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小説『ライ麦畑でつかまえて』翻訳比較。おすすめは野崎訳?村上訳?

2021年1月5日

左:『ライ麦畑でつかまえて』野崎孝(訳)1984年
右:『キャッチャー・イン・ザ・ライ』村上春樹(訳)2003年
ともにJ.D.サリンジャー(著)白水社刊

サリンジャーの小説”The Catcher in the Rye”(1951年)は、日本では2種類の翻訳を読むことができる。

1964年に刊行された野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』と、2003年に刊行された村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。

それぞれの翻訳の特徴を書いていくよ。

はじめに結論

野崎訳:古い言い回しや差別的な表現が多い。1950年代の少年のとげとげしさを味わうならおすすめ

村上訳:ソフトで現代的な言葉遣い。読みやすさを優先するならおすすめ

”The Catcher in the Rye”とは?

"THE CATCHER IN THE RYE"1985年版の表紙[public domain]

”The Catcher in the Rye”は、1951年、アメリカで出版された長編小説。作者はJ.D.サリンジャー。

全世界発行部数累計6500万部を超え、現在も世界中で毎年25万部ずつ売れ続けている。

日本国内発行部数も累計320万部を超えた。

日本では、1952年、橋本福夫の翻訳により『危険な年齢』と題され、ダヴィッド社より刊行された。

1964年、野崎孝の翻訳により『ライ麦畑でつかまえて』と題され、白水社より刊行。

1967年、繁尾久により『ライ麦畑の捕手』と題され、英潮社より刊行。

2003年、村上春樹による新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が白水社より刊行。

参考:Wikipedia

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白水社

白水社は、1915年創業の出版社。

1963年、「新しい世界の文学」シリーズを創刊。

1964年、野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』を刊行。

1983年、新書版の新シリーズ「白水Uブックス」が創刊。

2003年、『ライ麦』の愛読者であった村上春樹による新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を刊行。

2018年12月現在、”The Catcher in the Rye”の日本語翻訳権は白水社だけが持っている。

参考:『白水社 百年の歩み』白水社、2015年(Kindle版)

 

ももちん

ここからは、二人の翻訳者の紹介。

野崎孝 /『ライ麦畑でつかまえて』(1964年) 翻訳

アメリカ文学者、翻訳家。

1917年青森県弘前市生まれ。

東京帝国大学文学部(現東京大学)卒業後、教師の職に就く。

第二次世界大戦で出征。復員後、各地で教授の職に就く。

1964年、J.D.サリンジャーの ”The Catcher in the Rye” を『ライ麦畑でつかまえて』の題名で邦訳。

1995年死去。

参考:Wikipedia

代表作(翻訳)

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村上春樹 /『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(2003年) 翻訳

日本の小説家、翻訳家。

1949年、京都府生まれ。早稲田大学文学部卒業。

1979年、『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。

1987年発表の『ノルウェイの森』は2009年時点で上下巻1000万部を売るベストセラー。

日本国外でも人気が高く、2006年、フランツ・カフカ賞をアジア圏で初めて受賞。

翻訳も精力的に行い、スコット・フィッツジェラルド、レイモンド・カーヴァー、トルーマン・カポーティほか多数の作家の作品を訳している。

代表作(翻訳)

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野崎訳と村上訳を読み比べ!

左:『ライ麦畑でつかまえて』野崎孝(訳)1984年
右:『キャッチャー・イン・ザ・ライ』村上春樹(訳)2003年
ともにJ.D.サリンジャー(著)白水社刊

現在”The Catcher in the Rye”の日本語訳で定番なのは、1964年に刊行された野崎孝訳の『ライ麦畑でつかまえて』と、2003年に刊行された村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

野崎訳と村上訳、それぞれの特徴を書いていくよ。

 

野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』特徴

『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー(著)野崎孝(訳)白水社、1984年

野崎訳は1964年の刊行以来、40年以上”The Catcher in the Rye”の定番和訳として位置づけられた。

当時神戸に住む一高校生の村上春樹は、この野崎訳を読み「不思議に心に深く強く残った作品」と記している。

 

