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モンゴメリ『アンの夢の家』村岡花子訳、2008、新潮文庫
新潮文庫「赤毛のアン」シリーズの6作目『アンの夢の家』をご紹介します。
今作でついにアンはギルバートと結婚し、アン・ブライスとなります。
アンの新たな始まりとなる今作は、この後続いていくシリーズにとっても大切な出逢いが満載です。
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今回は、新潮文庫刊の村岡花子翻訳『アンの夢の家』をもとに、内容とみどころをお伝えするよ。
新潮文庫シリーズ合本版
この記事でわかること
- 小説『アンの夢の家』の内容とみどころ
- 各出版社の『アンの夢の家』
『アンの夢の家』とは?
『アンの夢の家』(原題"Anne's House of Dreams")は、アン・シリーズ5作目として、カナダの女流作家モンゴメリが、1917年に発表した。
新潮文庫では、間にスピンオフ短編集『アンの友達』をはさむため、6作目。
執筆順としては、第3作にあたる『アンの愛情』の次に書かれている。
日本では『アンの夢みる家』と題して、1958年、三笠書房より出版。
同年、『アンの夢の家』と改題され、新潮文庫より出版された。
アンの25~27歳の結婚後初めの3年間を描いている。
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主な登場人物
アン・ブライス・・・シリーズの主人公。細身で色白、灰色の目をしている。今作でギルバート・ブライスと結婚し、アン・ブライスとなる。
ギルバート・ブライス・・・今作で医者としての一歩を踏み出すとともに、長年の愛を実らせアンと結婚する。
ダイアナ・ライト(旧姓バーリー)・・・アンの最初にして最大の友人。『アンの愛情』で結婚し、今ではフレッドJr.とアン・コーデリアという2人の子供がいる。
マリラ・カスバート・・・アンをかつて引き取った兄妹の妹。アンを変わらず愛しており、暖かく見守る。今作ではアンが結婚して最初のクリスマスと出産の際、夢の家をたずねる。
リンド夫人・・・『アンの青春』よりマリラと同居している長年の親友。
デイビー・キース&ドーラ・キース・・・マリラが引き取った遠縁の双子。15歳になり、デイビーは婚約している。共にクリスマスに夢の家へやってくる。
新登場
ジョイス・ブライス・・・アンとギルバートの最初の子供。誕生してすぐに死んでしまう。
ジェイムズ・マシュウ・ブライス・・・ジョイスの死後1年目に生まれたアンとギルバートの2番目の子供で、長男。
ジム・ボイド船長・・・「ヨセフを知る一族」(好みや意見が一致する「同類の友」)の一員。フォア・ウィンズ岬の灯台守をしている老人。
ミス・コーネリア・・・近所に住む独身の中年女性。男嫌いだが世話好き。アンやレスリーのことをいつも気にかけている。
レスリー・ムーア・・・たぐいまれなる美貌を持つアンの隣人。子供のような夫ディックの世話をしながら、つつましい生活を送っている主婦。
ディック・ムーア・・・レスリーの夫。航海中に行方不明になり、ジム船長に発見されたときは大きな子供のようになっていた。以来レスリーの世話を受けている。
オーエン・フォード・・・一夏をアヴォンリーで過ごすためにやってきた、作家。濃いとび色の髪と暗い灰色の美しい目を持つ好男子。
スーザン・ベーカー・・・アンの妊娠のために、お手伝いとしてブライス家が雇った、中年の独身女性。結局、ブライス家のお手伝いとして家族の一員となる。
参考:Wikipedia
あらすじ
一言あらすじ
19世紀末のカナダ・プリンスエドワード島。
前作の『アンの幸福』において、3年間のサマーサイド高校校長としての婚約時代を終えたアン。
