国土社「世界名作文学集」シリーズは、2004年に刊行された全10冊の児童文学集。
その中の1冊に『赤毛のアン』がある。児童向けなのに格調高い落ち着いた訳で、物語を楽しめる。
この記事で紹介する本
世界名作文学集『赤毛のアン』
『赤毛のアン』(原題”Anne of GreenGables")は1908年、にカナダの女流作家、ルーシーモード・モンゴメリにより出版された。
日本では、村岡花子の翻訳により、三笠書房より1952年、のちに新潮文庫より1954年に出版。
ルーシー・モード・モンゴメリの著作の中で最も有名な1冊でもあり、実写映画化やアニメ化、舞台化もされている。
モンゴメリ紹介
小説『赤毛のアン』あらすじと感想。大人にこそおすすめの純文学
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前田三恵子(まえだ・みえこ)(訳)
1930年(昭和5年)東京に生まれる。
お茶の水女子大学英文学科卒業。その後アメリカにわたり児童文学を研究し、英米児童文学の翻訳紹介にたずさわる。
出典元:モンゴメリ『赤毛のアン 世界名作文学集』前田三恵子訳、国土社、2004年
代表作(翻訳)
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『世界名作文学集』(国土社)について
今回レビューする『赤毛のアン』は、2004年に国土社より出版されたもの。
『世界名作文学集』(国土社)として、前田三恵子翻訳で製作されたハードカバー。
1990年、国土社から「世界の名作全集」が全30冊で刊行された。
2003~2004年、「世界名作文学集」として、選りすぐった10冊を再版した。
小学校高学年以上向け。
『世界名作文学集』ラインナップ
- 宝島
ロバート・ルイス・スチーブンソン著、白木茂訳 - ふしぎの国のアリス
ルイス・キャロル著、原昌訳 - トム・ソーヤーの冒険
マーク・トウェイン著、吉田新一訳 - オズの魔法使い
ライマン・フランク・ボーム著、谷本誠剛訳 - 赤毛のアン
ルーシー・モード・モンゴメリー著、前田三恵子訳 - みつばちマーヤの冒険
ワイマル・ボンゼルス著、高橋健二訳 - 飛ぶ教室
エーリヒ・ケストナー著、植田敏郎訳 - レ・ミゼラブル
ヴィクトール・ユゴー著、榊原晃三訳 - 聖書物語
バン・ローン著、片岡正昭訳 - アラビアン・ナイト
かのりゅう編訳
世界名作文学集『赤毛のアン』感想
物語の内容そのものについての感想は、新潮文庫版『赤毛のアン』レビュー記事に書いています。
『赤毛のアン』物語の感想
小説『赤毛のアン』あらすじと感想。大人にこそおすすめの純文学
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ここからは、世界名作文学集(国土社)『赤毛のアン』について書いていくよ。
ぱっと見の特徴
表紙は『世界名作文学集』10冊に共通の、飯野和好の装画。
開いてみると、挿絵は一切なく、文字だけ。
文庫本の小説がそのまま読みやすいハードカバーになった感じ。
その分物語に落ち着いて入っていけるので、シンプルに物語を楽しみたい人におすすめ。
翻訳
翻訳を担当したのは、数多くの児童文学の翻訳を手がける前田三恵子。
ルビは小学校高学年以上に習う漢字にふられている。
文章以外の資料の少なさから見ても、ある程度活字になじんでいる小学校高学年~中学生にちょうどいいと感じる。
表記の違い
多くの人の『赤毛のアン』のベースになっているのが、村岡花子翻訳のものだと思う。
今回紹介する前田訳は、村岡訳と単語の訳し方が違っている。
村岡訳「アボンリー」→前田訳「エイヴォンリー」
村岡訳「いちご水」→前田訳「ラズベリー・シロップ」
前田訳は原作の語感を残している表記が多い。
省略されている部分
国土社世界名作文学集の『赤毛のアン』は、原作より4章分省略されて翻訳されている。
また、各章の内容もところどころ省略されている。
マシュウがアンにふくらんだ袖のドレスをプレゼントする章では、お店でのとんちんかんなやりとりをする様子が省略されている。
