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小説『アンの娘リラ』感想。戦争に翻弄される一家と、末娘リラの成長

2018年5月19日

モンゴメリ『アンの娘リラ』村岡花子訳、2008年、新潮文庫

『アンの娘リラ』は、村岡花子翻訳の赤毛のアンシリーズとしては最終巻にあたる。

時代は戦争に突入し、ブライス家の子どもたちは、影響を受けながら成長していく。

ももちん

今回は、新潮文庫刊の村岡花子翻訳『アンの娘リラ』をもとに、内容とみどころをお伝えするよ。

この記事で紹介する本

この記事でわかること

  • 小説『アンの娘リラ』の内容とみどころ
  • 各出版社の『アンの娘リラ』

『アンの娘リラ』とは?

『アンの娘リラ』(原題"Rilla of Ingleside")は、カナダの女流作家モンゴメリが、1921年に発表した。

アンの末娘リラが主人公となった作品。

第一次世界大戦という今までのアンシリーズにない重い主題がストーリーの中心となっている。

日本では、村岡花子の翻訳により1959年、新潮社より出版された。

『アンの娘リラ』は、新潮文庫では赤毛のアン・シリーズの10作目にあたる。

アンは、48~52歳。

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あらすじ

舞台は20世紀はじめのカナダ・プリンスエドワード島。

前作『虹の谷のアン』より7年が経ち、子どもたちは大きく成長した。

末っ子である14歳のリラはいつまでたっても子ども扱いされ、憤慨していた。

第一次世界大戦が勃発し、生活は徐々に変わっていく。

次々と兄2人が志願し、ケネスをはじめ周りの男性たちも出征していく。

リラは、偶然引き取った戦争孤児の世話、赤十字少女団の運営などによって、一人の自立した女性へと成長を遂げる。

 

『アンの娘リラ』を読んだ感想

モンゴメリ『アンの娘リラ』村岡花子訳、2008年、新潮文庫

『赤毛のアン』シリーズ最後の作品となる今作は、アンの末娘リラが主人公。

時代は第一次世界大戦。

リラの兄たちや友人、心を寄せる人までがどんどん戦地に赴いていく。

その中で成長していくリラが見どころ。

 

『アンの娘リラ』ポイント

 

成長した子どもたち

前作『虹の谷のアン』から7年。

子どもたちも成長して、青年や若い婦人になりつつあるところ。

それぞれどう成長したか、ざっくり紹介。

 

ブライス家

ジェムは21歳。レドモンド大学医科の1年生。フェイスに求婚、後に婚約する。

ウォルターは20歳。2年間の教職を終え、この秋からレドモンドへ行く予定。腸チブスにかかり、身体が弱い。

ダイとナンは18歳。ウォルターと一緒にこの秋からレドモンドへ行く予定。

ナンはジェリーと後に婚約。

シャーリーは16歳。クイーン学院を卒業したばかり。

主人公リラは14歳。年の割に背が高く、手足が長い、美しい少女。

幼児時代の舌足らず(赤ちゃん言葉)の癖が緊張した時出てしまうのが悩み。

天性の愛らしさの反面、わがままでうぬぼれ屋。

兄姉にある向学心や野心を持ちあわせていない。

 

メレディス家

ジェリーはウォルターと同じ20歳。

ジェムやフェイスと共にレドモンド大学に在学中。ナンに恋心をよせている。

フェイスは19歳。

ジェムやジェリーと共にレドモンド大学へ通学中。ジェムと婚約する。

ユナは双子と同じ18歳。幼少期からウォルターに恋心を抱き続ける。

カールは17歳。シャーリーとクイーン学院での同級生。

ブルースは、メレディス牧師とローズマリーの間に生まれた坊や。ローズマリーの姉エレンにそっくりな色黒さと眉をもっている。

 

成長を遂げるリラ

初めは複数の崇拝者をもちたかったり、周りに大人だと認めさせたかったり、まだまだ子どもだったリラ。

戦争が始まり、兄たちや友人が出征し、残った女性たちも忙しく働き始める。

リラの世界もめまぐるしく変わり、成長していくんだ。

 

戦争孤児の世話

赤十字少女団の活動を始めたリラは、物資を集めに村を回っている最中、貧乏な家庭で孤児となっていた赤ちゃんを見つけ、引き取るんだ。

引き取った赤ん坊を、炉辺荘に連れかえったリラ。

赤ん坊をみた父ギルバートは、リラに赤ん坊の面倒は自分で見ること、そうでなければ炉辺荘におくことはならないと、厳しく言いつけるんだ。

心ではもちろん、赤ん坊を家におくことを承知していたけれど、リラの本気度をみたかったからなんだよね。

こうしてリラの奮闘が始まる。

最初は子育てのいろはも分からず癇癪を起こしていたリラ。

リラによってジェイムズ(通称ジムス)と名づけられた赤ん坊は、金色の巻き毛と青色の目のかわいらしい坊やに成長していく。

その後ジムスの成長とともにリラの愛情も育ち、後に実の父が見つかり引き取られる時には二人は実の姉弟のような親密さで結ばれていたんだ。

 

母に寄りそう

戦争が始まり、初めにジェムが出征していくときは、母親アンにとって、身を切られるような辛さだった。

またジェムが出征した後、ナンとダイ、ウォルターはレドモンドへ、シャーリーはクイーン学院へ行った。

結果的に、兄姉全員が家にいなくなっても、リラだけは家に残った。

アンにとって、辛いときも寄りそってくれるリラの存在は、大いに助けになったんだ。

ジェムだけでなく、後にウォルター、シャーリー、メレディス家のカールも出征していく。

 

