

その経緯については、今作の訳者あとがきで記されている。

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』が初めに刊行されたのは1943年。第二次世界大戦の真っ最中。

その影響で、レイアウトや印刷が行われたのはアメリカだったんだけど、イギリスからメアリー・シェパードの挿絵が間に合うように届かなかった、とのこと。

アメリカの挿絵画家アグネス・シムスは、『メアリー・ポピンズ』シリーズの熱心な愛読者だった。

メアリー・シェパードの絵の世界観をくずすことなく、自然にイラストが組み込まれている。

4-6.「マザー・グース」がたくさん登場!

W. W.デンスロウによる「ハンプティ・ダンプティ」のイラスト。1904年[public domain]

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』では、当時からイギリスで人気のあったキャラクターがたくさん登場する。

特にたくさん引用されているのは、『マザー・グース』。

「メアリー・ポピンズ」に登場するマザー・グース紹介

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5.関連作品『台所のメアリー・ポピンズ』

『台所のメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース(作)メアリー・シェパード(絵)小宮由/アンダーソン夏代(訳)アノニマ・スタジオ、2014年

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』と同時期の、メアリー・ポピンズ3度目の訪問を舞台に描かれているのが、『台所のメアリー・ポピンズ』。

トラヴァース作の物語と、物語に登場するイギリスの伝統料理とお菓子57品のレシピが一緒になった、わくわくするような本。

メアリー・シェパードによる挿絵も、なんとカラーでふんだんに掲載されていて、まるで絵本のように読むことができる。

岩波少年文庫の4冊に登場する定番キャラクターが勢ぞろいするので、料理に興味がなくても楽しめる1冊。

『台所のメアリー・ポピンズ』詳しい紹介

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まとめ

『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』あらすじと感想まとめ。

  1. 登場人物とあらすじ
  2. メアリー・ポピンズ、3度目の登場
  3. 前作とどこか似ているキャラクターたち
  4. ギリシャ神話からの引用
  5. 子どもたちの成長とお別れ
  6. 挿絵にアグネス・シムス
  7. マザー・グース引用

3度にわたったメアリー・ポピンズの訪問も、いよいよおしまい。

寂しさと同時に、子どもたちの成長も感じる物語。

次作『公園のメアリー・ポピンズ』について知りたい?こちらの記事をどうぞ。

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