ギルバートと晴れて結婚し、アン・ブライスとなる。
フォア・ウィンズという港村の海辺の小さな「夢の家」での新生活が始まった。
男嫌いだが親切なミス・コーネリア、目をみはるほど美しいが寂しげなレスリー、天賦の話術をもつジム船長などの隣人に囲まれて、甘い新婚生活を送る。
やがて二人に素晴らしい授かりものが・・・。
全章一覧
新潮文庫版『アンの夢の家』 | 内容 |
第1章 グリン・ゲイブルスの屋根裏部屋で | ギルバートとの結婚式を控え、アンは一女の母親となったダイアナとグリーン・ゲイブルスの自分の部屋で語り合う |
第2章 夢の家 | アンはギルバートから新居の話を聞き「夢の家」と名付け想像をふくらませる |
第3章 夢にかこまれた国 | 結婚式の前日、アンとギルバートの結婚式のために各地から旧友が集う |
第4章 グリン・ゲイブルス初の花嫁 | アンとギルバートの結婚式 |
第5章 新しいわが家へ | 結婚式を終え、アンとギルバートはフォア・ウィンズの新居へ移る。道中アンは美しい娘を見かける |
第6章 ジム船長 | 近くの灯台に住む「ジム船長」が夢の家を訪問する。アンとジム船長はすぐに心を通わせる |
第7章 教師の花嫁 | 長くこの地に住むジム船長は、夢の家にきた最初の花嫁の話を語る |
第8章 ミス・コーネリアの訪問 | 近くに住む独身の中年女性ミス・コーネリアが訪問する。アンのよき友人となる |
第9章 フォア・ウインズ灯台 | アンとギルバートはジム船長の住む灯台を訪問する。ジム船長は波乱万丈の体験をつづった「生活手帳」を見せる |
第10章 レスリー・ムーア | アンは海岸を散歩中、かつて見かけた美しい娘を見かける。少女に見えた女性は後にアンの親友となるレスリー・ムーアで、アンと同世代、事故で子供のようになった夫をもつ主婦だった |
第11章 レスリーの身の上 | アンはミス・コーネリアからレスリーの悲劇に満ちた身の上を聞く |
第12章 レスリーの訪問 | レスリーが初めて夢の家を訪問する |
第13章 霧の夜 | アンはレスリーの家を訪ねるが、レスリーが泣いているのを目にし、そっと立ち去る |
第14章 十一月の日々 | アンとギルバートののろけた会話 |
第15章 港のクリスマス | 夢の家での初めてのクリスマスに、マリラとリンド夫人、デイビーとドーラが訪問し、楽しく過ごす |
第16章 灯台の大晦日 | アン・ギルバート・レスリーはジム船長の灯台を訪問し、新年を迎える |
第17章 フォア・ウィンズ港の冬 | 春に出産を迎えるアンは、レスリーの冷たい態度が気がかりだった。アンはジム船長の生活手帳を本にしたいと考える |
第18章 春のおとずれ | 春の日のアンとジム船長、ミス・コーネリアの会話 |
第19章 あかつきとたそがれ | 六月にアンは女児ジョイスを出産するが、ジョイスは生まれてまもなく亡くなる。アン自身も心身が弱り、回復に時間がかかる。スーザン・ベーカーが住み込みでお手伝いを始める |
第20章 ジム船長のロマンス | ジムはアンにかつての恋の話を語る |
第21章 沈黙のせきを破って | レスリーはアンにこれまで抱えてきた複雑な心情を吐露する。アンとレスリーは親友となる |
第22章 ミス・コーネリアの手腕 | ミス・コーネリアが新聞記者で小説家の男性が村にやってくると知り、お金に困っているレスリーの家への下宿をとりつける |
第23章 オーエン・フォードきたる | 小説家の男性はオーエン・フォードという好青年で、アンとギルバートはすぐに仲良くなる |
第24章 ジム船長の生活手帳 | アンはオーエン・フォードをジム船長に紹介し、生活手帳を見せてもらう |