あくまで児童向けの抄訳版であるので、これを読んでひかれたら、ぜひ完訳版も読んでみてね。
新潮文庫版『赤毛のアン』 | 国土社『赤毛のアン』 |
第1章 レイチェル・リンド夫人の驚き | 1 リンド夫人のおどろき |
第2章 マシュウ・クスバートの驚き | 2 マシュウ=カスバートのおどろき |
第3章 マリラ・クスバートの驚き | 3 マリラ=カスバートのおどろき |
第4章『グリン・ゲイブルス』の朝 | 4 グリーンゲイブルズの朝 |
第5章 アンの身の上 | 5 アンの身のうえ話 |
第6章 マリラの決心 | 6 マリラ、心をきめる |
第7章 アンのお祈り | 7 アンがとなえたお祈り |
第8章 アンの教育 | 8 アンの養育がはじまった |
第9章 レイチェル・リンド夫人あきれかえる | 9 リンド夫人、あきれかえる |
第10章 アンのおわび | 10 アンのおわび |
第11章 アン日曜学校へ行く | 11 日曜学校へ行ったアン |
第12章 おごそかな誓い | 12 誓いと約束 |
第13章 待ちこがれるピクニック | 13 期待のよろこび |
第14章 アンの告白 | 14 アンの告白 |
第15章 教室異変 | 15 学校でのひとさわぎ |
第16章 ティー・パーティの悲劇 | 16 悲劇の招待 |
第17章 新しい刺激 | 17 人生への新しい興味 |
第18章 アンの看護婦 | 18 アンの応急手当 |
第19章 音楽会と災難と告白 | 19 思わぬ事件、告白 |
第20章 行きすぎた想像力 | (省略) |
第21章 香料ちがい | (省略) |
第22章 アンお茶に招かれる | 20 お茶にまねかれたアン |
第23章 アンの名誉をかけた事件 | 21 アンの名誉のために |
第24章 音楽会 | (省略) |
第25章 マシュウとふくらんだ袖 | 22 新調のドレス |
第26章 ストーリークラブの結成 | (省略) |
第27章 虚栄の果て | 23 虚栄と苦悩 |
第28章 たゆとう小舟の白ゆり姫 | 24 不運な白ゆり姫 |
第29章 忘れられないひとこま | 25 記念すべきできごと |
第30章 クイーン学院の受験 | 26 受験クラスつくられる |
第31章 二つの流れの合うところ | 27 広い流れへ |
第32章 合格者発表 | 28 合格者発表 |
第33章 ホテルの音楽会 | 29 ホテルの音楽会 |
第34章 クイーンの女学生 | 30 クイーンズ学院の女学生 |
第35章 クイーン学院の冬 | 31 クイーンズ学院での冬 |
第36章 栄光と夢 | 32 栄光と夢 |
第37章 死のおとずれ | 33 死のおとずれ |
第38章 道の曲り角 | 34 道のまがり角 |
脚注・解説
本文中に注釈や解説、資料は一切ないので、時代背景などの学習用ではない。
巻末の前田三恵子による解説では、モンゴメリと『赤毛のアン』についての概要がさらっと載っている。
前田三恵子翻訳のもう1冊の『赤毛のアン』
翻訳家の前田三恵子は、国土社『世界名作文学集』以外にも、児童向け『赤毛のアン』の翻訳をてがけている。
それが、集英社『子どものための世界文学の森』の『赤毛のアン』。
集英社「子どものための世界文学の森」は、子どものうちに、ぜひ読んでおきたい世界の名作40編を精選。
作品理解を深めるために、ページの余白にコラムや用語解説などをふんだんに掲載。
『赤毛のアン』は、全40巻のうち第9巻。
国土社『世界名作文学集』は挿絵が一切ないけど、こちらは挿絵が多く、文の量は少ない。
児童書のイラストを数多く手がける山野辺進の挿絵。
小学校中学年以上向け。141ページ。集英社、1994年。
まとめ
国土社『世界名作文学集』の『赤毛のアン』みどころまとめ。
- 「世界名作文学集」について
- 小学校高学年以上向け
- 前田三恵子訳が素敵
- 挿絵や注釈はないので、純粋に物語を楽しむ用。
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