癖のある語り口をそのまま翻訳

野崎孝訳の特徴は、主人公ホールデンの癖のある語り口を、見事に日本語訳に反映していること。

野崎訳のホールデンは、とげとげしく他者を寄せつけない、癖の強さを感じる。

今では使っちゃいけない差別用語もじゃんじゃん使われている。(村上訳では使われていない)

でもきっとホールデンは当時こういう言葉を平気で使う少年だったんだろうし、それが普通だったんだと思う。

一つ例をあげると、ホールデンが語る次の一文。

あいつが童貞でなくて、誰が童貞なもんか。

引用元:『ライ麦畑でつかまえて』サリンジャー著、野崎孝訳、1984年、白水社

これ、村上訳だと次の通り。

アックリーはまったく童貞の見本みたいなやつだった。

引用元:『キャッチャー・イン・ザ・ライ』サリンジャー著、村上春樹訳、2003年、白水社

16歳の不良少年ならどっちのセリフが合うかな?って考えると、野崎訳の方がしっくりきた。

村上訳はもうちょっと冷静な視点なんだよね。

翻訳一つで、ここまで雰囲気変わってくるって、おもしろい。

 

野崎孝は、「50年代アメリカのティーン・エージャーの口調の翻訳は至難のわざだった」と後に訳者解説で記している。

訳者解説は著作権者の意向により書籍につけられず、白水社の公式サイトで掲載されている。

 

野崎孝による『ライ麦畑でつかまえて』解説/白水社公式サイト

 

野崎孝訳はココがおすすめ

  • 40年以上読み継がれている定番訳
  • 古い表現や差別的な表現、どぎつい表現
  • ホールデンのとげとげしさを翻訳から感じる

 

村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』特徴

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J.D.サリンジャー(著)村上春樹(訳)白水社、2003年

2003年、『ライ麦畑でつかまえて』の愛読者であった村上春樹による新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が刊行された。

新訳を刊行する際、村上春樹自身が「野崎訳」を残すという希望を提示し、その希望は白水社の考えとも一致したとのこと。

それ以降、2人のホールデンが共存することになった。

 

現代の読者が読みやすい訳文

村上春樹訳の特徴は、現代の読者が読みやすい、流れるような訳文。

野崎訳より語り口がだいぶソフト。

終盤で、英語のスラング「Fuck you」が出てくるんだけど、野崎訳はちゃんと日本語に訳してる分、めっちゃ生々しい(笑)

村上訳は「ファック・ユー」と、カタカナ表記なので、日本人にとっては軽く受け止められる。

 

『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』

村上は初め、新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の巻末につけるために長い解説を用意した。

しかし、著作権者から「解説はつけてはならない」という強い要請があり、解説は幻となった。

「幻の解説」は、文春新書の『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』で読むことができる

参考:『白水社 百年の歩み』白水社、2015年(Kindle版)

 

村上春樹訳はココがおすすめ

  • シンプルに村上春樹ファンならアガる
  • 野崎訳に比べやわらかい表現
  • 現代の言葉づかいに近い翻訳

 

ももちん

野崎訳は、1950年代の少年のとげとげしさをそのまま味わうならおすすめ。

村上訳は、ソフトで現代的な言葉遣い。読みやすさを優先するならおすすめ。

 

まとめ

『ライ麦畑でつかまえて』翻訳比較まとめ。

野崎孝訳はココがおすすめ

  • 40年以上読み継がれている定番訳
  • 古い表現や差別的な表現、どぎつい表現
  • ホールデンのとげとげしさを翻訳から感じる

村上春樹訳はココがおすすめ

  • シンプルに村上春樹ファンならアガる
  • 野崎訳に比べやわらかい表現
  • 現代の言葉づかいに近い翻訳

 

あなたの好みで選んでみてね。

野崎訳

村上訳

 

野崎訳『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ感想は、次の記事をどうぞ。

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  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

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