第25章 オーエンの創作活動 | オーエンはジム船長の生活手帳を題材に本を書くことを決め、執筆業に励む。明るくなったレスリーとアン・ギルバートとともに充実した時間を過ごす |
第26章 オーエンの告白 | オーエンはアンにレスリーへの募る想いを打ち明ける。オーエンは夫を持つレスリーに決して言えない思いを抱え、滞在を終える |
第27章 砂浜の夜 | オーエンが去り、レスリーはアンにオーエンへの気持ちを打ち明ける |
第28章 世間話 | ミス・コーネリアとアン、レスリーの会話 |
第29章 医師ギルバート | ギルバートは、レスリーの夫ディックの頭が手術で治るかもしれないことをレスリーに告げる。アンはディックが治って元の暴君に戻ることを予想し、ギルバートを非難する |
第30章 レスリーの決意 | レスリーはディックに手術を受けさせることを決意する |
第31章 解放 | ディックは手術を受ける。目が覚めると、その男はディックによく似た別人で、ディックは十三年前に亡くなっていたことが判明する |
第32章 ミス・コーネリアの意見 | アンとミス・コーネリアの会話 |
第33章 レスリー帰る | レスリーが滞在先の病院から戻る。重荷から解放されたレスリーはアンに頼る |
第34章 夢の船港へ着く | アンが男児ジェイムズ・マシュウを出産する |
第35章 港の町の政治 | アンとジム船長の会話 |
第36章 よみがえる愛情 | スーザンの休暇中レスリーが夢の家に滞在する。オーエン・フォードが突然訪問する |
第37章 意外なニュース | アンとギルバートはミス・コーネリアから思いがけない結婚報告を聞き驚く |
第38章 赤いばら | オーエンはレスリーに求婚し、レスリーは受け入れる |
第39章 ジム船長の出発 | オーエンの本ができあがる。ジム船長が亡くなる |
第40章 夢の家とのわかれ | ギルバートが交通の便が良く大きな屋敷を買うことを決め、ブライス家は夢の家をはなれる |
『アンの夢の家』を読んだ感想
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モンゴメリ『アンの夢の家』村岡花子訳、2008、新潮文庫
今作『アンの夢の家』では、アンとギルバートの結婚から、「夢の家」での二人の3年間の生活を描いています。
過去4作にわたってアンとギルバートの関係を見守ってきた読者にとっては、この結婚生活はなんとも感慨深いものがあります。
あたらしい地での隣人たちとの交流、命の誕生と哀しみを経て、アンは内面的にも変化を迎えます。
『アンの夢の家』ポイント
アンとギルバートがついに結婚!
3作目『アンの愛情』で友人から恋人になったアンとギルバート。
4作目の『アンの幸福』では、3年間の婚約時代が描かれていますが、二人は遠距離恋愛中。もっぱらアンからギルバートへの手紙という形で、二人の愛が描かれています。
そして、いよいよ『アンの夢の家』で二人は結婚する。
ここにきて、初めて愛し合う二人の様子が手に取るようにわかります。
実のところ、アンを心から愛するギルバートがロマンチックで、たまらなく魅力的なんですよね。
結婚式の日、ギルバートは、感嘆のまなざしで花嫁姿のアンを見上げます。
また、新婚生活が始まってからの、二人の次のやりとりも好きです。
「ギルバート、わたしの髪がレスリーのようだったらもっとそのほうが気にいって?」と、アンは悲しげに訊いた。
「今の色のほかは絶対にどんな色だっていやだよ」ギルバートは一つ二つ納得させる動作とともに言った。
「もしも金髪だったら君はアンではないものーまた、どんな色にしてもそうだよ、ただー」
「赤のほかはね」と、アンは意地の悪い満足をおぼえながら言った。
出典:モンゴメリ『アンの夢の家』村岡花子訳、2008、新潮文庫
もう、勝手にやってくれっていうくらい二人の世界なんですが、そこがいい!