ウォルターの死

ウォルターは、リラにとって、兄姉の中で一番仲の良い兄であり、リラはウォルターに「リラ・マイ・リラ」と呼んでもらうことが好きだったんだ。

ジェムやジェリーが使命に燃えて出征していく中で、ウォルターは身体が弱かったから、志願しなかった。

リラはほっとしてみていたんだ。

だけど、ウォルターは違った。自分が志願しないのは戦争への嫌悪と恐怖からだった。また、そのことを恥じてもいたんだ。

だけどあるとき、ウォルターはとうとうその恐怖を乗り越え、戦地に行く決断をする。

リラは、ジェムのとき以上に辛い気持ちを味わいながら、それでも自分が今いる場所で、自分にできることを精一杯やることを決める。

しかし、後に、ウォルターは戦地で死んでしまうんだ。

 

ユナとの絆

ユナは子どもの頃からウォルターに恋心を寄せていた。それを誰にも悟られまいとしていたけど、リラだけは気づいていたんだよね。

ウォルターは出征前に悩んでいたとき、リラとユナに、悩みを打ち明けていたんだ。

ウォルターには、ユナへの恋愛感情ははっきりしていなかったけど、深い友情と絆を感じていた。

ウォルターが出征するときも、リラとユナは手を取り合って見送った。

ウォルターが亡くなる前の日に、リラに宛てて書いた手紙が、亡くなったあとに届いた。

死を予感したウォルターが、たいせつなリラとユナに宛てて、希望となるようなメッセージを残したんだ。

リラにとってその手紙は大切な宝物だったけれど、ユナにその手紙を見せ、その表情をみたとき、リラは勇敢な行動をとる。その手紙をユナにあげるんだ。

これによりウォルターの死は、リラとユナにとって、共通の絆ともなるんだ。

 

ケネスとのロマンス

そんな辛い戦争のなかにあっても、リラに、ちゃんとロマンスがあってほっこりする。

 

ケネス・フォード

リラが恋心を寄せるのは、年上のケネス。

『アンと夢の家』で結ばれた、レスリーとオーエンを覚えているかな?

レスリーとオーエンの間には、二人の子どもがいて、ケネス(男の子)とパーシス(女の子)っていうんだ。

『アンと夢の家』の次作『炉辺荘のアン』からも、たびたび登場するんだよね。

ケネス(通称ケン)は、『アンの娘リラ』では20歳前後。

両親ともに絶世の美男美女なだけあり、本人も眉目秀麗。同世代の女の子たちの憧れの存在なんだ。

小さな頃は、リラはケネスにからかわれる一方だったけど、成長していくリラはだんだんケネスと恋に落ちるんだよね。

 

恋の進展

初めにお互いが意識したのは、15歳のリラの初めてのダンスパーティーのとき。

ドレスアップしたリラを見て、ケネスはリラを初めて女性として意識するんだ。

ケネスとリラが池のほとりでいい雰囲気のとき、突然ニュースが飛び込んでくる。

いよいよ戦争が始まるといニュース。

この最初の出征で、ジェムとジェリーは志願した。

ケネスはくるぶしをけがしていたから、出征しなかったけど、国のために闘うことをすごく望んでいたんだよね。

いよいよ戦地に赴くときに、ケネスは再びリラの元を訪れる。そしてキスをしリラと婚約を交わしたんだ。

その後二人がどうなったかは、読んでからのお楽しみ!

 

感想おさらい

 

他出版社の『アンの娘リラ』リスト

上段左から『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』『アンの友達』『アンの幸福』
下段左から『アンの夢の家』『炉辺荘のアン』『アンをめぐる人々』『虹の谷のアン』『アンの娘リラ』
いずれもモンゴメリ著、村岡花子訳、新潮社、2008年

今回の記事は、村岡花子翻訳の新潮文庫『アンの娘リラ』(2008年)をもとに書いています。

新潮文庫以外の『アンの娘リラ』を紹介します。

 

講談社青い鳥文庫

『アンの娘リラ 赤毛のアン(8) (講談社青い鳥文庫)』モンゴメリ (著)HACCAN (絵)村岡 花子 (訳)、2020年

講談社青い鳥文庫のアンシリーズは、新潮文庫と同じ村岡花子の翻訳。

完訳版ではなく、児童向けに編集されたもの。

HACCANの挿絵が現代的で、子どもたちが読みやすそう。

『アンの娘リラ』は2020年の10月に刊行。

講談社「青い鳥文庫」特設ページ

 

講談社文庫

『アンの娘リラ (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 8)』モンゴメリ、掛川恭子訳、2005年

講談社文庫は、掛川恭子による完訳版。

講談社ハードカバー

『アンの娘リラ (完訳 赤毛のアンシリーズ 8)』モンゴメリ、掛川恭子訳、1990年

講談社からの完訳版は、ハードカバーの児童向けでも出版されている。

銅版画家の山本容子の挿絵が入っていて、豪華。

ポプラポケット文庫

『アンの娘リラ―シリーズ・赤毛のアン〈6〉 (ポプラポケット文庫)』モンゴメリ、村岡花子訳、2008年

ポプラ社の児童文庫、ポプラポケット文庫からは、村岡花子訳『アンの娘リラ』が出版されている。

表紙のイラストは、透明感ある水彩画で多くのファンがいる内田新哉。

「ポプラポケット文庫」特設ページ

 

まとめ

『アンの娘リラ』みどころまとめ。

 

アン自身の娘時代とは一変した、リラの娘時代。読んでみてね。

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  • この記事を書いた人

ももちん

夫と猫たちと山梨在住。海外の児童文学・絵本好き。 紙書籍派だけど、電子書籍も使い中。 今日はどんな本読もうかな。

-書評(小説・児童文学), 『赤毛のアン』シリーズ
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