セリフが美しい詩のようなので、ラブラブっぷりも全然胸焼けしないんです。
次作『炉辺荘のアン』以降は、アンの子どもたちが主役になっていきます。
そのため、二人だけの世界の幸福感は、この『アンの夢の家』でしか味わえません。
象徴する建物は『夢の家』
『赤毛のアン』ではグリン・ゲイブルス、『アンの青春』では山彦荘、『アンの愛情』ではパティの家、『アンの幸福』では柳風荘。
今作で象徴となる建物はもちろん、「夢の家」です。
ギルバートが二人の新居に選んだ海辺の小さな白い家。アンはこの家を気に入り、「夢の家」と名付けるのです。
この夢の家には歴史があり、花嫁が来るのは、アンが三人目でした。
この港の生き字引と呼ばれるジム船長から聞く、昔の花嫁たちの話は神話めいていて、夢の家をさらにファンタジックなものにしているところも見どころです。
アンとギルバートは、今作の最後に手狭になった夢の家を手放すことになり、友人が次の住人となります。
こうして、家が変わらず受け継がれていく文化も好きです。
美しいレスリー・ムーア
赤毛のアン・シリーズすべて通した中でも、ももちんが1,2を争うくらい好きな登場人物が、アンの新しい隣人、レスリー・ムーアです。
アンシリーズは小説ですが、ももちんの想像の中では、このレスリーが一番美しい人として映ります。
モンゴメリも、そうなのではないかしら?というくらい、レスリーの容姿の描写にひきつけられます。
息も止まる思いだったのは少女の美しさであったーどこにいても眼に立つほどの際立った美しさであった。
帽子をかぶっていなかったが、熟れた小麦のような色をした輝く髪を豊かに編んだのが冠のように頭に巻きつけてあった。
眼は青く星のように輝いていた。
質素な更紗の服をまとった姿は堂々たるものであった。
ベルトにさしたひとたばの血のように赤いけしの花にも比べたいまっかな唇だった。
出典:モンゴメリ『アンの夢の家』村岡花子訳、2008、新潮文庫
アンは初めてレスリーを見たとき、このような感想を持ちました。
過去に出てきた美人たち
ここで、前作までに登場した美人たちを回想してみます。
ダイアナ・ライト(旧姓:バーリー)
アンの最初にして最大の友、ダイアナ。その黒い目と髪、バラ色の頬とえくぼは、初対面からアンを魅了してきました。
アンとは違い、想像力は乏しく実際的な性格ですが、生まれ持った陽気さで、周りを明るく照らします。
ルビー・ギリス
ダイアナと同じくアンの幼友達で、『アンの愛情』で若くして亡くなったルビー・ギリス。
美しい金髪と青く大きな目をもち、クイーン学院時代は学年一の美人とされました。
恋人や結婚のことばかりを話すルビーに、アンはときにうんざりしていましたが、ルビーの最後には、アンは大きな支えとなりました。
フィリパ・ゴードン
『アンの愛情』で登場したフィリパは、レドモンド大学の同級生で、パティの家でのルームメイト。
光沢のある栗色の紙と柔らかな頬、少しゆがんだ真っ赤な唇。アヴォンリー時代の友人たちにはない、型にはまらない美しさがありました。
ルビーと同じように恋人のことばかり話すフィリパでしたが、アンは早々にその本質の違いを見破ります。
のちにフィリパは、貧しくて不器量な牧師、ジョナスと恋に落ち、結婚します。
悲劇のヒロイン
美しい少女のようにしか見えなかったレスリーは、実際に知り合ってみると、28歳の主婦でした。
事故で子どものようになってしまった夫、ディックの面倒を見る苦しい生活。
それに加え、レスリーが抱える過去は、きくと誰もが耳をふさぐような悲劇。
その逃れられない運命ゆえに、アンともっと仲良くなりたいのに、どうしても妬ましく思ってしまうのです。
レスリーにさらに惹きつけられるのは、その心の奥に秘めた激しさ。
人間なら、憎しみや恨み、葛藤があって当然だけど、現在のアンにそれらはあまり見られません。
アンは愛する人と結婚をし、赤ちゃんを授かり、幸福そのもの。
同年代の友人の境遇の違いに、比較して劣等感や孤独感を感じるレスリーに共感を覚えます。
今作でアンの第一子ジョイスが死んでしまうという悲しい出来事が起こります。
これをきっかけに二人は唯一無二の親友となります。
オーエン・フォードの登場
美しさ以上に、その人間的な部分に惹きつけられるレスリーというキャラクター。
後に、ひと夏だけやってきた美男子の作家、オーエン・フォードと、許されない恋に落ちます。
お互いに一度はあきらめた愛ですが、展開は二転三転しながら、最終的には真に愛する人と結ばれるレスリー。
アンとギルバートの恋愛模様が落ち着いてしまって物足りない!と思った人も、満足できるストーリーです。
ちなみに、ももちんがもう一つ好きな恋愛ストーリーは、赤毛のアンシリーズ9作目『虹の谷のアン』で登場する、メレディス牧師とローズマリー・ウエストのエピソードです。
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「ヨセフを知る一族」の隣人たち
今作でも、魅力的な隣人たちが登場して活躍します。
今作で出てくる「ヨセフを知る一族」という言葉は、好みや意見が一致する「同類の友」という意味で、たくさん出てくる言葉です。
ジム船長
フォア・ウィンズ岬の灯台守をしている老人。
たびたび夢の家と灯台を行き来しては、おしゃべりを楽しみ、ジム船長とアンとギルバートは親交を深めます。
数年前まで船乗りだったこともあり、その波乱万丈な体験記を自信の「生活手帳」につづっています。
後に作家のオーエン・フォードが休暇を過ごしに村にやってきた際、アンの紹介で知り合い、生活手帳を見せました。
そのおもしろさに魅了されたオーエンは生活手帳を題材に作品を書き上げ、出版しました。
アンの第二子ジェイムズ・マシュウという名前は、このジム船長と、少女時代一緒に暮らしていたマシュウ・カスバートから名前をとったもの。
それほどアンはジム船長のことを慕っていたのでした。
実際にこんなおじいちゃんがいたら、毎日遊びに行きたくなる・・・そんな魅力を持った、サンタクロースのようなおじいちゃんです。
ミス・コーネリア
独身の中年女性、ミス・コーネリアは、頑固な男嫌い。
アンのところにしょっちゅうお茶に来ては、「お針の集い」をしながらおしゃべりをしていきます。
親切で、近所に生まれる赤ちゃんの服を100着以上縫ってあげているミス・コーネリア。
男性にはとても厳しいですが、アンやレスリーのよき理解者であり、今後も欠かせない存在となっていきます。
ブライス家の新しい家族
結婚したアンとギルバートは、待ちに待った赤ちゃんを授かります。
お手伝いのスーザン・ベーカーも、かけがえのない家族の一員となっていきます。
ジョイスの誕生と死
『アンの夢の家』の中で、アンは、この上ない喜びと悲しみの両方を経験します。
第一子の女児、ジョイスを出産するものの、生まれてすぐに死んでしまいます。
妊娠のときから、楽しみに待ち望み、着せる予定の服の一つ一つを自らの手で作っていたアン。
アヴォンリーからマリラも出産にかけつけ、このときからお手伝いとして加わるスーザン・ベーカー、ミス・コーネリア、レスリーもあたたかく見守っていました。
しかしながら、悲しい結果となり、一時はアン自身の生命すら危ぶまれました。
なんとか一命をとりとめたアン。しかし、悲しみは心と体に刻まれました。
ジェイムズ・マシュウ出産
周りの人々の愛情と友情に励まされながら、日々元気になっていくアン。
一年後、第二子の男児、ジェイムズ・マシュウを出産。
このわたしのかわいい男の子にはこの子の場所があるの。でも、ジョイの場所もあるの。いつまでもあるのよ。
出典:モンゴメリ『アンの夢の家』村岡花子訳、2008、新潮文庫
こうして母親になったアンは、夢の家を卒業し、新しい住みかとなる「炉辺荘」での生活に移っていきます。
スーザン・ベーカー
今作初登場となる、お手伝いのスーザン・ベーカーは、新潮文庫の赤毛のアンシリーズ最終巻『アンの想い出の日々』まで主要人物として登場します。
「赤毛のアン」シリーズ全体を通して欠かせない役割を果たすのが、この「住み込みのお手伝い」という存在。
『アンの青春』では、石造りの家「山彦荘」にミス・ラベンダーとともに住んでいた、シャーロッタ4世。
『アンの幸福』では、アンが下宿する「柳風荘」にともに住んでいた、レベッカ・デュー。
当時、独身女性が務めていたこの役割は、主人となる家族、特に奥さんを支える存在でした。
スーザン・ベーカーは自分の仕事(台所仕事などの家事、アンの世話)はきっちりこなし、部外者の干渉を嫌うタイプ。
次作以降は、アンの子供たちにも愛を注ぎ、ブライス家にとって欠かせない存在となっていきます。
感想おさらい
他出版社の『アンの夢の家』リスト
![](https://ponkotsu33.com/wp-content/uploads/2020/03/IMG_20190320_162959-500x289.jpg)
上段左から『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』『アンの友達』『アンの幸福』
下段左から『アンの夢の家』『炉辺荘のアン』『アンをめぐる人々』『虹の谷のアン』『アンの娘リラ』
いずれもモンゴメリ著、村岡花子訳、新潮社、2008年
今回の記事は、村岡花子翻訳の新潮文庫『アンの夢の家』(2008年)をもとに書いています。
新潮文庫以外の『アンの夢の家』を紹介します。
文春文庫
![](https://ponkotsu33.com/wp-content/uploads/2020/10/img_681080f787380132258aeb3c154b00752197096-346x500.jpg)
『アンの夢の家』モンゴメリ著、松本侑子訳、文春文庫、2020年
2020年文春文庫より刊行されたのが、松本侑子による全文訳の『アンの夢の家』。
松本侑子による全文訳は、すでに集英社文庫より『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』の3作が刊行されている。
たっぷりと注釈のついた、大人の文学としてのアンシリーズを味わえる。
文春文庫シリーズ合本版
講談社文庫
講談社文庫は、掛川恭子による完訳版。
原作に忠実に、現代の言葉で読みやすく訳されている。
講談社ハードカバー
講談社からの完訳版は、ハードカバーの児童向けでも出版されている。
銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。
講談社青い鳥文庫
![](https://ponkotsu33.com/wp-content/uploads/2021/03/374f66e0ba7847648b4911cdb32e1c5a-323x500.jpg)
『アンの夢の家 赤毛のアン(5) (講談社青い鳥文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2014年
講談社の児童文庫、青い鳥文庫からは、HACCANによるイラストがかわいらしい『アンの愛情』が出版されている。
こちらは村岡花子訳で、完訳ではないが、すべての章が入っている。
ポプラポケット文庫
![](https://ponkotsu33.com/wp-content/uploads/2021/03/2848c93e420c472b20be1f1bee2c505e.jpg)
『アンの夢の家―シリーズ・赤毛のアン〈4〉 (ポプラポケット文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2008年
ポプラ社の児童文庫、ポプラポケット文庫からは、村岡花子訳『アンの愛情』が出版されている。
表紙のイラストは、透明感ある水彩画で多くのファンがいる内田新哉。
電子書籍
Kindle版の出版社、グーテンベルグ21からは、角川文庫のアンシリーズで翻訳を手がけた中村佐喜子訳の『アンの夢の家』を読むことができる。
この『アンの夢の家』は、1962年に角川文庫より刊行されたものだが、現在紙書籍は絶版となっている。
角川文庫で中村佐喜子翻訳のアンシリーズを読み進めてきた人におすすめ。
まとめ
『アンと夢の家』みどころまとめ。
アンとギルバートのラブラブっぷりと、家族が増える喜び、そして親友レスリーとの出逢いと、初めから最後まで目が離せない内容となっています。
ぜひ、読んでみてね!
新潮文庫シリーズ合本版
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